Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・桐原公が良い人?
・ルルが巻き込まれ体質なお人好し
・微妙に藤堂→ルル?
・藤堂さんのイメージが壊れ気味?
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
事態は、一本の電話から始まった。
「おーい、ルルーシュぅ、携帯鳴ってるぞ~。」
ミレイが溜めに溜め込んだ仕事の山を片付ける為に、机に噛り付いていたルルーシュは、リヴァルの声に、顔を上げる。
「・・・ああ。」
マナーモードにしていたから気付かなかったが、随分前から鳴っていたようだった。画面を確認すると、非通知設定の文字。もしやと思いつつもルルーシュは通話ボタンを押す。
「・・・もしもし・・・。」
『ワシだ。』
「・・・っ!」
ありえない相手の声に、ルルーシュは息を呑み、目を見開く。
そんなルルーシュの様子に、生徒会役員達はなんだなんだとルルーシュを取り囲む。今日は珍しく、カレンもスザクも来ていて、全員が揃っている。
こんなところで、会話を続けるわけにはいかない。そう思ったルルーシュは眉を顰め、何も言わず、ぶち。と電話を切る。
「お、おい。ルルーシュ・・・?」
戸惑うリヴァルに、気にするなと首を振る。
「・・・会長。・・・ちょっと、外、出てきます。」
「・・・おっけー。わかったわ。」
ミレイがあっさりと許可を出してくれた事に内心で感謝しつつ、ルルーシュは携帯を手に、生徒会室を出て行く。
ヴヴヴ・・・
手の中で震える携帯を睨みつつ、ルルーシュはクラブハウス内にある、自分とナナリーの生活区域まで来ると、通話ボタンを押す。
「もしもし・・・。」
『これ、唐突に切るでないわ。』
「~っ!・・・桐原公・・・私にも、表の生活があると、ご存知ですよね?」
ルルーシュが怒りに震える拳を更にぎゅっと握り締め、叫びだしたい思いを堪えて声を潜める。
『それはすまなんだ。』
反省のかけらも無い桐原の様子に、ルルーシュは腹を立てるだけ無駄と悟り、話に耳を傾ける。
「・・・で、ご用件は?」
『うむ。・・・今日の夜は暇か?』
桐原こそ、唐突だ。とは思ったが、ルルーシュは今日の予定を思い返す。
「(ナナリーとの買い物の約束は明日だし・・・騎士団の方も特に予定は無いな。)・・・空いておりますが。」
『ちょっと、出て来れんか?・・・租界の端のとある場所なのだが・・・迎えもやる。』
強制というワケではないようだが、どこか、懇願するような声音に、ルルーシュは軽く首を傾げる。
「公、何をしようとしてらっしゃいます?」
『・・・来てからのお楽しみだ。』
目的を告げようとしない桐原に、ルルーシュは深く溜息をついて、了承の意を告げる。
「・・・わかりました。何時にどちらまで行けば?」
『話が早くて助かるわい。・・・では・・・。』
桐原が告げる場所と時間を記憶し、ルルーシュは通話を切る。
「・・・嫌な予感がするが・・・キョウトの重鎮を無碍にするわけにはいかないしな。ハァ・・・。」
こういう時は、嫌な予感が絶対当たると思いながら、ルルーシュは仕事の山を片付ける為、生徒会室に戻ったのだった。
桐原に言われた時間の数分前に指定の場所に着いたルルーシュ。念の為に、変装をしてきたが、帽子を目深に被り、色眼鏡をかけた程度だから、自分を知る人間ならば、すぐに気付くだろうと思う。
プッ
車のクラクションが鳴らされ、ルルーシュがそちらを向くと、黒塗りの車の後部座席の窓がスーッと下がる。
「・・・乗れ。」
顔を出したのは、桐原本人。ルルーシュは代理人が迎えに来るとばかり思っていたので、軽く目を瞠った。
「・・・まさか、ご本人が直々にお迎えに来て下さるとは。」
「なぁに、それだけの立場であろう?」
車に乗り込んで、帽子と色眼鏡を外すと、ルルーシュは驚きをそのまま口にする。すると、桐原は満足げに笑み、答えを返してくる。
「・・・それで、何を企んでおいでなのですか?」
「企むなどと、不穏な言葉を使うでないわ。・・・お主は、ワシを何だと思うておるのだ。」
「・・・売国奴の桐原。・・・目的の為なら何でもするでしょう?貴方は。」
肩を竦めて言えば、桐原はクツクツと笑う。
「・・・昔より思っておった事だが、これだけ優秀な皇子を、何ゆえ皇帝は切り捨てたのか、良くわからんよ・・・。」
「ヤツの事は口に出さないで頂きたい。・・・私には禁句です。」
むっつりと答えれば、桐原はそうか、とだけ呟く。
その後、特に会話も無く、目的地まで車で運ばれる。外を眺めるのを許容されているところを鑑みると、秘密の場所という訳では無さそうだった。
目的地に着き、ルルーシュはその建物を見上げる。
「・・・ここは?」
「古い知り合いの持ち物でな。・・・租界に滞在する際に使わせて貰っておる。」
古い知り合い。だが、租界に建物を持っているところからすると、日本人ではないだろう。恐らくは、サクラダイトを餌に釣ったブリタニアの貴族。
「・・・そんな所に、私を連れて来て・・・どうしようと?」
「警戒するでない。ワシとて、今“ゼロ”が居なくなるのは非常に困る。・・・お主に危害を加えたいわけではない。それだけは信じろ。」
軽い調子で“ゼロ”と言われ、ルルーシュはギョッとする。
「っ公!」
「・・・大丈夫。“みざる、いわざる、きかざる”は徹底しておる。」
落ち着いている桐原を見て、それもそうかと思い、気を静める。どうしてこうも調子を崩されるのか。幼い頃からの桐原に対する苦手意識が強いせいもあるが、7年前よりもずっと友好的な態度をとる桐原に、正直戸惑っている。というのが本音だ。
先を歩く桐原の小さな背を見つめ、ルルーシュは小さく溜息をつく。本人の言う通り、何を考えているにしても、ルルーシュに危害を加える事は無いだろう。その事だけは信じる事にする。
「・・・目的も告げられないで、こうやって、ただ案内されるのは、なかなかつらいものもあるのですが。」
「ああ、それもそうか。・・・まあ、先に、客人を招いてある。その客人に会ってもらいたい、というだけの事じゃ。」
「・・・っつ!?・・・公!だけの事とおっしゃいますが!!」
ギョッとしたルルーシュが歩みを止める。
「安心せい。信のおける者達だ。」
達という事は複数か、と考えながらも、ルルーシュは躊躇する。
「・・・ですが、何故・・・。」
「お主にとっても悪い話ではない。・・・少しは、騎士団にも気のおける者を作るべきではないか?」
「騎士団・・・?では、客人とは、騎士団の者という事ですかっ!?・・・私はこれで失礼させていただく!!」
冗談ではないと、きびすを返すルルーシュの前に、黒スーツの男達が立ちはだかる。
「・・・強制では・・・無いでしょう?」
ルルーシュは緊張した面持ちで桐原を振り返る。
