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Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)

このサイトは、コードギアス・NARUTO・銀魂の二次創作サイトです。原作者様とは一切関係ありません。各ページの注意事項をよく読んでから閲覧してください。

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注意
・最年少暗部シリーズをお読みになりましたか?(大前提ですよ?)
・スレシカスレナルです!
・二次創作であることをお忘れなく

以上、同意できる方のみ↓へ・・・









 そんなこんなで暗部へ入隊したシカマル。今日は、入隊して初めて詰め所に顔を出す日だった。

 扉の前で緊張するシカマルの肩をナルトが軽く叩く。

「大丈夫だよ、シカの事はみんな知ってるから。」

 だから、恐いんだとは言えず、シカマルはひきつった笑みをうかべる。

 ナルトに九尾が封じられてより、護衛と教育に携わっていた暗部達。その彼らが、横からナルトをかっさらった形になるシカマルに、どんな感情を抱いているのか、考えるのも恐ろしい。

「ほら、行こう?きっと、首を長くして待ってるよ。」

 ニコニコとナルトに促され、シカマルは覚悟を決めた。

「・・・そうだな、行くか。」



 扉を開いた瞬間、パンパン、と何かが破裂するような音がして、シカマルは反射的にポーチに手をやった。が、次の瞬間、ひらひらと舞う紙吹雪を見て、目を点にした。

「あ~・・・もう、なにコレ。」

 溜息をつきつつ、シカマルの横でナルトが呆れた声を出す。

「誰が片付けるか決まってるの?・・・俺、ヤだよ。」

「ナル坊にはやらせないさ。なぁ、皆。」

 シカマルの様子にクツクツと笑いながら、暗部の一人が言うと、皆が同意するように頷く。

「・・・もう・・・ごめん、大丈夫?」

 ナルトに顔をのぞきこまれ、シカマルは顔を真っ赤にして頷く。

「あ、ああ、大丈夫だ。心配すんな、そんなに驚いてねぇから・・・いや、別の意味じゃ驚いたが・・・。」

「別の意味???」

 首を傾げるナルトだが、他の暗部達には通じたようで、ニヤニヤとこちらを見ている。そして、先程ナルトと話していた暗部がシカマルに近づいてくる。

「俺は暗部専任者の陽光(ようこう)だ。歓迎するよ、奈良シカマル君。・・・ああ、こう呼んだ方が良いか、“鋭裏”?」

「・・・そっちで呼んでもらえると、ありがたいっス。・・・よろしく。陽光さん。」

「まあ、君とナル坊との事は、全部、千坐さんやカカシさんから聞いてるし、気にする必要はないからね。・・・後は、実際に一緒に任務をしたりしながら、慣れていってもらえれば良いから。」

 面を取り、人好きのする笑みを浮かべ、陽光は言うと、後ろに控えていた暗部達を手招く。

「ここにいるのは暗部専任者ばかりだ。・・・まとめ役の千坐さんは、今、任務中でいないが、そのうち会えると思う。」

 シカマルの前にずらりと立った暗部達は、次々と面を取った。

「はじめまして。陽光の双子の妹で、陽菜(ひな)よ。」

「俺は、紫根(しこん)だ。」

「あたしは若草(わかくさ)・・・解部との連絡役に携わってるから、会ったことはあるわね?」

 確認されて、シカマルは頷く。

「ああ、何度か、会ってるっスね。」

「僕は煤竹(すすたけ)です。・・・一番、ナルト君やシカマル君に年が近いんですよ。でも、この中では結構古株なんです。」

「ちょっと、年のことは言わないでよ!まるで、あたし達がおばさんおじさんみたいじゃないの!」

 若草がばしん、と煤竹を叩く。

「みたいじゃなくて、そうでしょうが。」

 煤竹は叩かれた背中をさすりながらも、負けじと言い返す。

「あら~・・・よっぽど死にたいみたいね?」

「僕の方が実力は上だったと思いますが?」

 突如として睨み合う2人に、シカマルは呆然とするが、トントン、と肩を叩かれ、フッと横を見る。

「ほっといて良いのよ、いつもの事だから。・・・で、私が李(すもも)よ。私達、暗部専任者は、主に暗殺や諜報がメイン。カカシ先輩みたいな兼任者は、大物の警護や監視、それに、通常任務の中でもSランクを超える任務にあたるのが常ね。」

