Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・完全捏造設定です!
・原作かなり無視しています!
・オリジナルキャラクターがわんさか出ます
・二次創作だということをご理解したうえでお読みください!
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
「・・・そう。わかったわ・・・じゃあ、午後7時に」
通話を終えると、氷柱は携帯を閉じ、口の端に笑みをうかべた。
「とうとう動くのね・・・フフ」
忌まわしい終戦の日より10年。その間ずっと氷柱達にとって恩人である銀時が、いつか奴らに見つかり粛清されるのではないかとハラハラしどうしだった。
それだけ、彼は奴らから恐れられているのだ。恐らく、現在攘夷志士達の2大筆頭となっている桂や高杉以上に。
だが、それももうすぐ終わる。少しずつ蒔いていた種が芽吹き始めたのだ。それを知ったら、きっと彼は過保護だと困ったように笑うのだろう。
「・・・氷柱」
そんな事を考えていたら突然名を呼ばれ、氷柱はピクリと肩を揺らした。
「・・・晋助様?何か御用ですか?」
振り返ると今現在の雇い主が目の前にいた。先程の話を聞かれたかと思ったが氷柱は敢えて素知らぬふりをした。
「・・・地上に使いを頼む」
そんな氷柱に気付いているだろうに、高杉は淡々と告げた。
現在、春雨との会合の帰り途中である。高杉が地上(した)と称したのはおそらく本拠地の京ではなくターミナルに近い江戸だ。
「はい、構いませんが・・・何をご入り用でしょうか?」
問う氷柱に、高杉はニヤリと笑った。
「甘味」
「・・・え!?」
「任せたぜ?」
「ちょっ・・・晋助様!?」
スタスタと行ってしまう背中を見送り、氷柱はガックリと肩を落とした。
「あー・・・バッチリ最初から最後までさっきの話聞かれてるじゃな~い」
高杉は甘味を口にしない。そんな高杉が甘味を所望することなど有り得ない。つまり、甘味=銀時の情報だ。
銀時が得意としたのは先陣を切って乱戦に持ち込み敵を薙ぎ倒す戦い方だ。だが、未だ力の弱い子どもだった他の【六花】の面子が得意としたのは情報戦。持てる限りの情報を駆使し、時には子どもということまで利用して天人達を恐怖の渦に叩き落とした。
【六花】は攘夷志士達の中でも情報戦に特化した部隊と捉えられており、銀時の部隊であると知る者は少ない。が、それを知る高杉が先程の話を聞いていて、未だに氷柱が銀時と繋がりを持っていることに気付いたのは間違いない。
「絶対、春霞に怒られる・・・!」
多分、銀時にも怒られる。春霞とは別の意味でだが。
頭を抱えた氷柱は、その姿を他の鬼兵隊の幹部の1人に目撃されたことすらも気付かず、どう言い訳をしようかと悩んでいたのだった。
万事屋の3人が帰った後、土方は山崎を呼び出した。
「・・・以前、万事屋について調べさせたな」
「あー、はい。・・・でも、旦那は違いますよ、副長」
「・・・そうじゃねェ。山崎テメェ、奴に探っていたことを気付かれてんぞ」
「え!?嘘でしょう!?・・・だって、旦那は何にも気付いてないようなそぶりでしたよ!?」
己の偵察に自信があるのではなく、あくまでも銀時の様子が変わらなかったと主張する部下に土方は頭を抱えた。
「ったく、誰がこんなことで嘘を言う?奴がハッキリと言ったんだ。俺がお前に調べさせていることもじきにわかるかも、とな」
「で、でも、それは旦那のことじゃなくて、他に調べていることかも・・・」
わずかな希望に縋るように山崎が言えば、土方は唸る。
