2012/08/05 (Sun) ２２．死を振りまく獣

注意
・　時美・小夢・珠羅・秀華・白輝・藍・蒼夜・千坐がメインのオリジナルキャラクターになります
・　渦の国は滅んでいません。したがってすべてがオリジナルの設定となります
・　よろしいですね？注意はしましたよ？
・　では、どうぞ・・・↓

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「・・・つまり“死を振りまく獣”とは、形無き妖魔なんですね？」

「・・・ええ」

確認する蒼夜《そうや》に、暉莉《きり》は頷く。

「それじゃ、どうやって・・・」

「今は、形を持っております」

呟いた時美《ときみ》に視線を向け、暉莉はハッキリと告げた。

「“死を振りまく獣”は死人の身体を乗っ取ります。ですから妾達には・・・どうしても倒せない。・・・妾達は、民を守る義務があります。いくら死人とはいえ、民であったものに刃を向けることはためらってしまうのです。・・・それが、最大の弱点となってしまう」

暉莉はそう言い、深々と頭を下げた。

「どうぞ・・・お頼み申します」

「・・・わかりました」

蒼夜は頷く。

「ですが、任せて戴いた以上、我々のやり方でやらせて頂きます。よろしいですね？」

「かまいません」

暉莉はそう言って、すぅ、と目を細めた。

「・・・貴方方が思っているよりもずっと・・・あの獣は狡猾です。どうか、お気を付け下さいませ」

暉莉の態度に不自然なものは感じなかった。が、忍としての勘だろうか、嫌な予感がして落ち着かない。

蒼夜は白輝に視線を向け、微かに目線を上にあげる。その合図に気付いた白輝はこくりと頷いて立ちあがった。

「・・・私は状況を調べるわ。・・・蒼夜はその子達をお願い」

「わかった」

動き出した蒼夜と白輝にその本性を知る面子は、背中に冷や汗が流れるのを感じた。



＊＊＊



「ナルトは・・・大丈夫かしら」

久留里《くるり》の看病をしながら、クシナが呟く。

「大丈夫ですよ。・・・皆がついてるんですから」

ニッコリと笑った秀華《しゅうか》に、クシナはホッと息をつく。

「そうね」

「そうですよ！お姉ちゃんと白輝さんが組んだら、最凶《さいきょう》ですから！」

力説した藍《らん》に、秀華は表情を引き攣らせた。

「・・・藍ちゃん？なんか、今、“さいきょう”の“きょう”が“強”じゃなくて“凶”だった気がしたんだけど・・・」

「秀華先生、それであってるんです。最凶なんです。・・・わかりますよね？」

「・・・・・・・・・・・・うん。すごーく、わかる」

友人であるがゆえに否定しようと思うものの、どうしても否定する材料が思い当たらず、秀華は苦笑をうかべて頷いた。

「ふふっ。それは、心強いわね」

クスクスと笑ったクシナに、秀華と藍はホッとする。

一時期は精神的に不安定になっていたが、どうやら持ち直したらしい。

「“死を振りまく獣”は形無き妖魔。・・・死者の身体を奪い、それを器とする」

「久留里！？・・・大丈夫？」

「はい。クシナ様。・・・我々では奴を止められず、このようなことに。本当に申し訳ございません」

深々と頭を下げる久留里に、秀華が首を傾げる。

「さっき、死者の身体を奪い、と言いましたね？・・・だから、“死を振りまく獣”と言うんですか？」

「・・・いいえ。アレは、その名の通り、死を振りまくのです。アレに触れられたものは死人となってしまう。そして感応力の強い者は、触れられずともその影響を受けやすくなる」

久留里の答えに、ナルトの渦の国行きにクシナが強く反対した理由を悟り、秀華は絶句した。

「即効と遅効、それはそれぞれのタイプによって分かれているようですが、感応力の強い者は近くにいればいるほどその邪気に中《あ》てられやすいようです」

「暉莉は・・・抑え切れていないのね？」

クシナの確認に、久留里はこくりと頷く。

「私の見ていた限りでは、暉莉姫様も引き摺られているように見受けられました」

「・・・危惧《きぐ》していたことが、現実になったのね」

クシナが俯く。

「わかってたの。あの子では抑えきれないだろうことも。・・・でも、私はミナトを選んでしまった」

「当然です。クシナ様はあのようなところに収まるような方ではありません。・・・風切り羽を切り取られた鳥のように・・・檻に閉じ込められて・・・」

久留里は首を振る。

「国を想うのはわかりますが、それが誰かの犠牲のもとに築かれる平和ならば、それは真の平和と言えるのでしょうか？」

「・・・そうね・・・私の立場ではそれを指摘することはできなかったけれど」

クシナが苦笑をうかべれば、久留里は肩を竦めた。

「当然です。そう言わせない雰囲気があの国にはあった。・・・クシナ様は自由を選んでいいのです。民も皆そう思っています。・・・そう思っていないのは国の重役達だけです」

