Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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・二次創作だということをご理解したうえでお読みください!
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
坂本が数人の隊士を連れて武器を運んでくる手筈を整えて屯所を出て行くのを見送り、銀時は深い溜息をついた。
「・・・はぁ・・・ったく、なんでこうなるかな」
「まぁ、イイじゃないか。頼もしい味方なのだし」
隣に立つ伊東がポン、と肩を叩く。
「そうなんだけどォー・・・なんつーか、複雑なんだよ。色々と」
「わからないでもないけどね。でも、君の安全が第一なんだよ」
「・・・わかってる。俺が白鬼党に捕まるわけにはいかねェんだよな」
“白夜叉”の名の力は未だに強い。
幕府が旗頭に据えたおかげで、全盛期の約三分の一が攘夷から身を引いたと松平が話していた。
とくに多かったのは“白夜叉”の名に怯えていた者達だ。味方であれば心強いが敵に回ったら最悪の人間。そういった判断を下したのだろうと聞いたときはさすがに複雑だった。
次に多かったのは“白夜叉”を純粋に慕う者達。“白夜叉”がそう決めたのなら、とアッサリ降伏し、出頭してきたのだ。その者達の半分は真選組の一員となって働いている。
そして今、攘夷派は大きく過激派と穏健派に分かれ、両筆頭に高杉と桂がいる。白鬼党はそのどれとも関わらずにいるためかなかなか情報が手に入らない。
伊東が持ち帰った情報が、初めて手に入れた白鬼党の情報だったのだ。
「・・・なぁ、鴨ちゃん」
「鴨ちゃんではない、鴨太郎さんだ」
軽口には軽口を返す。ボケにはボケで返す。伊東は近藤達と共に暮らすうちにやり方を学んだらしい。
真選組の一員として過ごすうちに伊東も随分とイイ性格になったと松平が笑っていたのを思い出す。
「・・・昔はもうちょっと“からかいがい”があったのになァ」
「対処は心得た。一々怒っていたら身が保たないからね」
「可愛くない」
「可愛くなくて結構」
「で?・・・伊東、あの情報・・・意図的なものか?」
銀時の真剣な表情に、伊東は素直に頷く。
「ああ、間違いないな。・・・過激派の情報をあそこまで詳しく流せる者がいるとしたら・・・」
「高杉・・・か」
「だろうね」
肯定する伊東に銀時は苦笑した。
「十四郎達もたぶん気付いてるよな・・・こんなにあっさりと情報が手に入るわけないもんな」
「まぁ、真選組が結成して、君が幕府側に付いたという情報を流した数日後には“あの噂”が流れ出したわけだし・・・その頃から活動していたのは間違いないからね。幕府の情報網に5年間もひっかからなかった連中の情報がこれほど簡単に手に入ったのだから、裏があるに決まっている」
高杉が何を考えて己にその情報を掴ませたのかはわからないが、少なくとも白鬼党とつるんでいるわけではないと銀時に伝えるついでの“駄賃”のようなものなのだと伊東はふんでいた。
「うーん・・・裏ねェ・・・」
「・・・君の情報源では調べられないのかい?」
「ん~?・・・あぁ、元お庭番衆?」
「そう。将軍に頼まれて身柄を預かったと聞いたが」
「そうそう、先代将軍にクビにされてから、結構悲惨な目に遭ったらしくてさ~・・・俺専任の監察もいないし、イイだろってことになったんだよねぇ~」
「先代将軍か・・・つくづく誰にも止められなかったあの暴君を止めたあの方はスゴイと思うよ」