「それも可能性としてはある。確かな筋からの情報だって言って幕府内部のネタを持って来やがったんだしな・・・だが、俺はどうしても“自分を探っているんだろう?”と聞かれているように思えたんだ・・・」
「副長・・・俺は信じたくないですよ・・・だって、旦那には色々と世話になってんじゃないですか」
「・・・私情は捨てろ・・・とりあえずテメェは幕府の下っ端共に茂茂公のお気に入りの噂がないか聞いてまわれ」
「・・・わかりました」
未だに納得してない様子の山崎だったが、仕事を与えられて渋々と部屋から出ていく。
「・・・土方さん、アンタは旦那が攘夷に関係してると思ってるんですかィ?」
ス、と隣の部屋の襖が開き、沖田が顔をのぞかせる。
「・・・あれだけバカ強ェ奴が、フツーの侍やってたように見えるか?」
ジロリ、と沖田を睨んだ土方だったが、盗み聞きをしたことについては何も言わずにその質問に質問で返した。
「そりゃ旦那は強ェですが、それだけで攘夷志士の連中と関係してると断定するには、乱暴過ぎですぜィ?」
沖田自身銀時を信じたいという思いから弁護するような言葉が口を突いて出る。
「・・・ここで論議してても始まらねェ・・・とりあえず、松平のとっつぁんトコに例の噂について聞きに行く」
銀時の件についてはこのまま平行線になると判断した土方は、話を切り替え立ち上がる。
「俺も行きますぜィ・・・近藤さんも行くって言ってましたしねィ」
沖田も立ち上がり、2人揃って近藤の部屋へと向かった。
― 城内某所
「・・・松平殿」
廊下で呼びとめられた松平は、振り返って首を傾げた。
「保科様?」
保科は若手ではあるが幕府官僚として天導衆とも繋がりのある雲の上の人物である。あまりにも珍しい人物が己を呼び止めたので、何の用なのかと松平は緊張する。
「あぁ、そう硬くならずに・・・少し、お話をしたいだけです」
ニコリと笑う保科に松平は戸惑いながらも頷いた。
松平に与えられた部屋に来ると、保科は懐から包みを取り出しそれを広げる。
「・・・落雁、ですか」
「ええ、一緒に食べましょう。上様から頂いたのです」
どうぞ、と勧められて松平はそれを口にする。
「甘い・・・」
「疲れがとれるだろうから、との御好意ですよ。・・・松平殿も随分と大変そうでしたからね」
それは真選組動乱事件のことを指しているのだろうと理解すると、松平はこっそりと溜息をついた。
(テメーらのせいで、高官から目ぇ付けられちゃったじゃないのォ)
「ああ、他意はありませんよ。ただ、彼らにお願いがありましてねぇ。松平殿に取り次いでもらいたいと思いまして」
松平の溜息の意味を正確に捉えた保科は、クツクツと笑いながらそう告げる。
「お願い、ですか」
「ええ。上様とも交流の深い松平殿の配下である真選組ならば間違い無しと思いますので」
「・・・ということは、将ちゃん関係で?」
「近いですが、厳密に言うと私のお使いという感じでしょうか・・・あぁ、一つ聞きますが、彼らは天導衆の支配に関して全面的に肯定しているということはありませんよねぇ?」
「!?」
突然の言葉にギョッとする松平に、保科は声を潜めた。
「実のところ、私もあまり奴らは好きじゃありません」
「っ・・・そんなことを言っては、お立場が」
「別に、自分の心を殺してまでもしがみつかなければならない立場じゃありませんし。ただ、便利だったので養父の後を継いだだけです」
「!・・・ご養子でしたか」
「ええ、実は私は戦争孤児なのですよ。亡き養父は実父の又従兄にあたります。戦後、子のいない保科家に引き取られたんです」
「は、はあ」
なぜいきなり明け透けにこんな事を己の前で語るのか、松平は保科の真意を計りかねていた。
「まぁ、年も近いですし上様とは話が合いましてね。貴方と江戸の町を歩いて経験したことなどをよく聞くんですよ。キャバクラに行った話はとくに楽しそうでした」
