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Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)

このサイトは、コードギアス・NARUTO・銀魂の二次創作サイトです。原作者様とは一切関係ありません。各ページの注意事項をよく読んでから閲覧してください。

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注意
・藤堂・四聖剣には皇族・ゼロバレ済み
・ルル総受け→藤堂・カレン贔屓
・ルルがか弱い;
・スザクにちょい厳
・捏造満載

以上、同意できる方のみ↓へ・・・









 藤堂と四聖剣に素性がバレた日から1週間後。ルルーシュは再び頭を抱える事態に陥っていた。


***


「なんでっ・・・こうもっ・・・。」

 息が切れているのは、走っているからで。なぜ、走っているかというと、多数の女生徒に追われているからだ。なぜ、追われているかというと・・・。

『さぁっ!生徒諸君!!超豪華商品をゲットする為!生徒会役員を捕まえろ~!!』

「~~~っ!煽ってどうする~~~!!!」

 とまあ、例によって、例のごとく。最早、ミレイの趣味の域まで達したであろう、イベントのせいだった。

 生徒会役員、と一言で括っても、人気のある者に生徒が群がるのは当然の理で。

 今、現在逃げ回っているのは、実行委員となったミレイとニーナを除く生徒会役員全員。つまり、ルルーシュをはじめ、シャーリー、リヴァル、カレン、スザクの5人が対象となるわけだ。

 圧倒的に男子生徒からの人気があるカレンは、病弱設定のために、逃げ切れないと判断したのか、どこかへと潜伏中らしい。それなりに人気のあるシャーリーも、グラウンド方面で男子生徒から追われまくり、リヴァルは恐らく、超豪華商品目当ての友人達に追われている頃だろう。

 珍しくイベントに参加できたスザクはというと、もう、誰も追いかけない。だって、追いつけないから。あの人間離れした動きに、皆が追うのを諦めたのだ。

「くそっ・・・こんなのは、俺のジャンルじゃないのにっ!」

 少しは、イベントに疑問を持って欲しい。なぜ、この学園の生徒は、こうも、イベントだというと、素直にノリノリで楽しむのだろう?先生達だってそうだ。確かに、ミレイはこの学園の理事長の孫ではあるが、たしなめるくらいの事はしてもいいはずだ。

「副会長~み~っけv」

「・・・っ!!!」

 思考に耽っていたため、走るのが疎かになっていたのだろう。脇から飛び出してきた女生徒に、あっさりとルルーシュは確保されたのだった。


***


「んふふふ・・・ルルちゃんらしいわねぇ。考え事して捕まっちゃうなんて。」

 生徒会室に連行されたルルーシュに、ミレイは開口一発、そう言った。

「・・・会長・・・理不尽です。明らかに、俺には不利だとわかっててやってるでしょう!?」

 かちん、ときたルルーシュが反論すると、ミレイはニヤリ、と形容できる笑みを浮かべる。

「あらん、わかってるじゃなーい。・・・もちのろんよ!」

 無情にも、断言され、ルルーシュは頭を抱える。

「・・・もう・・・勘弁してください。」

 泣きそうだ。と思いつつ、超豪華商品を受け取る女生徒を見つめる。そう、いつもなら害は無しと判断し、さっさと捕まるはずのルルーシュが逃げ回っていたのには意味がある。

「は~い。超豪華商品のアッシュフォード謹製の懐中時計と副賞として男女逆転祭りパート2のときのルルちゃん女装ブロマイドよ~♪」

 これだ。この副賞が問題なのだ。捕まえた相手のブロマイドが貰えるとなり、余計に追う側が追われる側を選んだ為に、人気のある者が必然と多数の生徒に追いかけられるハメになったのだ。