「だよな~・・・茂々が言うには先代将軍が倒れた後、すぐに割腹しようとしたらしいけど周りの人間が止めたんだってさ~」
「主君を諌めきれず、最後の手段でその命を奪い、自分は割腹してその責任をとる・・・見事な覚悟だよ」
「うん。まぁ、後始末する方が大変なんだけどな~」
「先代は天導衆にベッタリだったからな。色々と取り戻すのは大変だろうさ」
「・・・てゆーか、これって一般には知られてねーんだよな?」
銀時が首を傾げると、伊東は眼鏡に手をやった。
「そうだね、一般人は未だに先代将軍が“生きている”と思っている」
「だよな~・・・まさか“禅譲”じゃなくて“革命”とはなァ・・・しかもたった一人で」
「終戦直後の混乱した時期だったからこそ可能だったんだろう。先代将軍が辣腕を揮っていた戦争中では手出しができなかったハズだしね」
「・・・攘夷志士とか攘夷浪士とか・・・知らねェよな?」
「知ったら、かなりの数が攘夷を抜けるんじゃないのかな?」
「・・・・・・ワザと流してみる?」
「いや、それ以上に一般の方が混乱するし・・・幕府高官の中でも更に上位の者達しか知らないことだから、マズイだろう」
「だよね、大混乱だよね。真選組から漏れたなんて知れたら、速攻で真選組が潰されるよね」
「その前に真選組がなぜ知っている?と聞かれたら・・・かなり面倒なことになるんじゃないのかな」
「・・・将軍に直接聞きました~、なんて・・・マズイよなァ」
「そ、れ、はァ~、私達が坂田副長に教えましたァ~って言えば良いのよ~」
銀時が唸った時だった。
屯所を囲む外壁の屋根の上で仁王立ちになった忍装束の女が高らかにそう告げ、一瞬のうちに銀時の隣にやってくると、その腕にしなだれかかるようにしがみついた。
ギョッとする銀時の隣で、伊東が首を傾げた。
「あれ?元お庭番衆だよね?見たことないけど」
「あぁ、コレ?結構優秀なんだけど、一本どころか十本くらいネジが弛んでてさ・・・どう考えても表に出せねェんだよ」
「いやん!!言葉攻めね!!坂田副長!!もっと攻めて!!むしろ束縛して!!」
「・・・・・・た、確かに」
思わず伊東がどん引いて納得するくらいに際どい発言をする女に、銀時は心底嫌そうに視線を向けた。
「あのさぁ・・・まがりなりにも忍だろ?もうちょっと“忍べ”よな」
「ちゃんと忍んでるわ!!坂田副長のお風呂を覗くときとか!」
「いやぁああああ!!!おまわりさぁあああん!!!ここに痴女がいるぅうう!!!」
「落ち着け、坂田くん。僕等がそのおまわりさんだ」
叫ぶ銀時をなだめつつ、伊東は溜息をもらした。
「・・・元お庭番衆が何の用だい?何も用事がないのなら帰ってくれないかな?坂田くんの(主に精神面での)平和のために」
「フン、なんでアンタみたいな奴の言うことを聞かなきゃいけないワケ?私達に命令できるのは坂田副長だけよ!!」
叫びながら女は銀時をぎゅうぎゅうと抱き締める。
「・・・うん、その忠誠心は認めるけど・・・坂田くんが本気で魂飛ばしかけてるから、締め付けるのはやめてあげようか」
「きゃああ!!坂田副長!!しっかりして!!・・・は!!そうよ!こういうときはやっぱり、じ、じじじじじ、じん、人口、ここっ呼吸よね!!」
伊東のツッコミに更にテンションをあげた女は鼻息を荒くしながら銀時に唇を寄せる。そのあまりにも異様な光景に伊東が硬直していると、唇が触れ合う直前に女がハッとして顔をあげてその場から飛び退る。
一閃。
「出やしたねィ、変態雌豚」
抜刀したまま銀時をかばうように立ったのは沖田。
「出たわね!狂犬!!」
