Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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銀時は近藤を土方達の方へ状況を説明させるために向かわせ、身形がいかにもな男達を人目につかない道を選んで道場の方へと連れて行く。
その道すがら、男達5人の中で最も年長らしき男が口を開いた。
「・・・なぁ、アンタ・・・攘夷志士だって言ったよな?」
「・・・あぁ」
来た、と思った。
一瞬の隙を作るための言葉が、今は銀時の首を絞めている。
「どこの部隊にいたんだ?」
「・・・その前に、お前の名前聞いても良い?」
「!・・・あ、ああ、すまん。俺は奥沢寂助という。第5部隊に所属していた」
「奥沢、ね・・・第5部隊だったら、たまに晋助が鬼兵隊の隊士選抜に行ってたトコだな」
銀時が呟けば、奥沢はその名に反応した。
「高杉総督を知ってるのか!?」
「・・・知ってるも何も、アイツとは幼馴染」
「・・・・・・じゃ、じゃあ・・・」
息を呑む奥沢達に、銀時は苦笑いをうかべた。
「まぁ、あいつの幼馴染で・・・なんていったら、ヅラか俺だもんな?」
「・・・白夜叉」
ぼそり、と告げられたその二つ名は今となっては懐かしささえ覚えるものだった。
「そ。白夜叉・坂田銀時ね?ヨロシク?」
***
道場に着いた銀時は、まずは門下生達に状況を説明した。
攘夷志士であることを告げた時は、以前攘夷志士に襲われた時のことを思い出して渋い表情をした者もいたが、近藤が決めたことだと言えばあっさりと滞在を認めた。
「近藤さんはよほど人徳があるとみえる・・・」
「だろー?・・・俺もこうやって受け入れられちゃったからなぁ・・・」
もう逃げらんないよ~などと軽い調子で言えば、奥沢はじっと銀時を見つめてきた。
「・・・アンタは・・・」
「・・・俺はあそこから逃げたんだよ・・・もう考えることさえ厭になっちまったんだ・・・」
「違う」
暗い表情で言った銀時に、奥沢は即言い返した。
「アンタは逃げたんじゃない・・・あれ以上の無益な戦いを止めさせるために姿を消したんだって、高杉総督はおっしゃっていた」
「・・・晋助の奴・・・」
余計なことをと思うが、それでもこちらの意図を理解してくれていることを嬉しく思う。
「でも、心配はしてらっしゃった。投げやりになっているんじゃないかと」
「・・・そっか。そうだなぁ・・・ここの連中に拾われてなければ、のたれ死んでたかもなァ」
フッと笑った銀時がそう言うと、奥沢は目を細めた。
「・・・あの人の笑顔は不思議だな・・・あっさりこちらの心の中に入ってきてしまう」
「バカっぽいのにな」
銀時が言えば、奥沢はギョッとする。
「さ、坂田さん!」
「ククッ・・・だってホントのことだろォ?」
「何がだ、銀時?」
奥沢の慌てぶりに肩を揺らして笑っていると、背後から声がかかる。
「あ、十四郎おかえり・・・ちゃんと、ミツバを送ってきたか?」
「・・・ああ」
頷く土方の後ろの近藤に確認の視線を送れば、こくんと頷く。
「で、説明は?」
「一応、納得してくれたよ」
近藤がやや疲れたように笑う。
「一応?」
「幕府のオッサンってのが気になる。一旦、どこかに避難しておいたほうがいい」
近藤の言い様に首を傾げて銀時が訊ねれば、土方が眉間にしわを寄せてそれに答えた。
「あぁ、残党狩りに知らせるかもってコト?」
「近藤さんの人を見る目を信じちゃいるが、幕府関係者なんてのは腹ン中を読みあってナンボだろ?」
「ん~、そうなんだろうけどさ・・・俺もあの人は嘘をついてないようにみえたなァ」