「・・・へぇ・・・で、兼任者ってのは、カカシさんって人だけっスか?」

「いいえ?・・・今は潜入任務中のうちはイタチ君とか、他にもたくさんいるわよ。それに、暗部専任者も、私達だけではないし。・・・ね?ナルト?」

「うん。・・・李ちゃんの言う通りだよ、シカ。・・・ただ、ここにいる面子は、俺やシカとよく組む面子になると思うから、仲良くしてくれれば良いなって思う。」

 李に話を振られたナルトは、ニコニコと答える。

「そっか。・・・で、お前の素性を知らねー奴らもいんだろ?」

 シカマルの問いに、ナルトは小さく頷く。

「うん。・・・その面子はおいおい。・・・まあ、じいさまの意思だけで選んでると思われがちだけど、結構、上層部からの推薦もあって、断れないらしいんだよね。・・・それに、“根”からの派遣もいるし。」

「“根”か・・・俺はあんまり近寄らねぇ方が良いんだろ?」

 シカマルの確認に、ナルトは頷く。

「できればね。・・・任務が一緒になることは無いから、後は普段の集まりの時とかなんだけど、向こうから話しかけて来ても、あんまり自分のことは話さない方が良い。」

「りょーかい。・・・で、いつもこんなに詰め所はガランとしてんのか?」

「ん~・・・今日は特別かな?」

 ナルトが陽光を振り返ると、陽光も頷く。

「ああ。最近仕事が立て込んでね・・・忍び不足も随分と解消されたはいいが、各国ともそれなりに余裕が出てきたせいで、また、怪しい動きをする連中も増えてきてるんだ。」

「成程・・・全然懲りてねーってワケか・・・。ったく、しょうもねぇ・・・。」

 ぼやくシカマルに苦笑をうかべ、陽光達は視線を交わす。

「・・・あ、そういえば・・・千坐君って、いつ帰ってくるかわかる?ちょっと頼み事したいんだけどな・・・。」

 ナルトがぽん、と手を打つ。陽光達は、それぞれが首を傾げる。

「さあ・・・千坐さんは、最近単独が多いからな・・・全員の任務を把握してるのは、火影様とカカシさんと千坐さん本人だから・・・カカシさんも見当たらないし、後は、火影様に訊くしか・・・。」

「そっか・・・じいさまに訊くしかないかぁ・・・。」

 どうしようかな、と呟くナルトに、シカマルが首を傾げる。

「あ~・・・何を頼むつもりなんだ?」

「ん~・・・ちょっとさ、ある人物について調べて欲しくて・・・。」

「それ、俺がやろうか?」

 シカマルの思わぬ言葉に、ナルトは一瞬キョトンとし、それから眉を顰めた。

「・・・でも、シカは、あいつの顔は知らないだろうし・・・。この中でも知ってるのは、紫根君くらいだと思う。」

「俺か?・・・ああ、奴のことか・・・そういや、最近はなりを潜めてるな。」

 名前を出された紫根は、ひょい、と肩を竦める。

「だから余計に怖いんだよ、なんか企んでそうで。」

 ナルトも肩を竦め、溜め息をつく。

「・・・そんなにヤバい奴なのか?」

 シカマルが訊ねると、ナルトはこくりと頷く。

「うん・・・あ、そうだ、シカクさんに訊くと良いかも。シカクさんも会ってるから。」

「親父が?・・・へぇ、で、なんて名前なんだ?名前くらいはわかんだろ?」

「・・・樹・・・。」

 ナルトは様々な感情が綯い交ぜになった表情を浮かべ、その名を呟いた。

「樹・・・か、わかった。親父に訊いてみる。」

 なぜ、ナルト自身が説明したがらないのか追求せず、シカマルはそう言って引き下がった。

 それを見た陽光達は感心してしまう。どこでナルトとの会話を打ち切るべきか、シカマルはちゃんと把握しているのだ。それが把握できないと、悪くすれば機嫌を損ねたり、辛い思いをさせたりしてしまう。

