2012/07/08 (Sun) ２５．そして・・・

注意
・あくまでも二次創作であることを前提にお読みください
・一国傾城編の過去話は完全に無視の状態です

以上、同意できる方のみ↓へ・・・

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「・・・先生、笑ってたアル」

「僕等に銀さんこと任せてくれたってことだよ、きっと」

神楽と新八が松陽の消えた場所をじっと見つめながら呟く。

「・・・・・・さて、帰るか」

土方もまた松陽の消えた場所を見つめていたが、フッと短く息を吐くとパンと手を叩いた。

「その前に確認しやしょうぜィ」

「あ゛ァ？」

沖田に出鼻をくじかれて、いささか不機嫌そうに土方が視線を向ける。

「念の為の確認でさァ・・・元の時代に帰ったら、過去のコトは見なかったことにする。これでいいんですねィ？」

「・・・ああ・・・この件で野郎に問い糺すこたァしねェよ」

鬼の副長らしからぬ言葉に、山崎は目を瞠った。

「・・・い、いいんですか？副長」

それでなくても銀時を調べろとか、攘夷の意志あらば斬れとか言ってくる人が―――。

そんな山崎の想いの含まれた言葉に、土方は眉間のしわを深めた。

「・・・聞けるわきゃねェだろうが」

あなたの過去を見ました。攘夷２大勢力のそれぞれのトップと幼馴染だったようですが今はどういう関係ですか―――なんて。

だって、どうしたって触れてしまうだろう。松陽の死という事実に。

どんな反応が返ってくるのかが怖い。

泣く子も黙る真選組の副長が何を怖がっているのか―――だが、あの男にだけは幻滅されたくない。そう思う自分がいる。

―――目標だから。好敵手だから。

「・・・はぁ、相変わらず複雑な思考の持ち主だねィ・・・ぐちゃぐちゃと理屈こねくり回してんじゃねェよ。土方コノヤロー・・・ただ単に、旦那に嫌われたくねーってだけでしょうが」