土方の心配は奥沢達ではなく松平の方だったようだと知ると、銀時は反論する。
「・・・確かか?」
「十四郎の心配もわかるケドな・・・丸腰でブラブラ歩くオッサンが、んな面倒なことすっか?」
「・・・そりゃ、そうだが・・・」
それでもまだ信用しがたいようで、土方の眉間のしわは深まるばかりだ。
「じゃあ、十四郎も会って話をしたらいいよ。・・・たぶん、訪ねてくるぜ?ここに」
「わかった・・・じゃあ、俺が良いと判断するまでテメェ等はどっかに隠れてろ。良いな?」
「やれやれ・・・心配性だなァ・・・わかったよ。」
元攘夷志士というわけでもないのに幕府と聞いただけでこの反応。
それだけ銀時達を真剣に護ろうと思ってくれているのだとわかるから、無下にはできずに頷いた。
***
それから数日後、宣言通り松平がお礼の品々をたずさえて、近藤の道場を訪れた。
「よォ、こないだは世話ンなったなァ」
本当に幕府の要人らしく、この辺りではまだ珍しい“自動車”に乗って現れた松平に、土方が厳しい視線を向けた。
「こっちこそ“家族”を売らずにいてくれたこと、感謝するぜ」
「・・・あん時には見なかった顔だなァ?・・・兄ちゃん、名前は?」
「土方十四郎だ」
「トシもうちの門下生の一人なんだよ。ちょっと心配性で・・・」
近藤が言葉を濁せば、松平はそれだけでわかったらしく、小さく頷いた。
「ほォ・・・ま、お人好しばっかじゃ成り立たねェだろうしなァ・・・一人くれェこんなのがいねェとな」
合格だ、と小さく呟いた声を聞き逃さなかったのは意外な人物だった。
「何が合格なんだよ、オッサン」
「んん?」
声変りもまだな子どもの声に、松平は下の方へ視線を向ける。
「・・・何が合格なんだって、聞いてんだよ」
ギロリ、と松平を睨んでいたのは沖田だ。
十代後半ばかりが集まっているのかと思いきや、こんな小さな子どもも通っているのかと松平は目を細めた。
「おゥ、随分小さな剣士さんじゃねェか・・・他にもいんのか?」
「おい!答えろよ!!」
「総悟!止めないか!・・・今はコイツしかいねェよ、それがどうしたんだ?」
近藤が沖田を押さえながら松平に訊ねると、彼は意味深な笑みをうかべた。
「いや、今はまだ話せる状態じゃねェんでな・・・まぁ、せっかく知り合ったんだ。これっきりじゃなくちょくちょく顔を出させてもらってもイイだろィ?」
「ふーん、何か思惑があるってコト?」
「!・・・銀時ッ、まだ、俺ァ出て来て良いなんて言ってねぇぞ!!」
ひょこりと玄関から顔を出した銀時が松平の言葉に反応すると、土方が慌てた様子で玄関の奥に押し戻そうとする。
「だぁーいじょぶだって!!・・・捕まえんなら、当の昔に捕まえてるよ」
「でも!」
「おう、坂田の言う通りだぜェ?捕まえんなら当の昔に捕まえてるって。・・・なんたって、オジサンついこの間、その役目を管轄する長に任じられちゃったし」
「「「「!!!」」」」
これにはさすがの近藤ものんきに構えてはいられなかった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ・・・こ、こないだもらった名刺にはそんなことはひとつも・・・!」
「あぁ、一応打診はされてたんだけども、名刺は間に合わなくってなァ・・・あぁ、心配しなくても仲良くなって元仲間の居場所を吐かせようだとか、油断したところを一網打尽にしようだとか、考えてねぇからよォ」
慌てる近藤をなだめるようにそう言って、松平はニヤリと笑った。
「むしろ、考えてんのは逆の方なんだよォ」
「逆?」
土方がいぶかしげに問う。
「そ、逆・・・どうかねェ?」
