Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・『貴方と出会った日から』設定でR2仕様→独立したお話としてお考えくださいませ
・シリアスっぽい
・神根島?行政特区?そんな死亡フラグはたってません!
・いきなりブラックリベリオン!
・捏造満載
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
今日、黒の騎士団とブリタニア軍の全面対決が始まる。黒の騎士団からの宣戦布告。日本の奪還を目的とした作戦。だが、その作戦は第一段階でしかない。
日本を奪還の後、すぐさまブリタニアへの進軍を始める。EUや中華連邦と何度も打ち合わせをし、何とか協力を取り付けたのだ。
負けが続くEUは諸手を挙げて協力を申し出てくれた。中華連邦も随分と渋ったが、表立った支援では無く、陰からの支援に徹底し、万が一、黒の騎士団が敗北した場合、ブリタニア側についても良いことを条件に、協力を取り付けた。
「・・・怖い?」
「まさか。・・・クロヴィスを殺した時から、覚悟は決まっていますから。」
ゼロの部屋で抱きしめあいながら、朝比奈の問いにルルーシュは答えた。
「そ。・・・なら良いんだけどね。」
朝比奈はそれ以上問いかけることなく、ルルーシュの身体を抱く力を強める。
「・・・今日は、何が何でも、君の傍にいるからね?」
「・・・省吾、さん。」
目を細め、ルルーシュは頬を朝比奈の肩にすりつける。自分の傍にいることが一番危ないのは、間違いない。だが、離れるように指示しても、きっと朝比奈は了承しないだろう。
それならば・・・。
「被害が最小限に抑えられるように作戦を実行します。・・・絶対に、俺の指示に従って下さい。」
「君から、離れろっていう指示じゃなければね。」
一瞬頭によぎった考えを指摘されて、ルルーシュは苦笑する。
「そんなこと、言いませんよ。・・・だって、省吾さんは拒否するに決まってるんですから。」
「あは。よくおわかりで。・・・じゃあ、行こうか?」
朝比奈の腕が外されると、ふるりとルルーシュは身体を震わせた。
「(怯え、ではない。・・・これは、武者震い?)」
ルルーシュは目を伏せ、そして一呼吸を置いて、ゆっくりと目を開ける。
「・・・必ず、生きて戻ってきましょうね。」
「うん。」
真っ直ぐに見つめてくるルルーシュを見て、朝比奈はニコリと笑った。
司令室に行くと、藤堂を始めとした黒の騎士団の幹部達が出迎えてくれる。
「・・・とうとう、始まるな。」
藤堂が口を開く。
「はい。・・・みんな、どうか、無事で。」
請うように告げる。それに笑顔が返ってくる。それだけでルルーシュはホッと息をついた。そして、がらりと表情を変える。“ゼロ”のスイッチが入ったのだと、その場の誰もが姿勢を正す。
「・・・今回は、日本の奪還だけではない。その先・・・ブリタニア本国も落とす。一気に行かなければ、相手に反撃のチャンスを与えてしまう。・・・だから、日本の奪還ごときで手間取るワケにはいかない。」
ルルーシュのゼロとしての言葉に、幹部達の表情が引き締まる。
「敵は容赦なく薙ぎ払え。・・・我等黒の騎士団の覚悟を見せてやれ。」
「「「「「承知!!!」」」」」
幹部達の声が揃う。それに満足気に笑んだルルーシュは、ラクシャータの方を向く。
「・・・新型のナイトメアのテストは?」
「バッチリですよぉ、殿下。・・・ブリタニアの白兜なんか、目じゃないわぁ。」
「そうか。・・・では、予定通り、作戦“ブラックリベリオン”を開始する。・・・扇、EUとの連絡を。」
「ああ、わかった。」
「中華連邦には・・・C.C.、頼む。」
「任せておけ。」
指示を受けた扇とC.C.が動き始めると、それぞれも、ナイトメア部隊と政庁制圧部隊とで編成を始めた。
「・・・藤堂、全体の指揮は私が執る。だが、細かなところはお前が指揮を執れ。」
「承知した。・・・その際は君にも報告をする。」
「頼む。・・・では、私も出撃する。」
まるで別人のような表情をしたルルーシュに、その覚悟の程がうかがえる。いつもの作戦の時とは違う、覇気が見えるのだ。
「・・・失敗は許されない。四聖剣は全力でゼロのサポートを。」
藤堂は四聖剣の表情を見回し、迷いなくそう告げる。
「「「「承知!」」」」
それに頷いた四聖剣も出撃準備のために、格納庫へ向かった。
トウキョウ租界、ブリタニア軍と対峙した黒の騎士団は、政庁の周囲を囲むブリタニア軍の前に手間取っているように見えた。
司令室にいたコーネリアは、眉を潜める。
「・・・嫌にのんびりとしているな。」
その呟きに己の騎士が首を傾げたのを目の端で捉える。
「・・・そうでしょうか?我がブリタニア軍に対して、攻めあぐねているのではないのですか?」
「ギルフォード、相手はあの黒の騎士団だぞ?こんな処で躊躇するようであれば、とうの昔に私が壊滅させているさ。」
肩を竦めた己の主に、ギルフォードは確かに、と頷く。
「・・・ふ。向こうが動かぬのなら、こちらから攻めるまで。・・・枢木!」
『・・・はい。』
己の妹の騎士を呼ぶと、いつになく真剣な表情をうかべていた。
「緊張しているのか?」
緊張を解してやろうとからかうが、スザクはビクリと肩を跳ねさせた。
『いえ。自分は・・・緊張などしていません。』
首を振ったスザクの表情が余計に張りつめたものに変わったことに気付く。コーネリアは眉を潜めた。
「どうした?・・・調子が悪いのなら、前線に出るのは止めるか?」
