Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・R2完全無視!
・ですが、メカや話の一部は取り入れています
・スザクにかなり厳しめ
・黒ナナが当たり前のようにいます!
・これは、ギャグです☆
・捏造満載
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
黒の騎士団の団員達をブリタニアから救いだして、数日。中華連邦の領事館には、ほぼ、毎日のようにナイト・オブ・セブンからゼロへ出頭要請が届いていた。
「・・・しつこいな、スザクの奴。」
ボソ、と呟いたのは、ルルーシュ。
その、彼の手には、スザクの署名が入った、ゼロへの出頭要請書。
「前から思ってたんだけど、スザクのあんたに対する執着心って、異常よね?」
爪を磨きながら、カレンがルルーシュに言うと、ルルーシュははぁ、と溜め息をついた。
「・・・ユフィを死なせてしまったからな。あの子の死を無駄にしないためにも、俺は、ゼロを演じ続けなければならない。そう、決意したんだが。・・・まぁ、スザクにとっては憎い仇なんだろう?」
「・・・あの執着は、それだけじゃないと思うけどね。」
フッと遠くを見つめるカレンに、ルルーシュは首を傾げ、そうか?と呟く。
そんな様子を遠巻きに見ている幹部達は、始終驚きっぱなしだ。
なにせ、以前では考えられないほど、カレンとルルーシュの関係はフランクだし、中華連邦の星刻が毎日のようにかまいにやって来て、さんざん甘やかしていくし、C.C.は公然とルルーシュを童貞坊やと呼ぶし(これには本人が顔を真っ赤にさせて反応するものだから、可愛くてしかたがないv)・・・どうも、ここは以前の黒の騎士団とは、別世界なのだ、と思わずにはいられない。
そして、昨日の夜、突如、中華連邦から天子がやって来た時は、もう、ここは天国か?と思った。
天真爛漫な可愛らしい天子。その天子を溺愛する星刻とルルーシュ。特に、ルルーシュの甘アマな表情は、見てるこっちまでとろけてしまいそうだ。
「ルルーシュ!」
と、噂をすれば影。パタパタと廊下を走ってくる音がしたと思ったら、ラウンジの扉が開いて、小さな少女が飛び込んでくる。
「・・・天子様。どうかなさったんですか?」
すぐさま、目線を合わせる為にしゃがみ込んだルルーシュが、天子の腕の辺りに手を添えて、優しく微笑んで首を傾げた。
「あのね!・・・妹さんが、見つかったわ!!」
「!?・・・ナナリーが?」
目を丸くしたルルーシュに、天子は嬉しそうに笑う。
「ええ。ブリタニアの皇族として、復帰されてたみたい。公的に発表されてなかったから、今までわからなかったのね!」
「・・・どのラインから、それは・・・?」
「中華連邦の方に届いたのよ。新しい、エリア11の総督ですって!」
「なっ!?」
絶句してしまったルルーシュに、天子は首を傾げた。
「嬉しくないの?ルルーシュ。妹さんに会えるかもしれないのよ?」
「・・・遅かったか。」
「あ、星刻!」
くるりと振り返った天子の満面の笑みに、急いでやってきた様子の星刻は苦笑をうかべた。
「・・・まだ、ルルーシュには話してはいけませんと、申しあげたでしょう?」
「でも、ルルーシュは、ずっと妹さんを探していたのよ?」
天子がムッとした表情をうかべると、星刻は首を振る。
「いいえ、天子様。問題はそこではありません。・・・エリア11の総督ということは、黒の騎士団、すなわち、ゼロと対決する可能性も出てくるんですよ?・・・さて、ゼロとは、誰のことですか?」
「・・・・・・ルルーシュ、だわ。」
「そうです。・・・ここまで言えば、おわかりですね、天子様。」
「ええ。・・・ごめんなさい、ルルーシュ。私、貴方が喜ぶと思って・・・。本当にごめんなさい・・・。」
今にも泣きだしそうになってしまった天子に、ルルーシュはハッとして、その頭を優しく撫でた。
「・・・いえ、良いんです。皇族に復帰しているだろうという考えはありましたから。・・・でも、まさか、総督とは思わなかったので、つい。・・・せっかく、天子様が急いでお知らせに来て下さったのに、素直に喜べなくて、すみません。」
「・・・ルルーシュが謝ることじゃないわ!・・・私、考えなしだった。ごめんなさい、ルルーシュ。」
ぎゅう、と抱きついた天子を、ルルーシュはそっと抱きしめて、微笑む。
「・・・ナナリーのことは、ちゃんと考えます。だから、天子様。ご自分を責めないで下さい。貴方の悲しそうな顔を見たら、俺まで悲しくなってしまいます。」
そっと天子の身体を離して、その顔を覗き込み、ルルーシュはとろけるような甘い笑顔をうかべる。
「・・・っ///」
顔を真っ赤にさせた、天子は、コクコクと何度も首を縦に振る。その様子を見ていた星刻もホッとしたような笑みをうかべる。
「・・・ルルーシュ。良ければ、仮の合衆国日本の暫定領土として、人工島の蓬莱島を使ったらどうだろうか?」
「・・・ああ、あの島?・・・でも、日本は・・・。」
「いずれ、取り戻せばいい。君は、妹と本気で戦えるのか?」
「・・・でも・・・。」
ちらり、と視線を送られた黒の騎士団幹部達はぎくりとする。しかも、星刻の殺気のこもった視線と、天子のウルウルとしたおねだりの視線と、カレンの冷たい視線と・・・もう、無言の圧力が凄かった。というか、ルルーシュの困った顔を見て、駄々をこねられるわけがない。