「・・・さっきっから訳わかんないことばっかり言いやがって!!近藤さん、コイツ怪しい!!」
近藤に引っ付いたまま沖田が叫ぶ。
「・・・総悟。お前はちょっと黙ってなさい」
「近藤さんッ!!」
たしなめられて、沖田は責めるようにその名を呼ぶ。
「ああ、そうだ。沖田センパイの言う方が正しい。・・・アンタ、怪しすぎるぜ」
「!・・・土方」
思わぬ援護射撃に、沖田は目を丸くする。
「・・・大切にされてるなァ、なァ?坂田・・・いや、こう呼んだほうが通りがいいか・・・白夜叉殿?」
「ッ・・・知ってたのか」
「まァ、最後の“武士(もののふ)”と呼ばれた攘夷志士の四天王は有名だからなァ」
松平は軽い調子で言ってくれるが、銀時の強さはわかっていてもそこまで名の知れた攘夷志士だとは思ってもいなかった近藤達はギョッとした。
「え、銀時ってそんな有名人なのォ!!?」
「いや、その有名人とか・・・ちょっと反応するトコ違うでしょ、近藤さん」
「おい、テメェ!!大物攘夷志士だろうがなんだろうが、銀時は渡さねェからなァ!!」
「いやいや、十四郎?捕まえないってオッサン言ってっから」
「銀兄ィ、アイツ殺す?殺しとく?」
「待って、そーちゃん!!お前が一番過激なこと言ってっから!!危なすぎるから!!」
三人三様の言葉にツッコミを丁寧に入れつつ、誰もが己を拒絶しないことに銀時は頬の筋肉が緩むのを感じていた。
「ん~。ま、今日はこの辺で失礼しとくとするかァ・・・また来るからねェ?“お銀ちゃん”」
「・・・・・・・・・ッ!?」
何かに気づいたように、銀時の顔色が悪くなる。
あまりにも珍しいその様子に近藤達は首を傾げて銀時を見つめる。
銀時の顔色を見て満足したのか、ひらり、と手を振って背を向けた松平は颯爽と車に乗り込んでしまう。
「・・・何なんだ、あのオッサン・・・一体、何の目的で・・・」
走り去る車を見つめて、土方がいぶかしげに呟く。
「・・・いやいや・・・ありえないっしょ・・・ナイナイ・・・絶対ナイ」
その脇で、銀時がブツブツと呟く。
「お、おい・・・銀時?」
近藤が呼びかけるも、銀時には全く聞こえていないようで反応は無い。
「・・・何がありえねェって?」
あまりにも様子のおかしい銀時に、土方も首を傾げる。
「銀兄ィ?」
沖田までもが心配そうに見上げた時―――。
「・・・“お銀ちゃん”って・・・もしかして」
いつの間にか隠れていた玄関の奥から出てきていた奥沢がハッとして呟く。
「・・・奥沢くん、何か知っているのか?」
近藤が訊ねれば、奥沢は少し戸惑ったように視線をさまよわせ、未だに混乱している銀時を見やった。
「いや・・・知っているというか、聞いたことがあるというか・・・本当のことだったのか、ただの冗談だったのかは良くわからないんだが・・・」
答えたくない、というよりも言っていいものかどうか迷っている様子の奥沢に、近藤達は首を傾げる。
「どういうことだ?」
土方の眦が吊り上り、奥沢はその殺気にも似た威圧感に思わず後退る。
「い、いや・・・坂田さんに許可を得てからじゃないと」
「奥沢くん、説明してくれ・・・!」
言い渋る奥沢に近藤と土方がにじり寄り―――強い殺気を感じて足を止めた。
殺気の発生源は、もちろん奥沢ではない。
「・・・総悟?」
近藤が戸惑ったようにその名を呟く。
「・・・いくら近藤さんでも、銀兄ィの望まねェコトする気なら・・・」
初めて沖田の優先する順番が近藤第一から銀時第一に変わった瞬間だった。
「いや、別に・・・そこまでして知りたいわけじゃないが・・・気になる、よなぁ?トシ」
「・・・要するに、銀時が聞いても良いといやァ良いんだろ?」