ニコニコと保科が話す内容は、将軍本人と松平しか知りえないものだ。(万事屋なども関わったりしていたが今は関係ないだろうと思考からはじき出した。)
「本当に将ちゃんから・・・?」
「お聞きしたんですよ。それでね、ちょっとお願い事がありまして」
「お願い事・・・?」
「それは、彼らも交えて話しましょうか」
保科はそう言って静かに戸に近づくと、スッと引いた。
「ぅおわっ!?」
ドタドタと室内に倒れ込んだ己の配下を見て松平は頭を抱え込んだ。
「テメーら、何してんだァ」
「す、すまねぇ・・・とっつぁん」
ガバッと起きあがった近藤が頭を下げると、
「ワリィ」
土方も頭を下げる。
「俺は止めたんでさァ」
そんな2人とは違い、反省の態度を見せない沖田の頭を土方がむんずと掴んで床に叩きつけた。
「ほんッッとにすんませんでしたぁああああ!!」
目の前にいるのが松平だけなら良い。だが、幕府官僚の保科がいるのだ。下手な真似はできない。
「・・・うわぁ・・・痛そう」
が、そんな保科の口から漏れた言葉は、随分とのんびりしたものだった。
「ねぇ、君・・・大丈夫?」
「はぁ、大丈夫ですぜィ・・・(土方コノヤロー、後でコロス(ぼそ))」
「(ブチッ)あ゛ぁ゛!?なんか言ったかゴルァ!!」
頷いた沖田は土方をギロリと睨んだ。負けじと土方も睨みかえす。
「・・・トシ!総悟!いい加減にしないか!!」
そんな2人の間に入り近藤が仲裁すると、土方と沖田はフイッと互いに顔を背けた。
「「・・・チッ」」
「・・・あー、すいませんねェ・・・こういう奴らなんですよォ」
さすがにフォローしきれなかった松平が恐る恐る保科を見ると、彼は腹を抱えてケタケタと笑っていた。
「くくく・・・あー、本当に噂通りの面白い人達ですね」
目にうかんだ涙を拭うと、保科は姿勢を正した。
「実はある人をここに、というか上様と私の所に連れてきて欲しいのですよ」
「ある人・・・ですか?」
「ええ。銀色の侍を」
「「「!!」」」
「おや、その様子だと探すまでも無くご存知のようだ」
銀と聞いて思い当たるのは彼しかいない。息を呑んだ真選組の3人に保科はニッコリと笑って告げた。
「ついでに、“酢昆布好きなかぶき町の女王”と“メガネの人”も一緒に連れてきて頂きたいんです」
それらの特徴は万事屋の3人を示していた。
「あ、あの・・・どうして彼らを?」
近藤が訊ねると、保科はあっさりと答える。
「そよ姫がとても楽しそうに話されているのを聞いて、上様がその者達を呼びたいとまで仰るのでね」
「ああ、ナルホド・・・」
自分達が連れ戻しに行った時に共にいたのは、確かに万事屋の紅一点・神楽だった。その事を思い出した土方は納得したように頷いた。
「しかし将ちゃんも人が悪い。保科様を通さずに俺に直接言ってくれれば良いものを」
「先程のは建前でしてね、話はそれだけじゃないんですよねぇ・・・そもそも、そよ姫のお気に入りというだけでそんな得体の知れない人物を呼ぶと思いますか?」
保科の言葉に、松平と真選組の3人は首を横に振る。
「でしょう?・・・私達はね、彼らに動いてもらいたい事があるから呼ぶんですよ」
そう言った保科は笑顔のまま懐から短刀を取り出し、天井に向けて投げ放つ。
突き刺さった短刀を見てギョッとする4人をよそに、保科は天井に向けて声をかけた。
「春霞、降りてくると良い」
すると、カタリと天井の板が外されてひらりと若い男が降って来た。
「もう少し手加減してください、刺さるかと思いました」
降り立った瞬間ムッとした様子で言った春霞は保科に冷めた視線を向けた。
「すまん。だが、お前なら避けられると思ったのに」