「俺達はゼロを信じている。いずれ、日本を取り戻すための戦略的撤退と考えれば良い。・・・そうだろう?」
冷静に(なふりをしている)藤堂が言えば、ルルーシュの表情が明るくなる。
「ああ・・・そうと決まったら、日本人達を集めなくては。・・・俺達だけが脱出しても意味が無いしな。」
ルルーシュの言うことも尤もで、幹部達も是と頷く。
「矯正エリアとなって、日本人達は随分と苦労をしたはずだ。・・・できる限り、希望を持って暮らせるようにしたい。」
そんなルルーシュの言葉に、星刻や天子が黙っているわけもなく・・・。
「任せておけ、ルルーシュ。中華連邦の総力を持って、蓬莱島を住みやすい地にすると誓おう。」
「そうよ、ルルーシュ。足りないものがあったら、いくらでも言ってね?連邦の議会だって、ルルーシュの為だったら、きっと、何でもしてくれるわ!」
それが過言ではないことを知っている、神楽耶やカレンや卜部、C.C.といった面々は、うんうん、と頷く。中華連邦の人民全てが、ルルーシュに魅了されていると知ったら、黒の騎士団の団員達がどう思うのだろうかと考えて、顔がニヤつくのが止められない。
中華連邦での功績を聞いていただけの幹部達は、そうとも知らず、なんて義理堅い人達だろう、とか思っていたりするのだが、誰も、それを指摘することはなかった。
「・・・あ、でも、その前に言いたいことがあったんだ。」
「?」
ルルーシュがぽつりと言った言葉に、その場の全員が首を傾げた。
「・・・あ~・・・何となく、わかったぞ。」
唯一、自称共犯者のC.C.だけが視線をそらし、顔を引き攣らせた。
一方、ブリタニア政庁では・・・。
「・・・スザクさん。」
「なに?ナナリー。」
「・・・・・・これは、どういうことでしょう?」
ナナリーが指摘しているのは、スザクの独断で行った、黒の騎士団の団員達の処刑のことだった。
もちろん、スザクは皇帝直属の騎士、ナイト・オブ・ラウンズなのだから、独立した指揮権を持ち、悪く言ってしまえば、総督に黙って勝手に何をやったって良いわけだ。それに、その時は、まだ、ナナリーは総督に着任しておらず、先行してエリア11入りしていたスザクが何をやっていようと文句の言える立場ではない。
だが、スザクがやったことは、見せしめにしかすぎず、ゼロを誘き出すというたった1つの目的の為にやったとしか考えられないのだ。しかも、その団員達は全て、ゼロにより奪還されており、この作戦自体が無意味なことになっている。
「・・・どういうことって・・・こういうことだよ。」
スザクの声がわずかに上擦ったことに気づいたナナリーは、眉間にしわを寄せる。
「・・・スザクさん。この件に関して、私が何かを言う権利が無いことくらいわかっています。でも、これから、このエリアを途上エリア、衛星エリアと昇格させていく責任が私にはあります。ですから、きちんと説明して下さい。この処刑は何の為に・・・どのような目的で、どのように執行されるおつもりだったのですか?」
厳しい調子で問われたスザクは、ごくりと息を呑んだ。
「・・・ナナリーだってわかってるはずだよ。ゼロがいる限り、世界は平和になんてならない。」
「・・・ゼロが目指していることは、世界平和だと、伺いました。」
「・・・誰から?」
「・・・・・・お兄様からです。お兄様はブリタニアを憎んでいらした。幼かった私にはわからなかったことも、お兄様はその眼でご覧になってきたのでしょう。だから、ブリタニアのやり方が間違っていると・・・。」
「ちょっと待ってナナリー!その言葉は、皇帝陛下への冒涜、いや、反逆ととられてもおかしくない!!」
慌てたスザクに、ナナリーはクスッと笑った。
「はい。そうですね。・・・お父様にも言われました。」
「っ!?」
「私、お父様に申しあげたんです。・・・お兄様の仰っていたこと全て。そうしたら、お父様は、笑っていらっしゃいました。・・・誰かが何かをしてくれるのを待っていられる性分ではない。さすが、マリアンヌとワシの子だ、と。」
ナナリーの言葉に、スザクは絶句する。
ナナリーと皇帝シャルルとの対面があったことは知っている。それで、意外に思ったのは、シャルルがナナリーに監視をつけるわけでもなく、好き勝手をさせているということだった。特に、総督になりたいと言ったナナリーの言葉もあっさりと許可した時は本当に驚いた。
ナナリーには意外と行動力があるのだと、スザクは知っている。もし、ルルーシュがやっていたことを耳に入れたなら、ナナリーが黙っているはずがない。まさか、シャルルがルルーシュのやっていたことを、ナナリーに話すわけがない、そう思っていたのだが、この話の流れはマズイ、とスザクは第六感が訴えてくるのを感じた。
「・・・な、ナナリー・・・?」
「ねぇ、スザクさん。知ってるんです私。」
「・・・な、何を?」
「うふふ。気付いていらっしゃるんでしょう?・・・私には嘘はつけませんよ?忘れてしまったんですか?」
ナナリーから感じる空気がどす黒い。スザクは思わず、その場から一歩下がった。
「私、お兄様の気持ちがよ~くわかるんです。・・・お兄様ったら、スザクさんの為にゼロを始めたんですよ?」
「!」
ナナリーの言葉は、もう、最初からルルーシュがゼロだとわかっていたと言っているようなもので・・・。