『・・・いえ・・・あの、総督・・・ゼロのことなんですが・・・。』
「なんだ?」
煮え切らないスザクの態度に、イライラとしながら返す。
『実は・・・。』
意を決したスザクが告げた事実に、コーネリアは目を丸くし、そして、呻いた。
「そんな・・・馬鹿な・・・。」
ブリタニア軍が進軍してくる。それを新型ナイトメアフレーム“蜃気楼”内で見たルルーシュは、口元を歪める。
「姉上かかりましたね?・・・詰めが甘いですよ。」
手元のスイッチを手に取る。
「・・・さぁ、ショーの始まりだ。」
ルルーシュがそのスイッチを押した瞬間、政庁付近のステージが崩落し始める。
こちらも新型のナイトメアフレーム“暁”に乗り、その様子を見ていた四聖剣の面々は、思わず、はぁ~と感嘆のため息をついた。
「・・・なんというか、その・・・すげぇなぁ、うちの大将はよ。」
ステージの崩落に巻き込まれていくブリタニア軍の地上部隊を憐れむように見やりながら、卜部が呟くと、朝比奈が意味もなく胸を張った。
「ふふん、そりゃそうでしょ!彼はこういったことにかけては、天才ですから!!」
「お前が威張るな。・・・ったく、地上部隊がいなくなったからって、フロートユニットを装着してるナイトメアも多くあるんだ、油断するなよ。」
千葉につっこまれると、朝比奈はむくれながらも頷いた。
「ハイハイ、わかってますって・・・。」
「来るぞ、気を引き締めんか。」
仙波の言葉に、四聖剣全員が臨戦態勢を取る。
「ゼロには指一本、触れさせないよー?・・・俺んだからね!」
突っ込んでくるナイトメアをたたっ斬りながら、朝比奈が叫ぶ。
「・・・オープンで言うなオープンで。」
小声でつっこむ卜部もオープンチャンネルである。思わず蜃気楼を見た仙波は、口元を引き攣らせた。がっくん、と空中で一瞬妙な動きをしたからだ。
「・・・ルルーシュ殿・・・大丈夫ですかな?」
慌ててクローズ回線で通信をつなぎ、確認をすると、顔を真っ赤にしたルルーシュが画面に映る。
『・・・仙波さん・・・省吾さんを、何とかしてください///』
「そ、そう言われましてもな。・・・む、回線を切りますぞ、コーネリアが出てきたようです。」
困ったように応じた仙波が、政庁の方に視線を向け、眉間にしわを寄せる。
「朝比奈、遊んでいる場合ではないぞ、敵将が出てきた。」
オープンで告げられた仙波のその言葉に、遊んでないですってば~と呟きながらも、朝比奈は表情を引き締めた。
「さてさて、敵さんも本腰あげてきたかな?」
剣を構え、朝比奈は蜃気楼を庇うように移動する。
「・・・朝比奈、拡散レーザーが撃てなくなる。前に位置どるな。」
ルルーシュがゼロとして、そう告げると、朝比奈が少し怒ったように応える。
「それは最終手段でしょ?・・・まずは、俺達に任せてくれない?」
「しかし・・・。」
「いいの。とりあえず、白兜は紅蓮が抑えてるし、グロースターくらい、暁の敵じゃないってば。」
「・・・侮るなよ、使い手次第で、ナイトメアの性能など、いくらでも向上させることができるんだ。」
朝比奈はスッと暁の腕をあげ、短く告げる。
「侮りはしない。・・・でも、これは譲らない、俺は、君を守るって決めたから。」
その言葉に、思わずルルーシュは目頭が熱くなる。
「・・・省吾さん・・・。」
ぽつりと呟き、キッと前を見る。
「ならば、けして負けるな。」
「承知!」
そして、近づいてきたグロースターと対峙する。
「こっから先は、俺を倒してから行ってもらいたいねぇ?」
挑発するように言った朝比奈に、コーネリアはイライラとランスを振り上げた。
「そこを退け!!・・・私はゼロに用がある!!」
その余裕の無さに、朝比奈は首を捻る。
「・・・ゼロに?・・・なら、余計に退けないね。」
剣を構え直した朝比奈は、キッと相手を睨み据える。
「退けと言っている!!」
余裕の無い叫びをあげ、コーネリアのグロースターが間合いを詰めてくる。
「!・・・このぉ!」
振り下ろされたランスを剣で受け止め、弾き飛ばす。
「姫様!!」
コーネリアの危機に、声をあげたギルフォードの前に、卜部の乗る暁が立ち塞がる。
「・・・おっと、お前さんの相手はこの俺だぜ?」
「くっ!」
歯がみしたギルフォードは、手に持ったランスを構え、卜部と対峙する。互いに譲らぬその気迫に、周りの空気が緊張したものに変わる。
一方、朝比奈にランスを弾かれたコーネリアは、自分の迂闊さを呪っていた。
「くそ!焦りが勝ってしまったか・・・格なる上は・・・。」
コーネリアはオープンチャンネルを開き、最終手段に出た。
「ルルーシュ!!・・・ルルーシュなんだろう!!?」
その言葉に、黒の騎士団全員の動きが、ピタリと止まった。
「ルルーシュ!!・・・お前がゼロなのだろう!?」
叫ぶコーネリアに、ルルーシュは蜃気楼の中で目をこれでもかというくらいに大きく見開いていた。
「・・・バレた?」
呟くと、割り込む様に回線が繋がれる。
『・・・ルルーシュ・・・。』
そこには、厳しい表情をした、己の最初の友であり、最悪の敵、枢木スザクが映っていた。
「そ、うか。お前が姉上に。・・・いつ気付いた?」
驚きは一瞬だけ。すぐに冷静になって問うと、スザクは眉を潜めた。
『・・・いつ、と聞かれれば・・・もう随分前から、君達兄妹が僕の前から姿を消す前からそうなんじゃないかって思ってた。・・・でも、信じたくなかったよ、ルルーシュ。』
「スザク。やはり、お前は俺を売るのか。」
『ちがっ!?』
「何が違う。・・・正解だよスザク、軍人としては正しい行動だ。俺の大っ嫌いなブリタニア軍人としてはな!!」