「もちろん。・・・だが、こっそりと覗くだけ覗いてみたらどうだ?思わぬ収穫があるやもしれん。」
当然とばかりに頷く桐原にホッとしつつ、ルルーシュは大人しく着いて行くことにする。そもそも、思い直せば、ここから帰る方法もない。歩いて帰るなど言語道断だ。いくら租界といえど、治安が良いとは言えないのだから。
そして、通された応接室。隣の部屋では、桐原が客人と会っている。ルルーシュは騎士団の者、というところで、すでに誰が呼ばれているのか、当たりをつけていた。
桐原が直に会うとしたら幹部の誰かであり、尚、信をおいているとなれば、自ずと答えは見えてくる。 こっそりと隣の部屋を覗いてみれば、案の定の者達が、桐原と対面していた。
「・・・ご無沙汰しておりました。・・・桐原翁。」
「うむ。・・・元気そうだな?藤堂。それに・・・四聖剣もよく仕えておるようだ。」
そう。呼ばれた客人とは、藤堂と四聖剣の5人。ルルーシュは何を考えているのやら、と嘆息し、聞き耳を立てる。
「して、何ゆえ、我らはお呼び出しを受けたのでしょうか?」
仙波が問えば、桐原は然り、と頷く。
「・・・うむ。・・・お主らに聞きたい事があってな。」
「聞きたい事?」
朝比奈が首を傾げる。桐原に対する態度を見て、藤堂以外には敬意を払うという事をしないのだろうか。とルルーシュはその徹底振りに呆れを通り越し、感心してしまう。
「そう。他でもない。“ゼロ”の事だ。」
「・・・ゼロ・・・ですか。」
千葉が表情を曇らせる。仮面の男、ゼロ。見事なまでの戦略、カリスマ性、そして、その場を読みきる洞察力。どれをとってもリーダーとして据えるのに問題は無い。が、あの仮面一つが千葉の中でネックになっているのだ。
あの仮面が、団員達とゼロを大きく隔てている。組織というものは、信頼関係あってこそだと思う千葉にとって、首を傾げざるを得ない。
「・・・彼は、何故、信頼を得られないと知りつつ仮面をつけるのでしょう。・・・桐原翁は、素顔をご存知とか。なれば、その事情もご存知なのでは?」
千葉が問うと、桐原は難しい顔をする。事情を知っているとは言っても、内情までは伺えない。
「・・・事情は知っておる。・・・ワシの憶測で言わせて貰えば、あれは、疑念の塊なのだろう。」
「・・・疑念?」
藤堂が促せば、桐原は続ける。
「そもそも、前提としての話を皆が知らんから、不振を煽るのだ。・・・あれはな、幼い頃より家族以外誰も信じる事の出来ない環境で暮らしておった。唯一と言える絶対的な保護者を失ってからは、尚更、他人を信じる事など出来なかったろう。それにな、あれの人生は、裏切りの連続だ。・・・信じる、という言葉はあれにとっては、苦痛でしかないのだよ。」
他人の事だというのに、よく理解しているものだ、とルルーシュは思わず感心し、苦笑を浮かべる。桐原が言った事は、ほぼ、ルルーシュの考えの通りなのだ。
「信じる事が、苦痛・・・?」
「そう。人を信じ、全てを晒した時、その者に裏切られる。・・・それを何度も繰り返されれば、信じる事すら、恐ろしくなるだろう?」
桐原が苦笑すると、千葉が神妙な表情を浮かべる。
「・・・そう、だったのですか。・・・ゼロが何も言わないのは・・・そういった事があるからですか。」
「・・・うむ。・・・あまり、あやつを責めてやるな。騎士団を率いておるだけでも、あれにとっては、危険な賭けなのだよ。」
「・・・それって、ゼロがブリタニア人だからですか?」
朝比奈が問うと、桐原が頷く。
「・・・あれにも表の生活がある。騎士団の事がバレれば、かなり危険な場所に居るからの。」
確かにその通りだ。ルルーシュの傍にはスザクがいる。ユーフェミアの騎士であり、宿敵、白兜のデヴァイサーの枢木スザクが。
「・・・桐原翁・・・なぜ、そこまでご存知なのです。ゼロは、貴方には信をおいているという事ですか?」
表情を硬くして、藤堂が口を開く。
「・・・ワシが勝手に調べておる。あれは身内以外は誰も信じぬし、何も言わんからな。こちらで事情を察してやらねばなるまい。ワシの・・・キョウトの協力を得る為に顔を見せた。その事に対して、こちらも誠意を見せるべきであろう?」
ひょい、と肩を竦める様子は、嘘を言っているそれではない。
「だ、大丈夫なのですか?勝手に調べて回るのは・・・誠意とは真逆のような気が・・・。」
卜部が口元を引き攣らせる。それには、他の四聖剣も藤堂も頷く。
「・・・あれは調べられているのには気付いておるよ。それでも何も言わないのだから、構わないという事だろう。・・・それに、あれの事情がわからなければ、こちらとて支援のしようが無いだろう。」
それはつまり、表の生活にも支援をしているという事。遠まわしにそう告げる事で、キョウトと“ゼロ”の太い繋がりを認識させる。
上手い手だ。とルルーシュが感心する。すると、桐原がちらりとこちらに視線を寄越す。
「(・・・出て来い、か。)」
ルルーシュは顔を顰める。ここで、ルルーシュが出て行けば、確実に藤堂は“ゼロ”と“ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア”を繋げるだろう。それだけの情報を持っているのだから。
「(どうする?・・・恐らく、藤堂は俺を認める。藤堂が認めれば四聖剣も認めるだろう。・・・だが・・・。)」
「桐原翁、一つ確認させていただきたい。」
迷うルルーシュの耳に、藤堂の緊張した声が届く。
「・・・私は・・・“ゼロ”を知っていますか?」
「「「「藤堂(中佐)さん!?」」」」
四聖剣がギョッとして声を揃えるが、桐原は黙ったまま。
「・・・知っているか?・・・その問いに対して、ワシにどう答えろと言う?・・・ワシはあれとお主の交友関係を全て知っておるわけではない。」
我ながら上手い答え方だ。と桐原は嘆息する。鋭い藤堂の事だ。薄々感づき始めたのだろう。ならば、ルルーシュも覚悟を決めるのでは、ともう一度視線を送った。
その視線を受けたルルーシュは、フッと短く息をつく。覚悟を決めねばならないだろう。すでに、藤堂は気付き始めている。桐原が否定しなかったのだ。アジトで会えば、必ず訊ねてくるに違いない。
がちゃ
部屋の奥の扉が開く。藤堂と四聖剣がハッとしてそちらを向くと、1人の(恐らく)少年が立っていた。目深に被った帽子に、色つきの眼鏡をしている為に、表情は伺えない。
「・・・貴方という人は・・・強制ではないと言いながら、自主的に出ざるを得なくする・・・。」
溜息交じりの言葉に、桐原はクツクツと笑った。
「最初に断らなかったお主が悪い。あの時、断る事も出来たろうに。」
「・・・あれだけ支援を頂いている、キョウトの重鎮の頼みごとを無碍にしろと?」
その言葉に、藤堂と四聖剣は気付く。目の前にいるこの少年が“ゼロ”なのだと。そして、藤堂が呟く。
「・・・やはり・・・君か。」