「スザクさんがユフィ姉様の騎士になったとき、お兄様はとても悲しんでいらっしゃいました。本当にこれで敵同士だ、と。そして、あの行政特区日本の式典の日・・・ユフィ姉様ともう一度お話がしたいと言った私のお願いを、お兄様が無視するわけがありません。きっと、何か、手違いがあったんです。お兄様ったら、ドジっ子ですから。」
ふふ。と笑うナナリーは可愛らしいのだが、スザクにしてみれば、魔王以上に怖い存在となり果てている。
ちなみに、ここは総督室で、実は、他にも、ジノやアーニャといった同僚がいたり、ナナリーの補佐であるローマイヤーもいたりするのだが、揃って顔を青褪めさせており、ナナリーから事前に訊いていた節はないことから、初めて、ここでナナリーがカミングアウトしているのだとわかる。
「な、ナナリー・・・ちょ、ちょっと待って?」
「いいえ、待ちません。・・・スザクさん?私、V.V.伯父さまに伺ったんです。ギアスって暴走するんですって。あの時、お兄様のギアス、暴走してたんじゃないかって。・・・うふふ。伯父さまったら、最初、何のこと?とか言って、すっとぼけていらしたので、私、思わず握ってたペンを折っちゃったんです。」
ペン折ったって・・・どれだけ怪力なの、ナナリー、と思いつつも、スザクは別のことを問うた。
「な、ナナリー・・・そ、その、ギアスの暴走って・・・本当の、こと?」
「ええ。何でしたら、伯父様に伺ったらいかがです?」
スザクは絶望のどん底に落とされた。そして、こんなに黒いナナリーは久しぶりだと、現実逃避した頭で考える。
枢木家へ来たルルーシュとナナリー。
秘密基地にしていた土蔵を奪われたという思いで、殴ってしまったルルーシュ。その時は、ナナリーの言葉にバツが悪くなって、倒れたルルーシュをそのままにその場から立ち去ってしまったのだが、後で仲良くなってから、さんざんナナリーになじられたのだ。ルルーシュがいない所で。
知らない訳じゃなかった。ナナリーが、決して、周りが思っているようなお飾り皇女ではないことは。だが、それとこれは話が別だ。
「・・・スザクさん。」
「は、はいぃぃっ!!」
思いっきりビビッて、返事をしてしまって自己嫌悪に陥る。
「1年前、お兄様は、私を迎えに来て下さるはずでした。」
「・・・は、はい。」
「でも、スザクさんのせいで、お兄様は、中華連邦に行ってしまわれて、しまいには、向こうで可愛らしい妹のような存在を見つけてしまわれました。」
「・・・・・・・は、はい。」
何で、そんなことまで把握しているのだろうと、思ったりするのだが、ここで訊いたら、ナナリーの絶対零度攻撃を受けることは決まり切っていたので、素直に頷く。
「しかも、今度は、お兄様を誘き出すような真似をして・・・。総督になった私まで、お兄様に恨まれてしまうではありませんか!!せっかく、お兄様の傍に行く為に総督になったのにッ!」
― え?さっき、エリアの昇格の為にも、とかって言ってなかった?
と口に出そうとして、スザクはハッとする。ナナリーのどす黒い空気が、段々と冷たくなってきている。
「・・・あ、え・・・えと・・・。」
「スザクさん?」
ニッコリ、とナナリーが笑う。その瞬間・・・。
「~っ!!・・・も、申し訳ございませんでしたぁぁぁっ!!」
日本一(?)美しい土下座をしたスザクに、ナナリーはニコニコとする。
「あら、さすが日本人ですね。日本の文化“DOGEZA”を美しくキメて下さって、ありがとうございます。」
周りで見ている人間は生きた心地がしなかった。が、対面しているスザクはもっと生きた心地がしなかった。
だから、乱入してきた文官を誰も責めなかった。
「そ、総督!!も、申しあげます!!」
「チッ・・・はい。なんでしょう?」
短く舌打ちして、にっこりと笑い、どす黒い空気を一瞬の内に消してみせたナナリーに、顔を青褪めさせるスザク達を不思議そうに視線を送り、文官が告げる。
「ぜ、ゼロより、通信が入っておりまして、どうしても、枢木卿と総督にお話がある、と・・・。」
「まぁ、ちょうど良かったです。今、その話をしていたんですよ。・・・ね?ミス・ローマイヤー?」
「はっ・・・はいっ!」
ローマイヤーがひっくり返った声で応じる。文官はますます不思議そうな表情をうかべて、ナナリーを見る。
「あの・・・お繋ぎしても・・・。」
「はい。大丈夫ですよ。・・・このモニターに出ますか?」
「はい。すぐにお繋ぎします。」
テキパキと回線をつなぐ準備をすると、文官はその場の微妙な空気に首を傾げながら、部屋を出ていく。
そして、文官が出て行ってしばらく、無言の何とも言えない空気がその場を支配していたが、モニターに、黒の騎士団のマークが浮かび上がると、全員がそのモニターに注目した。
「・・・こんにちは、ナナリー総督。」
黒い仮面、黒の騎士団総帥ゼロ。その姿を目の前にして、スザクは血が引いていくのを感じる。ある意味自業自得なのだが、純粋に、ユフィの仇と憎めていた頃の方が良かったとさえ思う。
「こんにちは、お兄様v連絡を今か今かと待っていました。」
ニッコリ、と笑ったナナリーに、画面の向こうでゼロがビシッと固まった。そして、その固まったゼロの背後に、ぬッと緑色の髪をした美少女が現れる。
「っあ!?」
スザクが思わず声をあげるが、その美少女は、呆れたようにゼロを見やってから、仮面に手を掛け、スポン、と抜いた。
「「「「アッ・・・。」」」」
総督室にいた全員(ナナリーを除く)が声をあげる。それと同時に、ゼロも叫んだ。
「ほわぁぁっ!?C.C.!!何をするんだいきなりっ!!」