「そのうち、鋭裏にも二つ名がつくかもな・・・。」

 くつり、と笑い、陽光が言うと、シカマルは、ギョッとする。

「マジっスか・・・メンドクセー・・・。」

 いつもの口癖が出たことで、その場が笑いに包まれる。

「・・・お~、なんだか楽しそうだねぇ?」

 そこに、のんびりとした声が響く。

「あ、カカシ君、お帰りなさい!!」

 にこぉ、と笑みを浮かべたナルトに、シカマルはお?と思う。そして、カカシと呼ばれた暗部を見て、す、と目を細めた。

「・・・成程、ナルの暗部姿は、あんたが見本ですか。」

 そう言ったシカマルに、カカシは肩を竦めた。

「よくわかったねぇ、シカマル君。・・・ま、一応、ナルトの教育係筆頭の1人だからねぇ。ちなみに、もう1人は千坐っていう暗部なんだけど。」

「へぇ・・・。」

「・・・ナルトのこと、よろしくね?」

 にこり、と笑いカカシが手を差し出してきたので、シカマルはにやりと笑んで、その手を掴む。

「もちろんっす。」

 そんな2人をニコニコと眺めていたナルトが、カカシの服の裾を引っ張る。

「ん?どーしたの?」

「・・・千坐君の居場所知らない?」

「千坐?・・・そうだねぇ・・・任務は今日は入ってないから・・・“根”かな?」

「“根”か・・・やっぱり忙しいかなぁ・・・。」

 2人の会話に聞き捨てならない単語が入っていたのに気づいた陽光が慌ててストップをかける。

「何?陽光。」

「何?・・・じゃありません!・・・なんで千坐さんが“根”に行くんですか!!」

「ああ、なんかねぇ“根”の方で良い素材を見つけたって言うんで、見に行ってるんだよね。暗部の方に引っ張ってくるつもりみたいだよ?」

「“根”の連中からですか!?・・・危険なんじゃ?」

「ん~・・・でも、まだ、子供みたいだし、そんなに染まってないと思うんだけどね。・・・たとえ染まってても、別にかまわないさ。深い所に関わらせなければいいんだから。」

