Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・ルル←ジノ気味
・ルルが生きているのを知っているのはごく僅か
・ジノのモノローグ多め
・捏造満載
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
気に入らない。
世界は平和だ。だが、その平和は、たった1人への憎悪から成り立っているものだ。
「私は認めない。・・・そんな自己犠牲。」
虚空を睨んで吐き出したその呟きは、雑踏のざわめきに消えていく。
「ルルーシュ先輩・・・これが先輩の望んだ世界なのか?・・・自分だけが悪になって・・・。」
共犯者達は一様に口を閉ざす。何も知らなかった。自分達も脅されていた。説明を求めれば、出てくるのはそんな言葉ばかり。
「ロイド博士も、セシル女史も、ニーナも・・・ああ、オレンジもか。・・・全てを知っているわけじゃないにしたって、絶対、何かを知ってるはずなのに。」
フッと思う。“彼”は、どうなのだろうか、と。ルルーシュによって“英雄”にされた“彼”は、何を思って“英雄”を演じているのだろうか、と。
「尋常じゃない。・・・自分を殺して、親友を殺して・・・そして、顔無き英雄を演じるなんて。」
そんな強靭な精神力を“彼”が持っているなんて、思いもしなかった。どちらかと言えば、まるで、諸刃の剣のような、危なっかしさがあった。少なくとも、ラウンズとして戦っていた頃はそのように見えた。
「それが・・・先輩の望みだったから?」
だとしたら、なんて、痛々しい関係なのだろう。あの“黒”は喪に服す意味もあるのだろうか?訊いてみたい気もしたが“彼”は徹底して公私を分けている。
だから、仮令、会えたとしてもあの時のことを訊き出すことはできないだろう。
「・・・私も・・・仲間になっていたら・・・。」
ブリタニア本国に攻め込んだ時、スザクに仲間になるべきだと言われた。だが、あの時点では、ルルーシュは、皇位を簒奪し、先代達を全て拒絶し、冒涜した者のように見えたのだ。
だから、ジノは膝を折らなかった。
「過ぎたことを言っても仕様が無い。・・・でも、なぁ、スザク。私は真実が知りたい。・・・あの時、お前、ルルーシュ先輩と何を話したんだよ。」
そう。マスコミ関係者として、あの時の録画ディスクを持っていたミレイに頼み込んで、あの時、磔になっていた者達で見た。
それは、最期の瞬間、“ゼロ”にもたれかかったルルーシュが“ゼロ”の仮面を撫でたのが見えて、それが、偶然、手が当たっただけなのか、故意に撫でたのかが気になったからだった。
そして、その場面を拡大して見た時、ジノはルルーシュの口元が動いていることに気づいた。それは、皆も同じで。何度も何度も再生して、確信を得た。あの時、ルルーシュは故意に“ゼロ”の仮面を撫で、会話を交わしたのだ、と。
最期の言葉は、どんなものだったのか。恨みごとだったわけが無い。だって、彼は笑顔で逝ったのだから。遠目に見ていたのではわからなかった。
「何で、あんな幸せそうに・・・。」
知りたかった。自分達の知らぬところで、世界の平和の為に命を賭そうと決めた、彼等のその真実を。
雑踏のざわめきが耳障りだった。
ジノもまた“悪逆皇帝”と最後まで戦った“勇士”という扱いを受けている。だから、街を出歩く時はいつだって変装をしていた。目立つことは好きだったが、不本意な理由で祀り上げられるのは嫌だった。
路地に入り込んで、ジノは歩を早める。と、その時、背後から人の気配を感じて、その気配が一瞬止まり、そして、逃げる様にして来た方向に戻ったのを確認する。バッと振りかえったその時にちらりと見えた黒髪、薄い肩、細い腰。
「・・・まさか・・・。」
考えるよりも先に身体が動いていた。
「まさか、まさか、まさか・・・ッ!!!」
同じ言葉を呟きながら、足音を追う。どうやら、相手もこちらが追って来ているのに気づいて、走っているようだった。彼の人なわけが無い。そう考える自分と、もしかしたら。と望む自分がいる。
たった今、考えていたからって、本人だという保証はない。髪の色だって、ちらっとだけ見えただけで、本当に黒だったかわからない。体型が似ている人間だって、山のようにいるだろう。そもそも、彼は死んだのだ。己の目の前で。だが、それなら、なぜ自分から逃げる?