ほんのりと頬を赤く染めて、C.C.に食って掛かるゼロ(実は皇子だったことが発覚済み)の顔を見て、ジノもアーニャもローマイヤーでさえも、ぽ~っとなってしまった。
「「「・・・可愛い・・・。」」」
呟いた3人の言葉に、ナナリーがむぅ、と呟く。
「お兄様ってば、こうやってあちこちで人を誑しこんでいるのですね・・・。私は見えないのに。」
未だ、仮面をC.C.から取り戻そうとしているルルーシュは、ナナリーのどす黒い空気には全く気付かない。
「・・・る、ルルーシュ・・・。」
スザクがその名を呼べば、ぴた、とルルーシュの動きが止まる。
「・・・スザク。」
苦々しげ、と形容するのが一番近い、複雑な表情をうかべたルルーシュが、ひたりとスザクを見つめる。
「・・・お前に言いたいことがあったんだ。」
「・・・な、なに?」
「・・・その前に、ナナリー?」
「はい。お兄様。」
「・・・知っていたんだな。」
「はい。・・・でも、お兄様、私、お兄様が間違っているなんて言いません。私だって、ブリタニアのやり方はおかしいと思っています。ただ、私にできることは、総督になって、このエリアを衛星エリアに昇格させるくらいしかないんです。」
さっき言ってたことと違う。
とは、誰も言えない。ナナリーの天使の微笑みは、ルルーシュには癒しを与えているようだが、こちらには威嚇にしか思えない。
「・・・そうか。」
「お兄様・・・ユフィ姉様とお兄様がやろうとしていたことを、私とお兄様ではできないのでしょうか?」
ナナリーの言葉に、ルルーシュは困ったように笑む。
「・・・すまない、ナナリー。あの時と今では、状況がまるで違う。」
「そう、ですよね・・・。」
「やるとしても・・・衛星エリアに昇格してからだ。」
「お兄様!では!」
「・・・それまでは、中華連邦に身を寄せようと思っている。」
「・・・お、お兄様・・・そんな、せっかく、お傍まで来たのに・・・。」
ナナリーが悲しそうに眉を顰めると、ルルーシュも悲しそうな表情になる。
「・・・俺も、お前と一緒にいたいが、互いの立場の性質上、同じエリアにいてはいけない。そうだろう?」
「・・・はい。・・・わかりました、お兄様。私、頑張って、このエリアを衛星エリアにしてみせます!」
「ああ・・・その時、ユフィの願いも・・・俺の願いも・・・きっと、お前の願いも、叶うよ。」
「はい。」
満面の笑みを浮かべ、頷くナナリーに、ルルーシュもホッとした様子で、頷いた。そして、ふと思い出したように、スザクを見やった。
「あ、そういえば、言いたいことがあったんだ。」
棒読みである。用意されたセリフを言ったような、わざとらしい言い方に、スザクはビクリと怯えた。
「・・・な、なに?」
「スザク、お前、よくも俺の仮面を撃ってくれたな!?しかも、皇帝に献上したらしいじゃないか?あ゛?あの仮面、1個しかなくて、スペアも作ってなかったのに!しかも、額が派手に割れて血が出て凄かったんだぞ!!(って星刻が言ってた。)・・・それに、皇帝直属の騎士様だと?口より先に手が出るお前に指揮官なんぞできるものか!・・・大体な!人の話を少しは聞け!!このKY!!っていうか、平然とナナリーの傍にいやがって!ふざけんなこの体力馬鹿がッ!!」
すごい勢いで捲し立てられて、スザクは目を白黒させている。
「はぁ、まだ言い足りないが、これから、中華連邦に行く準備があるから、ここで失礼するよ。・・・ナナリー、また、会える日まで、元気で。」
ほんの少し、息を切らしながら言ったルルーシュに、ナナリーは素直に頷いた。
「はい。お兄様v・・・私、頑張ります。見ていて下さいね。」
「ああ。ちゃんと、見てるよ。じゃあ・・・また。」
「あっ!ルルーっ・・・・・・シュ・・・。」
慌てて呼びとめようとしたスザクを無視して、モニターが真っ暗になる。がっくりとしたスザクの方を向いて、ナナリーはにっこりと笑った。
「・・・・・・スザクさん?」
「ひっ・・・は、はい!!」
「・・・私、今、とっても、幸せな気分なので、さっきのことは、不問にしてさしあげますけど・・・次はありませんからね?」
「い、いえす、ゆあ、はいねす・・・。」
ぎこちない敬礼をするスザクに、満足げに頷き、ナナリーは早速仕事に取り掛かった。
「うふふ。早く、衛星エリアにしていただかなくてはいけませんね。お兄様と協力するためですもの。」
そんな、ナナリーを補佐するべく、ジノやアーニャ、ローマイヤーがかなり協力的になったのは、言うまでもないだろう。
― おまけ・・・
「すっきりしたか?ルルーシュ。」
「ああ、C.C.・・・でも、いきなりお前が仮面を外すなんてことしてくれたから、びっくりしただろう?」
「ああでもしないと、お前が現実逃避から戻ってこないと思ったんだ。」
しれっと言ったC.C.を睨んで、ルルーシュは溜め息をついた。
「はぁ、それにしても、ナナリーに知られていたなんて。」
「・・・良いんじゃないのか?これで、協力できるんだからな。・・・ほら、とりあえず、中華連邦に行く準備だろう?」
「あ、そうだった。」
ワタワタと準備を始め出すルルーシュを見ながら、C.C.は溜め息をついた。
「はぁ・・・ナナリーは随分と黒くなったなぁ。スザクが随分怯えていたが、ルルーシュは全然気づかなかったし・・・恐るべし、シスコンだ。」
おしまい☆
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・R2完全無視!