呟きは存外大きく響き、桐原が面白いとばかりに口の端を吊り上げ、どういう事だと四聖剣が視線を送ってくる。そして、少年は・・・藤堂に視線を向け、溜息をついて、帽子を取り払い、眼鏡を外す。
現れたのは、ハッとするような美貌と印象的な紫の瞳。
「・・・お久しぶりです・・・というのはおかしいですか?」
クス、と笑うその表情は妖艶だ。子どもの頃の印象は(警戒心の塊ではあったが)可愛らしい、という感じだったが、今は、美しいという形容詞が最もしっくりくる。
「そう、だな。・・・アジトでは会っているのだし・・・いや、そうではなくて・・・生きていたのか。」
四聖剣はその言葉に、バッと“ゼロ”と思われる少年を見る。藤堂が考えの纏まらぬまま話す事は珍しく、それだけでも驚いているのに、今、藤堂は“ゼロ”と思われる少年に“生きていたのか”と訊ねた。つまりそれは、死んでいたと思っていたという事。
「・・・藤堂さん、あの、俺達、話についていけてないです。」
朝比奈が藤堂に視線を戻し、不安げに見つめる。
「・・・話しても良いだろうか?」
藤堂がルルーシュに確認を取る。ルルーシュは一瞬顔を顰めるが、すぐに肩を竦める。
「・・・藤堂さんが必要だと思うなら、どうぞ?」
もう少し渋ると思っていた桐原は、呆気に取られる。
「良いのか?」
「・・・貴方が言いますか?」
ジロ、とルルーシュに睨まれて、桐原はそれもそうだ、と肩を竦める。
「あの・・・中佐、よろしいので?」
仙波の確認に、藤堂は硬い表情のまま頷く。
「ああ・・・彼が、良いと言うなら。・・・そうだな、質問という形で受けよう。必要と思うものには答えるし、必要ないと感じたら、答えない。それで良いな?」
藤堂の確認に、四聖剣は頷く。
「あ、じゃあ、俺から良いですか!?」
朝比奈がスッと手を上げる。藤堂が視線で促すと、こほん、と咳払いし、チラリとルルーシュを確認して、質問を口にする。
「彼の本当の名前は、なんていうんですか?」
「・・・ルルーシュ、だ。」
藤堂はヴィ・ブリタニアの名を伏せる。いきなりはきついと判断したのだ。
「じゃあ、次は私で・・・中佐はいつ“ゼロ”とお知り合いに?」
千葉が次いで問うと、藤堂はどう答えたものか、と考える。
「・・・そうだな・・・。」
「7年前、枢木の家でだ。」
脇からルルーシュ自身が答えたので、藤堂はギョッとしてルルーシュを振り返る。
「る、ルルーシュ君、君は・・・。」
「・・・良いですよ、もう。隠したって、意味が無いんですから。・・・で?千葉の質問には答えたぞ?他の2人は質問は無いのか?」
藤堂にだけ敬語を使うルルーシュ。四聖剣は、そこに、むず痒い感情が生まれる。
「・・・今、いくつなんだ?」
卜部が問う。
「・・・17歳。」
「「「「ええっ!?」」」」
その答えに、質問した卜部だけでなく、他の四聖剣も驚いて立ち上がる。
「・・・わ、若いとは、思ったが・・・もしかしなくても、学生か?」
「ああ。・・・補足として言うなら、カレンや枢木スザクとも同級生だし、生徒会でも一緒だぞ。」
絶句。桐原が危険だと言った訳が良くわかった。
「・・・そうか、スザク君と・・・。」
「ええ。思ってみれば、随分な再会の仕方でしたよ。テロリストがクロヴィスから奪った“毒ガス”の・・・新宿の事件に巻き込まれましてね、その時、テロリストと間違えられて、スザクからとび蹴りを喰らったんです。」
「・・・それは・・・。」
「7年前に初めて会った時も、ぶん殴られましたし、ろくな出会い方してないですね、俺達。」
ひょい、と竦められる肩があまりにも薄くて、藤堂は、今までこの薄い肩にどれだけのものを背負わせてきたのだと反省する。
「“ゼロ”よ、その・・・わしからも、良いだろうか?」
仙波が尋ねる。ルルーシュが視線を向け、頷くと、仙波は口を開く。
「7年前、枢木家、という事は、開戦前に日本にいた、ということになる。・・・その理由を聞いても良いだろうか。あの不安定な情勢の中、どうして・・・。」
「仙波、それは・・・!」
藤堂が慌てたように声を出す。それを制したのは、ルルーシュ自身。
「藤堂さん、良いですよ。・・・知りたいのなら、答えてやる。俺があの当時日本にいたのは、表向きブリタニアからの留学生として、まぁ、ハッキリ言えば人質として、送られたからだ。」
「人質?」
朝比奈が首を傾げる。
「・・・ああ。お前の質問に、藤堂さんはルルーシュと答えただけでファミリーネームを答えなかった。・・・知っているのにも関わらず、だ。それは、俺の立場を考えての事だろう。だから、俺がそれを答えてやる。」
「ルルーシュ君!!」
藤堂が立ち上がり、ルルーシュの肩を掴む。
「・・・藤堂さん、貴方の為の四聖剣でしょう?・・・信じてないんですか?」
「いや、それは・・・だが・・・。」
コトリ、と心底不思議そうに首を傾げたルルーシュに、藤堂はドギマギとして、顔を赤くしながら、言葉を紡ごうとする。
「・・・中佐が言いよどむ姿なんて、始めてみたぜ。」
卜部が呆然と呟けば、朝比奈と千葉も頷く。
「ルルーシュ君・・・。本当に良いのか?」
「構わない、と言ったはずですよ。・・・仙波、すまなかったな。話がそれた。」
藤堂の手を外させ、ルルーシュは仙波を振り返る。
「い、いえ。」
ヒタ、と美貌の少年に見据えられ、仙波は年甲斐も無く、頬を赤らめる。
「・・・俺の本当の名は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。今は鬼籍に載ったとされる、ブリタニア帝国の第11皇子、元第17皇位継承者だった。」
明かされた真実に、四聖剣は元より、聞いていた藤堂や桐原ですら呆然とする。それほど、あっさりとルルーシュは言ってのけたのだ。
「・・・皇子・・・ブリタニアの?」
目を見開いたまま、朝比奈が呟く。
「そうだ。・・・憎いか?ブリタニアの名を持つ、俺が。」
そう言ったルルーシュに、四聖剣はハッとして顔を上げ、ルルーシュを見つめる。その目は冷え冷えとした色をたたえ、背筋が凍る。
― 試されている。
藤堂はその目を見た瞬間、そう思った。もし、四聖剣が彼を拒絶したら・・・自分達は容赦なく捨てられる。そこまで考えて、はた、と藤堂は考える事を止める。“捨てられる”という言葉が、頭の中をぐるぐると回る。
「・・・ダメだ。」
突如、藤堂が動き、再びルルーシュの肩を掴む。完全に四聖剣へと意識を向けていたルルーシュは、突然の藤堂の行動に、ギョッとして、固まってしまう。やはり、イレギュラーには弱い。と再確認しつつ、何を言い出すのかと、藤堂をしげしげと見つめる。
「・・・否定などさせない。憎しみなど抱かせない。・・・四聖剣は、俺の物だ。俺と相反する感情など持たせないし、仮令、持ったとしても、押し殺させる。・・・だから、ルルーシュ君、いや、ゼロ、俺を、俺達を捨てないでくれ!」