「深い所って・・・なんでまた“根”なんかに・・・。」

 困惑する陽光達に、カカシはヘラっと笑った。

「火影様にはナイショだよ~?」

「・・・ほっ・・・火影様にも内緒なんですか!!!!」

 慌てる陽光に、カカシはクツクツと笑った。

「大丈夫。火影様も薄々は気付いてるからさ。・・・俺らのこと信用してくれてるし、色々任せてくれてるだけだから。いい結果が得られれば、すぐに報告するって。」

「は・・・はぁ。」

 未だに納得のいかない風な様子を見せるが、カカシが一度言いだしたことを取り消す事など無いことはわかっているために、陽光は黙り込んだ。

「さて、ナルト~。なんで、千坐を探してるのかな?」

「あ・・・えっと・・・。」

 言い難そうにするナルトを見て、カカシは眉根を寄せた。

「ん~・・・俺には言えないことかなぁ?」

 のぞき込むカカシの目に、ナルトはぐっと詰まってから、がくりを肩を落とした。昔から世話になっているカカシには、どうしても強くは出られないのだ。

「樹のこと、調べてもらおうと思ったんだ。・・・でも、忙しいなら、俺が調べようかなぁ・・・。」

「「それはダメだ!!」」

 カカシと紫根が声を揃える。樹を知る2人からの反論に、ナルトは目を丸くする。

「べ、別に、直接調べに行くわけじゃないのに・・・。」

「それ以上に、樹に関わっちゃダメ。・・・ようやく、なりを潜めてくれたのに、藪蛇は止めようね。」

 真剣にカカシに諭され、ナルトは、渋々頷いた。

「・・・わかったってば。」

「そんなに危険な奴なんスか?」

 純粋に不思議に思ったシカマルは首を傾げる。

「・・・まあ、互角に相手できるのは、ナルトくらいかな?・・・後は、力の使い方さえ完璧になれば、君も互角に持ち込めるかもね。」

「・・・見られてた・・・?」

 シカマルが神の力を手に入れたことを知っているからこその発言に、シカマルはどこで見られていたのかと首を捻った。

「ま、暗部の情報網を甘く見ないこと・・・と言いたいところだけど、実際は自来也様から聞いたんだけどね。」

「ああ、蝦蟇仙人。」

 ぽん、とナルトが手を打つと、カカシは苦笑をうかべる。

「あの人、そうやって名乗ったの?」

「いや。・・・黒神が蝦蟇のって言ったから・・・。」

「ナルホド。・・・ま、ともかく、こちらから樹には関わらないこと。良いね?」

「・・・はーい。」

「うん。素直で大変よろしい。」

 にっこりと笑って、ナルトの頭を撫でると、カカシはシカマルに向かい、ひらりと手を振った。

「ナルトが危ないことしそうになったら、止めてあげてね。・・・君の言うことなら聞くみたいだし。」

「・・・あ、はい。」

 こくん、と頷いてから、シカマルはカカシを凝視する。

「ん?何?」

「・・・あ、いえ。・・・兼任ってことは、上忍だか中忍だかで任務してるってことっすよね?」

「そーだよ。・・・上忍のはたけカカシ、ね。兼任だけど、暗部名は無いから、そのまま呼んでくれて大丈夫だよ。」

 にへらと力の抜けた笑みをうかべたカカシに、シカマルは捉えどころの無い印象を持つ。

「・・・読めねー人っすね。」

「はは。そうかなぁ?・・・暗部には、俺よりもっと複雑な奴もいるからね。充分、気をつけることだ。」

 忠告めいたものを残し、カカシは陽光と共に、部屋の奥に行ってしまう。

「シカ、どうかした?」

 じっとカカシの背を見送るシカマルに、ナルトが首を傾げる。

「いや、なんか、不思議な人だなって思っただけだ。」

「ん~・・・生まれた時から傍にいるから、俺はよくわかんないや。・・・あと、シカに会わせたいのは千坐君だけ、か。・・・でも、“根”に行ってる間は会えないからなぁ・・・。」