「・・・もう嫌だ。」

 そう呟いたルルーシュに、今日ばかりは激しく同意したカレンは、同情的な視線を向けた。

「・・・だ、大丈夫、ルルーシュ?」

 スザクの労いの言葉に、力なく頷き、ルルーシュは溜息交じりの声を出す。

「もう、良いでしょう?会長。・・・俺は帰りますよ。」

「おっけー。お疲れ様~v」

 ひらひらとミレイが手を振れば、ルルーシュはぎこちない笑みを浮かべて、生徒会室を後にした。


***


 そして、その夕方。

 ルルーシュは黒の騎士団のアジトに来ていた。

「今日は随分とお疲れだねー?ゼロ。」

 素性がバレてから、アジトの側に交代で出迎えてくれるようになった四聖剣。今日は朝比奈の番だったらしく、笑顔で迎える彼に、ニコリと笑みを向けた瞬間、ルルーシュに向かい、彼はそう言った。

「・・・そんなに、わかり易かったか?」

 ルルーシュはげんなりとして、朝比奈を見つめる。

「ん~・・・いつもの覇気が無いっていうか。ホント、大丈夫?表で何かあったの?」

「・・・それが・・・。」

 すっかり、ルルーシュは藤堂と四聖剣に気を許してしまっているので、ぽろり、と今日のでき事を話してしまった。迂闊と言えば迂闊。話した相手が悪かった。朝比奈は、四聖剣の中で、最も、うっかりさんなのだから。恐らく、C.Cあたりがいたら、鼻で笑われただろう、迂闊さだった。

 朝比奈と別れたルルーシュは、すばやくゼロの衣装に着替え、早速、幹部達の待つラウンジに向かう。

「・・・あ、ゼロ。」

 扇が真っ先に扉から入ってくるルルーシュを認め、声をかける。

「・・・お疲れ様です。」

 続いてすく、と立ち上がり声をかけてくるのは、カレン。が、いつもの元気が無いのは、恐らく、ルルーシュと同じ理由だろうと思い当たり、仮面の下で苦笑を漏らす。

「あれぇ。紅月さん、元気ないねぇ。」

 首を傾げる朝比奈に、カレンは力なく笑んで、答える。

「実は、今日、学校で生徒会役員を餌にしたイベントがあって。・・・私は隠れてただけなんで、そんなでも無いんですけど。・・・でも、やっぱり気疲れしました。」

「へ~。ブリタニアの学校ってのは、そんなのやんのかよ。暇だなぁ?」

 玉城がニヤニヤと言えば、カレンはムッとしたように答える。

「違うわよ。ブリタニアの学校、じゃなくて、アッシュフォード学園の生徒会長が実行するのよ!毎度毎度・・・イベントに振り回されて・・・どれだけっ!」

 グッとこぶしを握るカレンの気持ちが良くわかるルルーシュは、思わず同意するようにうんうん、と頷いてしまった。それを目撃した藤堂とすでに事情を知っていた朝比奈を除く四聖剣は、ああ、ルルーシュも巻き込まれたのか、と理解した。が、もう一人、ゼロが頷いたのを目撃した者が、首を傾げた。

「・・・ゼロ、今、頷いた?」

 そりゃもう、バッチリ頷いてたよ!と答えるわけにもいかず、ゼロはピシリと固まる。外から見ただけでは固まった事はわからず、無言を貫いているようにも見える。

「えっ、井上さん?・・・ゼロが頷いたって・・・。」

 そう、頷いたのを目撃したのは、井上だった。その、井上に、カレンが反応し、ゼロを見つめる。

「・・・・・・ああ、疲れただろう。と思ってな。」

 長い沈黙の後、ルルーシュはようやく返事をする。それがかえって皆に怪しまれる結果となった事には、すぐに気付いた。が、言ってしまったものは取り消せないし、どうやって誤魔化そうかと思考するが、疲労が溜まっている為に、考える事も億劫になり始めている。

― マズイのではなかろうか。

 そう思ったのは、藤堂と四聖剣。疲れがピークのルルーシュがボロを出したことは一目瞭然。正体に直結するようなミスではないが、怪しまれる事は必死だ。

 あの場合、何のことだ?としらを切るのが一番だったはずなのに、ルルーシュは労いの言葉をかけてしまったのだ。それは優しさと、自分も同じだった事に対する同意が含まれていた。他の者はそうでもないが、カレンには非常にマズイ対応だったのではないだろうか?