ギッと睨み据え、ルルーシュは唸るように叫ぶ。
『っ!?』
「早々に学園を出ておいて良かった。そうでなければ、コーネリア姉上に直接売り渡されるところだったな。」
『そんなっ・・・ルルーシュっ!』
名を呼び続けるスザクを不快そうに見つめ、ルルーシュは回線を無理やり切って、オープンチャンネルを開いた。
「黒の騎士団全団員に告ぐ!・・・遠慮をする必要はない!全力でブリタニア軍をぶっ潰せ!!」
「「「「「承知!!」」」」」
ナイトメアに乗る団員、そして、密かに行動していた政庁制圧部隊の団員、全てから返事が返ってくる。それを聞いたコーネリアを始めとするブリタニア軍は顔を青褪めさせた。
「ルルーシュ!!何故だ!何故、ブリタニアに反逆など!!」
「姉上、それを貴女が訊きますか?」
すう、と目を細めたルルーシュの声音が、冷たいものに変わる。本気で怒っているのだとわかると、朝比奈はクツリと笑う。
「あ~あ、自覚無しの発言で、俺のルルーシュ君を怒らせないでくれる~?・・・ご機嫌ナナメのルルーシュ君も可愛いんだけど、機嫌直すの大変なんだからねぇ?」
「・・・っ、マリアンヌ様の・・・事件のせいなのか?」
沈痛な面持ちで問うコーネリア。だが、ルルーシュはグロースターを睥睨し、冷たい声で言い放った。
「ええ。最初はそうでした。でも・・・今は他にもありますよ。本気でブリタニアが邪魔なんですよ、俺の目指す、優しい世界に、今のブリタニアは要らない。」
「だからと言って、こんな方法!・・・優しかったお前が、なぜ!?」
「あのさぁ、いい加減にしてくんない?・・・ルルーシュ君にこんな決意をさせたのは、ブリタニアじゃない。・・・たった10歳と7歳の自分の子供達が人質として在留している国に攻め込む親なんて、どこを探したって、ブリタニア皇帝しかいないでしょ?」
オープンチャンネルでの朝比奈の言葉に、ブリタニア軍は絶句し、攻撃の手を止めた。それは、コーネリア達指揮官も同様だったので、誰も咎めはしない。
「あれ?そこ、驚くとこ?ブリタニアの人達は皆知ってたはずだよ?悲劇の皇族って。・・・言わせてもらうけど、悲劇を作ったのは日本人じゃない。ブリタニアが攻め込まなければ・・・ルルーシュ君達はこんな思いをせずに済んだんだ!」
朝比奈の叫びが、ブリタニア軍から戦意を奪っていく。次々に投降していく軍人達を見つめながら、コーネリアは呻くようにその名を呟いた。
「・・・ルルーシュ。」
そして、政庁も完全に制圧した黒の騎士団は、エリア11を合衆国日本とすると宣言し、正式にブリタニア本国へ宣戦布告する。
捕虜として捉えられたコーネリアとユーフェミアを始めとした指揮官とその騎士や側近達は貴賓室で拘束され、その映像が全世界へと流される。
「さぁ、ブリタニアの皇族、貴族、そして、軍人諸君・・・我等の覚悟を見せてやろう。」
映像に映ったゼロはいつもの仮面をつけてはいなかった。美しい顔、そして、全てを射抜く紫電の瞳、彼が冷たい笑みをうかべれば、それだけで許しを請い、足元に跪きたくなる。
「・・・ルルちゃん楽しそうねぇ。」
「そうっすね。・・・あーあ、俺もあの場に行きたかったなぁ。」
アッシュフォード学園の生徒会室で、その映像を見たミレイが苦笑する。それにリヴァルも同意し、ニーナとシャーリーを驚かせる。
「ま、ルルちゃんが戻ってきたら、いろいろと教えてもらいましょv」
「ですね。」
ニコニコと会話を交わすミレイとリヴァルに、さすがにニーナとシャーリーも2人が騎士団に関係していたと気付かずにはいられなかった。
ブリタニア本国では、皇族、貴族達が右往左往していた。皇位継承権争いどころの問題ではない。既得権益などもはやどうでも良い。今は、自分の命を守ることだけを考えなければならなかった。
「・・・陛下、どうなさるおつもりですか?」
謁見室。
何を考えているかわからない表情をうかべ、第二皇子シュナイゼルが問うと、皇帝シャルルは小さく唸った。
「・・・むう。」
「私は・・・降伏しますよ。ブリタニア軍はすでに戦意を喪失し、機能しません。動けるとしたら、ナイト・オブ・ラウンズくらいでしょうが、そのラウンズも圧倒的な戦力差を翻せるとは思えません。」
宰相であり、国の枢軸を担うシュナイゼル自身が、すでに抗うことを諦めた。それだけ、ブリタニアは精神的な部分からルルーシュに崩されてしまった。
自分の子供すら見捨てる皇帝に付いて行っても、未来は無いと皆が理解してしまったからだ。
ブリタニアの南から東にかけてはEUにそして北から西にかけては黒の騎士団に囲まれ、完全にブリタニアは陥落寸前だ。
「陛下!!・・・たった今、中華連邦が黒の騎士団へ協力するという声明を発表しました!!!」
駆け込んで来た文官の言葉に、シャルルは絶句し、シュナイゼルは肩を竦めた。
「・・・あの中華連邦が表だって声明を発表するということは、いよいよもって、我々の敗北色が濃いということのようですね。」
落ち着き払っているシュナイゼルを見つめ、シャルルは唸るように言った。
「お前の・・・好きなようにするが良い・・・ワシは・・・ルルーシュをここで待つ。」
「それでは、陛下。ごきげんよう。」
くるりと踵を返したシュナイゼルが振り返ることもなく姿を消すと、シャルルは玉座にもたれかかって、深い溜め息をついた。
「・・・あやつめ・・・やってくれおった・・・。」
皇宮に入り込んだルルーシュ達黒の騎士団を出迎えたのは、言わずもがな、宰相のシュナイゼルだった。
「やぁ、ルルーシュ。久しぶりだね。」