「いいさ。また、紹介してくれ。・・・一気に紹介されなくても、いつかは顔を合わすだろうしな。」

「うん。」

 ニコリと笑ったナルトにつられ、シカマルも笑みをうかべる。

「あら、可愛い。」

 ひょこっと顔を覗きこまれ、シカマルもナルトもギョッとして身を引く。

「わ、若草ちゃん・・・。」

「び、びっくりした・・・。」

「つくづく珍しいわね、ナルトが気配に気づいてなかったのもだけど、そんな笑顔、久しぶりに見たわ。」

 若草の言葉に、ナルトとシカマルは顔を見合わせ、そして、クス、と笑い合う。

「ナルはこん詰め過ぎなんだよ、ちょっと、気をつけねーとな?」

「わかった。・・・若草ちゃんもごめんね、なんか、最近ずっと顰め面してた自覚はあるんだ・・・。」

「まあ、いいわ。・・・どうやら、シカマルのおかげみたいだし。今度から、私達にもちょくちょく笑顔を見せてね。」

「うん!」

 元気の良い返事に満足そうに頷いて、若草は談笑している暗部専任者達の輪に戻る。

「心配かけちゃってたんだろうなぁ・・・。」

「これからは気をつけりゃいいさ。・・・悩みがあれば、俺が聞いてやっからよ。」

「うん。ありがと、シカ。」

 はにかんだ笑みが可愛らしい。シカマルは頬を赤く染め、照れた様子で後頭部を掻いた。



 アカデミーの中庭のブランコ。それに揺られながら、ナルトはボーっと空を見上げていた。

「おう、ナルト、どうしたんだよ。しけたツラして。」

 声をかけてきたのはキバ。へらへらと笑いながら近寄る彼に、ナルトはニヤリと笑う。

「次のいたずらはどんなのをやろうっかなーっと考えてたんだってばよ♪」

「へ~・・・また、イルカ先生に怒られっぞ~?」

「ふふん、イルカ先生が怖くていたずらなんてできるかってばよ!」

 ぴょん、とブランコから飛び降り、ナルトはそのまま中庭を突っ切って走っていく。

「・・・なーんか、元気ねーように思ったけど・・・気のせいだな。」

 呆れた様子で見送ったキバを、二階の窓から眺めていたシカマルは、フッと息をついた。

「はぁ・・・最近、あいつの仮面が緩んでるみてぇだな。アカデミーで考えごとなんて・・・あいつらしくねぇ。」

 後で問い詰めようと決めて、シカマルは共犯者の元へと向かう。

 教室をぐるりと見回すが“彼”の姿が見当たらない。残っていたクラスメイトに聞いて回るが、一向に答えを持つ者はいない。

「ちっくしょー・・・こんな時にみつからねーなんて・・・ったく。」

 毒づくと、トントン、と肩を叩かれる。

「ちょっと~・・・誰か探してるの~?」

 後ろを見れば、よく見知った相手。そういえば、こいつは“彼”のことをよく把握していたなと思いだす。

「あ~、イノ?・・・サスケを見なかったか?」

「サスケ君~?・・・そういえばぁ、アカデミー裏の演習場の方に歩いて行くのを見たけど~。」

「・・・サンキュー。」

 パッと身を翻したシカマルを、目を点にして見送るイノは、ぽつりと呟く。

「・・・シカマルって、サスケ君と仲が良かったかしらー・・・?」

 アカデミー裏の演習場に行くと、サスケの姿を見つける。

「・・・シカマル、か?」

 気配を読んで、サスケが振り返る。

「おう。・・・ちょっと、話がある。」

「・・・構わないが・・・場所を変えた方がよくないか?」

「大丈夫だろ。・・・周りにや誰もいねぇよ。」

 ツカツカと歩み寄り、シカマルは、サスケの側に歩み寄る。

「・・・なぁ、お前、樹って知ってるか?」

「樹?・・・ああ、兄貴に聞いたことがあったな・・・。」

 サスケは少し考え込むようなそぶりを見せ、兄、イタチから聞いたという樹に関する情報をシカマルに余すことなく伝えた。

「・・・ふぅん、じゃあ、初任務の時から絡みがあったってことか・・・。」

「ああ。兄貴の話じゃ、それ以降も度々ナルトの関わる任務にちゃちゃを入れに来たらしいが・・・お前の父親との合同任務の時も、ナルトを引き抜こうとして、それに失敗したら、今度は抹殺にシフトしたっていう話だ。・・・イカレ具合はかなりらしいぞ。」

「危険だ危険だって、暗部達が言うのはそういうところから来てるってことか。」

「ああ。・・・どうやら、個人に仕えてる忍らしいが・・・主ってのが誰なのかってのが、全く掴めなかったらしいぜ。・・・で、いきなりどうしたんだよ。そんなこと聞いて。」