「・・・私より、疲れた人がいるんです。」

 カレンの声がいつもより少し低い事に気づいたのは、古参の幹部達。いつものゼロに向ける絶対的な信頼の視線ではなく、探るような視線になったのに気付いたのは、藤堂とルルーシュ。

「・・・そうか。」

 相槌を打つしかないルルーシュに、カレンは尚も続ける。

「・・・その人、生徒達に大人気で。女にも男にもすっごいモテるんです。・・・今回、生徒会役員を捕まえた人には、懐中時計と捕まえた生徒会役員のブロマイドがもらえるっていうので、すっごい人数の・・・多分、2,30人くらいの生徒に追いかけられてて・・・。」

「・・・そりゃ、すごいな。」

 扇が合いの手を入れるので、カレンはしっかりと頷く。

「もう、半端じゃないのよ、その人の人気は。・・・それでですね、ゼロ、結局・・・頭は良いんですけど、体力が無いのがあだになって、捕まってしまったんです。・・・捕まえた女生徒は、懐中時計と、副賞として、前にやったイベントで撮った写真を貰ったんですよ。」

「・・・そ、そうか。」

 背中に滝汗を流しながら、ルルーシュは頷く。間違いなく、カレンは疑いの目を再びルルーシュに向けている。

「私、自分のブロマイドは回収してきたんですけど、一枚、彼と一緒に写ったのがあって・・・。」

 まさか、とルルーシュの顔がさぁ、と青褪める。

「絶対、皆も、わかると思って、持ってきたんです。」

― やっぱりか!

 焦るルルーシュをよそに、幹部達は妙な盛り上がりを見せた。

「そんなモテモテのヤツ!どんなツラしてんのか、見て見たいぜ!早く見せろよ、カレン。」

 玉城がせがめば、カレンも溜息混じりに写真を取り出す。

「「「「「おお~・・・。」」」」」

「び、美人だな・・・でも、カレン、さっき、確か・・・お前、彼、と言ったよな?」

 扇が写真に写るルルーシュ(女装、しかもドレス)を見つめ、カレンに確認を取る。

「そうですよ。・・・それは、男女逆転祭りパート2のときの写真です。ほら、私は男装してるでしょう?」

 答えながら、カレンはチラリとゼロに視線を向ける。

 己の恥を晒されているというのに、何もできないもどかしさ。思わず、ルルーシュは心の中で唸っていた。

「(せめて、C.Cがいればッ!)」

 そんなルルーシュの内情を知ってか、いつもなら遠巻きに見ているだけの藤堂と四聖剣がブロマイドを覗き込む。凄まじい、とさえ言える美しい姫君に化けているルルーシュ。それを見て、軽い口が更に軽くなったヤツがいた。

「・・・うっわー、女装してもすっごい美人だねぇ。イベントってこんな事もやってるんだぁ。大変だなぁ。」

 名前までは言わなかったが、明らかに、この人物を知っているような発言に、ルルーシュと藤堂と他の四聖剣が固まる。

「あ、朝比奈ッ!」

 千葉が慌てて朝比奈の口を塞ぐが、時、すでに遅し。

「・・・朝比奈さん。今、女装して“も”って言いましたよね?」

 カレンがすでに追求モードに入っていた。

「こいつは、日本語が昔から怪しくてな。」

 卜部が弁解するが、カレンの追及の手は緩まない。

「そうですか。・・・で、うちの学園の生徒会副会長と知り合いなんですか?」

 カレンはゼロを見ながら朝比奈に問う。うっかりな発言をした朝比奈はすでに顔を真っ青にしている。

 もともとカレンは“ルルーシュがゼロではないのか”と疑っていたというのを、藤堂達に話したのは先日。藤堂達がバレないように気をつけると約束したのも先日。舌の根も乾かぬうちにボロを出してしまった朝比奈の一言が、カレンの疑いに決定打を与えたのは間違いなかった。

 ついでに言えば、藤堂と四聖剣がある日を境に、ゼロへの態度を軟化させたのは、幹部なら誰でも知っていること。ゼロは日本人ではなく、年齢も不詳。唯一男だろうということだけはわかっている。