「・・・ええ。シュナイゼル兄上。」
ギロッと睨まれ、シュナイゼルは肩を竦めた。
「君の邪魔をするつもりはないよ。私は降伏する。・・・父上は、謁見の間で君を待つと言っていたけれど?」
「そうですか。・・・井上、吉田。シュナイゼルを拘束しろ。」
「「了解!」」
大人しく拘束されるシュナイゼルを見つめ、ルルーシュは溜め息をついた。
「相変わらず、諦めの早い人ですね、貴方は。」
「・・・流れには逆らわない主義なんだ。」
ニコリと笑んだ異母兄に、ルルーシュは肩を竦め、井上と吉田を除く幹部達を引き連れ、謁見の間へと向かった。
謁見の間、その玉座に座る姿は、いっそ哀れとすら思えるほどに憔悴していた。
「哀れですね。」
開口一発、ルルーシュの言葉は辛辣なものだった。
「ルルーシュ・・・。」
表情を歪め、シャルルは己の息子を見つめる。
「シャルル、お前も報いを受ける時が来たんだよ。・・・今まで好き勝手やってきた結果だ。お前の望みは“神”に拒絶された。」
C.C.が悲しげに呟く。
「だからこそ、ワシは“神”を殺そうと。なのに、大切なものは全て、掌からこぼれていく・・・。」
呆然と呟く皇帝は、今まで映像を通して見てきた、威厳が全く無かった。
「ワシは、嘘の無い世界が欲しかった・・・。」
「嘘の無い世界?・・・それを願うお前自身が嘘を付いているのに?」
C.C.の言葉に棘が含まれる。今のC.C.は皇帝の味方ではなかった。一番大切なのはルルーシュ。そのルルーシュを溺愛していながら傷つけた皇帝を、許せるわけがなかった。
「・・・ルルーシュのことを愛しているくせに、こんなにも傷つけて。お前自身が矛盾を抱えている以上、お前に“神”を殺すことなどできはしないよ、シャルル。」
C.C.とシャルルの会話を、ルルーシュや幹部達は黙って聞いていた。だが、フイに、朝比奈が一歩前に進む。
「あのさ、父親なら、まずはやるべきことがあったでしょ?・・・自分の願いなんか後回しにして、まずは、最愛の母親を亡くした自分の子供達を慰めるべきだったんじゃないの?」
朝比奈に、シャルルの視線が向く。紫の瞳は丸く見開かれていて、こういう反応はルルーシュとそっくりだ、と変な所で感心した。
「完璧な人間なんていない。でも、完璧じゃないからこそ、成長できるんだ。」
朝比奈をじっと見つめ、黙ったままのシャルルに、ルルーシュの射抜くような視線が向けられる。その表情は、憎悪に染まっていた。
「省吾さん、もう、良いです。・・・この男に何を言っても無駄ですから。」
感情を殺したような平坦な声に、朝比奈はルルーシュを振り向き、目を細めた。
「・・・ルルーシュ君、この際だから、言いたいこと、言っちゃえば良いのに。」
「もう、俺から何も言うことはありません。」
言い放ったルルーシュは、シャルルを睥睨する。
「・・・これは、ゼロとしてだ、シャルル・ジ・ブリタニア。今すぐ帝位を返還し、この私・・・“ゼロ”を次の皇帝に指名しろ。」
その言葉に、シャルルは目を丸くする。
「ルルーシュではなく・・・か?」
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは皇位継承権を放棄した。だから、黒の騎士団の総司令“ゼロ”として、帝位につく。」
その宣言に、シャルルは視線を揺らし、そして、玉座から立ち上がる。
「シャルル・ジ・ブリタニアが宣言する。・・・今、帝位を返還し、次の皇帝として、黒の騎士団総司令“ゼロ”を指名する。これは勅命である。何人たりとも、この命に逆らうことは許さない。」
言葉が終るのと同時に、ルルーシュはシャルルの方へ向かい歩き出す。
「言質は取らせてもらった。貴様は残りの生涯を幽閉されながら、みじめに過ごすがいい。」
シャルルの隣に立ち、冷たい声音で言うと、ルルーシュは騎士団の幹部達を振り返る。
「卜部、千葉・・・シャルル・ジ・ブリタニアを拘束しろ。」
「「承知。」」
四聖剣の2人に頼んだのは、元々軍人であるが故に、シャルルを拘束することに怯えないだろうという配慮だった。
そして、世界中に“ゼロ”が皇帝となったことと同時に、約1年をかけて、全エリアの開放と貴族制の廃止をすること、そして、皇族全員が皇籍奉還をしたことが報じられた。
そして、緊急放送が放映される。“ゼロ”は仮面を被らず、美しい顔を曝したままだった。
「・・・全世界の諸君、この度、第99代神聖ブリタニア帝国皇帝となった“ゼロ”だ。全ての事務処理と引き継ぎが終わるまで約1年、この帝位につかせてもらうことになった。いろいろ思うこともあるだろうが、受け入れていただきたい。・・・そして・・・。」
“ゼロ”は己の横に立つ者を振り返り、うっすらと笑みをうかべた。
「彼女は、我が騎士、紅月カレン。・・・彼女には、ナイト・オブ・ラウンズを超える、ナイト・オブ・ゼロの称号を与える。」
紹介を受けたカレンはニコリと笑って、ぺこりとお辞儀をした。
それを離れた所で見ていた騎士団幹部達はちらちらと朝比奈を見る。
「良かったのか、朝比奈。お前が騎士にならなくても。」
卜部が問うと、朝比奈はきょとん、とした。
「へ?ああ、別に。だって、ゼロの騎士はカレンさんでしょ?・・・俺は、ルルーシュ君の恋人だから~♪」
二ヘラ、と相好を崩した朝比奈を見て、幹部達は心配して損した、と心の中で呟いたのだった。
おしまい
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・神根島?行政特区?そんな死亡フラグはたってません!
