Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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・二次創作だということをご理解したうえでお読みください!
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
久々にぐっすりと寝た気がした。
戦場にいた時はいつ襲撃があるとも知れず、いつでも起きれるように常に浅い眠りのままだった。
ぱかり、と目を開けるとそこには亜麻色の髪の毛をした子どもがいた。目の色は蘇芳。なかなかに生意気そうな面をしている。
「あ、生きてらァ・・・・・・近藤さぁーーーん!!」
叫ぶなり、シパーン!と障子戸を勢いよく開けた子どもが走り去るのを見送り、コトリ、と首を傾げる。
「・・・ん?ここ、どこだ?」
「・・・武州にあるとある道場だ」
独り言に返答があって、その声の主を振り返る。
「・・・あ、雪山遭難の黒ポニ」
「って、なんじゃそら!!」
速攻ツッコミが入る。
「だってぇ・・・寝たら死ぬぞ~って言うの、雪山で遭難したときぐらいじゃね?」
「う゛っ・・・し、しかたねぇだろうが!!それしか思いつかなかったんだよ!!」
幼馴染の一人に似ていてきつそうな顔つきの美丈夫だが、冷たい性格ではないらしい。
「・・・お前が連れてきてくれたのか?」
「まぁな・・・あんなトコでぶっ倒れてりゃ、拾わねェわけにゃいかねェだろうよ」
「・・・あんなトコ?」
「道場の裏手だよ。・・・胴着を干そうと思ったら、テメェが倒れてたんだ」
おぼろげながら自分が座り込んでしまった場所を思い出し、あぁ、と納得の声をあげた。
「わりぃ・・・造りが故郷の道場に似てたもんで・・・ついフラフラと入っちまって・・・」
ぐきゅるるるぅ~・・・
「・・・っ!!」
派手になった腹の音に、顔が真っ赤になったのを自覚する。
「くっ・・・腹ァ、減ってんだろ?・・・今、なんか持ってきてやるよ」
クツクツと笑いながら目元を緩めてそう言う彼に、バツが悪そうに俯き加減で礼を言う。
「・・・・・・ありがと、えっと・・・」
「十四郎。・・・土方十四郎だ」
「・・・十四郎・・・俺は、銀時。・・・・・・坂田、銀時」
こうやって己の名を名乗るのはいつ振りだろうと思い返す。
攘夷戦争に参加したばかりの頃は名を名乗っていたが、二つ名をつけられた辺りから本名を呼ばれることは無くなったように思う。
それと同時に自己紹介のときも二つ名のみを紹介して済ませてしまって、気づいたときには己の名を呼ぶのは幼馴染ともう一人のみになっていた。
「じゃあ、ちょっと待ってろよ。銀時」
だから、スイ、と出て行った彼に名を呼ばれたとき鳥肌が立った。それが久々に名を呼ばれたことに対する“懐かしさ”からだったのか“歓喜”からだったのかはわからないが。
***
「・・・あれ?土方の野郎はどこ行ったんだろ」
叫びながら出て行った子どもが、今度は大男を連れて部屋の中に入ってくる。
「ん~、トシは厠でも行ったんだろ。・・・よう、お前さん。起きたかい」
ニカリ、と笑う大男は大猩猩のようにがっちりとした体つきで、いかにも、という雰囲気を持っていた。
「アンタ、ここの主か?」
「おう!・・・俺は近藤勲、ここの道場主をやってる。こいつは門下生の沖田総悟だ。他にもう一人いたはずなんだが・・・」
「俺は、坂田銀時ってんだ。・・・十四郎?だったら、食いもん持ってくるって言って出てったよ」
銀時が答えれば、近藤は破顔する。
「そうか!もう自己紹介が終わってるなら大丈夫だな!!」
人の良さそうな笑みをうかべる近藤の脇で、沖田がジロジロと無遠慮に眺めてくる。
「・・・・・・なんだよ?」
「白髪だからジジィかと思ったら、結構若いんだな、お前」
「っ、こら・・・総悟!!」