「・・・し、知らないよ~。」

「バカっ!朝比奈!!」

 懸命に否定した朝比奈の言葉は、肯定しているのと同じ事。千葉が鉄建をふるってこれ以上余計なことを口走らないようにしたが、それも、もう、意味は無い。

 カレンの痛いほどの視線が、ゼロに注がれている。周りの幹部達も、まさか、彼が?というような視線を向けてくる。

「・・・今日は、疲れたわよね。本当に。あなた、げっそりしてたから、大丈夫かなって思ってたの。生徒会室出るとき、フラフラしてたし。」

 もう、すでに、カレンの中ではルルーシュ=ゼロなのだろうと言う事が知れた。

 朝比奈の決定打はともかく、はじめに自身が思わず頷いてしまった事から始まった事だと理解していたので、ルルーシュは深く溜息をついた。

「・・・カレンみたいに、隠れていればよかったな。」

 観念して、カレンの言葉を肯定する。一瞬眉を顰め、カレンは目を細める。

「そうね。そうしていたら、こんな風にバレる事も無かったんじゃない?・・・派手に追いかけられてたもの。かなり疲れていたハズよ?思わずボロが出てもしょうがないわ。」

 ゼロに対しての言葉遣いではない。平素のルルーシュに対しての、いっそ、冷たいと言えるほどの口調。

「・・・カレン・・・。」

 扇が説明をして欲しいと、カレンをつつく。そんな扇にニコリと笑みを向け、カレンはもう一度ゼロを、ルルーシュをひたと見つめる。

「仮面、取って。・・・ルルーシュ・ランペルージ。」

 カレンの言葉に、幹部達の視線が一気にルルーシュへと向けられた。

 拒否はできなかった。こんな事なら、女装姿の写真が出る前にバレようが何しようが、阻止すれば良かったとさえ思う。

 ルルーシュは、仮面に手をかけ、カシュ、カシュ、という音と共に、ゆっくりと外す。そして、口元まで上げていた布を取り払い、ふるり、と首を振る。さらさらと黒髪が揺れ、見開かれた眼は、至高の紫。

「・・・どうして?・・・学生じゃ何もできないって言ってたのは、貴方でしょう?」

「・・・学生じゃ、と言ったろう?」

 疑問に疑問で返す。“ああ、いつもの掛け合いだ”と思ったのはカレンだけで、周りの面々は少し面食らっている。ゼロはこんな意地悪な物言いはしなかったのだから。

「・・・以前、私が貴方を疑った時は・・・。」

「ああ。・・・少し、細工をさせてもらった。あの時は、まだ、黒の騎士団はでき上がっていない状態だったし、カレンに正体がバレるのはマズかったから。」

 それもそうかと思い直し、自分が意外な程冷静なのを自覚しながら、カレンは説明ついでにルルーシュに問いかける。

「黒の騎士団ができ上がっても、私には内緒にしていたわよね?・・・バラす機会なら、何度かあったはずよ。・・・ナリタの事件の後、仮面を脱いでた時とか、騎士就任祝いの席でスザクを殺そうとして止めた時とか。」

 そんな事があったのか、と藤堂達や古参の幹部達が耳を済ませて聞いている中、ルルーシュはそうだな、とポツリと言う。

「・・・カレンにだけは話しても良かったのかもしれない。・・・でも、俺は・・・。」

「嗤い声。」

「え?」

「・・・スザクが白兜のデヴァイサーだってわかった時、私だけが聞いていた貴方の嗤い声。・・・悲しくて、痛くて・・・怖い。そんな、感情がごちゃ混ぜの嗤い声。・・・ようやく理由がわかった。」

 カレンの言葉に、幹部達は全員ハッとし、ルルーシュをじっと見つめる。

「友達なんでしょう・・・枢木スザクと。」

「・・・友達・・・だった。と言った方が良いな。あいつはもう、俺達の敵だろう?」

「なら、何で、止めたの?・・・あの時、スザクを殺せていたら。」

「・・・向こうも痛手だが、こちらも痛手だろ。・・・あの時、周りには人が大勢いて。大学部には、軍が間借りしてるんだぞ。すぐにカレンが捕まるって事ぐらいは想像できる。」