応じるように女が叫び、二人はバチバチッと火花を散らし合う。
「お、沖田くん・・・」
「伊東さんは久々に帰ってきたんで知らねェと思いやすが、こいつァ典型的なストーカーってヤツでさァ」
「・・・だ、誰の、なんて聞くまでもないか」
「ええ、胸くそ悪くなるんで、聞かねェでくだせェ」
女に刀を突き付けたまま沖田は目を細める。
「いい加減にしてちょうだい!!私と坂田副長の邪魔ばっかりして!!」
「いい加減気付いたらどうでィ、銀兄ィは迷惑してるんでさァ」
「何言ってるの!!アレは照れ隠しよ!!」
「・・・これが本気で言ってるから始末に負えやせんぜ」
呆れたように女を見据え、沖田はやれやれと肩を竦める。
「まぁ、あんまり昼間から坂田副長を誘惑し過ぎるのも良くないわね!!今日はこれで失礼するわ!!あーはははッ!!」
「・・・す、すごい前向きな捉え方していったよ・・・」
軽く外壁を飛び越える女を見送り、伊東は呆然と呟く。
「チッ、次こそは始末してやらァ・・・」
刀を鞘に収め、沖田は銀時に歩み寄る。
「おーい、銀兄ィ。こんなトコで寝てたら風邪ひきやすぜィ」
「・・・うーん、はッ!?猿飛は!?」
「俺が追い払いやした・・・もう少しのトコで首と胴体が離れるトコだったんですがねィ」
ガバリと起きあがった銀時に、沖田は満面の笑みをうかべる。
「・・・いや、笑顔で言わないでそーちゃん、怖いから・・・って、ん?」
上着の内ポケットに違和感を感じて手を入れる。そこに入っていたのは走り書きのようなメモが数十枚綴ってあるものだった。
「え、何コレ・・・あぁ、猿飛が入れてったのか」
首を傾げながらそのメモを読み進めていた銀時が、何枚目かを捲った瞬間に顔色を変えた。
「銀兄ィ?」
「白鬼党の頭目は・・・松田、軽助(きょうすけ)・・・」
その名は攘夷志士の中ではとても有名だった男の名だった。若いながらも幹部と対等に渡り合う有能さと“白夜叉”にしか従わないと言ってはばからなかった狂気を併せ持った男。
戦争末期、確かに“白夜叉”を担ごうとした面子の中に彼の姿もあったが、まさか頭目になっていようとは思いもしなかった。
背中に冷たい汗が伝う。
「・・・坂田くん?」
心配そうにこちらを見つめる沖田と伊東。
確かに真選組はこの5年で人斬り集団と呼ばれるほどに人を斬った。だが、あの男は違うのだ。攘夷戦争時であってもあの男は異様だった。
“白夜叉”とまではいかなくとも、化け物と呼ばれた男。
銀時はこの時初めて、真選組が負けるかもしれないという恐怖を抱いた。
***
白鬼党の頭目の名前が知れた。それ以来銀時の様子がおかしい。
土方はその常ならぬ銀時の様子に不安を覚えていた。
「・・・似てるな」
「ん?何がだ、トシ」
唐突にポツリと呟いた土方に、近藤が首を傾げる。
「あいつが武州の道場にきたばっかりの頃と似てる」
「・・・あぁ、銀時か。確かにそうかもなぁ・・・辛そうな顔してるのに、何も言ってくれないんだよなぁ、あいつ」
土方の言わんとしていることを理解した近藤は頷きながらぼやいた。
「・・・近藤さん、白鬼党の頭目ってのはそんなにヤバイ奴なのか?」
「いやぁ、俺もよく知らんよ。・・・でも、とっつぁんに聞いてみるか」
「頼む・・・なんか嫌な予感がすんだよ。銀時の奴、一人で突っ走らなけりゃいいがな・・・」
「そうだなぁ・・・トシ、銀時のこと見ていてくれるか?」
「ああ、わかった」
***
同じ頃、とある屋敷の一角。
「はぁああ?!あのメモを坂田に渡しただぁあ?!」
「ええ、渡したけど。ダメだったの?」
仰天する男に悪びれもせずに答え、猿飛は首をかしげた。