「・・・失礼なちびすけだな。人を見た目で判断しちゃいけませんって習わなかったか?」
「ちびすけじゃない!!今に近藤さんみたいにおっきくなってやらァ!!」
啖呵を切る沖田に、銀時はひょい、と肩を竦める。
「見る限りじゃ、この大猩猩みたいな大男になるのは無理そうだけどな」
「ウルセェ!!絶対におっきくなってやる!!!」
「大猩猩って、ヒド!!」
とばっちりで貶された近藤がショックを受けている脇で、銀時と沖田の口喧嘩は続く。
***
「・・・どうなってんだ、こりゃ」
銀時に食べさせようと作った粥を乗せた盆を持ち、その状況を目にした土方は思わずといった様子で呟いた。
互いに頬を引っぱりあって口喧嘩をする銀時と沖田。そしてその脇で俯いてのの字を書いている近藤。
どうしてこうなった。そう問いたかったが、答えてくれそうな人間はこの場におらず。
結局、土方が一喝するまでその騒ぎが収まることはなかったのだった。
***
じんじんと痛む頭をさすりながら銀時は盆に乗った粥をすする。すこし塩気が強いが、ここ最近まったく塩分をとっていなかったせいか、無性に美味く感じた。
ちなみに、顔を付き合わせたままだとまた喧嘩をするという理由で、沖田は近藤にこの部屋から連れ出されている。
「ったく・・・殴んなくたっていいじゃん、十四郎って口より先に手が出るタイプ?」
「こうでもしねぇと止まらなかっただろうが。ガキと同じ土俵で喧嘩すんな。・・・てか、お前いくつだ?」
「ん~?・・・たぶん、17?」
「・・・なんで疑問系?」
「んと・・・途中で数えんの面倒になった」
「・・・・・・ジジィみてえな事言うなよ・・・」
がっくりと肩を落とした土方に、銀時はプクッと頬を膨らませた。
「ジジィじゃねぇもん。そんな余裕がなかっただけだもん」
「もんって言うな。気色悪・・・くもねぇか。何で違和感ねぇんだ?」
「俺に聞くなよ・・・つか、十四郎はいくつだよ?」
「俺か?俺は15だ」
「なんだ、年下か」
「・・・たぶん17なんだろ?もしかしたら数え間違えかもしれねぇぞ?」
「いいや、絶対17だね。俺のほうが年上だね」
「・・・・・・なんでいきなり張り合ってんだよ、お前」
「・・・いや、なんとなく」
目の前の男と張り合いたくなるのは、幼馴染にどこか雰囲気が似ているからだ。
けれどそれを口にするつもりはなく、銀時は言葉を濁した。
「ふぅん・・・」
納得はしていないようだが、無理やり聞き出そうとしてこないところは好感が持てた。
それにしても、怪我の手当てや粥まで恵んでもらっておいて言うことではないが、いささか危機感が足りないのではないかと思う。
戦争後期の志士の中には押し入り強盗のような真似をする者もいたというし、いくら戦火を逃れていたとはいえ素性の知れない相手を家の中にあげるのは危険すぎやしないだろうか。
「なぁ・・・お前、攘夷志士だろ」
「!」
何気なく言われて、銀時はぎょっとした。
「わかるさ・・・持ってる刀はボロボロだし、傷だらけだし・・・濃い血の臭いも、した」
「・・・わかってて、どうして」
「お前を着替えさせたときにな、傷跡をまじまじと見て近藤さんが言うんだよ。・・・無茶な戦いをしてきたんだなって、戦争が不本意な形で終わって悲しかっただろうなって・・・故郷に錦を飾れないって、辛いだろうなって」
「・・・ふっ・・・お人よし」
思わず笑みを漏らせば、土方もくつりと笑った。
「だろ?そういう人なんだよ、あの人は。・・・俺も、あの人に拾われた。喧嘩ばっかりして、バラガキなんて言われて・・・手のつけられねぇ悪ガキだった俺を・・・笑顔で迎え入れてくれたんだ」
「・・・そっか」
「・・・お前、行く当てあるのか?」
問われて、銀時はふるりと首を振った。
「適当にぶらつくつもりだけど・・・」
「・・・例えば、近藤さんがここにいろっつったら、どうする?」
「―――俺は」