・ですが、メカや話の一部は取り入れています
・スザクにかなり厳しめ
・黒ナナが当たり前のようにいます!
・これは、ギャグです☆
・捏造満載
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
黒の騎士団の団員達をブリタニアから救いだして、数日。中華連邦の領事館には、ほぼ、毎日のようにナイト・オブ・セブンからゼロへ出頭要請が届いていた。
「・・・しつこいな、スザクの奴。」
ボソ、と呟いたのは、ルルーシュ。
その、彼の手には、スザクの署名が入った、ゼロへの出頭要請書。
「前から思ってたんだけど、スザクのあんたに対する執着心って、異常よね?」
爪を磨きながら、カレンがルルーシュに言うと、ルルーシュははぁ、と溜め息をついた。
「・・・ユフィを死なせてしまったからな。あの子の死を無駄にしないためにも、俺は、ゼロを演じ続けなければならない。そう、決意したんだが。・・・まぁ、スザクにとっては憎い仇なんだろう?」
「・・・あの執着は、それだけじゃないと思うけどね。」
フッと遠くを見つめるカレンに、ルルーシュは首を傾げ、そうか?と呟く。
そんな様子を遠巻きに見ている幹部達は、始終驚きっぱなしだ。
なにせ、以前では考えられないほど、カレンとルルーシュの関係はフランクだし、中華連邦の星刻が毎日のようにかまいにやって来て、さんざん甘やかしていくし、C.C.は公然とルルーシュを童貞坊やと呼ぶし(これには本人が顔を真っ赤にさせて反応するものだから、可愛くてしかたがないv)・・・どうも、ここは以前の黒の騎士団とは、別世界なのだ、と思わずにはいられない。
そして、昨日の夜、突如、中華連邦から天子がやって来た時は、もう、ここは天国か?と思った。
天真爛漫な可愛らしい天子。その天子を溺愛する星刻とルルーシュ。特に、ルルーシュの甘アマな表情は、見てるこっちまでとろけてしまいそうだ。
「ルルーシュ!」
と、噂をすれば影。パタパタと廊下を走ってくる音がしたと思ったら、ラウンジの扉が開いて、小さな少女が飛び込んでくる。
「・・・天子様。どうかなさったんですか?」
すぐさま、目線を合わせる為にしゃがみ込んだルルーシュが、天子の腕の辺りに手を添えて、優しく微笑んで首を傾げた。
「あのね!・・・妹さんが、見つかったわ!!」
「!?・・・ナナリーが?」
目を丸くしたルルーシュに、天子は嬉しそうに笑う。
「ええ。ブリタニアの皇族として、復帰されてたみたい。公的に発表されてなかったから、今までわからなかったのね!」
「・・・どのラインから、それは・・・?」
「中華連邦の方に届いたのよ。新しい、エリア11の総督ですって!」
「なっ!?」
絶句してしまったルルーシュに、天子は首を傾げた。
「嬉しくないの?ルルーシュ。妹さんに会えるかもしれないのよ?」
「・・・遅かったか。」
「あ、星刻!」
くるりと振り返った天子の満面の笑みに、急いでやってきた様子の星刻は苦笑をうかべた。
「・・・まだ、ルルーシュには話してはいけませんと、申しあげたでしょう?」
「でも、ルルーシュは、ずっと妹さんを探していたのよ?」
天子がムッとした表情をうかべると、星刻は首を振る。
「いいえ、天子様。問題はそこではありません。・・・エリア11の総督ということは、黒の騎士団、すなわち、ゼロと対決する可能性も出てくるんですよ?・・・さて、ゼロとは、誰のことですか?」
「・・・・・・ルルーシュ、だわ。」
「そうです。・・・ここまで言えば、おわかりですね、天子様。」
「ええ。・・・ごめんなさい、ルルーシュ。私、貴方が喜ぶと思って・・・。本当にごめんなさい・・・。」
今にも泣きだしそうになってしまった天子に、ルルーシュはハッとして、その頭を優しく撫でた。
「・・・いえ、良いんです。皇族に復帰しているだろうという考えはありましたから。・・・でも、まさか、総督とは思わなかったので、つい。・・・せっかく、天子様が急いでお知らせに来て下さったのに、素直に喜べなくて、すみません。」
「・・・ルルーシュが謝ることじゃないわ!・・・私、考えなしだった。ごめんなさい、ルルーシュ。」
ぎゅう、と抱きついた天子を、ルルーシュはそっと抱きしめて、微笑む。
「・・・ナナリーのことは、ちゃんと考えます。だから、天子様。ご自分を責めないで下さい。貴方の悲しそうな顔を見たら、俺まで悲しくなってしまいます。」
そっと天子の身体を離して、その顔を覗き込み、ルルーシュはとろけるような甘い笑顔をうかべる。
「・・・っ///」
顔を真っ赤にさせた、天子は、コクコクと何度も首を縦に振る。その様子を見ていた星刻もホッとしたような笑みをうかべる。
「・・・ルルーシュ。良ければ、仮の合衆国日本の暫定領土として、人工島の蓬莱島を使ったらどうだろうか?」
「・・・ああ、あの島?・・・でも、日本は・・・。」
「いずれ、取り戻せばいい。君は、妹と本気で戦えるのか?」
「・・・でも・・・。」
ちらり、と視線を送られた黒の騎士団幹部達はぎくりとする。しかも、星刻の殺気のこもった視線と、天子のウルウルとしたおねだりの視線と、カレンの冷たい視線と・・・もう、無言の圧力が凄かった。というか、ルルーシュの困った顔を見て、駄々をこねられるわけがない。
「俺達はゼロを信じている。いずれ、日本を取り戻すための戦略的撤退と考えれば良い。・・・そうだろう?」
