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Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)

このサイトは、コードギアス・NARUTO・銀魂の二次創作サイトです。原作者様とは一切関係ありません。各ページの注意事項をよく読んでから閲覧してください。

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注意
・あくまでも二次創作であることを前提にお読みください
・一国傾城編の過去話は完全に無視の状態です

以上、同意できる方のみ↓へ・・・









天人が銀時を担いで外に行くと、子ども達はその後を追っていった。

土方はその間に松陽に近付く。

「吉田さん・・・最初っからわかってたんだ・・・アイツ等の環境が180度変わるなんてのは、アンタの死ぐらいしかないって」

ピクリとも動かない松陽に、土方は唇を噛む。

「・・・・・・俺達は何のために呼ばれた?野郎の過去を見せるためだけに呼ばれたのか?なら、なんで交流なんてさせた。最初からこうして、見えないままで良かったじゃねェか!!」

ダン、と畳に拳を叩きつける。

「・・・副長・・・」

「土方さん・・・」

交流さえしなければ桂や高杉に同情せずに済んだはずだ。

―――本当に?

見てしまえば同じではないだろうか?

あのとても幸せそうな、子ども達と松陽の笑顔を―――。

程なくして天人が戻って来る。何をするかなんてわかりきったことだったが、さすがに目を背けたくなった。

天人が行灯を蹴倒すのを見て、土方はさすがにこの場に留まるのは無理かと判断する。

「・・・吉田さんの遺体は燃えちまった方が親切かもな・・・」

「・・・さすがに、子ども達にはきついでしょうからねィ」

首の無い師の姿などを見たら、それでなくても死を悲しむだろう子ども達に追い打ちをかけるようなモノだ。

それに、運び出したくても触れることすらかなわないのだから。そう自分達を納得させて土方達は屋敷の外に出る。

木造の屋敷に火が回るのは一瞬のことだった。ましてやこの家には書物がたくさん置かれている。

「銀ちゃん・・・銀ちゃん・・・」

涙声で神楽が銀時を呼ぶ。

まるで幽霊にでもなった気分だ。ただ見ているだけ。何も出来ない自分に腹が立つ。

「銀ちゃんっ・・・起きてヨ・・・先生が・・・家が燃えちゃうアル・・・」

「銀さん・・・起きてくださいっ」

神楽と新八には松陽の首のことは告げなかった。気付かなかったのならわざわざ言う必要もないだろうと判断したからだ。沖田も山崎もそれは同感らしく同じく口を噤んでいた。

焼け落ちる屋敷を呆然と眺めていた時、足元で呻き声が上がった。ハッとして視線を向ければ、銀時が起きあがるところだった。

「・・・うっ・・・げほっ、ごほっ!」

気道を圧迫されて昏倒したため、急に入って来た空気にむせる銀時。

やがて目の前の状況を理解したのか、ふらりと立ち上がる。

「・・・せんせ・・・?」

松陽は目の前で死んだ。それはわかっている。

だが、松陽との思い出のたくさん詰まった屋敷が燃えている。

「あ、ああ・・・あ、あ・・・」

ガクリと膝をつく。その手元に落ちている教本に視線を向けた時、ボロボロと涙がこぼれた。

「せんせぇ・・・松陽せんせぇッッ!!!」

悲痛な叫びに土方は銀時から視線を逸らした。

好敵手、目標、そう思ってきた相手のこんな姿を見ていられなかった。

「おおっ、銀坊じゃねぇか!無事だったか。先生はどうした?」

村人が次々と水桶を抱えてやって来る。どうやら単なる火事だと思ってきたらしく、銀時の頬や腹部の創や血のついた教本を見てギョッとする。

とにかく今は火を消さなければと若い衆が水桶を運び動ける者でその水桶の水をかけ始める。

「銀時っ!!」

そこに高杉が走り寄って来る。

「銀時、大丈夫か?」

「しん、すけ・・・」

泣きはらした赤い目を見て、高杉は眉を顰めた。

「銀?」

首を傾げ、ハッと目を見開いた。

「・・・松陽先生は?」

「っ・・・ふっ・・・うぅっ・・・」

再びこぼれ落ちる涙を止められず、銀時は高杉にしがみついた。