「冗談は止してください。いくら私だっていきなりじゃ避けられませんよ」
「あー・・・保科様?」
「ああ、驚かせて申し訳ない。彼は私の友人で春霞といいます」
「どうも」
ぺこりと頭を下げたその男は保科に対して敬意を払っている様子も見えないため、紹介された通り友人なのだろうと納得できた。
「普段なら彼に頼むのですが、今回は人の出し入れなので、松平殿と真選組にご協力いただけたらと思っているんです」
「それは構いませんが・・・一体彼らに何をさせようというんです?」
松平が問うと保科は表情を消した。
「それはまだ言えません」
その目が一瞬・・・銀時のソレと被った。
城からの帰り、真選組の面々は何とも言えない表情をうかべていた。
「・・・なぁ、トシ、総悟・・・万事屋はこうなることをわかっていたんだろうか?」
「・・・わかってたから、俺達に調べさせようとしたんじゃねェのか?」
「旦那は・・・どっからこの情報を得たんですかねィ?」
銀時が殺気を放ってまでも調べさせようとした“将軍のお気に入り”は、間違いなく保科だ。その保科から万事屋の3人を自分達の前に連れて来いと命じられた。
銀時はどこまで知っていたのか。保科の考えまでもを知っているとしたら、それはどこからの情報なのか。
「・・・奴は、おそらく桂と繋がりがある。よく行動を共にしているようだしな。・・・万が一にも攘夷浪士からの情報だったら・・・本当に奴を茂々公の元にあげても良いのか?」
土方がボソと呟けば、近藤は首を振る。
「連れていかないわけにはいくまい・・・保科様からのお願いという形をとってはいたが、これは勅命だろう」
「そうですぜィ、土方さん。とにかく旦那達を城に連れていかなけりゃなんねェんです。素直に付いて来てくれりゃあ良いですが、万が一にも雲隠れされた日にゃ、俺らの首が飛びかねねェってことです。・・・何寝ぼけたこと言ってんですかィ」
沖田が呆れたように言えば、土方は肩を落とした。
「・・・だよな。俺達に拒否権はねェってことだ」
「あ」
近藤が突如声をあげた。
「どうした?近藤さん」
「いや、あれ・・・万事屋、だよな?」
近藤の指差す方向を見れば銀色が通路の脇に消えていくのが見えた。
自然、その後を追った3人はその背が立ち止まったのを視界に入れて慌てて柱の影に隠れた。
「・・・久しぶりだな」
銀時の声が聞こえる。
「はい。銀時様」
柔らかな女の声がそれに応え、3人から見える位置にその姿を現す。
現れたのは絶世の美女。濡羽色の艶やかな髪がその美貌をより一層引き立てていた。
「・・・最後に会ったのはいつだったか・・・随分と綺麗になったなぁ」
「銀時様に褒めて頂けるなんて、嬉しい」
はにかんだように笑うと、美しいというより可愛らしい雰囲気になる。
「おい、氷柱ばっかり銀時様と話すなよ」
彼女を押しのけるようにムッとした表情の青年が現れる。
「あら、水澄は同じ町中にいたんじゃない、私なんて宇宙よ宇宙」
「それは氷柱が選んだんだろ?」
「だってェ・・・」
「コラコラ、ケンカすんじゃねェよ、オメェら」
言い合う2人の間に割って入り、銀時が呆れたような声を出した。
「ごめんなさい」
「・・・スミマセン」
「・・・まぁ、元気そうで良かった」
「「はい!」」
頷く2人に、銀時は苦笑をうかべる。
「・・・まったく、いい加減大人になりなさい、2人とも」
そんな銀時の脇から現れたのは、真選組の3人にとってはつい先程あったばかりの人物だった。
思わず声をあげそうになった近藤の口を手で塞いだ土方と沖田は一言も聞き漏らすまいと耳をすませた。
「春霞か、夏霧の様子を見て来たんだろ?どうだった?」
「松平様と真選組の3人に会ってまして、私も紹介されました」