「そうね。・・・暉莉には重荷だったかもしれないわ」

「でも、それでうずまき君を犠牲にしようって考えは、おかしいわ」

藍が言えば、久留里が苦笑する。

「ええ。お嬢さんの言う通りですね。・・・しかし、暉莉姫様が完全に邪気に中てられてしまった場合、どうしたら・・・」

「・・・ん～・・・じゃあ、藍ちゃんを派遣するのはどうでしょうか？」

秀華が突然としてそう言いだし、久留里は目を丸くする。

「まだ、アカデミー生なのでしょう？」

その問いに秀華はニッコリと笑い、久留里の唇の前に指を立てた。

「・・・あ、そうか、藍ちゃんは岩永《いわなが》一族の中でも取り分け“そっちの力”に長けていたわね」

クシナが突如思い出したように言えば、秀華は満足げに頷く。

「ええ。岩永一族は元々は“結界術”に長けた忍を多く輩出する一族です。小夢と藍ちゃんのご両親はその結界術であの九尾から里の生活区域を完璧に守っていましたし。それも、他の結界班が戦闘に駆り出されて２人っきりになっても、ですよ？」

「私が身重で不安に思ってるだろうって、藍ちゃんのお母さんはその場に結界の軸を作ってくれたのよね？ご自分も身重だっていうのに」

「でも、私１月生まれですから、クシナ様よりはまだ動けたと思いますよ」

「ええ。そうね。とても助かったわ」

フフ、と目を細めるクシナに、藍はニコリと笑った。

「私はどちらかと言うと“一族の原点となる力”が強いので。・・・良いですよ別に。渦の国に行っても」

「う～ん・・・でも、心配だわ」

クシナが困ったように眉根を寄せる。

「クシナさん、大丈夫ですよ。藍ちゃんは白輝の弟子なんですから。そこらのくの一よりも優秀です」

「お姉ちゃんにもいろいろと叩きこまれてますから！」

秀華と藍にそう言われ、クシナは、そう？と心動かされたように首を傾げる。

「あの・・・“そっちの力”とか“一族の原点となる力”というのは・・・？」

話についていけなかった久留里に、藍があぁ、と破顔する。

「結界の原点って、なんだと思います？」

「結界・・・守る？拒絶・・・いや、封じる・・・あ！封印、ですか？」

「ピンポーン！・・・私、封印術が得意なんです」

ニッコリと笑った藍に、久留里はほう、と溜息をついた。

「さすがは木ノ葉。良い人材が揃っていますね」

「ええ。自慢の里よ」

幸せそうにクシナは笑った。

「・・・やはり、クシナ様はそうやって笑っているのが一番ですね」

久留里は続ける。

「渦の国にいらした時は、本当の笑顔を拝見できる機会はほとんどありませんでしたし」

「・・・そうね。心から笑えたことは無かったかもしれないわ」

「やはり、クシナ様は渦の国を出られて良かった」

ホッと息をついた久留里に、クシナは目を細めた。

「・・・暉莉も助けてあげなければね。・・・あの子は、国に囚われすぎている」

「ええ。・・・藍さん、貴方のような幼い少女にお任せしてしまうのは大変申し訳ありませんが・・・」

「大丈夫ですよ。私達の一族は元々はそういったことを生業としていたらしいですよ？・・・木ノ葉ができる時に初代火影がそれを重宝がって里に招き入れて戴いたんだって、お父さんとお母さんに聞きました」

藍が誇らしげに答える。それに対して久留里は目を細める。

「結界術や封印術に通じている忍はどの里でも重宝がられます。・・・尾獣、人柱力という存在がある限り、それは変わらないでしょう」

「そうですね・・・その身に妖魔や神獣の力を降ろす術は、人柱力と尾獣以外にも多く存在します。・・・ただ、とびぬけて強いのが人柱力と尾獣というだけで。だから、私達はそういった術の実験台になった人達を救うためにも、結界術や封印術を絶やすことなく伝えていかなければならないんです」

「わかります。渦の国も同様の術が多く伝わっていますから・・・」

藍の言葉に久留里は頷いて、その反動でぐらり、と身体が揺れる。

「久留里、まだ、寝ていないと・・・」

「いえ。大丈夫です。・・・すみません」

慌てて背を支えるクシナに笑みを向け、久留里は懐を探る。

「・・・暉莉姫様の様子がおかしかったので・・・これを持ってきておいて良かった」

久留里が取り出したものは、一冊の青い本。

「これ、門外不出の・・・戦姫のみが開ける封印の書じゃないの！！」

ギョッとしたクシナに、久留里はその本を差し出した。


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