両肩を掴まれ言い募られた言葉に、ルルーシュは一瞬、真っ白になる。
「・・・と、とうどぅ、さん?」
思わず、舌が縺れる。
「・・・くっ・・・くくく・・・はははははははっ!」
肩を震わせ、耐え切れないとばかりに笑い出したのは、桐原。
「ず、随分と、まぁ、凄まじい殺し文句というか、熱烈な愛の言葉というか・・・くくく。」
桐原が腹を抱えて笑い転げるという珍しいものを目にしながらも、ルルーシュの思考は未だにフリーズしたまま。
それというのも、真剣な藤堂の口から、あんな言葉が出てきて、さすがにショックが大きかったというのもある。
四聖剣にしてみても、藤堂がよもやあんな事を言い出すとは思ってもいなかったので、呆然と藤堂を見つめている。
「・・・捨てないで、くれ。」
懇願するように言い、そして、縋るように両肩を掴む手に力が篭る。
「・・・止めてください。そんな、言い方。藤堂さんらしくない。・・・一言で良いです。たった一言。“裏切らない”それだけで良いです。」
ようやく飛んだ意識が戻ってきたルルーシュは、そっと嘆息し、藤堂を見つめる。
「・・・わかった。俺は、俺達は、君を裏切らない。絶対に。」
「・・・なら、良いです。信じます。」
フッと笑った顔に、藤堂は安堵の笑みを浮かべ、肩から力を抜く。
「良かった・・・。捨てられたら、どうしようかと・・・。」
「・・・だから、さっきから、何なんです?捨てられるって。・・・むしろ、それは俺のセリフでしょう?」
首を傾げるルルーシュに、桐原は笑いすぎて息も絶え絶えになりながら、答えてやる。
「と、藤堂はな、くくく。・・・四聖剣がお前を拒絶したら、自分を含めた全員がお前に捨てられると思ったんだろう。お前の一貫した徹底振りは、昔を知っているわしや藤堂にとっては、想像に難くない。」
「だからって、いきなり・・・あれですか?」
呆れた声を出すルルーシュに、藤堂はグッと詰まる。
「・・・面目ない。つい、取り乱してしまって。」
「いえ・・・良いですけど。(面白いものを見た気がする。多分。)」
ルルーシュは首を振ると、四聖剣へと向き直る。
「お前達は良いのか?・・・今の発言は、許容できるものなのか?(しかも、さりげなく俺の物発言されてるしな。)」
「・・・俺は全然構いませんよ~。(俺の物だってさ。藤堂さんがそんな事言ってくれるのって初めてだし。)ってか、ゼロの持論は、過程より結果でしょ?だったら、皇族だったとか、過去の事なんて、どうでも良いじゃない。今だよ、い・ま。」
あっけらかんと言ったのは朝比奈。
「・・・私も、朝比奈の意見に同感だ。」
「俺もだ。・・・ゼロ、お前が学生だろうが、皇族だろうが、そんな事は関係が無い。・・・日本を、取り戻してくれるのなら、俺達は、お前と共に戦う。」
千葉が朝比奈に同意し、卜部がニヤリ、と笑って告げる。そして、その3人が一番の年長者である仙波に視線を送る。
「・・・わしも、お役に立てることがあるのなら、いくらでも、老体に鞭を打って、力となりましょうぞ。」
力強く頷き、仙波が答えると、明らかにルルーシュの纏う空気が変わった。
「ルルーシュ君?」
藤堂が心配そうに顔を覗き込むと、ルルーシュの目にうっすらと涙が溜まっているのがわかった。ギョッとする藤堂に、ルルーシュは真摯な表情を向ける。
「・・・信じて良いですか?・・・信じさせてくれますか・・・?・・・俺は、貴方達を、信じて、良いですか?」
― ああ、守らなければ。この子を。
それが、この場にいる、大人達全員の思いだった。
「もちろん。・・・信じて欲しい。俺達は、けして裏切らない。もし、言葉だけでは足らぬというのであれば・・・何にでも誓うし、行動する。」
藤堂が口にすれば、四聖剣もしっかりと頷く。
「・・・言葉だけで充分です。」
ニコリ、と笑う顔は心底信用した者にしか見せないものだと、藤堂だけが気付く。それは、あの夏の日、ナナリーに対してだけ見せていた笑顔だから。
「・・・ありがとう。・・・本当に、生きて再び君に出会えた事、嬉しく思うよ。」
藤堂も滅多に見せない笑みを見せ、ルルーシュにそう告げる。
「それです!」
唐突に。朝比奈が声をあげる。
「それ・・・?」
「そう、それです!・・・生きてって事は、死んでいたと思われてたという事でしょ?“ゼロ”も鬼籍に載ったとか言ってたし・・・。」
ああ、それか、と納得したルルーシュは、皇宮での事件、皇帝からの言葉、そして、あの夏の日の誓いの事を四聖剣に話して聞かせる。
「・・・そんな・・・。」
桐原が言っていた、裏切られてばかりの人生。それも、たった17の少年が、何度その短い人生の中で裏切られてきたのか。
「・・・日本が敗戦して・・・俺と妹は母の後見だったアッシュフォードに匿われて、死を偽造し、今まで生き延びてきたんだ。」
「ブリタニアは憎いが、アッシュフォードには感謝だな。・・・“ゼロ”を守っていてくれたんだからな。」
卜部が嘆息し、ルルーシュを見つめる。
「・・・ああ。アッシュフォードには本当に感謝している。・・・だが、このまま、鳥籠の中で暮らしていく事はきっと難しい・・・だから・・・ブリタニアをぶっ潰す。・・・力を貸して欲しい。」
「もっちろん!」
「任せておけ」
「いくらでも貸してやるぜ。」
「何でも申し付けてくだされ。」
ルルーシュの言葉に、四聖剣が応じる。思わず泣きたくなるが、ポン、と肩を叩かれ、そちらを向く。
「・・・俺達は裏切ること無く、君の傍にあろう。」
「藤堂さん・・・。」
ルルーシュの安堵の表情。それを間近で見る事ができ、藤堂は満足する。
「やれやれ、年寄りのお節介が功を奏したようじゃな。」
桐原の声が響き、ルルーシュはすっかりその存在が頭の中から飛んでいたという事に気付き、バツの悪い表情を浮かべる。
「・・・公・・・機会を作って下さった事、感謝します。・・・ですが、今後一切、この様なやり方はしないで頂きたい。」
苦虫を噛み潰したようなルルーシュの表情と声。桐原は嘆息する。
「やれやれ、報われないのは、ワシだけか・・・。まあ、考えておく。」
「・・・やめろって、言ってるのに・・・。」
ボソ、と呟くルルーシュの声が届いているのかいないのか、桐原はにやりと笑う。
「この事、神楽耶様には報告させてもらうぞ?」
「・・・もう、好きにしてください。」
ガックリと肩を落とすルルーシュと確信犯的な桐原を見比べ、藤堂と四聖剣は視線を交わす。思った事はほぼ同じ事。
「「「「「(た、大変だなぁ、“ゼロ”(ルルーシュ君)も。)」」」」」
その後、黒の騎士団内で藤堂がやたらとゼロを気にかけ、四聖剣が何かとゼロを構う姿が見かけられるようになった。
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・桐原公が良い人?