・いきなりブラックリベリオン!
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以上、同意できる方のみ↓へ・・・
今日、黒の騎士団とブリタニア軍の全面対決が始まる。黒の騎士団からの宣戦布告。日本の奪還を目的とした作戦。だが、その作戦は第一段階でしかない。
日本を奪還の後、すぐさまブリタニアへの進軍を始める。EUや中華連邦と何度も打ち合わせをし、何とか協力を取り付けたのだ。
負けが続くEUは諸手を挙げて協力を申し出てくれた。中華連邦も随分と渋ったが、表立った支援では無く、陰からの支援に徹底し、万が一、黒の騎士団が敗北した場合、ブリタニア側についても良いことを条件に、協力を取り付けた。
「・・・怖い?」
「まさか。・・・クロヴィスを殺した時から、覚悟は決まっていますから。」
ゼロの部屋で抱きしめあいながら、朝比奈の問いにルルーシュは答えた。
「そ。・・・なら良いんだけどね。」
朝比奈はそれ以上問いかけることなく、ルルーシュの身体を抱く力を強める。
「・・・今日は、何が何でも、君の傍にいるからね?」
「・・・省吾、さん。」
目を細め、ルルーシュは頬を朝比奈の肩にすりつける。自分の傍にいることが一番危ないのは、間違いない。だが、離れるように指示しても、きっと朝比奈は了承しないだろう。
それならば・・・。
「被害が最小限に抑えられるように作戦を実行します。・・・絶対に、俺の指示に従って下さい。」
「君から、離れろっていう指示じゃなければね。」
一瞬頭によぎった考えを指摘されて、ルルーシュは苦笑する。
「そんなこと、言いませんよ。・・・だって、省吾さんは拒否するに決まってるんですから。」
「あは。よくおわかりで。・・・じゃあ、行こうか?」
朝比奈の腕が外されると、ふるりとルルーシュは身体を震わせた。
「(怯え、ではない。・・・これは、武者震い?)」
ルルーシュは目を伏せ、そして一呼吸を置いて、ゆっくりと目を開ける。
「・・・必ず、生きて戻ってきましょうね。」
「うん。」
真っ直ぐに見つめてくるルルーシュを見て、朝比奈はニコリと笑った。
司令室に行くと、藤堂を始めとした黒の騎士団の幹部達が出迎えてくれる。
「・・・とうとう、始まるな。」
藤堂が口を開く。
「はい。・・・みんな、どうか、無事で。」
請うように告げる。それに笑顔が返ってくる。それだけでルルーシュはホッと息をついた。そして、がらりと表情を変える。“ゼロ”のスイッチが入ったのだと、その場の誰もが姿勢を正す。
「・・・今回は、日本の奪還だけではない。その先・・・ブリタニア本国も落とす。一気に行かなければ、相手に反撃のチャンスを与えてしまう。・・・だから、日本の奪還ごときで手間取るワケにはいかない。」
ルルーシュのゼロとしての言葉に、幹部達の表情が引き締まる。
「敵は容赦なく薙ぎ払え。・・・我等黒の騎士団の覚悟を見せてやれ。」
「「「「「承知!!!」」」」」
幹部達の声が揃う。それに満足気に笑んだルルーシュは、ラクシャータの方を向く。
「・・・新型のナイトメアのテストは?」
「バッチリですよぉ、殿下。・・・ブリタニアの白兜なんか、目じゃないわぁ。」
「そうか。・・・では、予定通り、作戦“ブラックリベリオン”を開始する。・・・扇、EUとの連絡を。」
「ああ、わかった。」
「中華連邦には・・・C.C.、頼む。」
「任せておけ。」
指示を受けた扇とC.C.が動き始めると、それぞれも、ナイトメア部隊と政庁制圧部隊とで編成を始めた。
「・・・藤堂、全体の指揮は私が執る。だが、細かなところはお前が指揮を執れ。」
「承知した。・・・その際は君にも報告をする。」
「頼む。・・・では、私も出撃する。」
まるで別人のような表情をしたルルーシュに、その覚悟の程がうかがえる。いつもの作戦の時とは違う、覇気が見えるのだ。
「・・・失敗は許されない。四聖剣は全力でゼロのサポートを。」
藤堂は四聖剣の表情を見回し、迷いなくそう告げる。
「「「「承知!」」」」
それに頷いた四聖剣も出撃準備のために、格納庫へ向かった。
トウキョウ租界、ブリタニア軍と対峙した黒の騎士団は、政庁の周囲を囲むブリタニア軍の前に手間取っているように見えた。
司令室にいたコーネリアは、眉を潜める。
「・・・嫌にのんびりとしているな。」
その呟きに己の騎士が首を傾げたのを目の端で捉える。
「・・・そうでしょうか?我がブリタニア軍に対して、攻めあぐねているのではないのですか?」
「ギルフォード、相手はあの黒の騎士団だぞ?こんな処で躊躇するようであれば、とうの昔に私が壊滅させているさ。」
肩を竦めた己の主に、ギルフォードは確かに、と頷く。
「・・・ふ。向こうが動かぬのなら、こちらから攻めるまで。・・・枢木!」
『・・・はい。』
己の妹の騎士を呼ぶと、いつになく真剣な表情をうかべていた。
「緊張しているのか?」
緊張を解してやろうとからかうが、スザクはビクリと肩を跳ねさせた。
『いえ。自分は・・・緊張などしていません。』
首を振ったスザクの表情が余計に張りつめたものに変わったことに気付く。コーネリアは眉を潜めた。
「どうした?・・・調子が悪いのなら、前線に出るのは止めるか?」
『・・・いえ・・・あの、総督・・・ゼロのことなんですが・・・。』
「なんだ?」
煮え切らないスザクの態度に、イライラとしながら返す。
『実は・・・。』