「へぇ・・・真選組は早速動いてくれたわけだ」
「そのようですね。・・・それで、予定通りに夏霧が真選組にお願いしてましたよ」
「ふーん・・・じゃあ、近いうちに城にあがることになりそうだな」
そう呟く銀時に、春霞は眉を顰めた。
「・・・大丈夫ですか?」
「まぁ、夏霧が大丈夫だっつってんだから、大丈夫だろ」
銀時がそう言えば、3人は頷く。【六花】の頭脳と呼ばれた夏霧の判断だからこそ、春霞も水澄も氷柱も動いているのだ。
「で、氷柱はあっちで大切にしてもらってんのか?もし虐められてんなら俺に言え?アイツをブン殴りに行くから」
「だ、大丈夫です、銀時様・・・あの方はたぶん、私が銀時様の手駒と気付いているんだと思いますけど、普通に接してくれていますから」
「ふぅん、アイツがねェ・・・まぁ、元々は優しい奴だからなぁ。今のアレはその反動なんだよなァ」
「銀時様・・・あの、それで・・・あの方から甘味を所望されたんですけど・・・」
言い難そうにしながらも氷柱が告げると、銀時は目を丸くし、春霞が眦をつりあげた。
「氷柱、まさか今日のこと、あの方にバレたんですか!?」
「う、ごめんなさい・・・」
「へ~、それでも大人しく出してくれたわけだ・・・」
「銀時様!感心している場合じゃありません!・・・氷柱、もう戻るのは止めなさい!」
珍しく声を荒げる春霞に、氷柱は身を竦めながらも反論した。
「そ、そういうわけにはいかないわ・・・だって、私が逃げたら銀時様とあの方の繋がりは一切無くなってしまう・・・」
「しかし・・・」
「なぁ、春霞・・・大丈夫だよ、あの方は俺達にだって優しかったろ?」
渋る春霞を水澄が宥める。
「それは・・・そうですが・・・」
春霞は銀時に視線を送る。こういう時は銀時の判断に従うべきと学習しているのだ。
「まぁ、大丈夫だろ。・・・氷柱、アイツは甘味を寄越せと言ったんだな?」
「・・・はい」
「じゃあ、これでも持っていけ」
銀時が渡したのは常に腰に佩いていた木刀・洞爺湖だった。
「!・・・でも、銀時様・・・」
「ま、夏霧から代わりを貰うよ。元々あっちもそのつもりっぽいし」
「夏霧が、持っていたんでしたっけ・・・アレ」
水澄が問えば、銀時は耳をほじりながら答える。
「ああ、夏霧は武家の子で、身内が幕府の高官だったしな~持たせるにはもってこいだろ」
「・・・良いんですか?」
春霞が銀時の表情を窺えば、死んだ魚のような瞳を向けられる。
「いーんだよ。ポリシーがあって木刀持ってたわけじゃねぇしな」
「そう、ですか」
「・・・じゃあ、あの方にはこれをお届けします」
納得する春霞と、洞爺湖を大事そうに抱える氷柱。その2人の頭を撫でて銀時は笑った。
「まぁ、心配すんな・・・大丈夫だから」
「・・・いいなぁ」
ボソ、と水澄が呟く。
「ん?・・・ああ」
銀時は一瞬首を傾げ、それから破顔すると水澄の頭も撫でた。目を細めた水澄に、銀時は慈愛に満ちた笑みをうかべる。
「・・・仲が良いでござるな」
その時、奥の方から声が聞こえ、銀時達が身構える。
「!・・・河上、万斉」
銀時の声が緊張している。
そして、その名は真選組にとっても忌まわしい名だった。思わず刀に手をかけた沖田を抑え、土方はその男を見つめる。
「万斉、様」
氷柱の声がその名を呼ぶ。
「帰るでござるよ、氷柱。間もなく出立だ」
「・・・あ」
万斉の言葉に、氷柱は銀時を振り返る。
「・・・行け、氷柱。・・・それと、アイツにマジで次はねェって伝えとけ」
「はい・・・」
頷いた氷柱は、万斉の傍に走り寄る。
「・・・おい、氷柱に万が一にでも危害を加えるようなことをしてみろ、完膚なきまでに叩きつぶしてやるからな」
銀時の鋭い殺気が万斉に向けられる。