オロオロとする近藤を後目に土方が沖田を見下ろす。沖田も負けじと土方を見上げ、バチバチと火花が散らせた。
「フン、銀兄ィが良いッつったらいくらでも聞きゃァいいだろィ」
「おい、銀・・・」
土方が正気に返そうと銀時の肩を掴み声をかけた瞬間、銀時の目がカッと開かれた。
「あのオッサン、とんだくわせもんだ・・・!!」
たった一度の邂逅を覚えていたというのか。(こっちは覚えてないケド)
しかも、こちらは変装までしていたというのに。(というか、ぶっちゃけ女装)
「ぎ、銀時?」
近藤がおずおずと声をかけると、銀時はハッとして周りを見回した。
「・・・あちゃー・・・思わぬ爆弾発言に思考がぶっ飛んでたわ・・・」
「銀兄ィ、俺達ァ訳は聞かせてもらえるの?」
伺うような沖田の視線に、銀時は短く息を吐いた。
「まぁ、俺がしゃべんなくてもあのオッサンが絶対しゃべるしなぁ・・・だったら、今しゃべっちまった方がよっぽど良いよなぁ・・・」
苦笑をする銀時に、奥沢は表情を強張らせた。
「ま、まさか・・・あの話は本当のことだったんじゃ・・・」
「ん~?ああ、お前、晋助に聞いてたとか?」
奥沢がガクガクと頷くのを確認すると、銀時は呆れたような表情をうかべた。
「アイツ、最初は嫌がってたくせに・・・最終的には開き直ってガンガンいってたしな・・・」
「あの~、話についていけないんだが」
近藤が痺れを切らしてそう言えば、溜息を漏らしつつも銀時は答えた。
「うん、実はな・・・」
攘夷戦争に参加してしばらくした頃、天人と繋がりのある幕府高官との密会があるとの情報を得て、潜入調査をすることになった。
しかしそのままの姿ではやはり怪しまれるだろうと、華奢な体つきの少年剣士ばかりが集められて有無を言わさず女装をさせられた。
銀時や桂、高杉も例に漏れず、少しばかり顔も売れ始めてきたこともあり念入りに化粧まで施されて芸人として候補とされていた店のひとつに放り込まれた。
幸か不幸か、銀時達が放り込まれた店にやってきた天人と幕府高官(+護衛)は、今後の計画をばっちり提供してくれた。
その間三味線を弾いていた高杉と、舞踊を披露した銀時と桂はやたらと気に入られ、二次会三次会と引っ張りまわされ、最終的には酌までさせられるハメになり・・・適当に暴れて逃げ帰ったのだ。
「・・・ありゃ、黒歴史だ。俺の中で一番の黒歴史だ・・・!」
幕府高官に酒を注いでいたら名前を尋ねられて、完全に混乱していたのもあり、とっさに“お銀”と本名を連想させるような呼び名を名乗ってしまった。
後で散々高杉と桂に怒られたことまで思い出して、銀時は渋面になった。
「・・・じゃ、じゃあ、あのオッサンはその時の・・・?」
動揺を隠し切れない近藤が口元を引きつらせながら問えば、銀時は首を傾げる。
「うーん、でもなァ・・・あんな高官はいなかったぞ?・・・俺、こう見えても記憶力はあるし」
「・・・だったら、幕府高官共の護衛だろ?・・・いくらお前だって護衛まではちゃんと見てねェだろ?」
土方の言う通りだ。護衛までいちいち覚えてなどいない。
暴れた際に何人か斬ったような気もするが、それも自分の手によるものか定かではない。
「あー・・・どおりで白夜叉ってバレてるわけだ・・・」
がっくりと肩を落とした銀時をじっと見つめながら、沖田がボソリと呟いた。
「銀兄ィの女装かァ・・・かなりの美人なんだろなァ・・・」
その呟きで一斉に皆の視線が銀時に集まる。
「・・・や、やんないかんね!ぜっっっったいに、やんないかんね!!?」
「・・・ちっ」
「え、誰!?今、舌打ちしたの誰ぇえええ!?」