意を決したスザクが告げた事実に、コーネリアは目を丸くし、そして、呻いた。
「そんな・・・馬鹿な・・・。」
ブリタニア軍が進軍してくる。それを新型ナイトメアフレーム“蜃気楼”内で見たルルーシュは、口元を歪める。
「姉上かかりましたね?・・・詰めが甘いですよ。」
手元のスイッチを手に取る。
「・・・さぁ、ショーの始まりだ。」
ルルーシュがそのスイッチを押した瞬間、政庁付近のステージが崩落し始める。
こちらも新型のナイトメアフレーム“暁”に乗り、その様子を見ていた四聖剣の面々は、思わず、はぁ~と感嘆のため息をついた。
「・・・なんというか、その・・・すげぇなぁ、うちの大将はよ。」
ステージの崩落に巻き込まれていくブリタニア軍の地上部隊を憐れむように見やりながら、卜部が呟くと、朝比奈が意味もなく胸を張った。
「ふふん、そりゃそうでしょ!彼はこういったことにかけては、天才ですから!!」
「お前が威張るな。・・・ったく、地上部隊がいなくなったからって、フロートユニットを装着してるナイトメアも多くあるんだ、油断するなよ。」
千葉につっこまれると、朝比奈はむくれながらも頷いた。
「ハイハイ、わかってますって・・・。」
「来るぞ、気を引き締めんか。」
仙波の言葉に、四聖剣全員が臨戦態勢を取る。
「ゼロには指一本、触れさせないよー?・・・俺んだからね!」
突っ込んでくるナイトメアをたたっ斬りながら、朝比奈が叫ぶ。
「・・・オープンで言うなオープンで。」
小声でつっこむ卜部もオープンチャンネルである。思わず蜃気楼を見た仙波は、口元を引き攣らせた。がっくん、と空中で一瞬妙な動きをしたからだ。
「・・・ルルーシュ殿・・・大丈夫ですかな?」
慌ててクローズ回線で通信をつなぎ、確認をすると、顔を真っ赤にしたルルーシュが画面に映る。
『・・・仙波さん・・・省吾さんを、何とかしてください///』
「そ、そう言われましてもな。・・・む、回線を切りますぞ、コーネリアが出てきたようです。」
困ったように応じた仙波が、政庁の方に視線を向け、眉間にしわを寄せる。
「朝比奈、遊んでいる場合ではないぞ、敵将が出てきた。」
オープンで告げられた仙波のその言葉に、遊んでないですってば~と呟きながらも、朝比奈は表情を引き締めた。
「さてさて、敵さんも本腰あげてきたかな?」
剣を構え、朝比奈は蜃気楼を庇うように移動する。
「・・・朝比奈、拡散レーザーが撃てなくなる。前に位置どるな。」
ルルーシュがゼロとして、そう告げると、朝比奈が少し怒ったように応える。
「それは最終手段でしょ?・・・まずは、俺達に任せてくれない?」
「しかし・・・。」
「いいの。とりあえず、白兜は紅蓮が抑えてるし、グロースターくらい、暁の敵じゃないってば。」
「・・・侮るなよ、使い手次第で、ナイトメアの性能など、いくらでも向上させることができるんだ。」
朝比奈はスッと暁の腕をあげ、短く告げる。
「侮りはしない。・・・でも、これは譲らない、俺は、君を守るって決めたから。」
その言葉に、思わずルルーシュは目頭が熱くなる。
「・・・省吾さん・・・。」
ぽつりと呟き、キッと前を見る。
「ならば、けして負けるな。」
「承知!」
そして、近づいてきたグロースターと対峙する。
「こっから先は、俺を倒してから行ってもらいたいねぇ?」
挑発するように言った朝比奈に、コーネリアはイライラとランスを振り上げた。
「そこを退け!!・・・私はゼロに用がある!!」
その余裕の無さに、朝比奈は首を捻る。
「・・・ゼロに?・・・なら、余計に退けないね。」
剣を構え直した朝比奈は、キッと相手を睨み据える。
「退けと言っている!!」
余裕の無い叫びをあげ、コーネリアのグロースターが間合いを詰めてくる。
「!・・・このぉ!」
振り下ろされたランスを剣で受け止め、弾き飛ばす。
「姫様!!」
コーネリアの危機に、声をあげたギルフォードの前に、卜部の乗る暁が立ち塞がる。
「・・・おっと、お前さんの相手はこの俺だぜ?」
「くっ!」
歯がみしたギルフォードは、手に持ったランスを構え、卜部と対峙する。互いに譲らぬその気迫に、周りの空気が緊張したものに変わる。
一方、朝比奈にランスを弾かれたコーネリアは、自分の迂闊さを呪っていた。
「くそ!焦りが勝ってしまったか・・・格なる上は・・・。」
コーネリアはオープンチャンネルを開き、最終手段に出た。
「ルルーシュ!!・・・ルルーシュなんだろう!!?」
その言葉に、黒の騎士団全員の動きが、ピタリと止まった。
「ルルーシュ!!・・・お前がゼロなのだろう!?」
叫ぶコーネリアに、ルルーシュは蜃気楼の中で目をこれでもかというくらいに大きく見開いていた。
「・・・バレた?」
呟くと、割り込む様に回線が繋がれる。
『・・・ルルーシュ・・・。』
そこには、厳しい表情をした、己の最初の友であり、最悪の敵、枢木スザクが映っていた。
「そ、うか。お前が姉上に。・・・いつ気付いた?」
驚きは一瞬だけ。すぐに冷静になって問うと、スザクは眉を潜めた。
『・・・いつ、と聞かれれば・・・もう随分前から、君達兄妹が僕の前から姿を消す前からそうなんじゃないかって思ってた。・・・でも、信じたくなかったよ、ルルーシュ。』
「スザク。やはり、お前は俺を売るのか。」
『ちがっ!?』
「何が違う。・・・正解だよスザク、軍人としては正しい行動だ。俺の大っ嫌いなブリタニア軍人としてはな!!」
ギッと睨み据え、ルルーシュは唸るように叫ぶ。
『っ!?』