「わかっている・・・晋助にも伝えておくでござる」
そう言うと、万斉は氷柱を連れてその場を去る。
その背を見送りながら、春霞は銀時を見上げる。
「本当に氷柱を行かせても良かったんですか?」
「・・・氷柱に手を出すようなら、アイツも堕ちるとこまで堕ちたってことだ」
銀時は万斉の背を睨み据えてそう答える。
「・・・俺、桂さんに言っておきます」
水澄が堪らず言えば、銀時は溜息を漏らした。
「はぁ、余計な火種を蒔くなって言っても、聞かねェんだろ?」
「絶対、桂さんに言います」
「あー、はいはい。わーったよ。・・・言っとけ言っとけ」
ヒラヒラと手を振る銀時に頭を下げて水澄は万斉達とは別の方向へと走り去る。
「・・・銀時様」
「なんだ、春霞」
「あちらに情報は?」
「・・・ん~、まぁ、回しとけ。自分だけ仲間外れかと大騒ぎしそうだしな」
「わかりました。・・・我等【六花】・・・貴方の“心”を必ずお守り致します」
深々と頭を下げた春霞は、そのまま姿を消した。
「・・・ったく、どいつもこいつも。俺は・・・まだ大丈夫だっつのに」
呟いた言葉はどこか頼りなさげに響き、息を殺して聞いていた真選組の3人は思わず顔を見合わせた。
だから、気付かなかった。
銀色が、苦笑をうかべて自分達を見ていたことを。
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「とうとう動くのね・・・フフ」
忌まわしい終戦の日より10年。その間ずっと氷柱達にとって恩人である銀時が、いつか奴らに見つかり粛清されるのではないかとハラハラしどうしだった。
それだけ、彼は奴らから恐れられているのだ。恐らく、現在攘夷志士達の2大筆頭となっている桂や高杉以上に。
だが、それももうすぐ終わる。少しずつ蒔いていた種が芽吹き始めたのだ。それを知ったら、きっと彼は過保護だと困ったように笑うのだろう。
「・・・氷柱」
そんな事を考えていたら突然名を呼ばれ、氷柱はピクリと肩を揺らした。
「・・・晋助様?何か御用ですか?」
振り返ると今現在の雇い主が目の前にいた。先程の話を聞かれたかと思ったが氷柱は敢えて素知らぬふりをした。
「・・・地上に使いを頼む」
そんな氷柱に気付いているだろうに、高杉は淡々と告げた。
現在、春雨との会合の帰り途中である。高杉が地上(した)と称したのはおそらく本拠地の京ではなくターミナルに近い江戸だ。
「はい、構いませんが・・・何をご入り用でしょうか?」
問う氷柱に、高杉はニヤリと笑った。
「甘味」
「・・・え!?」
「任せたぜ?」
「ちょっ・・・晋助様!?」
スタスタと行ってしまう背中を見送り、氷柱はガックリと肩を落とした。
「あー・・・バッチリ最初から最後までさっきの話聞かれてるじゃな~い」
高杉は甘味を口にしない。そんな高杉が甘味を所望することなど有り得ない。つまり、甘味=銀時の情報だ。
銀時が得意としたのは先陣を切って乱戦に持ち込み敵を薙ぎ倒す戦い方だ。だが、未だ力の弱い子どもだった他の【六花】の面子が得意としたのは情報戦。持てる限りの情報を駆使し、時には子どもということまで利用して天人達を恐怖の渦に叩き落とした。
【六花】は攘夷志士達の中でも情報戦に特化した部隊と捉えられており、銀時の部隊であると知る者は少ない。が、それを知る高杉が先程の話を聞いていて、未だに氷柱が銀時と繋がりを持っていることに気付いたのは間違いない。
「絶対、春霞に怒られる・・・!」
多分、銀時にも怒られる。春霞とは別の意味でだが。
頭を抱えた氷柱は、その姿を他の鬼兵隊の幹部の1人に目撃されたことすらも気付かず、どう言い訳をしようかと悩んでいたのだった。