もちろん、断って出て行く。そう言うつもりだったのになぜだか言葉にならなかった。
久しぶりの人とのふれあいに、戸惑っているだけだ。
塩気の強い粥に、意図せず聞かされた温かい言葉に、絆されたなんて―――ない。
黙り込んでしまった銀時に何か思うところがあったのか、土方は黙って立ち上がる。
「・・・食い終わったらそこ置いとけ。後で片付けっから」
完全に人の気配が感じられなくなると、銀時はほっと息をついた。
「・・・馬鹿じゃねぇの。今更・・・誰も守れなかった俺が・・・」
こんな温かな所で暮らして良いわけがない。
粥を口に運ぶ。
「しょっぱい・・・」
もともと塩気の強い粥が、頬を伝って口の中に入った涙のせいで余計にしょっぱく感じた。
***
ふ、と目を開ける。
あの後、粥を食べ終えて腹が満たされたからか、再び強烈な眠気に襲われた銀時はそのまま布団の中に倒れこんだ。
記憶はそこで止まっていたが、粥の入っていた器とそれを乗せていた盆は片付けられていて、あの後土方が持っていったのだろうと考えた後、愕然とした。
「・・・おいおい、気ィ抜きすぎだろ、俺・・・」
体力の限界と空腹で倒れたときならばいざ知らず、ある程度休んで腹も満たされた状態で寝こけて、人の近づく気配に気づかなかったなんてありえない。
戦場なら殺されていたって文句が言えないくらいに気が抜けている証拠だ。
「ダメだ・・・ここにいたら、俺、ダメになる・・・!」
ここの空気は穏やか過ぎる。戦争を知らない人々の持つ甘やかな空気。
それが悪いとは言わない。むしろ、戦争など知らないほうがいい。
だが、ここは自分が身を置く場所ではないと改めて思い知らされた気分だった。
ヨロヨロと立ち上がる。
まだ本調子ではないが、動けないほどではない。
出て行かなければ。そんな強迫観念にも似た衝動に突き動かされるように銀時は部屋の隅に置かれた自分の持ち物に手を伸ばした。
黙って出て行くのは気が引けたが、引き止められれば断れなくなってしまうかもしれない。
中庭を突っ切って思いの外広い屋敷の敷地から出ようとしたとき、目の前でひょこひょこと歩く小さな影を見つけて足を止めた。
「(・・・確か、総悟っていったっけか・・・)」
近藤に引っ付いていたその子どもは、木刀と胴着の入った袋を担いでいた。
家に帰るところなのだろう。見つからないようにしなければと近くの植え込みに身を隠して様子を伺う。
ふと立ち止まった沖田が、その場にしゃがみこんだ。
「(あれは・・・桔梗か?)」
野生の紫色をした星型の花。その名を知っていたのはただ単に師に教えてもらったからだ。物をよく知らなかったころの銀時は、なぜなにの連発をして師を苦笑させていた。
ああ、温かな場所にいるせいか、温かな思い出ばかりがうかんでくる。
ふるふると頭を振り、沖田に再び視線を向ければ、その小さな手が桔梗に伸ばされて今にも摘み取ろうとするところだった。
「あ・・・」
思わず声が出た。
それは銀時も覚えのある行為だった。
きれいな花を見つけてそれを大事な人に見せようと思ったとき・・・その花の寿命を縮めるとわかっていても摘み取るという方法をとってしまう。
ハタ、と止まった沖田は、銀時の隠れている植え込みの方へ鋭い視線を向けてきた。
「(・・・・・・や、やば・・・!)」
激しく後悔しつつも身動きの取れない銀時の元に、沖田の気配が近づいてきた。
「・・・お前、こんなトコで何やってるんだよ」
見下ろされて、銀時はため息をついた。
よいこらせ、と爺くさい掛け声とともに立ち上がる。
「・・・迷惑かける前に、出てこうと思ったんだよ」
「近藤さんが心配する。それに・・・・・・土方だって・・・」
土方の名が出ておや、と思う。
まだ出会って間もない銀時でさえ、彼ら二人が仲が悪いだろうということがわかるくらいに険悪な雰囲気だったのだが、それなりに認めてはいる、ということなのかと納得する。
「俺にゃぁ、もったいねぇよ・・・こんな場所」