・ルルが巻き込まれ体質なお人好し
・微妙に藤堂→ルル?
・藤堂さんのイメージが壊れ気味?
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
事態は、一本の電話から始まった。
「おーい、ルルーシュぅ、携帯鳴ってるぞ~。」
ミレイが溜めに溜め込んだ仕事の山を片付ける為に、机に噛り付いていたルルーシュは、リヴァルの声に、顔を上げる。
「・・・ああ。」
マナーモードにしていたから気付かなかったが、随分前から鳴っていたようだった。画面を確認すると、非通知設定の文字。もしやと思いつつもルルーシュは通話ボタンを押す。
「・・・もしもし・・・。」
『ワシだ。』
「・・・っ!」
ありえない相手の声に、ルルーシュは息を呑み、目を見開く。
そんなルルーシュの様子に、生徒会役員達はなんだなんだとルルーシュを取り囲む。今日は珍しく、カレンもスザクも来ていて、全員が揃っている。
こんなところで、会話を続けるわけにはいかない。そう思ったルルーシュは眉を顰め、何も言わず、ぶち。と電話を切る。
「お、おい。ルルーシュ・・・?」
戸惑うリヴァルに、気にするなと首を振る。
「・・・会長。・・・ちょっと、外、出てきます。」
「・・・おっけー。わかったわ。」
ミレイがあっさりと許可を出してくれた事に内心で感謝しつつ、ルルーシュは携帯を手に、生徒会室を出て行く。
ヴヴヴ・・・
手の中で震える携帯を睨みつつ、ルルーシュはクラブハウス内にある、自分とナナリーの生活区域まで来ると、通話ボタンを押す。
「もしもし・・・。」
『これ、唐突に切るでないわ。』
「~っ!・・・桐原公・・・私にも、表の生活があると、ご存知ですよね?」
ルルーシュが怒りに震える拳を更にぎゅっと握り締め、叫びだしたい思いを堪えて声を潜める。
『それはすまなんだ。』
反省のかけらも無い桐原の様子に、ルルーシュは腹を立てるだけ無駄と悟り、話に耳を傾ける。
「・・・で、ご用件は?」
『うむ。・・・今日の夜は暇か?』
桐原こそ、唐突だ。とは思ったが、ルルーシュは今日の予定を思い返す。
「(ナナリーとの買い物の約束は明日だし・・・騎士団の方も特に予定は無いな。)・・・空いておりますが。」
『ちょっと、出て来れんか?・・・租界の端のとある場所なのだが・・・迎えもやる。』
強制というワケではないようだが、どこか、懇願するような声音に、ルルーシュは軽く首を傾げる。
「公、何をしようとしてらっしゃいます?」
『・・・来てからのお楽しみだ。』
目的を告げようとしない桐原に、ルルーシュは深く溜息をついて、了承の意を告げる。
「・・・わかりました。何時にどちらまで行けば?」
『話が早くて助かるわい。・・・では・・・。』
桐原が告げる場所と時間を記憶し、ルルーシュは通話を切る。
「・・・嫌な予感がするが・・・キョウトの重鎮を無碍にするわけにはいかないしな。ハァ・・・。」
こういう時は、嫌な予感が絶対当たると思いながら、ルルーシュは仕事の山を片付ける為、生徒会室に戻ったのだった。
桐原に言われた時間の数分前に指定の場所に着いたルルーシュ。念の為に、変装をしてきたが、帽子を目深に被り、色眼鏡をかけた程度だから、自分を知る人間ならば、すぐに気付くだろうと思う。
プッ
車のクラクションが鳴らされ、ルルーシュがそちらを向くと、黒塗りの車の後部座席の窓がスーッと下がる。
「・・・乗れ。」
顔を出したのは、桐原本人。ルルーシュは代理人が迎えに来るとばかり思っていたので、軽く目を瞠った。
「・・・まさか、ご本人が直々にお迎えに来て下さるとは。」
「なぁに、それだけの立場であろう?」
車に乗り込んで、帽子と色眼鏡を外すと、ルルーシュは驚きをそのまま口にする。すると、桐原は満足げに笑み、答えを返してくる。
「・・・それで、何を企んでおいでなのですか?」
「企むなどと、不穏な言葉を使うでないわ。・・・お主は、ワシを何だと思うておるのだ。」
「・・・売国奴の桐原。・・・目的の為なら何でもするでしょう?貴方は。」
肩を竦めて言えば、桐原はクツクツと笑う。
「・・・昔より思っておった事だが、これだけ優秀な皇子を、何ゆえ皇帝は切り捨てたのか、良くわからんよ・・・。」
「ヤツの事は口に出さないで頂きたい。・・・私には禁句です。」
むっつりと答えれば、桐原はそうか、とだけ呟く。
その後、特に会話も無く、目的地まで車で運ばれる。外を眺めるのを許容されているところを鑑みると、秘密の場所という訳では無さそうだった。
目的地に着き、ルルーシュはその建物を見上げる。
「・・・ここは?」
「古い知り合いの持ち物でな。・・・租界に滞在する際に使わせて貰っておる。」
古い知り合い。だが、租界に建物を持っているところからすると、日本人ではないだろう。恐らくは、サクラダイトを餌に釣ったブリタニアの貴族。
「・・・そんな所に、私を連れて来て・・・どうしようと?」
「警戒するでない。ワシとて、今“ゼロ”が居なくなるのは非常に困る。・・・お主に危害を加えたいわけではない。それだけは信じろ。」
軽い調子で“ゼロ”と言われ、ルルーシュはギョッとする。
「っ公!」
「・・・大丈夫。“みざる、いわざる、きかざる”は徹底しておる。」
落ち着いている桐原を見て、それもそうかと思い、気を静める。どうしてこうも調子を崩されるのか。幼い頃からの桐原に対する苦手意識が強いせいもあるが、7年前よりもずっと友好的な態度をとる桐原に、正直戸惑っている。というのが本音だ。
先を歩く桐原の小さな背を見つめ、ルルーシュは小さく溜息をつく。本人の言う通り、何を考えているにしても、ルルーシュに危害を加える事は無いだろう。その事だけは信じる事にする。
「・・・目的も告げられないで、こうやって、ただ案内されるのは、なかなかつらいものもあるのですが。」
「ああ、それもそうか。・・・まあ、先に、客人を招いてある。その客人に会ってもらいたい、というだけの事じゃ。」
「・・・っつ!?・・・公!だけの事とおっしゃいますが!!」
ギョッとしたルルーシュが歩みを止める。
「安心せい。信のおける者達だ。」
達という事は複数か、と考えながらも、ルルーシュは躊躇する。
「・・・ですが、何故・・・。」
「お主にとっても悪い話ではない。・・・少しは、騎士団にも気のおける者を作るべきではないか?」
「騎士団・・・?では、客人とは、騎士団の者という事ですかっ!?・・・私はこれで失礼させていただく!!」
冗談ではないと、きびすを返すルルーシュの前に、黒スーツの男達が立ちはだかる。
「・・・強制では・・・無いでしょう?」
ルルーシュは緊張した面持ちで桐原を振り返る。
「もちろん。・・・だが、こっそりと覗くだけ覗いてみたらどうだ?思わぬ収穫があるやもしれん。」