「へへ・・・一見の価値ありってね!!」
顔を見なければ諦められない。腹をくくって、ジノは追いかけるスピードをあげる。かなりの差があったのだが、その足音はどんどんとゆっくりになって、近づいているように思える。
もし、彼の人ならば、体力の無さは折り紙付き。このままいけば、確実に追いつける。ジノは舌なめずりをして、まるで、獲物を追う肉食獣のような表情をうかべた。
「絶対、捕まえる。」
と、呟いたその時、右にカーブしている路地の先から聞こえていた足音がピタリと止まる。ジノはそのカーブの手前で止まり、そっとその様子を窺い、苦笑をうかべた。
「相変わらず、体力無いなぁ・・・。」
道のど真ん中で、ぜぇぜぇと息を切らし、膝に手を当てているその人物に近づき、ポン、と肩に手を置いた。
「つっかまえた~♪」
そして、その顔をのぞきこめば、確かに、ジノが今まで脳裏にうかべていた人物と同一人物としか思えない人で。
「・・・生きてたんだ。ルルーシュ先輩。」
「っ!?・・・ひ、人違いです!!」
明らかに無理がある嘘をついて、彼は視線を逸らす。
「いやいや、かなり無理があるだろ?・・・こんな美形、世の中に2人も3人もいてたまるかっての。」
「・・・チッ、単純なだけに、騙し難いか。」
酷い言われようだが、そこはスルーする。今は、彼に会えたという嬉しさの方が勝っていたからだった。
「ね、どうして生きてんの?・・・死んだよな?剣が身体を貫いて、血がいっぱい出て。」
そこで、言葉を切る。言っていて、その時の生々しい映像を思い浮かべてしまったからだ。
「ああ・・・あれはかなり痛かった。・・・魔女が余計なことしなければ、あのまま死ぬことができたのに。」
“魔女”という言葉が指す人物をジノは知らなかった。
が、グッジョブ、魔女!と心の中で称賛しておいた。そうでなければ、こうしてジノは彼と会うことはできなかったのだから。いくら感謝してもしつくせないほどだ。
「で・・・余計なことって?」
「ギアスは知ってるな?」
「ああ。カレンから聞いた。」
「カレン・・・か。・・・まあ、その、ギアス関連の力でな・・・。」
カレンの名に一瞬目を細め、彼は言葉を濁しつつも教えてくれる。
「これ、スザクは知ってんの?」
最も訊きたいのはそこだ。知っているなら、今までの認識を再度改めねばならなくなる。
「スザクって・・・まぁ、事情をある程度知っていれば気付くか。・・・あいつには言ってない。折角の覚悟を、無にしてしまいかねないからな。」
そう言ったルルーシュに、ジノは笑みをうかべた。
「そっか。・・・やっぱ、スザクって、すげーな。」
「あいつは強いよ。あの精神力は並大抵じゃない。」
柔らかく笑んだその顔に、ジノは一瞬見惚れ、そんな表情で語られるスザクに嫉妬する。
「ずりーよ。自分達だけで勝手に決めてさ。」
むくれるジノに、ルルーシュは呆れたような視線を向けた。
「お前は馬鹿か?なんで敵に“こんなことしますから、支配されて下さい”なんて説明しなきゃならない?」
「あ、あはは・・・、あ、じゃあさ、何で、私を殺さなかったんだ?」
「・・・ああ、ラウンズで攻め込んで来た時のことか?それなら、俺がそれを命じたんじゃない。スザクが勝手にお前だけを生かしたんだ。」
スザクが勝手に、というフレーズに、ジノはがっくりと肩を落とす。
「そ、そりゃさ、確かに、私のことを避けてた節はあったし、攻め込んだのはこっちだし、文句言える立場でもないけどさ・・・ちょっとくらい、こう、気を使ってさ、お前は使えると思ったから、とかさ・・・。」
「・・・お前、俺に利用して欲しかったのか?・・・変わってるな。」
ルルーシュが訝しげにそう言うので、自分が何を口走ったのか気付いたジノは慌てて首を振った。
「ああ!いやいや!違うって!!別にそうじゃなくて!!・・・ちょっとくらい、惜しんでくれたのかなって・・・希望、なんだけどさ。」
「・・・あの時の目的は、ビスマルクだ。他はおまけでしかない。・・・まぁ、お前がもっと既得権益に固執した貴族だったなら、殺せと命じたかもしれないが。」
肩を竦めてそう言ったルルーシュに、ジノは表情を引き締めた。
「死んだ後、貴族制を復活させない為の殺戮だったのか?」