そう言えば、沖田はいっそう不機嫌な表情になる。
「・・・こんなトコまでアイツにそっくりなんて、ムカつく」
沖田の呟きで、ああ、と声をあげた。“アイツ”とは十中八九、土方のことだろう。
怪我して腹減らしてぶっ倒れて、近藤に(銀時の場合は土方に)拾われて、居着こうともせずに黙って出て行こうとする。
どうやらことごとく彼の行動を(意図せずに)模倣してしまったようだ。
「わざとじゃねぇって・・・」
「わかってる・・・でも、だから行かせない。近藤さんはきっとお前を探そうとする。勝手に出て行ったやつなんて放っておけって言ったって、あの人は探す」
強い視線を向けられて、銀時は困り果ててしまった。
なんとなくそれが想像できてしまったというのもあるのだが、おそらくそれは実体験に基づくものなのだとわかったからだ。
「・・・十四郎の時はどうなった?」
「・・・二人してボロボロになって帰ってきた。アイツ、自分の喧嘩に近藤さんを巻き込んだんだ・・・お前だってそうなんだろ?独りきりになろうとする奴ってのは、大体そういった事情を抱えてるんだ」
ちびのくせに、意外と鋭いことを言うと感心した。
幕府が放った追っ手は、方々に散った攘夷志士を追い詰めているという。・・・捕まれば打ち首。そして銀時が見つからないという保障はない。そこに近藤がついてきたりでもしたら・・・。
「巻き込んだら、十四郎のときの比じゃなくなるかもな・・・」
苦笑をうかべて言えば、ギロリと睨まれた。
「なら、黙って出て行くな。近藤さんを納得させてから出てけ」
それが難しそうだから、黙って出て行こうとしたんじゃないか。
そうは思っても口には出さず、銀時は肩を落とした。
「・・・わかったよ・・・」
「・・・・・・で、なんで声なんてあげたんだよ」
そうでなければ、完璧に気配を絶っていた銀時を見つけることはできなかっただろう。沖田もそれを自覚しているのか不機嫌なままに訊ねてくる。
「・・・あー、いや・・・お前が花を摘もうとしてたからさ」
「悪いのかよ」
「・・・んー、誰にやるのか知らねぇけど・・・花の寿命はそんなに長くねぇんだ。摘むのはやめて一緒に見るだけにしちゃくれねぇか?」
己が師に摘んだ花を見せたとき、ありがとう、綺麗だね、そう言って嬉しそうに微笑んだ後に少しだけ悲しそうにしていたのを思い出す。
野生の花とはいえ、懸命に生きているものの命を奪う行為には違いなく、それを諭すように教えられた銀時は後で摘んだ場所へと足を運んで懸命に謝った。
戦場で多くの命を奪ってきた“白夜叉”が言うことでもないだろうが、どんな小さなものでも命が宿っている限りは大切に扱わなければならない。
「・・・姉上にあげようと思ったんだ・・・」
つい、と視線を逸らしながら答えた沖田は、肩を落とす。
「そっか・・・」
「前に・・・姉上にもお前が言ったのと似たようなこと言われた・・・でも、姉上は体が弱くて・・・」
泣きそうな顔になる沖田に慌て、銀時はオロオロと辺りを見回す。
女、子どもに泣かれるのは苦手だ。
「あ、あー・・・えーと・・・な、泣くなよ」
「・・・泣いてない。それに、花は摘まない。・・・お前に言われて思い出したから」
―――そーちゃん、せっかく生えている花を摘むのは可哀想よ。
困ったように笑いながらそう言った姉の顔を思い出して、沖田はむっつりとして告げた。
そして、グイ、と銀時の着ている着流しの袖を引っ張る。
「え、え?・・・な、ナニ!?」
「来い、姉上に紹介してやる・・・花の代わりだ。責任取れ」
どうやら今日の姉弟の話題は花から銀時に変わるらしい。
「・・・ああ・・・わかったよ」
ふっと表情を緩めて頷いた銀時から視線をそらし、沖田が大声で叫んだ。
「近藤さぁーーーん!!白髪頭借りてきまーーーす!!!」
「白髪頭じゃねぇし!!」
即座にツッコミを入れるが、沖田はサラリとそれを聞き流した。