冷静に(なふりをしている)藤堂が言えば、ルルーシュの表情が明るくなる。
「ああ・・・そうと決まったら、日本人達を集めなくては。・・・俺達だけが脱出しても意味が無いしな。」
ルルーシュの言うことも尤もで、幹部達も是と頷く。
「矯正エリアとなって、日本人達は随分と苦労をしたはずだ。・・・できる限り、希望を持って暮らせるようにしたい。」
そんなルルーシュの言葉に、星刻や天子が黙っているわけもなく・・・。
「任せておけ、ルルーシュ。中華連邦の総力を持って、蓬莱島を住みやすい地にすると誓おう。」
「そうよ、ルルーシュ。足りないものがあったら、いくらでも言ってね?連邦の議会だって、ルルーシュの為だったら、きっと、何でもしてくれるわ!」
それが過言ではないことを知っている、神楽耶やカレンや卜部、C.C.といった面々は、うんうん、と頷く。中華連邦の人民全てが、ルルーシュに魅了されていると知ったら、黒の騎士団の団員達がどう思うのだろうかと考えて、顔がニヤつくのが止められない。
中華連邦での功績を聞いていただけの幹部達は、そうとも知らず、なんて義理堅い人達だろう、とか思っていたりするのだが、誰も、それを指摘することはなかった。
「・・・あ、でも、その前に言いたいことがあったんだ。」
「?」
ルルーシュがぽつりと言った言葉に、その場の全員が首を傾げた。
「・・・あ~・・・何となく、わかったぞ。」
唯一、自称共犯者のC.C.だけが視線をそらし、顔を引き攣らせた。
一方、ブリタニア政庁では・・・。
「・・・スザクさん。」
「なに?ナナリー。」
「・・・・・・これは、どういうことでしょう?」
ナナリーが指摘しているのは、スザクの独断で行った、黒の騎士団の団員達の処刑のことだった。
もちろん、スザクは皇帝直属の騎士、ナイト・オブ・ラウンズなのだから、独立した指揮権を持ち、悪く言ってしまえば、総督に黙って勝手に何をやったって良いわけだ。それに、その時は、まだ、ナナリーは総督に着任しておらず、先行してエリア11入りしていたスザクが何をやっていようと文句の言える立場ではない。
だが、スザクがやったことは、見せしめにしかすぎず、ゼロを誘き出すというたった1つの目的の為にやったとしか考えられないのだ。しかも、その団員達は全て、ゼロにより奪還されており、この作戦自体が無意味なことになっている。
「・・・どういうことって・・・こういうことだよ。」
スザクの声がわずかに上擦ったことに気づいたナナリーは、眉間にしわを寄せる。
「・・・スザクさん。この件に関して、私が何かを言う権利が無いことくらいわかっています。でも、これから、このエリアを途上エリア、衛星エリアと昇格させていく責任が私にはあります。ですから、きちんと説明して下さい。この処刑は何の為に・・・どのような目的で、どのように執行されるおつもりだったのですか?」
厳しい調子で問われたスザクは、ごくりと息を呑んだ。
「・・・ナナリーだってわかってるはずだよ。ゼロがいる限り、世界は平和になんてならない。」
「・・・ゼロが目指していることは、世界平和だと、伺いました。」
「・・・誰から?」
「・・・・・・お兄様からです。お兄様はブリタニアを憎んでいらした。幼かった私にはわからなかったことも、お兄様はその眼でご覧になってきたのでしょう。だから、ブリタニアのやり方が間違っていると・・・。」
「ちょっと待ってナナリー!その言葉は、皇帝陛下への冒涜、いや、反逆ととられてもおかしくない!!」
慌てたスザクに、ナナリーはクスッと笑った。
「はい。そうですね。・・・お父様にも言われました。」
「っ!?」
「私、お父様に申しあげたんです。・・・お兄様の仰っていたこと全て。そうしたら、お父様は、笑っていらっしゃいました。・・・誰かが何かをしてくれるのを待っていられる性分ではない。さすが、マリアンヌとワシの子だ、と。」
ナナリーの言葉に、スザクは絶句する。
ナナリーと皇帝シャルルとの対面があったことは知っている。それで、意外に思ったのは、シャルルがナナリーに監視をつけるわけでもなく、好き勝手をさせているということだった。特に、総督になりたいと言ったナナリーの言葉もあっさりと許可した時は本当に驚いた。
ナナリーには意外と行動力があるのだと、スザクは知っている。もし、ルルーシュがやっていたことを耳に入れたなら、ナナリーが黙っているはずがない。まさか、シャルルがルルーシュのやっていたことを、ナナリーに話すわけがない、そう思っていたのだが、この話の流れはマズイ、とスザクは第六感が訴えてくるのを感じた。
「・・・な、ナナリー・・・?」
「ねぇ、スザクさん。知ってるんです私。」
「・・・な、何を?」
「うふふ。気付いていらっしゃるんでしょう?・・・私には嘘はつけませんよ?忘れてしまったんですか?」
ナナリーから感じる空気がどす黒い。スザクは思わず、その場から一歩下がった。
「私、お兄様の気持ちがよ~くわかるんです。・・・お兄様ったら、スザクさんの為にゼロを始めたんですよ?」
「!」
ナナリーの言葉は、もう、最初からルルーシュがゼロだとわかっていたと言っているようなもので・・・。
「スザクさんがユフィ姉様の騎士になったとき、お兄様はとても悲しんでいらっしゃいました。本当にこれで敵同士だ、と。そして、あの行政特区日本の式典の日・・・ユフィ姉様ともう一度お話がしたいと言った私のお願いを、お兄様が無視するわけがありません。きっと、何か、手違いがあったんです。お兄様ったら、ドジっ子ですから。」