「ああ。・・・奴らはブリタニアの膿だ。皇位継承権争いの激化も奴らの思惑がそれぞれ入り混じっていたからだしな。」
「でも、皇帝廟まで壊さなくたって・・・。」
「過去の栄華に縋ろうとする人間だっている。そんな人間は前を向いて、明日を、未来を見つめられないだろう?・・・皇帝廟はブリタニアの栄華の証だ。だから壊した。」
一つ一つの行動に理由があった。それも、個人の支配欲からの理由などでは無く、世界の平和な未来の為の理由。
「・・・やっぱずるい。」
「は?」
「いや、こっちの話。・・・なぁ、ルルーシュ先輩、今、どこに住んでんの?」
ニコニコとジノがさり気無く探りを入れると、ルルーシュは苦笑をうかべた。
「先輩だなんて、随分、懐かしい呼び方をするな?」
「その方が、良いじゃんか。・・・“悪逆皇帝”なんて似合わない。」
「・・・言っておくが、そう言い出したのは、黒の騎士団の方だぞ?こちらがそう名乗ったことはない。・・・まぁ、利用はさせてもらったが。」
「あ~・・・利用、ね。」
ジノはルルーシュの行った非道な行いを思い出して、苦虫を噛み潰したような表情をうかべた。
「今は、オレンジ農園にいる。」
「・・・え!?」
唐突に告げられたことに一瞬反応が遅れて、ジノは思わず訊き返した。
「えっ!?って・・・お前、どこに住んでいるのかと訊いただろう?」
首を傾げるルルーシュに、ジノはパアァッと表情を明るくした。
「オレンジ農園!?そこに住んでんの!?・・・オレンジ農園かぁ・・・オレンジ!?」
唐突に叫んで、ジノはルルーシュの両肩を捕まえた。
「お、おおお、オレンジ?オレンジ農園って言ったよな!?・・・こないだ行ったぞ!?・・・アーニャの様子を見に・・・。」
「ああ、来てたな?」
「え、えええ、えええええええ!!!?マジで!?」
大混乱中のジノに、ルルーシュはクツクツと笑った。
「大マジだ。あのアーニャが慌てるところなど、初めて見たぞ。」
「アーニャの奴、知ってたのか!!何で教えてくんないんだよ~~~!!!」
「知ってるのはあそこの連中だけだ。・・・俺が生きているなんて知ったら、世界中が混乱するだろう?」
そう言って肩を竦めるルルーシュに、ジノは眉を顰めた。
「じゃあ、なんで、街まで降りて来てるんだ?・・・今みたいに見つかる可能性だってあるのに。」
「・・・ただの気まぐれだよ。」
クスリと笑うその顔がとても綺麗で、ジノは急激に鼓動を早めた心臓を押さえる。その時、表の大通りから歓声が沸く。“ゼロ様万歳”“ナナリー様万歳”と言う声が遠くから聞こえる。
「・・・ああ、これ、見に来たんだ。」
ジノがようやく気付く。今日は平和記念祭の前夜祭が行われる日。昼間は何もないと思っていたが、どうやら、主役のパレードが模様されているようだった。
「・・・行くつもりはなかったんだが、ジェレミアとアーニャに追い出されてな。」
苦笑をうかべるルルーシュに、ジノはプッと吹き出す。臣下に家を追い出されるなんて、悪逆皇帝が聞いて呆れる。
「なぁ、近くで見ようぜ?」
「馬鹿を言え、それこそ、見つかったらただじゃ済まない。」
「だからさ、これ、被ってなよ。」
ジノは自分の被っていた帽子をルルーシュに被せ、その上から、ルルーシュの着ているパーカーのフードを被せる。
「大丈夫・・・誰も気づかないって。皆“ゼロ”と“ナナリー様”を見に来てるんだから。」
グイッとその腕をとり、ジノはルルーシュを引っ張っていく。
「お、おい・・・。」
戸惑いながらも、大人しく引っ張られてくれるルルーシュに、ジノは仄かな喜びを感じた。昔だったら振り払われておしまい。なのに、今のルルーシュは警戒心のかけらもないのだ。
「いざとなったら、私が守ってやるからな、先輩!」
「・・・ああ、もう・・・好きにしてくれ。」
燦々と輝く太陽の下、笑顔で手を振る実妹と、禁欲の黒をまとう親友の姿を目にし、ゆるりと笑んだその表情。それを見ることが出来たのはジノだけだ。
ゆっくりと距離を縮めていけば良い。時間はたっぷりとある。いつか、ロイド達に自慢してやろうと思いつつ、ジノはルルーシュの手をきゅっと握り締めた。
おしまい
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・ルル←ジノ気味