これから先しばらくの間、違う意味で銀時が皆を警戒するようになったのはいうまでもない。
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その道すがら、男達5人の中で最も年長らしき男が口を開いた。
「・・・なぁ、アンタ・・・攘夷志士だって言ったよな?」
「・・・あぁ」
来た、と思った。
一瞬の隙を作るための言葉が、今は銀時の首を絞めている。
「どこの部隊にいたんだ?」
「・・・その前に、お前の名前聞いても良い?」
「!・・・あ、ああ、すまん。俺は奥沢寂助という。第5部隊に所属していた」
「奥沢、ね・・・第5部隊だったら、たまに晋助が鬼兵隊の隊士選抜に行ってたトコだな」
銀時が呟けば、奥沢はその名に反応した。
「高杉総督を知ってるのか!?」
「・・・知ってるも何も、アイツとは幼馴染」
「・・・・・・じゃ、じゃあ・・・」
息を呑む奥沢達に、銀時は苦笑いをうかべた。
「まぁ、あいつの幼馴染で・・・なんていったら、ヅラか俺だもんな?」
「・・・白夜叉」
ぼそり、と告げられたその二つ名は今となっては懐かしささえ覚えるものだった。
「そ。白夜叉・坂田銀時ね?ヨロシク?」
***
道場に着いた銀時は、まずは門下生達に状況を説明した。
攘夷志士であることを告げた時は、以前攘夷志士に襲われた時のことを思い出して渋い表情をした者もいたが、近藤が決めたことだと言えばあっさりと滞在を認めた。
「近藤さんはよほど人徳があるとみえる・・・」
「だろー?・・・俺もこうやって受け入れられちゃったからなぁ・・・」
もう逃げらんないよ~などと軽い調子で言えば、奥沢はじっと銀時を見つめてきた。
「・・・アンタは・・・」
「・・・俺はあそこから逃げたんだよ・・・もう考えることさえ厭になっちまったんだ・・・」
「違う」
暗い表情で言った銀時に、奥沢は即言い返した。
「アンタは逃げたんじゃない・・・あれ以上の無益な戦いを止めさせるために姿を消したんだって、高杉総督はおっしゃっていた」
「・・・晋助の奴・・・」
余計なことをと思うが、それでもこちらの意図を理解してくれていることを嬉しく思う。
「でも、心配はしてらっしゃった。投げやりになっているんじゃないかと」
「・・・そっか。そうだなぁ・・・ここの連中に拾われてなければ、のたれ死んでたかもなァ」
フッと笑った銀時がそう言うと、奥沢は目を細めた。
「・・・あの人の笑顔は不思議だな・・・あっさりこちらの心の中に入ってきてしまう」
「バカっぽいのにな」
銀時が言えば、奥沢はギョッとする。
「さ、坂田さん!」
「ククッ・・・だってホントのことだろォ?」
「何がだ、銀時?」
奥沢の慌てぶりに肩を揺らして笑っていると、背後から声がかかる。
「あ、十四郎おかえり・・・ちゃんと、ミツバを送ってきたか?」
「・・・ああ」
頷く土方の後ろの近藤に確認の視線を送れば、こくんと頷く。
「で、説明は?」
「一応、納得してくれたよ」
近藤がやや疲れたように笑う。
「一応?」
「幕府のオッサンってのが気になる。一旦、どこかに避難しておいたほうがいい」
近藤の言い様に首を傾げて銀時が訊ねれば、土方が眉間にしわを寄せてそれに答えた。
「あぁ、残党狩りに知らせるかもってコト?」
「近藤さんの人を見る目を信じちゃいるが、幕府関係者なんてのは腹ン中を読みあってナンボだろ?」
「ん~、そうなんだろうけどさ・・・俺もあの人は嘘をついてないようにみえたなァ」
土方の心配は奥沢達ではなく松平の方だったようだと知ると、銀時は反論する。
「・・・確かか?」
「十四郎の心配もわかるケドな・・・丸腰でブラブラ歩くオッサンが、んな面倒なことすっか?」