「早々に学園を出ておいて良かった。そうでなければ、コーネリア姉上に直接売り渡されるところだったな。」
『そんなっ・・・ルルーシュっ!』
名を呼び続けるスザクを不快そうに見つめ、ルルーシュは回線を無理やり切って、オープンチャンネルを開いた。
「黒の騎士団全団員に告ぐ!・・・遠慮をする必要はない!全力でブリタニア軍をぶっ潰せ!!」
「「「「「承知!!」」」」」
ナイトメアに乗る団員、そして、密かに行動していた政庁制圧部隊の団員、全てから返事が返ってくる。それを聞いたコーネリアを始めとするブリタニア軍は顔を青褪めさせた。
「ルルーシュ!!何故だ!何故、ブリタニアに反逆など!!」
「姉上、それを貴女が訊きますか?」
すう、と目を細めたルルーシュの声音が、冷たいものに変わる。本気で怒っているのだとわかると、朝比奈はクツリと笑う。
「あ~あ、自覚無しの発言で、俺のルルーシュ君を怒らせないでくれる~?・・・ご機嫌ナナメのルルーシュ君も可愛いんだけど、機嫌直すの大変なんだからねぇ?」
「・・・っ、マリアンヌ様の・・・事件のせいなのか?」
沈痛な面持ちで問うコーネリア。だが、ルルーシュはグロースターを睥睨し、冷たい声で言い放った。
「ええ。最初はそうでした。でも・・・今は他にもありますよ。本気でブリタニアが邪魔なんですよ、俺の目指す、優しい世界に、今のブリタニアは要らない。」
「だからと言って、こんな方法!・・・優しかったお前が、なぜ!?」
「あのさぁ、いい加減にしてくんない?・・・ルルーシュ君にこんな決意をさせたのは、ブリタニアじゃない。・・・たった10歳と7歳の自分の子供達が人質として在留している国に攻め込む親なんて、どこを探したって、ブリタニア皇帝しかいないでしょ?」
オープンチャンネルでの朝比奈の言葉に、ブリタニア軍は絶句し、攻撃の手を止めた。それは、コーネリア達指揮官も同様だったので、誰も咎めはしない。
「あれ?そこ、驚くとこ?ブリタニアの人達は皆知ってたはずだよ?悲劇の皇族って。・・・言わせてもらうけど、悲劇を作ったのは日本人じゃない。ブリタニアが攻め込まなければ・・・ルルーシュ君達はこんな思いをせずに済んだんだ!」
朝比奈の叫びが、ブリタニア軍から戦意を奪っていく。次々に投降していく軍人達を見つめながら、コーネリアは呻くようにその名を呟いた。
「・・・ルルーシュ。」
そして、政庁も完全に制圧した黒の騎士団は、エリア11を合衆国日本とすると宣言し、正式にブリタニア本国へ宣戦布告する。
捕虜として捉えられたコーネリアとユーフェミアを始めとした指揮官とその騎士や側近達は貴賓室で拘束され、その映像が全世界へと流される。
「さぁ、ブリタニアの皇族、貴族、そして、軍人諸君・・・我等の覚悟を見せてやろう。」
映像に映ったゼロはいつもの仮面をつけてはいなかった。美しい顔、そして、全てを射抜く紫電の瞳、彼が冷たい笑みをうかべれば、それだけで許しを請い、足元に跪きたくなる。
「・・・ルルちゃん楽しそうねぇ。」
「そうっすね。・・・あーあ、俺もあの場に行きたかったなぁ。」
アッシュフォード学園の生徒会室で、その映像を見たミレイが苦笑する。それにリヴァルも同意し、ニーナとシャーリーを驚かせる。
「ま、ルルちゃんが戻ってきたら、いろいろと教えてもらいましょv」
「ですね。」
ニコニコと会話を交わすミレイとリヴァルに、さすがにニーナとシャーリーも2人が騎士団に関係していたと気付かずにはいられなかった。
ブリタニア本国では、皇族、貴族達が右往左往していた。皇位継承権争いどころの問題ではない。既得権益などもはやどうでも良い。今は、自分の命を守ることだけを考えなければならなかった。
「・・・陛下、どうなさるおつもりですか?」
謁見室。
何を考えているかわからない表情をうかべ、第二皇子シュナイゼルが問うと、皇帝シャルルは小さく唸った。
「・・・むう。」
「私は・・・降伏しますよ。ブリタニア軍はすでに戦意を喪失し、機能しません。動けるとしたら、ナイト・オブ・ラウンズくらいでしょうが、そのラウンズも圧倒的な戦力差を翻せるとは思えません。」
宰相であり、国の枢軸を担うシュナイゼル自身が、すでに抗うことを諦めた。それだけ、ブリタニアは精神的な部分からルルーシュに崩されてしまった。
自分の子供すら見捨てる皇帝に付いて行っても、未来は無いと皆が理解してしまったからだ。
ブリタニアの南から東にかけてはEUにそして北から西にかけては黒の騎士団に囲まれ、完全にブリタニアは陥落寸前だ。
「陛下!!・・・たった今、中華連邦が黒の騎士団へ協力するという声明を発表しました!!!」
駆け込んで来た文官の言葉に、シャルルは絶句し、シュナイゼルは肩を竦めた。
「・・・あの中華連邦が表だって声明を発表するということは、いよいよもって、我々の敗北色が濃いということのようですね。」
落ち着き払っているシュナイゼルを見つめ、シャルルは唸るように言った。
「お前の・・・好きなようにするが良い・・・ワシは・・・ルルーシュをここで待つ。」
「それでは、陛下。ごきげんよう。」
くるりと踵を返したシュナイゼルが振り返ることもなく姿を消すと、シャルルは玉座にもたれかかって、深い溜め息をついた。
「・・・あやつめ・・・やってくれおった・・・。」
皇宮に入り込んだルルーシュ達黒の騎士団を出迎えたのは、言わずもがな、宰相のシュナイゼルだった。
「やぁ、ルルーシュ。久しぶりだね。」
「・・・ええ。シュナイゼル兄上。」