ぐるぐると考え込んでいる風な土方に沖田が溜息交じりに告げる。

「俺だって旦那には嫌われたくねェですよ・・・お互いに軽口叩きあって貶す程度なら別に問題ねェが、本気で憎まれたりなんかした日にゃ、俺ァさすがに傷つきますぜィ」

「・・・総悟」

珍しくも素直に自分の想いを吐露した沖田に、土方は目を丸くした。

「俺も・・・嫌ですよ」

山崎までそう口にして苦笑をうかべる。

「・・・確認なんざ必要ねーじゃねェか。どうせ、野郎に過去のことをネタに情報を引き出そうとする人間はここにはいねェし、そもそも吉田さんに呼ばれもしねェだろうよ」

「・・・でも、いつか・・・銀さんから話して欲しいですよね」

新八が呟く。

「こっちはめちゃくちゃオープンマインドしてるネ。いつかは銀ちゃんにも思いっきりゲロってもらうアル！」

「神楽ちゃん・・・女の子がゲロとか言わないで・・・」

暗い空気を嫌ってか神楽がそんなコトを叫べば、新八が苦笑してそれをたしなめた。

神楽の言葉に頷きそうになった真選組の面々は、新八の苦笑が神楽の言葉に同意してのものだとわかった。

銀時には真選組のみっともない所を何度も見られている。しかもその際に助けてもらったこともしばしばだ。

今度はこちらの番だ。そう思ってもあの男は何でもかんでも自分で抱え込んで、なかなかこちらに手を出させてはくれないのだ。

「・・・チャイナの言うことにも一理ありやすねィ・・・いつか旦那自身から過去の話を聞いてみてェもんでさァ」

「・・・んな殊勝なタマかよ」

「でも・・・そんな日が来ることを信じたいですよ」

土方が沖田の言葉を一蹴するが、山崎が縋るように口にする。

でなければ、いつまでもコソコソと過去を除き見てしまったことを隠していなければいけないではないか。

「・・・帰ろうぜ・・・ここで考え込んでたってしょうがねェよ」

「・・・・・・・・・アンタにだけは言われたくねェでさァ」

土方がまとめようとしたら、沖田がボソリと反論する。

人がせっかくまとめようとしたのに―――そう言葉にする前に光の粒が自身の身体を包み込む。

ああ、帰るのだ。

そう理解するのと同時に――――――意識が飛んだ。


＊＊＊


「・・・シ・・・ッ」

声が聞こえた。

「ん・・・」

目を閉じていても明るい光を感じる。

少し顔をしかめながら、土方は目を開けた。

「・・・あ、起きた」

その聞き覚えのある声に罪悪感からかギクリと肩が跳ねた。

そちらに視線を向けようとして―――顔に黒い影が覆いかぶさった。

「トシィィイイ！！も゛う゛起゛ぎな゛い゛ど思゛っ゛だよ゛ォオオ！！！」

「・・・・・・こ、近藤さん？」

ぎゅうぎゅうと抱きしめられているから誰だかわからないが、このアホな鼻声は自分が大将と仰ぐ人物のモノだとすぐにわかった。

軽く手で胸を押すと、顔のあらゆる所から汁を垂れ流す近藤のどアップが視界に入る。

「・・・汚ねェから拭け・・・って、ちょ、どこで拭こうとしてんだ、アンタ！！！」

己のスカーフで目や鼻やその他諸々の汁を拭こうとする近藤を地に沈め、土方は隊服についた草やら土やらを払った。

「おたくのゴリラがさァ～、この汁垂れ流しの状態で“トシと総悟がいなくなった～”って万事屋に駆け込んできてェ～・・・ちょー迷惑だったんですけどォ？」

こっちだって従業員２人いなくなって探してたっつーのに。

そうブツブツと呟く人物をようやく視界に入れて、土方は様々な意味を込めて溜息交じりに謝罪した。

「あー・・・悪かった」

「・・・あのー、もしもし？なんか悪いもんでも喰った？」

「・・・・・・喰ってねェよ」

何とも歯切れの悪い土方に、銀時は首を傾げた。

「？・・・変なヤツ・・・つーかよ、オメーらなんで仲良く一緒に林の中でぶっ倒れてたわけ？」

銀時に言われてハッとし、土方は改めて周りを見回した。

そこは自分が過去に行く前に意識を飛ばした場所で、足元には沖田や山崎だけでなく万事屋の子ども達まで転がっていた。

「・・・いや・・・わからねェ」

そう言うしかなかった。

ここに帰って来たのが己と沖田だけならば来た所に戻ったとも考えられたが、山崎も万事屋の子ども達も過去に来た時点ではそれぞれ別の場所にいたハズなのに同じ場所に帰って来た。

どういうことか、全くわからない。

「・・・ふーん、あっそう」

土方の表情を伺っていた銀時だが、興味を失くしたようにそう呟いて倒れている新八や神楽の元に行く。

「おーい、新八～、神楽～、起きろ～・・・起きねーと、汁まみれのゴリラ投入すっぞ～」

ガバリ。

「「それだけは絶対に嫌（です／ネ）！！」」

綺麗に声が重なり、銀時はうんうんと頷いた。

「だよな、つか途中から起きてたよな？もうマジで起きてたよなテメーら。何なの、放置プレイ希望ですかコノヤロー」

どうやら子ども達は気不味くて目を開けられなかったらしい。なんとなくその気持ちがわかって、土方は同情の視線を向けた。

自分達はともかく、子ども達は常に銀時と顔を合わせていながらあの事を黙っていなければならないのだ。

ともすれば、訊ねてしまいそうな・・・あの過去のことを。

「別にそんなんじゃないヨ！銀ちゃんもポカポカだから昼寝するアル！！」

抱きついたなんて甘い表現じゃ足りない勢いで己に飛びついて来た神楽に力一杯抱きしめられて銀時がぐえ、と呻いた。

「ああッ！！ぎ、銀さん！！大丈夫ですか！！？」

「死゛ぬ゛ッ・・・ギブ・・・ギブギブッッ！！」

抑え込みよろしく抱きつく神楽を引き剥がそうとするが、悲しいかな夜兎の力には大の大人の男でも勝てない。

「か、神楽ちゃん～～～！！銀さんの顔青いよ！！死んじゃうよ！！」

「嫌ヨ、ぜっったいに放さないネ！！」

「死゛ぬ゛～～～～～！！！！」

土方はそんな万事屋のいつものノリに安堵するものの、アホかと思ってしまう。

「・・・アホですねィ」

同じことを思ったらしい沖田が己の隣に来て呟く。

「・・・テメーもタヌキ寝入りしてたんじゃねーのかよ」

「いやぁ・・・騒がしくて、さすがに起きちまいやしたよ」

「・・・ですねー」

いつの間にか己の背後にいた山崎。

「ザキ・・・テメーもか」

呆れたように部下達を見つめ、土方はホッと息をついた。

あの直後で普通に銀時と話せる余裕はなかった。きっと“何かある”と気付かれたハズだ。

神楽の突飛な行動に救われた、そう思ったのは自分だけではあるまいと思う。

「・・・ぎゃーーーーッ！！銀さんの顔が土気色にぃいいいい！！！」

突如、新八の悲鳴が林の中に響き渡る。

そちらを見れば確かにひしとしがみつく神楽の腕の中で銀時がぐったりとしていた。

「・・・ぅおい！！チャイナ！！万事屋を放せ！！」

駆け寄った土方達に神楽はその蒼い瞳を爛々と輝かせて叫んだ。

「誰にも２人の愛は止められないアルーーーーッ！！」

「何の話してんだぁあああああ！！！」

今日一番の声量を発揮した新八のツッコミが神楽の耳を打った。


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