ふふ。と笑うナナリーは可愛らしいのだが、スザクにしてみれば、魔王以上に怖い存在となり果てている。
ちなみに、ここは総督室で、実は、他にも、ジノやアーニャといった同僚がいたり、ナナリーの補佐であるローマイヤーもいたりするのだが、揃って顔を青褪めさせており、ナナリーから事前に訊いていた節はないことから、初めて、ここでナナリーがカミングアウトしているのだとわかる。
「な、ナナリー・・・ちょ、ちょっと待って?」
「いいえ、待ちません。・・・スザクさん?私、V.V.伯父さまに伺ったんです。ギアスって暴走するんですって。あの時、お兄様のギアス、暴走してたんじゃないかって。・・・うふふ。伯父さまったら、最初、何のこと?とか言って、すっとぼけていらしたので、私、思わず握ってたペンを折っちゃったんです。」
ペン折ったって・・・どれだけ怪力なの、ナナリー、と思いつつも、スザクは別のことを問うた。
「な、ナナリー・・・そ、その、ギアスの暴走って・・・本当の、こと?」
「ええ。何でしたら、伯父様に伺ったらいかがです?」
スザクは絶望のどん底に落とされた。そして、こんなに黒いナナリーは久しぶりだと、現実逃避した頭で考える。
枢木家へ来たルルーシュとナナリー。
秘密基地にしていた土蔵を奪われたという思いで、殴ってしまったルルーシュ。その時は、ナナリーの言葉にバツが悪くなって、倒れたルルーシュをそのままにその場から立ち去ってしまったのだが、後で仲良くなってから、さんざんナナリーになじられたのだ。ルルーシュがいない所で。
知らない訳じゃなかった。ナナリーが、決して、周りが思っているようなお飾り皇女ではないことは。だが、それとこれは話が別だ。
「・・・スザクさん。」
「は、はいぃぃっ!!」
思いっきりビビッて、返事をしてしまって自己嫌悪に陥る。
「1年前、お兄様は、私を迎えに来て下さるはずでした。」
「・・・は、はい。」
「でも、スザクさんのせいで、お兄様は、中華連邦に行ってしまわれて、しまいには、向こうで可愛らしい妹のような存在を見つけてしまわれました。」
「・・・・・・・は、はい。」
何で、そんなことまで把握しているのだろうと、思ったりするのだが、ここで訊いたら、ナナリーの絶対零度攻撃を受けることは決まり切っていたので、素直に頷く。
「しかも、今度は、お兄様を誘き出すような真似をして・・・。総督になった私まで、お兄様に恨まれてしまうではありませんか!!せっかく、お兄様の傍に行く為に総督になったのにッ!」
― え?さっき、エリアの昇格の為にも、とかって言ってなかった?
と口に出そうとして、スザクはハッとする。ナナリーのどす黒い空気が、段々と冷たくなってきている。
「・・・あ、え・・・えと・・・。」
「スザクさん?」
ニッコリ、とナナリーが笑う。その瞬間・・・。
「~っ!!・・・も、申し訳ございませんでしたぁぁぁっ!!」
日本一(?)美しい土下座をしたスザクに、ナナリーはニコニコとする。
「あら、さすが日本人ですね。日本の文化“DOGEZA”を美しくキメて下さって、ありがとうございます。」
周りで見ている人間は生きた心地がしなかった。が、対面しているスザクはもっと生きた心地がしなかった。
だから、乱入してきた文官を誰も責めなかった。
「そ、総督!!も、申しあげます!!」
「チッ・・・はい。なんでしょう?」
短く舌打ちして、にっこりと笑い、どす黒い空気を一瞬の内に消してみせたナナリーに、顔を青褪めさせるスザク達を不思議そうに視線を送り、文官が告げる。
「ぜ、ゼロより、通信が入っておりまして、どうしても、枢木卿と総督にお話がある、と・・・。」
「まぁ、ちょうど良かったです。今、その話をしていたんですよ。・・・ね?ミス・ローマイヤー?」
「はっ・・・はいっ!」
ローマイヤーがひっくり返った声で応じる。文官はますます不思議そうな表情をうかべて、ナナリーを見る。
「あの・・・お繋ぎしても・・・。」
「はい。大丈夫ですよ。・・・このモニターに出ますか?」
「はい。すぐにお繋ぎします。」
テキパキと回線をつなぐ準備をすると、文官はその場の微妙な空気に首を傾げながら、部屋を出ていく。
そして、文官が出て行ってしばらく、無言の何とも言えない空気がその場を支配していたが、モニターに、黒の騎士団のマークが浮かび上がると、全員がそのモニターに注目した。
「・・・こんにちは、ナナリー総督。」
黒い仮面、黒の騎士団総帥ゼロ。その姿を目の前にして、スザクは血が引いていくのを感じる。ある意味自業自得なのだが、純粋に、ユフィの仇と憎めていた頃の方が良かったとさえ思う。
「こんにちは、お兄様v連絡を今か今かと待っていました。」
ニッコリ、と笑ったナナリーに、画面の向こうでゼロがビシッと固まった。そして、その固まったゼロの背後に、ぬッと緑色の髪をした美少女が現れる。
「っあ!?」
スザクが思わず声をあげるが、その美少女は、呆れたようにゼロを見やってから、仮面に手を掛け、スポン、と抜いた。
「「「「アッ・・・。」」」」
総督室にいた全員(ナナリーを除く)が声をあげる。それと同時に、ゼロも叫んだ。
「ほわぁぁっ!?C.C.!!何をするんだいきなりっ!!」