ギロッと睨まれ、シュナイゼルは肩を竦めた。
「君の邪魔をするつもりはないよ。私は降伏する。・・・父上は、謁見の間で君を待つと言っていたけれど?」
「そうですか。・・・井上、吉田。シュナイゼルを拘束しろ。」
「「了解!」」
大人しく拘束されるシュナイゼルを見つめ、ルルーシュは溜め息をついた。
「相変わらず、諦めの早い人ですね、貴方は。」
「・・・流れには逆らわない主義なんだ。」
ニコリと笑んだ異母兄に、ルルーシュは肩を竦め、井上と吉田を除く幹部達を引き連れ、謁見の間へと向かった。
謁見の間、その玉座に座る姿は、いっそ哀れとすら思えるほどに憔悴していた。
「哀れですね。」
開口一発、ルルーシュの言葉は辛辣なものだった。
「ルルーシュ・・・。」
表情を歪め、シャルルは己の息子を見つめる。
「シャルル、お前も報いを受ける時が来たんだよ。・・・今まで好き勝手やってきた結果だ。お前の望みは“神”に拒絶された。」
C.C.が悲しげに呟く。
「だからこそ、ワシは“神”を殺そうと。なのに、大切なものは全て、掌からこぼれていく・・・。」
呆然と呟く皇帝は、今まで映像を通して見てきた、威厳が全く無かった。
「ワシは、嘘の無い世界が欲しかった・・・。」
「嘘の無い世界?・・・それを願うお前自身が嘘を付いているのに?」
C.C.の言葉に棘が含まれる。今のC.C.は皇帝の味方ではなかった。一番大切なのはルルーシュ。そのルルーシュを溺愛していながら傷つけた皇帝を、許せるわけがなかった。
「・・・ルルーシュのことを愛しているくせに、こんなにも傷つけて。お前自身が矛盾を抱えている以上、お前に“神”を殺すことなどできはしないよ、シャルル。」
C.C.とシャルルの会話を、ルルーシュや幹部達は黙って聞いていた。だが、フイに、朝比奈が一歩前に進む。
「あのさ、父親なら、まずはやるべきことがあったでしょ?・・・自分の願いなんか後回しにして、まずは、最愛の母親を亡くした自分の子供達を慰めるべきだったんじゃないの?」
朝比奈に、シャルルの視線が向く。紫の瞳は丸く見開かれていて、こういう反応はルルーシュとそっくりだ、と変な所で感心した。
「完璧な人間なんていない。でも、完璧じゃないからこそ、成長できるんだ。」
朝比奈をじっと見つめ、黙ったままのシャルルに、ルルーシュの射抜くような視線が向けられる。その表情は、憎悪に染まっていた。
「省吾さん、もう、良いです。・・・この男に何を言っても無駄ですから。」
感情を殺したような平坦な声に、朝比奈はルルーシュを振り向き、目を細めた。
「・・・ルルーシュ君、この際だから、言いたいこと、言っちゃえば良いのに。」
「もう、俺から何も言うことはありません。」
言い放ったルルーシュは、シャルルを睥睨する。
「・・・これは、ゼロとしてだ、シャルル・ジ・ブリタニア。今すぐ帝位を返還し、この私・・・“ゼロ”を次の皇帝に指名しろ。」
その言葉に、シャルルは目を丸くする。
「ルルーシュではなく・・・か?」
「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは皇位継承権を放棄した。だから、黒の騎士団の総司令“ゼロ”として、帝位につく。」
その宣言に、シャルルは視線を揺らし、そして、玉座から立ち上がる。
「シャルル・ジ・ブリタニアが宣言する。・・・今、帝位を返還し、次の皇帝として、黒の騎士団総司令“ゼロ”を指名する。これは勅命である。何人たりとも、この命に逆らうことは許さない。」
言葉が終るのと同時に、ルルーシュはシャルルの方へ向かい歩き出す。
「言質は取らせてもらった。貴様は残りの生涯を幽閉されながら、みじめに過ごすがいい。」
シャルルの隣に立ち、冷たい声音で言うと、ルルーシュは騎士団の幹部達を振り返る。
「卜部、千葉・・・シャルル・ジ・ブリタニアを拘束しろ。」
「「承知。」」
四聖剣の2人に頼んだのは、元々軍人であるが故に、シャルルを拘束することに怯えないだろうという配慮だった。
そして、世界中に“ゼロ”が皇帝となったことと同時に、約1年をかけて、全エリアの開放と貴族制の廃止をすること、そして、皇族全員が皇籍奉還をしたことが報じられた。
そして、緊急放送が放映される。“ゼロ”は仮面を被らず、美しい顔を曝したままだった。
「・・・全世界の諸君、この度、第99代神聖ブリタニア帝国皇帝となった“ゼロ”だ。全ての事務処理と引き継ぎが終わるまで約1年、この帝位につかせてもらうことになった。いろいろ思うこともあるだろうが、受け入れていただきたい。・・・そして・・・。」
“ゼロ”は己の横に立つ者を振り返り、うっすらと笑みをうかべた。
「彼女は、我が騎士、紅月カレン。・・・彼女には、ナイト・オブ・ラウンズを超える、ナイト・オブ・ゼロの称号を与える。」
紹介を受けたカレンはニコリと笑って、ぺこりとお辞儀をした。
それを離れた所で見ていた騎士団幹部達はちらちらと朝比奈を見る。
「良かったのか、朝比奈。お前が騎士にならなくても。」
卜部が問うと、朝比奈はきょとん、とした。
「へ?ああ、別に。だって、ゼロの騎士はカレンさんでしょ?・・・俺は、ルルーシュ君の恋人だから~♪」
二ヘラ、と相好を崩した朝比奈を見て、幹部達は心配して損した、と心の中で呟いたのだった。
おしまい
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