「・・・総悟!?銀時!!?」
慌てて飛び出してきた近藤に見送られ、銀時は沖田に引きずられるまま付いて行った。
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戦場にいた時はいつ襲撃があるとも知れず、いつでも起きれるように常に浅い眠りのままだった。
ぱかり、と目を開けるとそこには亜麻色の髪の毛をした子どもがいた。目の色は蘇芳。なかなかに生意気そうな面をしている。
「あ、生きてらァ・・・・・・近藤さぁーーーん!!」
叫ぶなり、シパーン!と障子戸を勢いよく開けた子どもが走り去るのを見送り、コトリ、と首を傾げる。
「・・・ん?ここ、どこだ?」
「・・・武州にあるとある道場だ」
独り言に返答があって、その声の主を振り返る。
「・・・あ、雪山遭難の黒ポニ」
「って、なんじゃそら!!」
速攻ツッコミが入る。
「だってぇ・・・寝たら死ぬぞ~って言うの、雪山で遭難したときぐらいじゃね?」
「う゛っ・・・し、しかたねぇだろうが!!それしか思いつかなかったんだよ!!」
幼馴染の一人に似ていてきつそうな顔つきの美丈夫だが、冷たい性格ではないらしい。
「・・・お前が連れてきてくれたのか?」
「まぁな・・・あんなトコでぶっ倒れてりゃ、拾わねェわけにゃいかねェだろうよ」
「・・・あんなトコ?」
「道場の裏手だよ。・・・胴着を干そうと思ったら、テメェが倒れてたんだ」
おぼろげながら自分が座り込んでしまった場所を思い出し、あぁ、と納得の声をあげた。
「わりぃ・・・造りが故郷の道場に似てたもんで・・・ついフラフラと入っちまって・・・」
ぐきゅるるるぅ~・・・
「・・・っ!!」
派手になった腹の音に、顔が真っ赤になったのを自覚する。
「くっ・・・腹ァ、減ってんだろ?・・・今、なんか持ってきてやるよ」
クツクツと笑いながら目元を緩めてそう言う彼に、バツが悪そうに俯き加減で礼を言う。
「・・・・・・ありがと、えっと・・・」
「十四郎。・・・土方十四郎だ」
「・・・十四郎・・・俺は、銀時。・・・・・・坂田、銀時」
こうやって己の名を名乗るのはいつ振りだろうと思い返す。
攘夷戦争に参加したばかりの頃は名を名乗っていたが、二つ名をつけられた辺りから本名を呼ばれることは無くなったように思う。
それと同時に自己紹介のときも二つ名のみを紹介して済ませてしまって、気づいたときには己の名を呼ぶのは幼馴染ともう一人のみになっていた。
「じゃあ、ちょっと待ってろよ。銀時」
だから、スイ、と出て行った彼に名を呼ばれたとき鳥肌が立った。それが久々に名を呼ばれたことに対する“懐かしさ”からだったのか“歓喜”からだったのかはわからないが。
***
「・・・あれ?土方の野郎はどこ行ったんだろ」
叫びながら出て行った子どもが、今度は大男を連れて部屋の中に入ってくる。
「ん~、トシは厠でも行ったんだろ。・・・よう、お前さん。起きたかい」
ニカリ、と笑う大男は大猩猩のようにがっちりとした体つきで、いかにも、という雰囲気を持っていた。
「アンタ、ここの主か?」
「おう!・・・俺は近藤勲、ここの道場主をやってる。こいつは門下生の沖田総悟だ。他にもう一人いたはずなんだが・・・」
「俺は、坂田銀時ってんだ。・・・十四郎?だったら、食いもん持ってくるって言って出てったよ」
銀時が答えれば、近藤は破顔する。
「そうか!もう自己紹介が終わってるなら大丈夫だな!!」
人の良さそうな笑みをうかべる近藤の脇で、沖田がジロジロと無遠慮に眺めてくる。
「・・・・・・なんだよ?」
「白髪だからジジィかと思ったら、結構若いんだな、お前」
「っ、こら・・・総悟!!」
「・・・失礼なちびすけだな。人を見た目で判断しちゃいけませんって習わなかったか?」
「ちびすけじゃない!!今に近藤さんみたいにおっきくなってやらァ!!」
啖呵を切る沖田に、銀時はひょい、と肩を竦める。