ほんのりと頬を赤く染めて、C.C.に食って掛かるゼロ(実は皇子だったことが発覚済み)の顔を見て、ジノもアーニャもローマイヤーでさえも、ぽ~っとなってしまった。
「「「・・・可愛い・・・。」」」
呟いた3人の言葉に、ナナリーがむぅ、と呟く。
「お兄様ってば、こうやってあちこちで人を誑しこんでいるのですね・・・。私は見えないのに。」
未だ、仮面をC.C.から取り戻そうとしているルルーシュは、ナナリーのどす黒い空気には全く気付かない。
「・・・る、ルルーシュ・・・。」
スザクがその名を呼べば、ぴた、とルルーシュの動きが止まる。
「・・・スザク。」
苦々しげ、と形容するのが一番近い、複雑な表情をうかべたルルーシュが、ひたりとスザクを見つめる。
「・・・お前に言いたいことがあったんだ。」
「・・・な、なに?」
「・・・その前に、ナナリー?」
「はい。お兄様。」
「・・・知っていたんだな。」
「はい。・・・でも、お兄様、私、お兄様が間違っているなんて言いません。私だって、ブリタニアのやり方はおかしいと思っています。ただ、私にできることは、総督になって、このエリアを衛星エリアに昇格させるくらいしかないんです。」
さっき言ってたことと違う。
とは、誰も言えない。ナナリーの天使の微笑みは、ルルーシュには癒しを与えているようだが、こちらには威嚇にしか思えない。
「・・・そうか。」
「お兄様・・・ユフィ姉様とお兄様がやろうとしていたことを、私とお兄様ではできないのでしょうか?」
ナナリーの言葉に、ルルーシュは困ったように笑む。
「・・・すまない、ナナリー。あの時と今では、状況がまるで違う。」
「そう、ですよね・・・。」
「やるとしても・・・衛星エリアに昇格してからだ。」
「お兄様!では!」
「・・・それまでは、中華連邦に身を寄せようと思っている。」
「・・・お、お兄様・・・そんな、せっかく、お傍まで来たのに・・・。」
ナナリーが悲しそうに眉を顰めると、ルルーシュも悲しそうな表情になる。
「・・・俺も、お前と一緒にいたいが、互いの立場の性質上、同じエリアにいてはいけない。そうだろう?」
「・・・はい。・・・わかりました、お兄様。私、頑張って、このエリアを衛星エリアにしてみせます!」
「ああ・・・その時、ユフィの願いも・・・俺の願いも・・・きっと、お前の願いも、叶うよ。」
「はい。」
満面の笑みを浮かべ、頷くナナリーに、ルルーシュもホッとした様子で、頷いた。そして、ふと思い出したように、スザクを見やった。
「あ、そういえば、言いたいことがあったんだ。」
棒読みである。用意されたセリフを言ったような、わざとらしい言い方に、スザクはビクリと怯えた。
「・・・な、なに?」
「スザク、お前、よくも俺の仮面を撃ってくれたな!?しかも、皇帝に献上したらしいじゃないか?あ゛?あの仮面、1個しかなくて、スペアも作ってなかったのに!しかも、額が派手に割れて血が出て凄かったんだぞ!!(って星刻が言ってた。)・・・それに、皇帝直属の騎士様だと?口より先に手が出るお前に指揮官なんぞできるものか!・・・大体な!人の話を少しは聞け!!このKY!!っていうか、平然とナナリーの傍にいやがって!ふざけんなこの体力馬鹿がッ!!」
すごい勢いで捲し立てられて、スザクは目を白黒させている。
「はぁ、まだ言い足りないが、これから、中華連邦に行く準備があるから、ここで失礼するよ。・・・ナナリー、また、会える日まで、元気で。」
ほんの少し、息を切らしながら言ったルルーシュに、ナナリーは素直に頷いた。
「はい。お兄様v・・・私、頑張ります。見ていて下さいね。」
「ああ。ちゃんと、見てるよ。じゃあ・・・また。」
「あっ!ルルーっ・・・・・・シュ・・・。」
慌てて呼びとめようとしたスザクを無視して、モニターが真っ暗になる。がっくりとしたスザクの方を向いて、ナナリーはにっこりと笑った。
「・・・・・・スザクさん?」
「ひっ・・・は、はい!!」
「・・・私、今、とっても、幸せな気分なので、さっきのことは、不問にしてさしあげますけど・・・次はありませんからね?」
「い、いえす、ゆあ、はいねす・・・。」
ぎこちない敬礼をするスザクに、満足げに頷き、ナナリーは早速仕事に取り掛かった。
「うふふ。早く、衛星エリアにしていただかなくてはいけませんね。お兄様と協力するためですもの。」
そんな、ナナリーを補佐するべく、ジノやアーニャ、ローマイヤーがかなり協力的になったのは、言うまでもないだろう。
― おまけ・・・
「すっきりしたか?ルルーシュ。」
「ああ、C.C.・・・でも、いきなりお前が仮面を外すなんてことしてくれたから、びっくりしただろう?」
「ああでもしないと、お前が現実逃避から戻ってこないと思ったんだ。」
しれっと言ったC.C.を睨んで、ルルーシュは溜め息をついた。
「はぁ、それにしても、ナナリーに知られていたなんて。」
「・・・良いんじゃないのか?これで、協力できるんだからな。・・・ほら、とりあえず、中華連邦に行く準備だろう?」
「あ、そうだった。」
ワタワタと準備を始め出すルルーシュを見ながら、C.C.は溜め息をついた。
「はぁ・・・ナナリーは随分と黒くなったなぁ。スザクが随分怯えていたが、ルルーシュは全然気づかなかったし・・・恐るべし、シスコンだ。」
おしまい☆
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