当然とばかりに頷く桐原にホッとしつつ、ルルーシュは大人しく着いて行くことにする。そもそも、思い直せば、ここから帰る方法もない。歩いて帰るなど言語道断だ。いくら租界といえど、治安が良いとは言えないのだから。
そして、通された応接室。隣の部屋では、桐原が客人と会っている。ルルーシュは騎士団の者、というところで、すでに誰が呼ばれているのか、当たりをつけていた。
桐原が直に会うとしたら幹部の誰かであり、尚、信をおいているとなれば、自ずと答えは見えてくる。 こっそりと隣の部屋を覗いてみれば、案の定の者達が、桐原と対面していた。
「・・・ご無沙汰しておりました。・・・桐原翁。」
「うむ。・・・元気そうだな?藤堂。それに・・・四聖剣もよく仕えておるようだ。」
そう。呼ばれた客人とは、藤堂と四聖剣の5人。ルルーシュは何を考えているのやら、と嘆息し、聞き耳を立てる。
「して、何ゆえ、我らはお呼び出しを受けたのでしょうか?」
仙波が問えば、桐原は然り、と頷く。
「・・・うむ。・・・お主らに聞きたい事があってな。」
「聞きたい事?」
朝比奈が首を傾げる。桐原に対する態度を見て、藤堂以外には敬意を払うという事をしないのだろうか。とルルーシュはその徹底振りに呆れを通り越し、感心してしまう。
「そう。他でもない。“ゼロ”の事だ。」
「・・・ゼロ・・・ですか。」
千葉が表情を曇らせる。仮面の男、ゼロ。見事なまでの戦略、カリスマ性、そして、その場を読みきる洞察力。どれをとってもリーダーとして据えるのに問題は無い。が、あの仮面一つが千葉の中でネックになっているのだ。
あの仮面が、団員達とゼロを大きく隔てている。組織というものは、信頼関係あってこそだと思う千葉にとって、首を傾げざるを得ない。
「・・・彼は、何故、信頼を得られないと知りつつ仮面をつけるのでしょう。・・・桐原翁は、素顔をご存知とか。なれば、その事情もご存知なのでは?」
千葉が問うと、桐原は難しい顔をする。事情を知っているとは言っても、内情までは伺えない。
「・・・事情は知っておる。・・・ワシの憶測で言わせて貰えば、あれは、疑念の塊なのだろう。」
「・・・疑念?」
藤堂が促せば、桐原は続ける。
「そもそも、前提としての話を皆が知らんから、不振を煽るのだ。・・・あれはな、幼い頃より家族以外誰も信じる事の出来ない環境で暮らしておった。唯一と言える絶対的な保護者を失ってからは、尚更、他人を信じる事など出来なかったろう。それにな、あれの人生は、裏切りの連続だ。・・・信じる、という言葉はあれにとっては、苦痛でしかないのだよ。」
他人の事だというのに、よく理解しているものだ、とルルーシュは思わず感心し、苦笑を浮かべる。桐原が言った事は、ほぼ、ルルーシュの考えの通りなのだ。
「信じる事が、苦痛・・・?」
「そう。人を信じ、全てを晒した時、その者に裏切られる。・・・それを何度も繰り返されれば、信じる事すら、恐ろしくなるだろう?」
桐原が苦笑すると、千葉が神妙な表情を浮かべる。
「・・・そう、だったのですか。・・・ゼロが何も言わないのは・・・そういった事があるからですか。」
「・・・うむ。・・・あまり、あやつを責めてやるな。騎士団を率いておるだけでも、あれにとっては、危険な賭けなのだよ。」
「・・・それって、ゼロがブリタニア人だからですか?」
朝比奈が問うと、桐原が頷く。
「・・・あれにも表の生活がある。騎士団の事がバレれば、かなり危険な場所に居るからの。」
確かにその通りだ。ルルーシュの傍にはスザクがいる。ユーフェミアの騎士であり、宿敵、白兜のデヴァイサーの枢木スザクが。
「・・・桐原翁・・・なぜ、そこまでご存知なのです。ゼロは、貴方には信をおいているという事ですか?」
表情を硬くして、藤堂が口を開く。
「・・・ワシが勝手に調べておる。あれは身内以外は誰も信じぬし、何も言わんからな。こちらで事情を察してやらねばなるまい。ワシの・・・キョウトの協力を得る為に顔を見せた。その事に対して、こちらも誠意を見せるべきであろう?」
ひょい、と肩を竦める様子は、嘘を言っているそれではない。
「だ、大丈夫なのですか?勝手に調べて回るのは・・・誠意とは真逆のような気が・・・。」
卜部が口元を引き攣らせる。それには、他の四聖剣も藤堂も頷く。
「・・・あれは調べられているのには気付いておるよ。それでも何も言わないのだから、構わないという事だろう。・・・それに、あれの事情がわからなければ、こちらとて支援のしようが無いだろう。」
それはつまり、表の生活にも支援をしているという事。遠まわしにそう告げる事で、キョウトと“ゼロ”の太い繋がりを認識させる。
上手い手だ。とルルーシュが感心する。すると、桐原がちらりとこちらに視線を寄越す。
「(・・・出て来い、か。)」
ルルーシュは顔を顰める。ここで、ルルーシュが出て行けば、確実に藤堂は“ゼロ”と“ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア”を繋げるだろう。それだけの情報を持っているのだから。
「(どうする?・・・恐らく、藤堂は俺を認める。藤堂が認めれば四聖剣も認めるだろう。・・・だが・・・。)」
「桐原翁、一つ確認させていただきたい。」
迷うルルーシュの耳に、藤堂の緊張した声が届く。
「・・・私は・・・“ゼロ”を知っていますか?」
「「「「藤堂(中佐)さん!?」」」」
四聖剣がギョッとして声を揃えるが、桐原は黙ったまま。
「・・・知っているか?・・・その問いに対して、ワシにどう答えろと言う?・・・ワシはあれとお主の交友関係を全て知っておるわけではない。」
我ながら上手い答え方だ。と桐原は嘆息する。鋭い藤堂の事だ。薄々感づき始めたのだろう。ならば、ルルーシュも覚悟を決めるのでは、ともう一度視線を送った。
その視線を受けたルルーシュは、フッと短く息をつく。覚悟を決めねばならないだろう。すでに、藤堂は気付き始めている。桐原が否定しなかったのだ。アジトで会えば、必ず訊ねてくるに違いない。
がちゃ
部屋の奥の扉が開く。藤堂と四聖剣がハッとしてそちらを向くと、1人の(恐らく)少年が立っていた。目深に被った帽子に、色つきの眼鏡をしている為に、表情は伺えない。
「・・・貴方という人は・・・強制ではないと言いながら、自主的に出ざるを得なくする・・・。」
溜息交じりの言葉に、桐原はクツクツと笑った。
「最初に断らなかったお主が悪い。あの時、断る事も出来たろうに。」
「・・・あれだけ支援を頂いている、キョウトの重鎮の頼みごとを無碍にしろと?」
その言葉に、藤堂と四聖剣は気付く。目の前にいるこの少年が“ゼロ”なのだと。そして、藤堂が呟く。
「・・・やはり・・・君か。」