・ルルが生きているのを知っているのはごく僅か
・ジノのモノローグ多め
・捏造満載
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
気に入らない。
世界は平和だ。だが、その平和は、たった1人への憎悪から成り立っているものだ。
「私は認めない。・・・そんな自己犠牲。」
虚空を睨んで吐き出したその呟きは、雑踏のざわめきに消えていく。
「ルルーシュ先輩・・・これが先輩の望んだ世界なのか?・・・自分だけが悪になって・・・。」
共犯者達は一様に口を閉ざす。何も知らなかった。自分達も脅されていた。説明を求めれば、出てくるのはそんな言葉ばかり。
「ロイド博士も、セシル女史も、ニーナも・・・ああ、オレンジもか。・・・全てを知っているわけじゃないにしたって、絶対、何かを知ってるはずなのに。」
フッと思う。“彼”は、どうなのだろうか、と。ルルーシュによって“英雄”にされた“彼”は、何を思って“英雄”を演じているのだろうか、と。
「尋常じゃない。・・・自分を殺して、親友を殺して・・・そして、顔無き英雄を演じるなんて。」
そんな強靭な精神力を“彼”が持っているなんて、思いもしなかった。どちらかと言えば、まるで、諸刃の剣のような、危なっかしさがあった。少なくとも、ラウンズとして戦っていた頃はそのように見えた。
「それが・・・先輩の望みだったから?」
だとしたら、なんて、痛々しい関係なのだろう。あの“黒”は喪に服す意味もあるのだろうか?訊いてみたい気もしたが“彼”は徹底して公私を分けている。
だから、仮令、会えたとしてもあの時のことを訊き出すことはできないだろう。
「・・・私も・・・仲間になっていたら・・・。」
ブリタニア本国に攻め込んだ時、スザクに仲間になるべきだと言われた。だが、あの時点では、ルルーシュは、皇位を簒奪し、先代達を全て拒絶し、冒涜した者のように見えたのだ。
だから、ジノは膝を折らなかった。
「過ぎたことを言っても仕様が無い。・・・でも、なぁ、スザク。私は真実が知りたい。・・・あの時、お前、ルルーシュ先輩と何を話したんだよ。」
そう。マスコミ関係者として、あの時の録画ディスクを持っていたミレイに頼み込んで、あの時、磔になっていた者達で見た。
それは、最期の瞬間、“ゼロ”にもたれかかったルルーシュが“ゼロ”の仮面を撫でたのが見えて、それが、偶然、手が当たっただけなのか、故意に撫でたのかが気になったからだった。
そして、その場面を拡大して見た時、ジノはルルーシュの口元が動いていることに気づいた。それは、皆も同じで。何度も何度も再生して、確信を得た。あの時、ルルーシュは故意に“ゼロ”の仮面を撫で、会話を交わしたのだ、と。
最期の言葉は、どんなものだったのか。恨みごとだったわけが無い。だって、彼は笑顔で逝ったのだから。遠目に見ていたのではわからなかった。
「何で、あんな幸せそうに・・・。」
知りたかった。自分達の知らぬところで、世界の平和の為に命を賭そうと決めた、彼等のその真実を。
雑踏のざわめきが耳障りだった。
ジノもまた“悪逆皇帝”と最後まで戦った“勇士”という扱いを受けている。だから、街を出歩く時はいつだって変装をしていた。目立つことは好きだったが、不本意な理由で祀り上げられるのは嫌だった。
路地に入り込んで、ジノは歩を早める。と、その時、背後から人の気配を感じて、その気配が一瞬止まり、そして、逃げる様にして来た方向に戻ったのを確認する。バッと振りかえったその時にちらりと見えた黒髪、薄い肩、細い腰。
「・・・まさか・・・。」
考えるよりも先に身体が動いていた。
「まさか、まさか、まさか・・・ッ!!!」
同じ言葉を呟きながら、足音を追う。どうやら、相手もこちらが追って来ているのに気づいて、走っているようだった。彼の人なわけが無い。そう考える自分と、もしかしたら。と望む自分がいる。
たった今、考えていたからって、本人だという保証はない。髪の色だって、ちらっとだけ見えただけで、本当に黒だったかわからない。体型が似ている人間だって、山のようにいるだろう。そもそも、彼は死んだのだ。己の目の前で。だが、それなら、なぜ自分から逃げる?