 紅蓮のパイロットは、カレンにしかできないしな。と苦笑を漏らしたルルーシュに、カレンはああ、と呟く。何故、自分がこんなに冷静にいられるのか。それは、あの嗤い声と・・・あの時からスザクを見るルルーシュの目が、悲哀に染まっていたからだと気付いたのだ。

「・・・藤堂さん達は、どうして知ってるんですか?」

 くるり、とカレンは藤堂達に向き直る。これ以上質問攻めにしたら、ルルーシュをただいたずらに傷つけて、追い詰めかねないと思ったからだ。

「・・・それは・・・。」

 千葉が口ごもると、藤堂がそれを制し、カレン達、古参の幹部の前に出る。そして、先日の、桐原のお節介な行動をすべて、包み隠さず話した。

「・・・そうだったんですか。」

 扇が頷く。桐原がそうした理由も、藤堂達が黙っていた理由も、何となくわかってしまったからだ。なぜなら、あまりにも、“ゼロ”を演じていた少年は儚げなのだ。守らなければならないと、そう思うほどに。

 事実、ぎゃんぎゃんといつもならくってかかるハズの玉城が静かだ。その上“ゼロ”に対して、心配そうな視線まで送っているのだから、天地がひっくり返るほどの変わりようだ。

「藤堂さんと昔からの知り合いって、スザクと友達になった頃からって事よね?」

 カレンがルルーシュを振り返る。ルルーシュはビクリ、と肩を震わせ、それから、コクリ、と頷く。

「・・・ああ。7年前に。・・・俺達が・・・ブリタニアから日本に来た時に・・・。」

「どうして、そんな情勢の時に・・・。」

 扇が問えば、ルルーシュは目にみえて怯え始めた。ぎゅっと握り締めた拳はカタカタとふるえ、カレン達を見る目は、追い詰められた者のそれ、だ。

 急な“ゼロ”の変化に驚いたのは古参の幹部達だ。いつも堂々としていて、どんなに責められても揺るがない“ゼロ”が、こんなにも動揺し、怯えている姿など見た事が無い。いや、もしかしたら、責められた時、仮面の下で怯えていたのかもしれない。その事に思い至って、罰の悪い表情を浮かべる。

「あのさ~ぁ。・・・あんまり、覚悟も無いのに踏み込まないでくれる?」

 朝比奈が不機嫌に言う。自分達の時は、桐原のおかげである程度予備知識があり、ルルーシュ自身も言っていたが、四聖剣は藤堂の為のもので、藤堂の覚悟を見れば、自分達の些細な不安など、すぐに消えうせる。だが・・・。

「私達は、ある程度の覚悟を持っていた。中佐が決めた事ならば何でも従おう、と。そして、“ゼロ”は中佐だけは拒絶しないとわかっていたから、私達の事も信じてくれた。・・・お前達は、全てを知って、拒絶しないと言いきれるか?」

 朝比奈の言葉を、千葉が補足する。

「味方は多い方が良い。だがよ、お前らは最後まで“ゼロ”を信じ切れるのか?」

 卜部の問いは、幹部達の心に突き刺さった。“ゼロ”を信じる。今まで、言葉では信じていると言っても、何を考えているのかが読めない“ゼロ”に不信感を抱いたのは一度や二度ではない。むしろ、作戦の度に、疑いを抱き、“ゼロ”を責めてきたのだ。

「私は、信じる。・・・だって、ルルーシュが祖国に反逆している理由の一つは、わかったから。」

 カレンがハッキリと言う。ルルーシュの溺愛する少女の顔を思い浮かべながら。

「その理由だけは、間違いないとわかっているから、他に何が付随していようと、私は信じる。・・・貴方がどれだけあの子を大事にしているか、よく、知ってるから。」

 学校でのルルーシュとナナリーの互いに思う会う姿。それが、カレンに確信を抱かせた。それは、自分にも思い当たる感情だからだ。

「(・・・お兄ちゃん。私、間違ってないよね。“ゼロ”を信じて大丈夫だよね。)」

 ルルーシュの怯える目がカレンを捕らえる。ゆらゆらと感情が揺らめくその目の中に、ほんの少し、安堵の色が浮かんだ。

― 間違ってなかった。

 カレンは自分の判断が正しかった事を悟る。

「私は貴方を信じる。だから・・・お願い、ルルーシュ。私を信じて。」

 奇しくも、カレンの言葉は、ルルーシュに一番響く言葉だった。信じる事を苦痛に思っていた頃のルルーシュならば、ハッキリと拒絶してみせただろう。だが、信じた事で得るものがあると気付いた今、カレンの言葉は琴線に触れた。