「見る限りじゃ、この大猩猩みたいな大男になるのは無理そうだけどな」
「ウルセェ!!絶対におっきくなってやる!!!」
「大猩猩って、ヒド!!」
とばっちりで貶された近藤がショックを受けている脇で、銀時と沖田の口喧嘩は続く。
***
「・・・どうなってんだ、こりゃ」
銀時に食べさせようと作った粥を乗せた盆を持ち、その状況を目にした土方は思わずといった様子で呟いた。
互いに頬を引っぱりあって口喧嘩をする銀時と沖田。そしてその脇で俯いてのの字を書いている近藤。
どうしてこうなった。そう問いたかったが、答えてくれそうな人間はこの場におらず。
結局、土方が一喝するまでその騒ぎが収まることはなかったのだった。
***
じんじんと痛む頭をさすりながら銀時は盆に乗った粥をすする。すこし塩気が強いが、ここ最近まったく塩分をとっていなかったせいか、無性に美味く感じた。
ちなみに、顔を付き合わせたままだとまた喧嘩をするという理由で、沖田は近藤にこの部屋から連れ出されている。
「ったく・・・殴んなくたっていいじゃん、十四郎って口より先に手が出るタイプ?」
「こうでもしねぇと止まらなかっただろうが。ガキと同じ土俵で喧嘩すんな。・・・てか、お前いくつだ?」
「ん~?・・・たぶん、17?」
「・・・なんで疑問系?」
「んと・・・途中で数えんの面倒になった」
「・・・・・・ジジィみてえな事言うなよ・・・」
がっくりと肩を落とした土方に、銀時はプクッと頬を膨らませた。
「ジジィじゃねぇもん。そんな余裕がなかっただけだもん」
「もんって言うな。気色悪・・・くもねぇか。何で違和感ねぇんだ?」
「俺に聞くなよ・・・つか、十四郎はいくつだよ?」
「俺か?俺は15だ」
「なんだ、年下か」
「・・・たぶん17なんだろ?もしかしたら数え間違えかもしれねぇぞ?」
「いいや、絶対17だね。俺のほうが年上だね」
「・・・・・・なんでいきなり張り合ってんだよ、お前」
「・・・いや、なんとなく」
目の前の男と張り合いたくなるのは、幼馴染にどこか雰囲気が似ているからだ。
けれどそれを口にするつもりはなく、銀時は言葉を濁した。
「ふぅん・・・」
納得はしていないようだが、無理やり聞き出そうとしてこないところは好感が持てた。
それにしても、怪我の手当てや粥まで恵んでもらっておいて言うことではないが、いささか危機感が足りないのではないかと思う。
戦争後期の志士の中には押し入り強盗のような真似をする者もいたというし、いくら戦火を逃れていたとはいえ素性の知れない相手を家の中にあげるのは危険すぎやしないだろうか。
「なぁ・・・お前、攘夷志士だろ」
「!」
何気なく言われて、銀時はぎょっとした。
「わかるさ・・・持ってる刀はボロボロだし、傷だらけだし・・・濃い血の臭いも、した」
「・・・わかってて、どうして」
「お前を着替えさせたときにな、傷跡をまじまじと見て近藤さんが言うんだよ。・・・無茶な戦いをしてきたんだなって、戦争が不本意な形で終わって悲しかっただろうなって・・・故郷に錦を飾れないって、辛いだろうなって」
「・・・ふっ・・・お人よし」
思わず笑みを漏らせば、土方もくつりと笑った。
「だろ?そういう人なんだよ、あの人は。・・・俺も、あの人に拾われた。喧嘩ばっかりして、バラガキなんて言われて・・・手のつけられねぇ悪ガキだった俺を・・・笑顔で迎え入れてくれたんだ」
「・・・そっか」
「・・・お前、行く当てあるのか?」
問われて、銀時はふるりと首を振った。
「適当にぶらつくつもりだけど・・・」
「・・・例えば、近藤さんがここにいろっつったら、どうする?」
「―――俺は」
もちろん、断って出て行く。そう言うつもりだったのになぜだか言葉にならなかった。
久しぶりの人とのふれあいに、戸惑っているだけだ。
塩気の強い粥に、意図せず聞かされた温かい言葉に、絆されたなんて―――ない。