「せんせ・・・せんせっ・・・」

しがみつく銀時の手に付いた茶色にも黒にも見えるそれが何なのか、高杉はそれに気付いて身体を震わせた。

銀時がこんな風に泣くなんてありえないのだ。

―――あの人が無事ならば。

「・・・嘘だ・・・」

かすれた声で呟く。

「銀時っ!高杉っ!!」

ようやく桂がそこに合流する。家人に止められてなかなか家を抜け出せなかったのだ。

「無事だったか、銀時。・・・それで、先生は?」

ビクリ、と銀時の肩が震えた。

「無事なんだろ?なぁ・・・ここにいないのは、どっかに避難してるからだよな・・・銀時っ!おいっ、答えろよッッ!!!」

高杉が銀時の身体を揺する。

「よさないか、高杉!・・・銀時、本当に先生はどうしたんだ?」

「せんせ・・・天人が・・・俺っ・・・庇ってッ・・・!」

取り留めのない言葉だが、何が起こったかは充分にわかった。

やっとのことで火が消えた屋敷は、別棟を残してほぼ全焼。藩医である桂の実父が村人に連れられて屋敷の中に入って行くのを見た桂は最悪の状況を頭の中で組み立てた。

「・・・天人」

ポツリ、と高杉が呟く。

「高杉?」

「・・・笠を被った、大柄の天人・・・」

虚ろな目が徐々に怒りに染まっていく。

「アイツかっ・・・!」

ぶつかった時にふわりと松陽の好んだ香のかおりがした。それと同時に鉄の錆びたようなにおいが鼻について、急いでいたというのに思わず立ち止まってその天人を見つめていた。

あれが銀時の言う天人だということはすぐにわかった。あの天人は屋敷の方から来た。そして村の外へと向かっていったのだ。

己は、むざむざと松陽に手をかけた犯人を見送ってしまったのだ。

怒りを感じてはいるが高杉は冷静だった。いや、冷静すぎた。むしろ銀時の方が重症だった。

「・・・お、れのっ・・・せっ」

―――俺のせいだ。

そう言って自分を責める銀時を、これ以上責めることは桂も高杉も出来なかった。それに責められるべきは銀時ではない。

「お前のせいじゃねぇよ・・・お前のせいじゃねぇから」

ぎゅう、と銀時を抱きしめる。涙がとめどなくあふれ出てくる。

「そうだ。お前のせいではない」

桂が銀時ごと高杉も抱きこむ。頬を涙が伝った。

「・・・ひでぇことをするもんだ」

「先生が何したってんだ・・・」

村人たちは焼け落ちた屋敷を眺めて呆然と呟く。

その時、何人かの若い衆と桂の実父が焦げた布団に包んだ“何か”を運び出してくる。村の長老達と何事かを話し、首を横に振った。

「・・・そういえば“アイツ等”はどうしたんだ?」

ポツリと高杉が訊ねる。

「“アイツ等”・・・?」

桂が首を傾げた。

「ほら・・・あれ?“アイツ等”って誰だ?」

高杉も言いながら首を傾げた。

「お前が言い出したんだろう?」

「・・・あ、そうだよな・・・あの家には“先生と銀時しかいなかった”ハズなのに・・・何言ってるんだ、俺は」

桂と高杉の会話に反応したのは他でもない、土方達だった。

「まさかとは思ったが・・・やっぱりこうなったか」

「忘れてる・・・?」

「いや、消された、の方が正しいと思うぜィ、山崎」

姿も声も彼らからは見えていない。村人に身体をすり抜けられた時には思わず怖気立った。

姿や声だけならばともかく、土方が関わったことすらも全て抹消されたのだと理解した。

「・・・歴史は正常に戻ったってことだな」

「一石を投じることすら出来なかったってことですねィ」

土方が悔しげに呟けば、沖田も不機嫌な様子を隠そうともせずに頷く。

「銀ちゃんが・・・昔のコト教えてくれないのは、こんなことがあったからアルか?」

「銀さんの中でもまだ整理がついてないのかな・・・」

神楽と新八が肩を落としながら呟く。

銀時の過去がこれ程に波乱に満ちたものだったなんて誰が思っただろうか。

「・・・でも、これで戻れるんですよね、俺達」

山崎が訊ねる。この時代に存在しない者として扱われた以上、もうこの時代にはいられないということだろう。

しかし、どうやって帰るのだろうか。全員がそんなことを思った時だった。

無音。全ての音が聞こえなくなった。


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