万事屋の3人が帰った後、土方は山崎を呼び出した。
「・・・以前、万事屋について調べさせたな」
「あー、はい。・・・でも、旦那は違いますよ、副長」
「・・・そうじゃねェ。山崎テメェ、奴に探っていたことを気付かれてんぞ」
「え!?嘘でしょう!?・・・だって、旦那は何にも気付いてないようなそぶりでしたよ!?」
己の偵察に自信があるのではなく、あくまでも銀時の様子が変わらなかったと主張する部下に土方は頭を抱えた。
「ったく、誰がこんなことで嘘を言う?奴がハッキリと言ったんだ。俺がお前に調べさせていることもじきにわかるかも、とな」
「で、でも、それは旦那のことじゃなくて、他に調べていることかも・・・」
わずかな希望に縋るように山崎が言えば、土方は唸る。
「それも可能性としてはある。確かな筋からの情報だって言って幕府内部のネタを持って来やがったんだしな・・・だが、俺はどうしても“自分を探っているんだろう?”と聞かれているように思えたんだ・・・」
「副長・・・俺は信じたくないですよ・・・だって、旦那には色々と世話になってんじゃないですか」
「・・・私情は捨てろ・・・とりあえずテメェは幕府の下っ端共に茂茂公のお気に入りの噂がないか聞いてまわれ」
「・・・わかりました」
未だに納得してない様子の山崎だったが、仕事を与えられて渋々と部屋から出ていく。
「・・・土方さん、アンタは旦那が攘夷に関係してると思ってるんですかィ?」
ス、と隣の部屋の襖が開き、沖田が顔をのぞかせる。
「・・・あれだけバカ強ェ奴が、フツーの侍やってたように見えるか?」
ジロリ、と沖田を睨んだ土方だったが、盗み聞きをしたことについては何も言わずにその質問に質問で返した。
「そりゃ旦那は強ェですが、それだけで攘夷志士の連中と関係してると断定するには、乱暴過ぎですぜィ?」
沖田自身銀時を信じたいという思いから弁護するような言葉が口を突いて出る。
「・・・ここで論議してても始まらねェ・・・とりあえず、松平のとっつぁんトコに例の噂について聞きに行く」
銀時の件についてはこのまま平行線になると判断した土方は、話を切り替え立ち上がる。
「俺も行きますぜィ・・・近藤さんも行くって言ってましたしねィ」
沖田も立ち上がり、2人揃って近藤の部屋へと向かった。
― 城内某所
「・・・松平殿」
廊下で呼びとめられた松平は、振り返って首を傾げた。
「保科様?」
保科は若手ではあるが幕府官僚として天導衆とも繋がりのある雲の上の人物である。あまりにも珍しい人物が己を呼び止めたので、何の用なのかと松平は緊張する。
「あぁ、そう硬くならずに・・・少し、お話をしたいだけです」
ニコリと笑う保科に松平は戸惑いながらも頷いた。
松平に与えられた部屋に来ると、保科は懐から包みを取り出しそれを広げる。
「・・・落雁、ですか」
「ええ、一緒に食べましょう。上様から頂いたのです」
どうぞ、と勧められて松平はそれを口にする。
「甘い・・・」
「疲れがとれるだろうから、との御好意ですよ。・・・松平殿も随分と大変そうでしたからね」
それは真選組動乱事件のことを指しているのだろうと理解すると、松平はこっそりと溜息をついた。
(テメーらのせいで、高官から目ぇ付けられちゃったじゃないのォ)
「ああ、他意はありませんよ。ただ、彼らにお願いがありましてねぇ。松平殿に取り次いでもらいたいと思いまして」
松平の溜息の意味を正確に捉えた保科は、クツクツと笑いながらそう告げる。
「お願い、ですか」
「ええ。上様とも交流の深い松平殿の配下である真選組ならば間違い無しと思いますので」
「・・・ということは、将ちゃん関係で?」