「・・・そりゃ、そうだが・・・」
それでもまだ信用しがたいようで、土方の眉間のしわは深まるばかりだ。
「じゃあ、十四郎も会って話をしたらいいよ。・・・たぶん、訪ねてくるぜ?ここに」
「わかった・・・じゃあ、俺が良いと判断するまでテメェ等はどっかに隠れてろ。良いな?」
「やれやれ・・・心配性だなァ・・・わかったよ。」
元攘夷志士というわけでもないのに幕府と聞いただけでこの反応。
それだけ銀時達を真剣に護ろうと思ってくれているのだとわかるから、無下にはできずに頷いた。
***
それから数日後、宣言通り松平がお礼の品々をたずさえて、近藤の道場を訪れた。
「よォ、こないだは世話ンなったなァ」
本当に幕府の要人らしく、この辺りではまだ珍しい“自動車”に乗って現れた松平に、土方が厳しい視線を向けた。
「こっちこそ“家族”を売らずにいてくれたこと、感謝するぜ」
「・・・あん時には見なかった顔だなァ?・・・兄ちゃん、名前は?」
「土方十四郎だ」
「トシもうちの門下生の一人なんだよ。ちょっと心配性で・・・」
近藤が言葉を濁せば、松平はそれだけでわかったらしく、小さく頷いた。
「ほォ・・・ま、お人好しばっかじゃ成り立たねェだろうしなァ・・・一人くれェこんなのがいねェとな」
合格だ、と小さく呟いた声を聞き逃さなかったのは意外な人物だった。
「何が合格なんだよ、オッサン」
「んん?」
声変りもまだな子どもの声に、松平は下の方へ視線を向ける。
「・・・何が合格なんだって、聞いてんだよ」
ギロリ、と松平を睨んでいたのは沖田だ。
十代後半ばかりが集まっているのかと思いきや、こんな小さな子どもも通っているのかと松平は目を細めた。
「おゥ、随分小さな剣士さんじゃねェか・・・他にもいんのか?」
「おい!答えろよ!!」
「総悟!止めないか!・・・今はコイツしかいねェよ、それがどうしたんだ?」
近藤が沖田を押さえながら松平に訊ねると、彼は意味深な笑みをうかべた。
「いや、今はまだ話せる状態じゃねェんでな・・・まぁ、せっかく知り合ったんだ。これっきりじゃなくちょくちょく顔を出させてもらってもイイだろィ?」
「ふーん、何か思惑があるってコト?」
「!・・・銀時ッ、まだ、俺ァ出て来て良いなんて言ってねぇぞ!!」
ひょこりと玄関から顔を出した銀時が松平の言葉に反応すると、土方が慌てた様子で玄関の奥に押し戻そうとする。
「だぁーいじょぶだって!!・・・捕まえんなら、当の昔に捕まえてるよ」
「でも!」
「おう、坂田の言う通りだぜェ?捕まえんなら当の昔に捕まえてるって。・・・なんたって、オジサンついこの間、その役目を管轄する長に任じられちゃったし」
「「「「!!!」」」」
これにはさすがの近藤ものんきに構えてはいられなかった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ・・・こ、こないだもらった名刺にはそんなことはひとつも・・・!」
「あぁ、一応打診はされてたんだけども、名刺は間に合わなくってなァ・・・あぁ、心配しなくても仲良くなって元仲間の居場所を吐かせようだとか、油断したところを一網打尽にしようだとか、考えてねぇからよォ」
慌てる近藤をなだめるようにそう言って、松平はニヤリと笑った。
「むしろ、考えてんのは逆の方なんだよォ」
「逆?」
土方がいぶかしげに問う。
「そ、逆・・・どうかねェ?」
「・・・さっきっから訳わかんないことばっかり言いやがって!!近藤さん、コイツ怪しい!!」
近藤に引っ付いたまま沖田が叫ぶ。
「・・・総悟。お前はちょっと黙ってなさい」