「ダメって・・・ダメじゃないが・・・白鬼党の情報は選別してから渡した方が・・・って今更か」
がっくりと肩を落とす男に、猿飛はさすがに不安を覚えて眉をひそめた。
「どういうこと?全蔵」
「松田軽助・・・こいつは“白夜叉”でしか制御できないって言われた化け物らしい。攘夷志士の中じゃかなりの有名人だ」
全蔵の言葉に猿飛は目を丸くした。
「“白夜叉”って・・・じゃあ」
「ああ・・・坂田とはかなり曰くのある奴だろうな。そんな奴が白鬼党の頭目やってるなんて知ったら・・・坂田だって心穏やかじゃいられないだろ」
「・・・坂田副長の様子を見て―――」
「待て待て猿飛!お前が行ったら逆効果だ。・・・ハァ、しょうがない。部下の不始末は上司の責任ってな」
慌てて身を翻した猿飛を止めて全蔵が肩をすくめる。
「・・・全蔵・・・や、優しくされたって、さっちゃんの心は坂田副長のものなんだからッ!ああッ、私って罪なお・ん・なッ・・・プギャボ!!」
「誰がお前に惚れてるか!ど阿呆!!お前の相手をすんのは疲れんだよ。金にもならないし、余計な手間かけさせんな!おとなしくしてろ!!い・い・な!?」
ゴスッ!という音と奇声と共にその場に倒れた猿飛の尻を、思いっきり踏みつけて叫ぶ全蔵。
その手には木刀のようなものが持たれている。どうやらそれで猿飛を殴り倒したらしい。殺気だつ全蔵に、さすがの猿飛も逆らえるハズもない。
「わ・・・わかったわ・・・」
渋々ながらも頷いた猿飛を容赦なく拘束して全蔵は屋敷を出る。
「まったく。こっちの不始末とはいえ、手間のかかる雇い主だな・・・」
とは言うものの、全蔵は銀時を気に入っている。この男のために働くのも悪くない。そう思わせる何かが彼にはあった。
幕府に頭を下げた。という話を聞いたときは信用できないと思ったが、当の本人に会ってみればなんてことはない、馬鹿な連中に自分を利用させないために、敢えて幕府に頭を下げることを選んだというキレ者だったのだ。
「まぁいい・・・雇い主が完璧じゃ、こっちの仕事がなくなるからな」
ニヤリと笑い、全蔵は真選組の屯所へと全速力で向かった。
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「・・・はぁ・・・ったく、なんでこうなるかな」
「まぁ、イイじゃないか。頼もしい味方なのだし」
隣に立つ伊東がポン、と肩を叩く。
「そうなんだけどォー・・・なんつーか、複雑なんだよ。色々と」
「わからないでもないけどね。でも、君の安全が第一なんだよ」
「・・・わかってる。俺が白鬼党に捕まるわけにはいかねェんだよな」
“白夜叉”の名の力は未だに強い。
幕府が旗頭に据えたおかげで、全盛期の約三分の一が攘夷から身を引いたと松平が話していた。
とくに多かったのは“白夜叉”の名に怯えていた者達だ。味方であれば心強いが敵に回ったら最悪の人間。そういった判断を下したのだろうと聞いたときはさすがに複雑だった。
次に多かったのは“白夜叉”を純粋に慕う者達。“白夜叉”がそう決めたのなら、とアッサリ降伏し、出頭してきたのだ。その者達の半分は真選組の一員となって働いている。
そして今、攘夷派は大きく過激派と穏健派に分かれ、両筆頭に高杉と桂がいる。白鬼党はそのどれとも関わらずにいるためかなかなか情報が手に入らない。
伊東が持ち帰った情報が、初めて手に入れた白鬼党の情報だったのだ。
「・・・なぁ、鴨ちゃん」
「鴨ちゃんではない、鴨太郎さんだ」
軽口には軽口を返す。ボケにはボケで返す。伊東は近藤達と共に暮らすうちにやり方を学んだらしい。