黙り込んでしまった銀時に何か思うところがあったのか、土方は黙って立ち上がる。
「・・・食い終わったらそこ置いとけ。後で片付けっから」
完全に人の気配が感じられなくなると、銀時はほっと息をついた。
「・・・馬鹿じゃねぇの。今更・・・誰も守れなかった俺が・・・」
こんな温かな所で暮らして良いわけがない。
粥を口に運ぶ。
「しょっぱい・・・」
もともと塩気の強い粥が、頬を伝って口の中に入った涙のせいで余計にしょっぱく感じた。
***
ふ、と目を開ける。
あの後、粥を食べ終えて腹が満たされたからか、再び強烈な眠気に襲われた銀時はそのまま布団の中に倒れこんだ。
記憶はそこで止まっていたが、粥の入っていた器とそれを乗せていた盆は片付けられていて、あの後土方が持っていったのだろうと考えた後、愕然とした。
「・・・おいおい、気ィ抜きすぎだろ、俺・・・」
体力の限界と空腹で倒れたときならばいざ知らず、ある程度休んで腹も満たされた状態で寝こけて、人の近づく気配に気づかなかったなんてありえない。
戦場なら殺されていたって文句が言えないくらいに気が抜けている証拠だ。
「ダメだ・・・ここにいたら、俺、ダメになる・・・!」
ここの空気は穏やか過ぎる。戦争を知らない人々の持つ甘やかな空気。
それが悪いとは言わない。むしろ、戦争など知らないほうがいい。
だが、ここは自分が身を置く場所ではないと改めて思い知らされた気分だった。
ヨロヨロと立ち上がる。
まだ本調子ではないが、動けないほどではない。
出て行かなければ。そんな強迫観念にも似た衝動に突き動かされるように銀時は部屋の隅に置かれた自分の持ち物に手を伸ばした。
黙って出て行くのは気が引けたが、引き止められれば断れなくなってしまうかもしれない。
中庭を突っ切って思いの外広い屋敷の敷地から出ようとしたとき、目の前でひょこひょこと歩く小さな影を見つけて足を止めた。
「(・・・確か、総悟っていったっけか・・・)」
近藤に引っ付いていたその子どもは、木刀と胴着の入った袋を担いでいた。
家に帰るところなのだろう。見つからないようにしなければと近くの植え込みに身を隠して様子を伺う。
ふと立ち止まった沖田が、その場にしゃがみこんだ。
「(あれは・・・桔梗か?)」
野生の紫色をした星型の花。その名を知っていたのはただ単に師に教えてもらったからだ。物をよく知らなかったころの銀時は、なぜなにの連発をして師を苦笑させていた。
ああ、温かな場所にいるせいか、温かな思い出ばかりがうかんでくる。
ふるふると頭を振り、沖田に再び視線を向ければ、その小さな手が桔梗に伸ばされて今にも摘み取ろうとするところだった。
「あ・・・」
思わず声が出た。
それは銀時も覚えのある行為だった。
きれいな花を見つけてそれを大事な人に見せようと思ったとき・・・その花の寿命を縮めるとわかっていても摘み取るという方法をとってしまう。
ハタ、と止まった沖田は、銀時の隠れている植え込みの方へ鋭い視線を向けてきた。
「(・・・・・・や、やば・・・!)」
激しく後悔しつつも身動きの取れない銀時の元に、沖田の気配が近づいてきた。
「・・・お前、こんなトコで何やってるんだよ」
見下ろされて、銀時はため息をついた。
よいこらせ、と爺くさい掛け声とともに立ち上がる。
「・・・迷惑かける前に、出てこうと思ったんだよ」
「近藤さんが心配する。それに・・・・・・土方だって・・・」
土方の名が出ておや、と思う。
まだ出会って間もない銀時でさえ、彼ら二人が仲が悪いだろうということがわかるくらいに険悪な雰囲気だったのだが、それなりに認めてはいる、ということなのかと納得する。
「俺にゃぁ、もったいねぇよ・・・こんな場所」
そう言えば、沖田はいっそう不機嫌な表情になる。
「・・・こんなトコまでアイツにそっくりなんて、ムカつく」
沖田の呟きで、ああ、と声をあげた。“アイツ”とは十中八九、土方のことだろう。