「近藤さんッ!!」
たしなめられて、沖田は責めるようにその名を呼ぶ。
「ああ、そうだ。沖田センパイの言う方が正しい。・・・アンタ、怪しすぎるぜ」
「!・・・土方」
思わぬ援護射撃に、沖田は目を丸くする。
「・・・大切にされてるなァ、なァ?坂田・・・いや、こう呼んだほうが通りがいいか・・・白夜叉殿?」
「ッ・・・知ってたのか」
「まァ、最後の“武士(もののふ)”と呼ばれた攘夷志士の四天王は有名だからなァ」
松平は軽い調子で言ってくれるが、銀時の強さはわかっていてもそこまで名の知れた攘夷志士だとは思ってもいなかった近藤達はギョッとした。
「え、銀時ってそんな有名人なのォ!!?」
「いや、その有名人とか・・・ちょっと反応するトコ違うでしょ、近藤さん」
「おい、テメェ!!大物攘夷志士だろうがなんだろうが、銀時は渡さねェからなァ!!」
「いやいや、十四郎?捕まえないってオッサン言ってっから」
「銀兄ィ、アイツ殺す?殺しとく?」
「待って、そーちゃん!!お前が一番過激なこと言ってっから!!危なすぎるから!!」
三人三様の言葉にツッコミを丁寧に入れつつ、誰もが己を拒絶しないことに銀時は頬の筋肉が緩むのを感じていた。
「ん~。ま、今日はこの辺で失礼しとくとするかァ・・・また来るからねェ?“お銀ちゃん”」
「・・・・・・・・・ッ!?」
何かに気づいたように、銀時の顔色が悪くなる。
あまりにも珍しいその様子に近藤達は首を傾げて銀時を見つめる。
銀時の顔色を見て満足したのか、ひらり、と手を振って背を向けた松平は颯爽と車に乗り込んでしまう。
「・・・何なんだ、あのオッサン・・・一体、何の目的で・・・」
走り去る車を見つめて、土方がいぶかしげに呟く。
「・・・いやいや・・・ありえないっしょ・・・ナイナイ・・・絶対ナイ」
その脇で、銀時がブツブツと呟く。
「お、おい・・・銀時?」
近藤が呼びかけるも、銀時には全く聞こえていないようで反応は無い。
「・・・何がありえねェって?」
あまりにも様子のおかしい銀時に、土方も首を傾げる。
「銀兄ィ?」
沖田までもが心配そうに見上げた時―――。
「・・・“お銀ちゃん”って・・・もしかして」
いつの間にか隠れていた玄関の奥から出てきていた奥沢がハッとして呟く。
「・・・奥沢くん、何か知っているのか?」
近藤が訊ねれば、奥沢は少し戸惑ったように視線をさまよわせ、未だに混乱している銀時を見やった。
「いや・・・知っているというか、聞いたことがあるというか・・・本当のことだったのか、ただの冗談だったのかは良くわからないんだが・・・」
答えたくない、というよりも言っていいものかどうか迷っている様子の奥沢に、近藤達は首を傾げる。
「どういうことだ?」
土方の眦が吊り上り、奥沢はその殺気にも似た威圧感に思わず後退る。
「い、いや・・・坂田さんに許可を得てからじゃないと」
「奥沢くん、説明してくれ・・・!」
言い渋る奥沢に近藤と土方がにじり寄り―――強い殺気を感じて足を止めた。
殺気の発生源は、もちろん奥沢ではない。
「・・・総悟?」
近藤が戸惑ったようにその名を呟く。
「・・・いくら近藤さんでも、銀兄ィの望まねェコトする気なら・・・」
初めて沖田の優先する順番が近藤第一から銀時第一に変わった瞬間だった。
「いや、別に・・・そこまでして知りたいわけじゃないが・・・気になる、よなぁ?トシ」
「・・・要するに、銀時が聞いても良いといやァ良いんだろ?」
オロオロとする近藤を後目に土方が沖田を見下ろす。沖田も負けじと土方を見上げ、バチバチと火花が散らせた。
「フン、銀兄ィが良いッつったらいくらでも聞きゃァいいだろィ」