「へへ・・・一見の価値ありってね!!」
顔を見なければ諦められない。腹をくくって、ジノは追いかけるスピードをあげる。かなりの差があったのだが、その足音はどんどんとゆっくりになって、近づいているように思える。
もし、彼の人ならば、体力の無さは折り紙付き。このままいけば、確実に追いつける。ジノは舌なめずりをして、まるで、獲物を追う肉食獣のような表情をうかべた。
「絶対、捕まえる。」
と、呟いたその時、右にカーブしている路地の先から聞こえていた足音がピタリと止まる。ジノはそのカーブの手前で止まり、そっとその様子を窺い、苦笑をうかべた。
「相変わらず、体力無いなぁ・・・。」
道のど真ん中で、ぜぇぜぇと息を切らし、膝に手を当てているその人物に近づき、ポン、と肩に手を置いた。
「つっかまえた~♪」
そして、その顔をのぞきこめば、確かに、ジノが今まで脳裏にうかべていた人物と同一人物としか思えない人で。
「・・・生きてたんだ。ルルーシュ先輩。」
「っ!?・・・ひ、人違いです!!」
明らかに無理がある嘘をついて、彼は視線を逸らす。
「いやいや、かなり無理があるだろ?・・・こんな美形、世の中に2人も3人もいてたまるかっての。」
「・・・チッ、単純なだけに、騙し難いか。」
酷い言われようだが、そこはスルーする。今は、彼に会えたという嬉しさの方が勝っていたからだった。
「ね、どうして生きてんの?・・・死んだよな?剣が身体を貫いて、血がいっぱい出て。」
そこで、言葉を切る。言っていて、その時の生々しい映像を思い浮かべてしまったからだ。
「ああ・・・あれはかなり痛かった。・・・魔女が余計なことしなければ、あのまま死ぬことができたのに。」
“魔女”という言葉が指す人物をジノは知らなかった。
が、グッジョブ、魔女!と心の中で称賛しておいた。そうでなければ、こうしてジノは彼と会うことはできなかったのだから。いくら感謝してもしつくせないほどだ。
「で・・・余計なことって?」
「ギアスは知ってるな?」
「ああ。カレンから聞いた。」
「カレン・・・か。・・・まあ、その、ギアス関連の力でな・・・。」
カレンの名に一瞬目を細め、彼は言葉を濁しつつも教えてくれる。
「これ、スザクは知ってんの?」
最も訊きたいのはそこだ。知っているなら、今までの認識を再度改めねばならなくなる。
「スザクって・・・まぁ、事情をある程度知っていれば気付くか。・・・あいつには言ってない。折角の覚悟を、無にしてしまいかねないからな。」
そう言ったルルーシュに、ジノは笑みをうかべた。
「そっか。・・・やっぱ、スザクって、すげーな。」
「あいつは強いよ。あの精神力は並大抵じゃない。」
柔らかく笑んだその顔に、ジノは一瞬見惚れ、そんな表情で語られるスザクに嫉妬する。
「ずりーよ。自分達だけで勝手に決めてさ。」
むくれるジノに、ルルーシュは呆れたような視線を向けた。
「お前は馬鹿か?なんで敵に“こんなことしますから、支配されて下さい”なんて説明しなきゃならない?」
「あ、あはは・・・、あ、じゃあさ、何で、私を殺さなかったんだ?」
「・・・ああ、ラウンズで攻め込んで来た時のことか?それなら、俺がそれを命じたんじゃない。スザクが勝手にお前だけを生かしたんだ。」
スザクが勝手に、というフレーズに、ジノはがっくりと肩を落とす。
「そ、そりゃさ、確かに、私のことを避けてた節はあったし、攻め込んだのはこっちだし、文句言える立場でもないけどさ・・・ちょっとくらい、こう、気を使ってさ、お前は使えると思ったから、とかさ・・・。」
「・・・お前、俺に利用して欲しかったのか?・・・変わってるな。」
ルルーシュが訝しげにそう言うので、自分が何を口走ったのか気付いたジノは慌てて首を振った。
「ああ!いやいや!違うって!!別にそうじゃなくて!!・・・ちょっとくらい、惜しんでくれたのかなって・・・希望、なんだけどさ。」
「・・・あの時の目的は、ビスマルクだ。他はおまけでしかない。・・・まぁ、お前がもっと既得権益に固執した貴族だったなら、殺せと命じたかもしれないが。」
肩を竦めてそう言ったルルーシュに、ジノは表情を引き締めた。