怪我して腹減らしてぶっ倒れて、近藤に(銀時の場合は土方に)拾われて、居着こうともせずに黙って出て行こうとする。
どうやらことごとく彼の行動を(意図せずに)模倣してしまったようだ。
「わざとじゃねぇって・・・」
「わかってる・・・でも、だから行かせない。近藤さんはきっとお前を探そうとする。勝手に出て行ったやつなんて放っておけって言ったって、あの人は探す」
強い視線を向けられて、銀時は困り果ててしまった。
なんとなくそれが想像できてしまったというのもあるのだが、おそらくそれは実体験に基づくものなのだとわかったからだ。
「・・・十四郎の時はどうなった?」
「・・・二人してボロボロになって帰ってきた。アイツ、自分の喧嘩に近藤さんを巻き込んだんだ・・・お前だってそうなんだろ?独りきりになろうとする奴ってのは、大体そういった事情を抱えてるんだ」
ちびのくせに、意外と鋭いことを言うと感心した。
幕府が放った追っ手は、方々に散った攘夷志士を追い詰めているという。・・・捕まれば打ち首。そして銀時が見つからないという保障はない。そこに近藤がついてきたりでもしたら・・・。
「巻き込んだら、十四郎のときの比じゃなくなるかもな・・・」
苦笑をうかべて言えば、ギロリと睨まれた。
「なら、黙って出て行くな。近藤さんを納得させてから出てけ」
それが難しそうだから、黙って出て行こうとしたんじゃないか。
そうは思っても口には出さず、銀時は肩を落とした。
「・・・わかったよ・・・」
「・・・・・・で、なんで声なんてあげたんだよ」
そうでなければ、完璧に気配を絶っていた銀時を見つけることはできなかっただろう。沖田もそれを自覚しているのか不機嫌なままに訊ねてくる。
「・・・あー、いや・・・お前が花を摘もうとしてたからさ」
「悪いのかよ」
「・・・んー、誰にやるのか知らねぇけど・・・花の寿命はそんなに長くねぇんだ。摘むのはやめて一緒に見るだけにしちゃくれねぇか?」
己が師に摘んだ花を見せたとき、ありがとう、綺麗だね、そう言って嬉しそうに微笑んだ後に少しだけ悲しそうにしていたのを思い出す。
野生の花とはいえ、懸命に生きているものの命を奪う行為には違いなく、それを諭すように教えられた銀時は後で摘んだ場所へと足を運んで懸命に謝った。
戦場で多くの命を奪ってきた“白夜叉”が言うことでもないだろうが、どんな小さなものでも命が宿っている限りは大切に扱わなければならない。
「・・・姉上にあげようと思ったんだ・・・」
つい、と視線を逸らしながら答えた沖田は、肩を落とす。
「そっか・・・」
「前に・・・姉上にもお前が言ったのと似たようなこと言われた・・・でも、姉上は体が弱くて・・・」
泣きそうな顔になる沖田に慌て、銀時はオロオロと辺りを見回す。
女、子どもに泣かれるのは苦手だ。
「あ、あー・・・えーと・・・な、泣くなよ」
「・・・泣いてない。それに、花は摘まない。・・・お前に言われて思い出したから」
―――そーちゃん、せっかく生えている花を摘むのは可哀想よ。
困ったように笑いながらそう言った姉の顔を思い出して、沖田はむっつりとして告げた。
そして、グイ、と銀時の着ている着流しの袖を引っ張る。
「え、え?・・・な、ナニ!?」
「来い、姉上に紹介してやる・・・花の代わりだ。責任取れ」
どうやら今日の姉弟の話題は花から銀時に変わるらしい。
「・・・ああ・・・わかったよ」
ふっと表情を緩めて頷いた銀時から視線をそらし、沖田が大声で叫んだ。
「近藤さぁーーーん!!白髪頭借りてきまーーーす!!!」
「白髪頭じゃねぇし!!」
即座にツッコミを入れるが、沖田はサラリとそれを聞き流した。
「・・・総悟!?銀時!!?」
慌てて飛び出してきた近藤に見送られ、銀時は沖田に引きずられるまま付いて行った。
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