「おい、銀・・・」
土方が正気に返そうと銀時の肩を掴み声をかけた瞬間、銀時の目がカッと開かれた。
「あのオッサン、とんだくわせもんだ・・・!!」
たった一度の邂逅を覚えていたというのか。(こっちは覚えてないケド)
しかも、こちらは変装までしていたというのに。(というか、ぶっちゃけ女装)
「ぎ、銀時?」
近藤がおずおずと声をかけると、銀時はハッとして周りを見回した。
「・・・あちゃー・・・思わぬ爆弾発言に思考がぶっ飛んでたわ・・・」
「銀兄ィ、俺達ァ訳は聞かせてもらえるの?」
伺うような沖田の視線に、銀時は短く息を吐いた。
「まぁ、俺がしゃべんなくてもあのオッサンが絶対しゃべるしなぁ・・・だったら、今しゃべっちまった方がよっぽど良いよなぁ・・・」
苦笑をする銀時に、奥沢は表情を強張らせた。
「ま、まさか・・・あの話は本当のことだったんじゃ・・・」
「ん~?ああ、お前、晋助に聞いてたとか?」
奥沢がガクガクと頷くのを確認すると、銀時は呆れたような表情をうかべた。
「アイツ、最初は嫌がってたくせに・・・最終的には開き直ってガンガンいってたしな・・・」
「あの~、話についていけないんだが」
近藤が痺れを切らしてそう言えば、溜息を漏らしつつも銀時は答えた。
「うん、実はな・・・」
攘夷戦争に参加してしばらくした頃、天人と繋がりのある幕府高官との密会があるとの情報を得て、潜入調査をすることになった。
しかしそのままの姿ではやはり怪しまれるだろうと、華奢な体つきの少年剣士ばかりが集められて有無を言わさず女装をさせられた。
銀時や桂、高杉も例に漏れず、少しばかり顔も売れ始めてきたこともあり念入りに化粧まで施されて芸人として候補とされていた店のひとつに放り込まれた。
幸か不幸か、銀時達が放り込まれた店にやってきた天人と幕府高官(+護衛)は、今後の計画をばっちり提供してくれた。
その間三味線を弾いていた高杉と、舞踊を披露した銀時と桂はやたらと気に入られ、二次会三次会と引っ張りまわされ、最終的には酌までさせられるハメになり・・・適当に暴れて逃げ帰ったのだ。
「・・・ありゃ、黒歴史だ。俺の中で一番の黒歴史だ・・・!」
幕府高官に酒を注いでいたら名前を尋ねられて、完全に混乱していたのもあり、とっさに“お銀”と本名を連想させるような呼び名を名乗ってしまった。
後で散々高杉と桂に怒られたことまで思い出して、銀時は渋面になった。
「・・・じゃ、じゃあ、あのオッサンはその時の・・・?」
動揺を隠し切れない近藤が口元を引きつらせながら問えば、銀時は首を傾げる。
「うーん、でもなァ・・・あんな高官はいなかったぞ?・・・俺、こう見えても記憶力はあるし」
「・・・だったら、幕府高官共の護衛だろ?・・・いくらお前だって護衛まではちゃんと見てねェだろ?」
土方の言う通りだ。護衛までいちいち覚えてなどいない。
暴れた際に何人か斬ったような気もするが、それも自分の手によるものか定かではない。
「あー・・・どおりで白夜叉ってバレてるわけだ・・・」
がっくりと肩を落とした銀時をじっと見つめながら、沖田がボソリと呟いた。
「銀兄ィの女装かァ・・・かなりの美人なんだろなァ・・・」
その呟きで一斉に皆の視線が銀時に集まる。
「・・・や、やんないかんね!ぜっっっったいに、やんないかんね!!?」
「・・・ちっ」
「え、誰!?今、舌打ちしたの誰ぇえええ!?」
これから先しばらくの間、違う意味で銀時が皆を警戒するようになったのはいうまでもない。
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