「・・・カレン・・・俺は、君を・・・。」

 ルルーシュが言葉を詰まらせる。何かに迷うように視線を彷徨わせ、藤堂へと視線を向けた。

「・・・ルルーシュ君。俺が全てを話す。・・・構わないな?」

 他の幹部達の顔色を見て、藤堂が口を開く。

「・・・お願い、します。・・・藤堂さん。」

 目を静かに伏せ、ルルーシュは藤堂に一任する。

「・・ちょっと下がってようね。」

 万が一を想定して、朝比奈が自分の後ろにルルーシュを隠す。その行動が、古参の幹部達にこれから話される真実の重大さを思い知らせる。

「・・・まず、詳しい事情を話す前に、これだけは言っておこう。彼は、誰よりもブリタニアを憎んでいる。なぜなら、大切な肉親を目の前で殺され、自分の生を否定され、さらには、人質同然で日本に送られ、そして、見限られ、日本にいるのがわかっていながら、開戦したのだから。」

 さわりを聞いただけでも充分にハードだ。と思いながらも、古参の幹部は頷く。

「・・・藤堂さん、彼は、随分と高い地位にいたんじゃないんですか?人質なんて、相当な人物でなければ、務まらない。・・・当時、彼は・・・カレンと同じなら10歳前後のハズです。」

 扇が問いかけると、藤堂は頷いて肯定する。

「・・・そうだ。彼は・・・神聖ブリタニア帝国第11皇子、元第17皇位継承者。・・・ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。」

 ざわり、と空気が揺れる。その瞬間、弾けるようにルルーシュの肩が跳ね上がる。

 ルルーシュが怯える理由を知った幹部達は、自分の口から出かかった疑問を押し込める。

「・・・ランぺルージという名は?」

 カレンが支障が無いと思われる質問をする。

「・・・・・・アッシュフォードが、用意してくれた。」

 怯えながらも、ルルーシュはカレンに答える。

「あの子があんな風になったのも、ブリタニアの?」

「・・・ああ。・・・あの日は、アリエスの離宮で母の名でパーティーが開かれていた。大勢の貴族が集まり、後ろ盾がアッシュフォードだけという俺達にとっては、貴族と深い繋がりを持つ為のチャンスだった。・・・その時・・・あの事件が起きた。」

「・・・“閃光のマリアンヌ”にしては呆気ない終わり方。皇女殿下を庇い、全身を銃で撃たれて、ほぼ即死。・・・皇女殿下も足を撃たれ下半身不随に。更には目の前で母が殺された精神的ショックの為に目を閉ざした。皇子殿下だけは離れた所にいたため、事なきを得た。」

 ルルーシュの言葉を受け、事件の顛末を語ったのは、藤堂でも四聖剣でもなく。全員が向けた視線の先にいたのは、この場で唯一、ルルーシュがブリタニアにいた頃を知る、ラクシャータだった。

「ヴィ・ブリタニア。・・・この名を聞くまでもなく、容姿だけでわかったけどねぇ。」

 クス、と笑ったラクシャータの視線は懐古の情が含まれていた。

「・・・そういえば、母は軍人や技術者、ナイトメアに関する者達には、絶大な人気を誇っていたな。」

 フッと肩の力を抜き、ルルーシュは朝比奈の後ろから出てくる。幹部たちの視線に、動揺はあっても否定は無いと感じたからだ。

「当たり前よぉ。あの方は、第3世代ナイトメアフレーム・ガニメデで“閃光”の異名を取り、その強さ、美しさを買われて、庶民出でありながら、皇妃に選ばれた、私達の“希望”だものぉ。」