呟きは存外大きく響き、桐原が面白いとばかりに口の端を吊り上げ、どういう事だと四聖剣が視線を送ってくる。そして、少年は・・・藤堂に視線を向け、溜息をついて、帽子を取り払い、眼鏡を外す。
現れたのは、ハッとするような美貌と印象的な紫の瞳。
「・・・お久しぶりです・・・というのはおかしいですか?」
クス、と笑うその表情は妖艶だ。子どもの頃の印象は(警戒心の塊ではあったが)可愛らしい、という感じだったが、今は、美しいという形容詞が最もしっくりくる。
「そう、だな。・・・アジトでは会っているのだし・・・いや、そうではなくて・・・生きていたのか。」
四聖剣はその言葉に、バッと“ゼロ”と思われる少年を見る。藤堂が考えの纏まらぬまま話す事は珍しく、それだけでも驚いているのに、今、藤堂は“ゼロ”と思われる少年に“生きていたのか”と訊ねた。つまりそれは、死んでいたと思っていたという事。
「・・・藤堂さん、あの、俺達、話についていけてないです。」
朝比奈が藤堂に視線を戻し、不安げに見つめる。
「・・・話しても良いだろうか?」
藤堂がルルーシュに確認を取る。ルルーシュは一瞬顔を顰めるが、すぐに肩を竦める。
「・・・藤堂さんが必要だと思うなら、どうぞ?」
もう少し渋ると思っていた桐原は、呆気に取られる。
「良いのか?」
「・・・貴方が言いますか?」
ジロ、とルルーシュに睨まれて、桐原はそれもそうだ、と肩を竦める。
「あの・・・中佐、よろしいので?」
仙波の確認に、藤堂は硬い表情のまま頷く。
「ああ・・・彼が、良いと言うなら。・・・そうだな、質問という形で受けよう。必要と思うものには答えるし、必要ないと感じたら、答えない。それで良いな?」
藤堂の確認に、四聖剣は頷く。
「あ、じゃあ、俺から良いですか!?」
朝比奈がスッと手を上げる。藤堂が視線で促すと、こほん、と咳払いし、チラリとルルーシュを確認して、質問を口にする。
「彼の本当の名前は、なんていうんですか?」
「・・・ルルーシュ、だ。」
藤堂はヴィ・ブリタニアの名を伏せる。いきなりはきついと判断したのだ。
「じゃあ、次は私で・・・中佐はいつ“ゼロ”とお知り合いに?」
千葉が次いで問うと、藤堂はどう答えたものか、と考える。
「・・・そうだな・・・。」
「7年前、枢木の家でだ。」
脇からルルーシュ自身が答えたので、藤堂はギョッとしてルルーシュを振り返る。
「る、ルルーシュ君、君は・・・。」
「・・・良いですよ、もう。隠したって、意味が無いんですから。・・・で?千葉の質問には答えたぞ?他の2人は質問は無いのか?」
藤堂にだけ敬語を使うルルーシュ。四聖剣は、そこに、むず痒い感情が生まれる。
「・・・今、いくつなんだ?」
卜部が問う。
「・・・17歳。」
「「「「ええっ!?」」」」
その答えに、質問した卜部だけでなく、他の四聖剣も驚いて立ち上がる。
「・・・わ、若いとは、思ったが・・・もしかしなくても、学生か?」
「ああ。・・・補足として言うなら、カレンや枢木スザクとも同級生だし、生徒会でも一緒だぞ。」
絶句。桐原が危険だと言った訳が良くわかった。
「・・・そうか、スザク君と・・・。」
「ええ。思ってみれば、随分な再会の仕方でしたよ。テロリストがクロヴィスから奪った“毒ガス”の・・・新宿の事件に巻き込まれましてね、その時、テロリストと間違えられて、スザクからとび蹴りを喰らったんです。」
「・・・それは・・・。」
「7年前に初めて会った時も、ぶん殴られましたし、ろくな出会い方してないですね、俺達。」
ひょい、と竦められる肩があまりにも薄くて、藤堂は、今までこの薄い肩にどれだけのものを背負わせてきたのだと反省する。
「“ゼロ”よ、その・・・わしからも、良いだろうか?」
仙波が尋ねる。ルルーシュが視線を向け、頷くと、仙波は口を開く。
「7年前、枢木家、という事は、開戦前に日本にいた、ということになる。・・・その理由を聞いても良いだろうか。あの不安定な情勢の中、どうして・・・。」
「仙波、それは・・・!」
藤堂が慌てたように声を出す。それを制したのは、ルルーシュ自身。
「藤堂さん、良いですよ。・・・知りたいのなら、答えてやる。俺があの当時日本にいたのは、表向きブリタニアからの留学生として、まぁ、ハッキリ言えば人質として、送られたからだ。」
「人質?」
朝比奈が首を傾げる。
「・・・ああ。お前の質問に、藤堂さんはルルーシュと答えただけでファミリーネームを答えなかった。・・・知っているのにも関わらず、だ。それは、俺の立場を考えての事だろう。だから、俺がそれを答えてやる。」
「ルルーシュ君!!」
藤堂が立ち上がり、ルルーシュの肩を掴む。
「・・・藤堂さん、貴方の為の四聖剣でしょう?・・・信じてないんですか?」
「いや、それは・・・だが・・・。」
コトリ、と心底不思議そうに首を傾げたルルーシュに、藤堂はドギマギとして、顔を赤くしながら、言葉を紡ごうとする。
「・・・中佐が言いよどむ姿なんて、始めてみたぜ。」
卜部が呆然と呟けば、朝比奈と千葉も頷く。
「ルルーシュ君・・・。本当に良いのか?」
「構わない、と言ったはずですよ。・・・仙波、すまなかったな。話がそれた。」
藤堂の手を外させ、ルルーシュは仙波を振り返る。
「い、いえ。」
ヒタ、と美貌の少年に見据えられ、仙波は年甲斐も無く、頬を赤らめる。
「・・・俺の本当の名は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。今は鬼籍に載ったとされる、ブリタニア帝国の第11皇子、元第17皇位継承者だった。」
明かされた真実に、四聖剣は元より、聞いていた藤堂や桐原ですら呆然とする。それほど、あっさりとルルーシュは言ってのけたのだ。
「・・・皇子・・・ブリタニアの?」
目を見開いたまま、朝比奈が呟く。
「そうだ。・・・憎いか?ブリタニアの名を持つ、俺が。」
そう言ったルルーシュに、四聖剣はハッとして顔を上げ、ルルーシュを見つめる。その目は冷え冷えとした色をたたえ、背筋が凍る。
― 試されている。
藤堂はその目を見た瞬間、そう思った。もし、四聖剣が彼を拒絶したら・・・自分達は容赦なく捨てられる。そこまで考えて、はた、と藤堂は考える事を止める。“捨てられる”という言葉が、頭の中をぐるぐると回る。
「・・・ダメだ。」
突如、藤堂が動き、再びルルーシュの肩を掴む。完全に四聖剣へと意識を向けていたルルーシュは、突然の藤堂の行動に、ギョッとして、固まってしまう。やはり、イレギュラーには弱い。と再確認しつつ、何を言い出すのかと、藤堂をしげしげと見つめる。
「・・・否定などさせない。憎しみなど抱かせない。・・・四聖剣は、俺の物だ。俺と相反する感情など持たせないし、仮令、持ったとしても、押し殺させる。・・・だから、ルルーシュ君、いや、ゼロ、俺を、俺達を捨てないでくれ!」