 首を傾げるサスケに、シカマルは肩を竦めた。

「いや、木ノ葉の暗部が揃って危険だって言う奴に興味があるんだよ。・・・ってか、ナルが随分と気にしてるんだ。仮面が疎かになるくらいにな。」

「・・・それは拙いな。アカデミーに支障が出てるなら、カカシか千坐に相談した方が良いぜ。」

「・・・あー・・・そうだな。」

 ガシガシと後頭部を掻き、シカマルは微妙な顔をする。

「あの2人は、ナルトのことをよく理解してる。生まれる前からあいつの傍にいるからな。・・・恋人だっていうなら、あの2人とは仲良くしておいた方が良いぞ。」

「・・・あー、いや、カカシさん?は会ったんだが、千坐さんは会ってねーんだよ。」

「そうか、専任は忙しいらしいからな。・・・じゃあ、カカシに相談すれば良いだろ?」

「んー・・・なんか、あの人、掴みどころがないっつーか・・・先が読めねーっつーか。」

 言い淀むシカマルに、サスケは、ああ、と呟く。

「つまり、苦手なんだな?」

「・・・まあ、そういうことになるか。」

 あっさり認めたシカマルに、サスケは苦笑する。

「そうか。・・・ちなみに、兄貴もカカシのことは苦手だったらしい。ナルトは随分懐いてるらしいが。」

「みたい、だな。・・・はぁ、うまくやってくしかねーが・・・メンドクセー・・・。」

「まあ、頑張れ。・・・言っておくが、俺は部外者だからな?」

「わかってるっつーの。・・・じゃあ、まあ、サンキュー。樹のことがわかっただけでも十分収穫だ。・・・ったく、親父の奴、ろくに覚えてねーで、頼りになんねーんだよ。」

 ぼやくシカマルに、サスケは苦労しているなと同情的な視線を向ける。

「はぁ、じゃあな・・・修行の邪魔して悪かったな。」

「いや・・・とりあえず、ナルトのことは気にかけておく。」

「おー・・・。」

 ひらひらと手を振るシカマルを見送り、サスケはフッと上を見上げる。

「・・・だ、そうだぞ。」

「・・・ん~・・・俺、シカマル君に嫌われてるっぽい?」

 屋根から飛び降りてきたのは先程まで話題に上っていたカカシ。実は、シカマルが来る前からサスケの元にいたのだが、シカマルが来て、慌てて隠れたのだ。

「初っ端からからかったりしたんだろ?・・・ったく、溺愛してるナルトを取られたからって、大人気ねぇ。」

「イヤイヤ、誤解だから。」

 疑いの眼差しを向けるサスケに、カカシは苦笑する。

「・・・しかし、シカマル君の目に危ないと映るなら、そろそろヤバいかねぇ。」

「・・・樹、だったか?・・・そうとうヤバいとは聞いたが、ナルトを我慢させる方がもっとあぶねぇんじゃないか?」

「そう思う?」

「“根”の方に行ってる千坐に帰って来て貰え。・・・それ以上は俺も何とも言えねぇ。アカデミーでの姿しか見てねぇからな。」

「わかったよ・・・はぁ、困ったもんだね。ま、ナルトが樹に興味を示す理由はわかるんだけどねぇ。関わらせるとロクなことが無いからねぇ・・・。」

「・・・おい、シカマルにも言えるが、俺はお前達の愚痴を聞くためにいるんじゃねーぞ・・・。」

「・・・あー・・・はは。すまんすまん。許せ、サスケ。」

 ムスッとしたサスケの頭を撫で、カカシはへらりと笑う。

「ったく。・・・俺が兄貴に頼まれたのは、ナルトの世話だけなんだからな。」

「ハイハイ、わかってるよ。・・・じゃあ、サスケ、お前は今まで通りに頼むな。」

「・・・ああ。」

 サスケが頷いたのを確認してカカシは、瞬身の術を使い、どこかへと行ってしまう。それを見やり、サスケは溜め息をついた。

「はぁ・・・シカマルじゃねぇが、めんどくせぇ・・・。」



 ナルトはとてつもない不安に襲われていた。言わずもがな、樹のことである。どうしても、安心していられないという思いがあった。自分を狙うだけならば、まだ良い。だが、もし、里に手を出してきたら・・・。

「それだけは、絶対許しちゃいけないんだ。」

 ぽつりと呟いて、ナルトはフッと空を見上げる。

「・・・はぁ、良い天気。・・・絶好のいたずら日和、だってばよ~・・・って“ナルト”は騒ぐべきなんだよなぁ・・・。」

 自分で作った設定とはいえ、なかなかに無謀な設定だと思う。だが、ドべを演じていないと、上役達に怪しまれてしまう。そうすれば、また、監視下に置かれた孤独な生活を強いられてしまうか、悪くすれば、殺されてしまう可能性だってあった。

「徐々に・・・少しずつ。時間をかけて、周りに認めてもらっていけば良い・・・。」

 自分に言い聞かせるように呟いてから、ナルトはウエストポーチに手を伸ばし、クナイを取り出す。

シュッ!