 うっとりと言うラクシャータに、皆が目を丸くする。

「皇帝の寵愛を一身に受けていらしゃって、皇子と皇女を産み、これからという時の悲劇。・・・私達はルルーシュ殿下に希望を託した。なのに、殿下は・・・。」

「日本への留学生という名の人質にされてしまった。・・・軽率な行動を諌められての結果だからな。軽蔑されても文句は言えない。」

 ルルーシュが苦笑すると、ラクシャータは肩を怒らせる。

「軽蔑なんか、するもんですか!それが、皇女殿下を守るためだったという事ぐらいわかります!・・・どれだけ、皇帝を恨んだかしれない。マリアンヌ様を見殺しにした挙句、幼い2人を劣悪な情勢の日本へ送るなんて、死ねと言ってるのと同義だというのに。」

 珍しく声を上ずらせ、憤るラクシャータ。

 実際、ルルーシュ達は殺されかけたのだ。いや、あの場合、ナナリーかルルーシュ、どちらかだったかもしれない。見せしめに1人。そして、人質として1人。それを告げた藤堂に、幹部達はさらに仰天した。

「彼らの扱いは、それは酷いものだった。土蔵を部屋としてあてがわれ、総理やその周囲の大人達からは尋問紛いの事をされ、子供達からは心無い言葉と同時に、暴力を振るわれる日々。・・・スザク君と仲良くならなければ、日本の事も恨んでいたのではないのだろうか?」

 それは、あの時訊く事のできなかった質問だった。捨てられるのではと怯えた心が、藤堂にそれを口にさせなかった。

「・・・スザクと仲良くならなかったとしても、日本は恨んで無い。敵国の皇子に対する感情はわかる。土蔵だって、牢屋でないだけマシだ。行動も比較的自由にさせてもらっていたし、生活の最低水準は守られていた。・・・最初、牢屋に監禁されるくらいは覚悟していたから。」

 肩を竦めたルルーシュ。ようやく、落着きを取り戻した様子を確認し、藤堂はホッと胸を撫で下ろす。

「ルルーシュ・・・今度から、学園でも守るからね。」

 カレンが決意を込めた視線を向ける。

「・・・カレン?」

「もう、スザクに貴方の目の前で“ゼロ”を否定なんてさせない。・・・私は“ゼロ”とルルーシュの騎士になる。」

「・・・ありがとう・・・カレン。」

 二コリと笑んだルルーシュに、全員が見惚れる。気を許した者への笑み。それは、いつもの作った笑顔よりもはるかに柔らかで、魅力的だった。

 普段、ナナリーにしか向けられない笑みを自分へと向けられたカレンは、完全に舞い上がり、ルルーシュに抱きつく。

「ルルーシュっ!」

「ほわぁ!!?」

― あ、今の悲鳴、かわいい。

 カレンの脳内にはルルーシュ(ゼロ)=かわいい(まもらなくちゃ!!)の式ができ上がっていた。

「あの、体力馬鹿なんかに、負けないから!」

「・・・あ、ありがとう?」

 疑問符をつけながら、首を傾げるルルーシュに、幹部達もカレンの気持ちがわかる。とばかりに口々に告げる。

「俺達にできる事があったら何でも言ってくれ。・・・君は、少し、人に頼る事を覚えなければね。」

 扇が言うと、そうだそうだと皆が頷く。

「俺達が白兜なんざ、ぶっ飛ばしてやっからよ!」

「そうそう!・・・学園での事は無理でも、騎士団内での事なら、いくらでもフォローするから!」

「休める時に休んで。貴方の代わりができるわけじゃないけど、仕事を割り振るくらいはできるから。」

 藤堂と四聖剣は暖かい視線でルルーシュを取り囲む古参の幹部達を見やる。これで、ルルーシュの心は幾分か穏やかさを取り戻すだろう。

 彼の望むブリタニアの崩壊、優しい世界の構築。それを実現する日まで、自分達は全力で彼を守るのだ。


***


 いつしか、アジトの壁には“打倒!ブリタニア!!”の文字がでかでかと掲げられるようになった。

― あれ?日本奪還じゃなかったけ?

 一般団員達がそう思ったのは、当然の結果かもしれない。



おしまい


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