真選組の一員として過ごすうちに伊東も随分とイイ性格になったと松平が笑っていたのを思い出す。
「・・・昔はもうちょっと“からかいがい”があったのになァ」
「対処は心得た。一々怒っていたら身が保たないからね」
「可愛くない」
「可愛くなくて結構」
「で?・・・伊東、あの情報・・・意図的なものか?」
銀時の真剣な表情に、伊東は素直に頷く。
「ああ、間違いないな。・・・過激派の情報をあそこまで詳しく流せる者がいるとしたら・・・」
「高杉・・・か」
「だろうね」
肯定する伊東に銀時は苦笑した。
「十四郎達もたぶん気付いてるよな・・・こんなにあっさりと情報が手に入るわけないもんな」
「まぁ、真選組が結成して、君が幕府側に付いたという情報を流した数日後には“あの噂”が流れ出したわけだし・・・その頃から活動していたのは間違いないからね。幕府の情報網に5年間もひっかからなかった連中の情報がこれほど簡単に手に入ったのだから、裏があるに決まっている」
高杉が何を考えて己にその情報を掴ませたのかはわからないが、少なくとも白鬼党とつるんでいるわけではないと銀時に伝えるついでの“駄賃”のようなものなのだと伊東はふんでいた。
「うーん・・・裏ねェ・・・」
「・・・君の情報源では調べられないのかい?」
「ん~?・・・あぁ、元お庭番衆?」
「そう。将軍に頼まれて身柄を預かったと聞いたが」
「そうそう、先代将軍にクビにされてから、結構悲惨な目に遭ったらしくてさ~・・・俺専任の監察もいないし、イイだろってことになったんだよねぇ~」
「先代将軍か・・・つくづく誰にも止められなかったあの暴君を止めたあの方はスゴイと思うよ」
「だよな~・・・茂々が言うには先代将軍が倒れた後、すぐに割腹しようとしたらしいけど周りの人間が止めたんだってさ~」
「主君を諌めきれず、最後の手段でその命を奪い、自分は割腹してその責任をとる・・・見事な覚悟だよ」
「うん。まぁ、後始末する方が大変なんだけどな~」
「先代は天導衆にベッタリだったからな。色々と取り戻すのは大変だろうさ」
「・・・てゆーか、これって一般には知られてねーんだよな?」
銀時が首を傾げると、伊東は眼鏡に手をやった。
「そうだね、一般人は未だに先代将軍が“生きている”と思っている」
「だよな~・・・まさか“禅譲”じゃなくて“革命”とはなァ・・・しかもたった一人で」
「終戦直後の混乱した時期だったからこそ可能だったんだろう。先代将軍が辣腕を揮っていた戦争中では手出しができなかったハズだしね」
「・・・攘夷志士とか攘夷浪士とか・・・知らねェよな?」
「知ったら、かなりの数が攘夷を抜けるんじゃないのかな?」
「・・・・・・ワザと流してみる?」
「いや、それ以上に一般の方が混乱するし・・・幕府高官の中でも更に上位の者達しか知らないことだから、マズイだろう」
「だよね、大混乱だよね。真選組から漏れたなんて知れたら、速攻で真選組が潰されるよね」
「その前に真選組がなぜ知っている?と聞かれたら・・・かなり面倒なことになるんじゃないのかな」
「・・・将軍に直接聞きました~、なんて・・・マズイよなァ」
「そ、れ、はァ~、私達が坂田副長に教えましたァ~って言えば良いのよ~」
銀時が唸った時だった。
屯所を囲む外壁の屋根の上で仁王立ちになった忍装束の女が高らかにそう告げ、一瞬のうちに銀時の隣にやってくると、その腕にしなだれかかるようにしがみついた。
ギョッとする銀時の隣で、伊東が首を傾げた。
「あれ?元お庭番衆だよね?見たことないけど」