 勢いよく投げたそのクナイを指で挟む様に止め、その人物はにやりと笑った。

「ようやく、見つけた。」

「・・・なんだ、あんたか。」

 一瞬、ギョッとしたものの、その人物を見て、深く溜め息をついた。

「なんだ、ではないだろう?・・・こうして、わざわざ、ワシが会いに来てやったというに。」

「・・・で?“根”のリーダーであるあんたが、九尾の俺になんの用?」

 得体のしれない笑みをうかべるダンゾウを睥睨し、ナルトは問う。

「そうさな・・・少し“根”の方に来ないか?・・・相談がある。」

「・・・相談?」

 首を傾げたナルトに、ダンゾウは真剣な表情をうかべた。

「お前にしか相談できんことだ。・・・猿飛には伏せておきたい。」

「・・・ふぅん・・・。まあ、いいよ。聞くだけなら・・・な。」

 あっさりと頷いたナルトに、ダンゾウは緩く笑みをうかべた。

「・・・“根”に行くついでに、お前の得意忍術を見せてもらおうか。」

「・・・良くご存じで。」

 ナルトはひょい、と肩を竦めて溜息をつき、ダンゾウの服の裾を掴んだ。

「飛雷神の術!」



 “根”に着いた瞬間、目の前がやたらと暗いことに気付く。

「??」

 首を傾げて上を見ると、暗部面が見えた。見慣れているその面は、千坐の物。ダンゾウに渡しておいた時空間忍術用の目印と千坐の持っている目印とを間違えたらしいと気付き、ナルトは首を傾げた。

「・・・あれ?失敗した。」

 そう呟くと、呆然としていた千坐が我に返る。

「ナルト!?・・・なんで、お前がここに・・・っていうか、なんで、ダンゾウ様と!?」

「いや、なんか、来いって言われて。」

 ケロッとした顔で言われて、千坐は頭を抱えたくなった。だが、ダンゾウがニヤニヤとこちらを見ているので、何とか自制する。

「だ、ダンゾウ様・・・。この子は・・・。」

「そう隠そうとせずとも良い。・・・すでにワシは知っている。」

「!?」

 千坐が息を呑んだのが、気配だけで感じられる。

「そうか・・・世話役にすら話していなかったのか・・・蒼藍?」

「まぁね。・・・あんたと接点があるなんて知ったら、じいさまが心配するしね。」

「ふん・・・猿飛はお前を侮っておるのか?」

「侮ってなんかいないって。ただ・・・甘やかしているだけだ。」

 ナルトが三代目を庇う発言すると、ダンゾウはクツクツと笑った。

「成程、な。・・・まあ、こやつの口止めはお前がするんだろう?」

「もちろん。・・・この事、黙っててね、千坐君。」

「・・・ちゃんと、後で説明するならな。」

「わかった。」

 ナルトはハッキリと頷いて見せ、ダンゾウの袖を引っ張る。

「ほら、話があるんでしょ?・・・行こう。」

「ああ・・・そうだな。」

 大人しく引っ張られるダンゾウを信じられないような面持ちで見つめ、千坐はどうなっているんだ、と呟いた。



 一方、ダンゾウの執務室に来たナルトは、その裾を持つ手を放し、ダンゾウを見上げた。

「じゃあ、さっさと終わらせようか?」

「・・・まったく、可愛げのない物言いをするなというのに。もう少し、会話というものを楽しもうとは思わんのか?」

 ダンゾウが溜め息をつくと、ナルトは肩をひょい、と竦めた。

「なんで、あんたと会話を楽しまなきゃなんないんだよ・・・どうせ、腹の探り合いにしかならないっていうのに。」

「ははは、まったくだな。・・・では、本題に入ろうか。」

 さもおかしいという風に笑い、ダンゾウは、ナルトにソファーにかけるように勧める。

「うん。」

 素直に従ったナルトは、ソファーに座ると、ダンゾウの顔をじっと見つめる。

「・・・実はな、相談というのは・・・まあ、何と言うか・・・“根”の子ども達に、お前がついて色々と指導をして欲しい、と思っているのだ。・・・才能がありながらも、里の中では生きにくい者達が集まる“根”とお前の境遇は酷似しているだろう?」