「死んだ後、貴族制を復活させない為の殺戮だったのか?」
「ああ。・・・奴らはブリタニアの膿だ。皇位継承権争いの激化も奴らの思惑がそれぞれ入り混じっていたからだしな。」
「でも、皇帝廟まで壊さなくたって・・・。」
「過去の栄華に縋ろうとする人間だっている。そんな人間は前を向いて、明日を、未来を見つめられないだろう?・・・皇帝廟はブリタニアの栄華の証だ。だから壊した。」
一つ一つの行動に理由があった。それも、個人の支配欲からの理由などでは無く、世界の平和な未来の為の理由。
「・・・やっぱずるい。」
「は?」
「いや、こっちの話。・・・なぁ、ルルーシュ先輩、今、どこに住んでんの?」
ニコニコとジノがさり気無く探りを入れると、ルルーシュは苦笑をうかべた。
「先輩だなんて、随分、懐かしい呼び方をするな?」
「その方が、良いじゃんか。・・・“悪逆皇帝”なんて似合わない。」
「・・・言っておくが、そう言い出したのは、黒の騎士団の方だぞ?こちらがそう名乗ったことはない。・・・まぁ、利用はさせてもらったが。」
「あ~・・・利用、ね。」
ジノはルルーシュの行った非道な行いを思い出して、苦虫を噛み潰したような表情をうかべた。
「今は、オレンジ農園にいる。」
「・・・え!?」
唐突に告げられたことに一瞬反応が遅れて、ジノは思わず訊き返した。
「えっ!?って・・・お前、どこに住んでいるのかと訊いただろう?」
首を傾げるルルーシュに、ジノはパアァッと表情を明るくした。
「オレンジ農園!?そこに住んでんの!?・・・オレンジ農園かぁ・・・オレンジ!?」
唐突に叫んで、ジノはルルーシュの両肩を捕まえた。
「お、おおお、オレンジ?オレンジ農園って言ったよな!?・・・こないだ行ったぞ!?・・・アーニャの様子を見に・・・。」
「ああ、来てたな?」
「え、えええ、えええええええ!!!?マジで!?」
大混乱中のジノに、ルルーシュはクツクツと笑った。
「大マジだ。あのアーニャが慌てるところなど、初めて見たぞ。」
「アーニャの奴、知ってたのか!!何で教えてくんないんだよ~~~!!!」
「知ってるのはあそこの連中だけだ。・・・俺が生きているなんて知ったら、世界中が混乱するだろう?」
そう言って肩を竦めるルルーシュに、ジノは眉を顰めた。
「じゃあ、なんで、街まで降りて来てるんだ?・・・今みたいに見つかる可能性だってあるのに。」
「・・・ただの気まぐれだよ。」
クスリと笑うその顔がとても綺麗で、ジノは急激に鼓動を早めた心臓を押さえる。その時、表の大通りから歓声が沸く。“ゼロ様万歳”“ナナリー様万歳”と言う声が遠くから聞こえる。
「・・・ああ、これ、見に来たんだ。」
ジノがようやく気付く。今日は平和記念祭の前夜祭が行われる日。昼間は何もないと思っていたが、どうやら、主役のパレードが模様されているようだった。
「・・・行くつもりはなかったんだが、ジェレミアとアーニャに追い出されてな。」
苦笑をうかべるルルーシュに、ジノはプッと吹き出す。臣下に家を追い出されるなんて、悪逆皇帝が聞いて呆れる。
「なぁ、近くで見ようぜ?」
「馬鹿を言え、それこそ、見つかったらただじゃ済まない。」
「だからさ、これ、被ってなよ。」
ジノは自分の被っていた帽子をルルーシュに被せ、その上から、ルルーシュの着ているパーカーのフードを被せる。
「大丈夫・・・誰も気づかないって。皆“ゼロ”と“ナナリー様”を見に来てるんだから。」
グイッとその腕をとり、ジノはルルーシュを引っ張っていく。
「お、おい・・・。」
戸惑いながらも、大人しく引っ張られてくれるルルーシュに、ジノは仄かな喜びを感じた。昔だったら振り払われておしまい。なのに、今のルルーシュは警戒心のかけらもないのだ。
「いざとなったら、私が守ってやるからな、先輩!」
「・・・ああ、もう・・・好きにしてくれ。」
燦々と輝く太陽の下、笑顔で手を振る実妹と、禁欲の黒をまとう親友の姿を目にし、ゆるりと笑んだその表情。それを見ることが出来たのはジノだけだ。
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