「あぁ、コレ?結構優秀なんだけど、一本どころか十本くらいネジが弛んでてさ・・・どう考えても表に出せねェんだよ」
「いやん!!言葉攻めね!!坂田副長!!もっと攻めて!!むしろ束縛して!!」
「・・・・・・た、確かに」
思わず伊東がどん引いて納得するくらいに際どい発言をする女に、銀時は心底嫌そうに視線を向けた。
「あのさぁ・・・まがりなりにも忍だろ?もうちょっと“忍べ”よな」
「ちゃんと忍んでるわ!!坂田副長のお風呂を覗くときとか!」
「いやぁああああ!!!おまわりさぁあああん!!!ここに痴女がいるぅうう!!!」
「落ち着け、坂田くん。僕等がそのおまわりさんだ」
叫ぶ銀時をなだめつつ、伊東は溜息をもらした。
「・・・元お庭番衆が何の用だい?何も用事がないのなら帰ってくれないかな?坂田くんの(主に精神面での)平和のために」
「フン、なんでアンタみたいな奴の言うことを聞かなきゃいけないワケ?私達に命令できるのは坂田副長だけよ!!」
叫びながら女は銀時をぎゅうぎゅうと抱き締める。
「・・・うん、その忠誠心は認めるけど・・・坂田くんが本気で魂飛ばしかけてるから、締め付けるのはやめてあげようか」
「きゃああ!!坂田副長!!しっかりして!!・・・は!!そうよ!こういうときはやっぱり、じ、じじじじじ、じん、人口、ここっ呼吸よね!!」
伊東のツッコミに更にテンションをあげた女は鼻息を荒くしながら銀時に唇を寄せる。そのあまりにも異様な光景に伊東が硬直していると、唇が触れ合う直前に女がハッとして顔をあげてその場から飛び退る。
一閃。
「出やしたねィ、変態雌豚」
抜刀したまま銀時をかばうように立ったのは沖田。
「出たわね!狂犬!!」
応じるように女が叫び、二人はバチバチッと火花を散らし合う。
「お、沖田くん・・・」
「伊東さんは久々に帰ってきたんで知らねェと思いやすが、こいつァ典型的なストーカーってヤツでさァ」
「・・・だ、誰の、なんて聞くまでもないか」
「ええ、胸くそ悪くなるんで、聞かねェでくだせェ」
女に刀を突き付けたまま沖田は目を細める。
「いい加減にしてちょうだい!!私と坂田副長の邪魔ばっかりして!!」
「いい加減気付いたらどうでィ、銀兄ィは迷惑してるんでさァ」
「何言ってるの!!アレは照れ隠しよ!!」
「・・・これが本気で言ってるから始末に負えやせんぜ」
呆れたように女を見据え、沖田はやれやれと肩を竦める。
「まぁ、あんまり昼間から坂田副長を誘惑し過ぎるのも良くないわね!!今日はこれで失礼するわ!!あーはははッ!!」
「・・・す、すごい前向きな捉え方していったよ・・・」
軽く外壁を飛び越える女を見送り、伊東は呆然と呟く。
「チッ、次こそは始末してやらァ・・・」
刀を鞘に収め、沖田は銀時に歩み寄る。
「おーい、銀兄ィ。こんなトコで寝てたら風邪ひきやすぜィ」
「・・・うーん、はッ!?猿飛は!?」
「俺が追い払いやした・・・もう少しのトコで首と胴体が離れるトコだったんですがねィ」
ガバリと起きあがった銀時に、沖田は満面の笑みをうかべる。
「・・・いや、笑顔で言わないでそーちゃん、怖いから・・・って、ん?」
上着の内ポケットに違和感を感じて手を入れる。そこに入っていたのは走り書きのようなメモが数十枚綴ってあるものだった。
「え、何コレ・・・あぁ、猿飛が入れてったのか」
首を傾げながらそのメモを読み進めていた銀時が、何枚目かを捲った瞬間に顔色を変えた。
「銀兄ィ?」
「白鬼党の頭目は・・・松田、軽助(きょうすけ)・・・」