「・・・まあ、上層部に目を付けられているっていう点ではそうだけど・・・。」

「だからというわけではないが、うちの子ども達の目標になってもらおうと思ってな。」

「目標?俺が??」

 思ってもいない言葉がダンゾウから出てきたので、さすがのナルトも素っ頓狂な声をあげて、目を丸くした。

「そうだ。・・・うちの子ども達を見たろう?・・・あれでは、生きる屍・・・いや、人形のようだ。」

 それには同意したナルトも頷く。自分自身もまた、目標が無かった頃は、まるで人形のように、ただ現実を受け入れるだけだったことを思い出す。

「・・・はぁ、わかったよ。そんな風に言われちゃったら、断れないって。・・・でも、じいさまには内緒なんだから、そう毎日来れるわけではないけど。」

「それで構わんよ。・・・いくら忍とはいえど、感情が無いのはいただけない。」

「そうだね。・・・感情があれば、迷いもするし恐れもする。・・・でも、だからこそ、忍として鍛錬して、そして、心を強く持とうと修行に励むんだよね。・・・忍術を使えるだけが忍じゃない。耐え忍ぶことが出来て、初めて、忍になれるんだ。」

 そう言ったナルトの目は深く吸い込まれそうな深海の蒼。雰囲気だけでこれほどに印象を違わせる、その蒼い瞳に、ダンゾウは思わず見惚れた。

「・・・綺麗、だな。」

 ぽつりと呟く。

「は?」

「お前の瞳だ。・・・四代目の瞳は、いつも変わらず人々を見守る、明るい空色に見えた。だが、お前は、その時々によって、感じさせるものが違う。・・・大きな宿命を背負っているからこそ出せる色合いなのかもしれんな。」

 ダンゾウの言葉に、一瞬呆けたナルトは、次の瞬間、頬に朱を走らせた。

「何、くっさいコト言ってんの!?・・・マジで、恥ずかしいんだけど!!」

「ははは。そりゃ、すまないな。・・・だが、いずれ、里の者達も理解する時が来るだろう。お前は九尾の化け物とは違う。いずれはこの里の要となる人間だと・・・。」

「何か悪いものでも食べた?気色悪いなぁ。あー、要件はそれだけ?俺も結構忙しいんだよね。それじゃ、また!」

 顔を真っ赤にし、照れ隠しで捲し立てて、ナルトは踵を返す。

「・・・ナルト。」

 名を呼ばれ、渋々振り返ると、ダンゾウは良い笑顔で言った。

「・・・お前の知りたがっている、樹の情報を“根”で調べている。・・・何かわかったら、すぐに知らせるようにする。」

 その言葉に、ナルトはぽかんとし、そして、くしゃりと表情を歪めた。

「あんたも大概、俺に甘いよな。」

「そうでもないぞ。・・・猿飛ほどには口うるさくなかろう?」

「まぁ。確かにね。」

 にやりと笑ったダンゾウに、ナルトも思わず苦笑をうかべた。

 “根”を出て、里外れの演習場をブラブラとしていたナルトは、背後に気配を感じて、ゆっくりと振り返る。そこにいたのは、怒りの形相の千坐だった。

「・・・うわー・・・千坐君怒ってる?」

「当たり前だ。」

「えぇ~・・・全然、危なくなんかないよ?」

「・・・ダンゾウ様の持論には賛成しかねるモノがある。だが、あの方自身が危ないと思ったことは無い。それは認める。・・・だがな、あんなに仲が良いとは知らなかったぞ?」

 苦虫を噛み潰したような表情の千坐に、ナルトは苦笑をうかべた。

「仲良くなんてないって。顔合わせれば腹の探り合いだし・・・ただ、最近になって、甘やかされたり、頼られたりしてるだけだよ。」

「甘やかす?・・・頼る?」

 頭の上に?を飛ばす千坐に、ナルトは困ったように眉根を寄せた。

「俺だって、よくわかんないよ、あの人のことは。・・・でも、俺をどうこうしようとしてるわけじゃない。それだけはわかるから・・・。」

「そうか。」

「でも、俺以外の暗部達に対する態度はあまりよろしくないことも知ってるし、じいさまにとも仲が悪い。・・・だから、必要以上に慣れ合ったりするつもりはないから、そんなに心配しないで。」

 その言葉に、千坐はこくりと頷いた。

「わかった。・・・しょうがないな。」

「カカシ君には俺から説明するから。・・・あと、シカにもね。・・・じゃあ、俺、行くね?」

 ホッとした笑みをうかべたナルトは、そう約束して、飛雷神の術で消えた。


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