両肩を掴まれ言い募られた言葉に、ルルーシュは一瞬、真っ白になる。
「・・・と、とうどぅ、さん?」
思わず、舌が縺れる。
「・・・くっ・・・くくく・・・はははははははっ!」
肩を震わせ、耐え切れないとばかりに笑い出したのは、桐原。
「ず、随分と、まぁ、凄まじい殺し文句というか、熱烈な愛の言葉というか・・・くくく。」
桐原が腹を抱えて笑い転げるという珍しいものを目にしながらも、ルルーシュの思考は未だにフリーズしたまま。
それというのも、真剣な藤堂の口から、あんな言葉が出てきて、さすがにショックが大きかったというのもある。
四聖剣にしてみても、藤堂がよもやあんな事を言い出すとは思ってもいなかったので、呆然と藤堂を見つめている。
「・・・捨てないで、くれ。」
懇願するように言い、そして、縋るように両肩を掴む手に力が篭る。
「・・・止めてください。そんな、言い方。藤堂さんらしくない。・・・一言で良いです。たった一言。“裏切らない”それだけで良いです。」
ようやく飛んだ意識が戻ってきたルルーシュは、そっと嘆息し、藤堂を見つめる。
「・・・わかった。俺は、俺達は、君を裏切らない。絶対に。」
「・・・なら、良いです。信じます。」
フッと笑った顔に、藤堂は安堵の笑みを浮かべ、肩から力を抜く。
「良かった・・・。捨てられたら、どうしようかと・・・。」
「・・・だから、さっきから、何なんです?捨てられるって。・・・むしろ、それは俺のセリフでしょう?」
首を傾げるルルーシュに、桐原は笑いすぎて息も絶え絶えになりながら、答えてやる。
「と、藤堂はな、くくく。・・・四聖剣がお前を拒絶したら、自分を含めた全員がお前に捨てられると思ったんだろう。お前の一貫した徹底振りは、昔を知っているわしや藤堂にとっては、想像に難くない。」
「だからって、いきなり・・・あれですか?」
呆れた声を出すルルーシュに、藤堂はグッと詰まる。
「・・・面目ない。つい、取り乱してしまって。」
「いえ・・・良いですけど。(面白いものを見た気がする。多分。)」
ルルーシュは首を振ると、四聖剣へと向き直る。
「お前達は良いのか?・・・今の発言は、許容できるものなのか?(しかも、さりげなく俺の物発言されてるしな。)」
「・・・俺は全然構いませんよ~。(俺の物だってさ。藤堂さんがそんな事言ってくれるのって初めてだし。)ってか、ゼロの持論は、過程より結果でしょ?だったら、皇族だったとか、過去の事なんて、どうでも良いじゃない。今だよ、い・ま。」
あっけらかんと言ったのは朝比奈。
「・・・私も、朝比奈の意見に同感だ。」
「俺もだ。・・・ゼロ、お前が学生だろうが、皇族だろうが、そんな事は関係が無い。・・・日本を、取り戻してくれるのなら、俺達は、お前と共に戦う。」
千葉が朝比奈に同意し、卜部がニヤリ、と笑って告げる。そして、その3人が一番の年長者である仙波に視線を送る。
「・・・わしも、お役に立てることがあるのなら、いくらでも、老体に鞭を打って、力となりましょうぞ。」
力強く頷き、仙波が答えると、明らかにルルーシュの纏う空気が変わった。
「ルルーシュ君?」
藤堂が心配そうに顔を覗き込むと、ルルーシュの目にうっすらと涙が溜まっているのがわかった。ギョッとする藤堂に、ルルーシュは真摯な表情を向ける。
「・・・信じて良いですか?・・・信じさせてくれますか・・・?・・・俺は、貴方達を、信じて、良いですか?」
― ああ、守らなければ。この子を。
それが、この場にいる、大人達全員の思いだった。
「もちろん。・・・信じて欲しい。俺達は、けして裏切らない。もし、言葉だけでは足らぬというのであれば・・・何にでも誓うし、行動する。」
藤堂が口にすれば、四聖剣もしっかりと頷く。
「・・・言葉だけで充分です。」
ニコリ、と笑う顔は心底信用した者にしか見せないものだと、藤堂だけが気付く。それは、あの夏の日、ナナリーに対してだけ見せていた笑顔だから。
「・・・ありがとう。・・・本当に、生きて再び君に出会えた事、嬉しく思うよ。」
藤堂も滅多に見せない笑みを見せ、ルルーシュにそう告げる。
「それです!」
唐突に。朝比奈が声をあげる。
「それ・・・?」
「そう、それです!・・・生きてって事は、死んでいたと思われてたという事でしょ?“ゼロ”も鬼籍に載ったとか言ってたし・・・。」
ああ、それか、と納得したルルーシュは、皇宮での事件、皇帝からの言葉、そして、あの夏の日の誓いの事を四聖剣に話して聞かせる。
「・・・そんな・・・。」
桐原が言っていた、裏切られてばかりの人生。それも、たった17の少年が、何度その短い人生の中で裏切られてきたのか。
「・・・日本が敗戦して・・・俺と妹は母の後見だったアッシュフォードに匿われて、死を偽造し、今まで生き延びてきたんだ。」
「ブリタニアは憎いが、アッシュフォードには感謝だな。・・・“ゼロ”を守っていてくれたんだからな。」
卜部が嘆息し、ルルーシュを見つめる。
「・・・ああ。アッシュフォードには本当に感謝している。・・・だが、このまま、鳥籠の中で暮らしていく事はきっと難しい・・・だから・・・ブリタニアをぶっ潰す。・・・力を貸して欲しい。」
「もっちろん!」
「任せておけ」
「いくらでも貸してやるぜ。」
「何でも申し付けてくだされ。」
ルルーシュの言葉に、四聖剣が応じる。思わず泣きたくなるが、ポン、と肩を叩かれ、そちらを向く。
「・・・俺達は裏切ること無く、君の傍にあろう。」
「藤堂さん・・・。」
ルルーシュの安堵の表情。それを間近で見る事ができ、藤堂は満足する。
「やれやれ、年寄りのお節介が功を奏したようじゃな。」
桐原の声が響き、ルルーシュはすっかりその存在が頭の中から飛んでいたという事に気付き、バツの悪い表情を浮かべる。
「・・・公・・・機会を作って下さった事、感謝します。・・・ですが、今後一切、この様なやり方はしないで頂きたい。」
苦虫を噛み潰したようなルルーシュの表情と声。桐原は嘆息する。
「やれやれ、報われないのは、ワシだけか・・・。まあ、考えておく。」
「・・・やめろって、言ってるのに・・・。」
ボソ、と呟くルルーシュの声が届いているのかいないのか、桐原はにやりと笑う。
「この事、神楽耶様には報告させてもらうぞ?」
「・・・もう、好きにしてください。」
ガックリと肩を落とすルルーシュと確信犯的な桐原を見比べ、藤堂と四聖剣は視線を交わす。思った事はほぼ同じ事。
「「「「「(た、大変だなぁ、“ゼロ”(ルルーシュ君)も。)」」」」」
その後、黒の騎士団内で藤堂がやたらとゼロを気にかけ、四聖剣が何かとゼロを構う姿が見かけられるようになった。
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