その名は攘夷志士の中ではとても有名だった男の名だった。若いながらも幹部と対等に渡り合う有能さと“白夜叉”にしか従わないと言ってはばからなかった狂気を併せ持った男。
戦争末期、確かに“白夜叉”を担ごうとした面子の中に彼の姿もあったが、まさか頭目になっていようとは思いもしなかった。
背中に冷たい汗が伝う。
「・・・坂田くん?」
心配そうにこちらを見つめる沖田と伊東。
確かに真選組はこの5年で人斬り集団と呼ばれるほどに人を斬った。だが、あの男は違うのだ。攘夷戦争時であってもあの男は異様だった。
“白夜叉”とまではいかなくとも、化け物と呼ばれた男。
銀時はこの時初めて、真選組が負けるかもしれないという恐怖を抱いた。
***
白鬼党の頭目の名前が知れた。それ以来銀時の様子がおかしい。
土方はその常ならぬ銀時の様子に不安を覚えていた。
「・・・似てるな」
「ん?何がだ、トシ」
唐突にポツリと呟いた土方に、近藤が首を傾げる。
「あいつが武州の道場にきたばっかりの頃と似てる」
「・・・あぁ、銀時か。確かにそうかもなぁ・・・辛そうな顔してるのに、何も言ってくれないんだよなぁ、あいつ」
土方の言わんとしていることを理解した近藤は頷きながらぼやいた。
「・・・近藤さん、白鬼党の頭目ってのはそんなにヤバイ奴なのか?」
「いやぁ、俺もよく知らんよ。・・・でも、とっつぁんに聞いてみるか」
「頼む・・・なんか嫌な予感がすんだよ。銀時の奴、一人で突っ走らなけりゃいいがな・・・」
「そうだなぁ・・・トシ、銀時のこと見ていてくれるか?」
「ああ、わかった」
***
同じ頃、とある屋敷の一角。
「はぁああ?!あのメモを坂田に渡しただぁあ?!」
「ええ、渡したけど。ダメだったの?」
仰天する男に悪びれもせずに答え、猿飛は首をかしげた。
「ダメって・・・ダメじゃないが・・・白鬼党の情報は選別してから渡した方が・・・って今更か」
がっくりと肩を落とす男に、猿飛はさすがに不安を覚えて眉をひそめた。
「どういうこと?全蔵」
「松田軽助・・・こいつは“白夜叉”でしか制御できないって言われた化け物らしい。攘夷志士の中じゃかなりの有名人だ」
全蔵の言葉に猿飛は目を丸くした。
「“白夜叉”って・・・じゃあ」
「ああ・・・坂田とはかなり曰くのある奴だろうな。そんな奴が白鬼党の頭目やってるなんて知ったら・・・坂田だって心穏やかじゃいられないだろ」
「・・・坂田副長の様子を見て―――」
「待て待て猿飛!お前が行ったら逆効果だ。・・・ハァ、しょうがない。部下の不始末は上司の責任ってな」
慌てて身を翻した猿飛を止めて全蔵が肩をすくめる。
「・・・全蔵・・・や、優しくされたって、さっちゃんの心は坂田副長のものなんだからッ!ああッ、私って罪なお・ん・なッ・・・プギャボ!!」
「誰がお前に惚れてるか!ど阿呆!!お前の相手をすんのは疲れんだよ。金にもならないし、余計な手間かけさせんな!おとなしくしてろ!!い・い・な!?」
ゴスッ!という音と奇声と共にその場に倒れた猿飛の尻を、思いっきり踏みつけて叫ぶ全蔵。
その手には木刀のようなものが持たれている。どうやらそれで猿飛を殴り倒したらしい。殺気だつ全蔵に、さすがの猿飛も逆らえるハズもない。
「わ・・・わかったわ・・・」
渋々ながらも頷いた猿飛を容赦なく拘束して全蔵は屋敷を出る。
「まったく。こっちの不始末とはいえ、手間のかかる雇い主だな・・・」
とは言うものの、全蔵は銀時を気に入っている。この男のために働くのも悪くない。そう思わせる何かが彼にはあった。
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