「近いですが、厳密に言うと私のお使いという感じでしょうか・・・あぁ、一つ聞きますが、彼らは天導衆の支配に関して全面的に肯定しているということはありませんよねぇ?」
「!?」
突然の言葉にギョッとする松平に、保科は声を潜めた。
「実のところ、私もあまり奴らは好きじゃありません」
「っ・・・そんなことを言っては、お立場が」
「別に、自分の心を殺してまでもしがみつかなければならない立場じゃありませんし。ただ、便利だったので養父の後を継いだだけです」
「!・・・ご養子でしたか」
「ええ、実は私は戦争孤児なのですよ。亡き養父は実父の又従兄にあたります。戦後、子のいない保科家に引き取られたんです」
「は、はあ」
なぜいきなり明け透けにこんな事を己の前で語るのか、松平は保科の真意を計りかねていた。
「まぁ、年も近いですし上様とは話が合いましてね。貴方と江戸の町を歩いて経験したことなどをよく聞くんですよ。キャバクラに行った話はとくに楽しそうでした」
ニコニコと保科が話す内容は、将軍本人と松平しか知りえないものだ。(万事屋なども関わったりしていたが今は関係ないだろうと思考からはじき出した。)
「本当に将ちゃんから・・・?」
「お聞きしたんですよ。それでね、ちょっとお願い事がありまして」
「お願い事・・・?」
「それは、彼らも交えて話しましょうか」
保科はそう言って静かに戸に近づくと、スッと引いた。
「ぅおわっ!?」
ドタドタと室内に倒れ込んだ己の配下を見て松平は頭を抱え込んだ。
「テメーら、何してんだァ」
「す、すまねぇ・・・とっつぁん」
ガバッと起きあがった近藤が頭を下げると、
「ワリィ」
土方も頭を下げる。
「俺は止めたんでさァ」
そんな2人とは違い、反省の態度を見せない沖田の頭を土方がむんずと掴んで床に叩きつけた。
「ほんッッとにすんませんでしたぁああああ!!」
目の前にいるのが松平だけなら良い。だが、幕府官僚の保科がいるのだ。下手な真似はできない。
「・・・うわぁ・・・痛そう」
が、そんな保科の口から漏れた言葉は、随分とのんびりしたものだった。
「ねぇ、君・・・大丈夫?」
「はぁ、大丈夫ですぜィ・・・(土方コノヤロー、後でコロス(ぼそ))」
「(ブチッ)あ゛ぁ゛!?なんか言ったかゴルァ!!」
頷いた沖田は土方をギロリと睨んだ。負けじと土方も睨みかえす。
「・・・トシ!総悟!いい加減にしないか!!」
そんな2人の間に入り近藤が仲裁すると、土方と沖田はフイッと互いに顔を背けた。
「「・・・チッ」」
「・・・あー、すいませんねェ・・・こういう奴らなんですよォ」
さすがにフォローしきれなかった松平が恐る恐る保科を見ると、彼は腹を抱えてケタケタと笑っていた。
「くくく・・・あー、本当に噂通りの面白い人達ですね」
目にうかんだ涙を拭うと、保科は姿勢を正した。
「実はある人をここに、というか上様と私の所に連れてきて欲しいのですよ」
「ある人・・・ですか?」
「ええ。銀色の侍を」
「「「!!」」」
「おや、その様子だと探すまでも無くご存知のようだ」
銀と聞いて思い当たるのは彼しかいない。息を呑んだ真選組の3人に保科はニッコリと笑って告げた。
「ついでに、“酢昆布好きなかぶき町の女王”と“メガネの人”も一緒に連れてきて頂きたいんです」
それらの特徴は万事屋の3人を示していた。
「あ、あの・・・どうして彼らを?」
近藤が訊ねると、保科はあっさりと答える。
「そよ姫がとても楽しそうに話されているのを聞いて、上様がその者達を呼びたいとまで仰るのでね」
「ああ、ナルホド・・・」
自分達が連れ戻しに行った時に共にいたのは、確かに万事屋の紅一点・神楽だった。その事を思い出した土方は納得したように頷いた。
「しかし将ちゃんも人が悪い。保科様を通さずに俺に直接言ってくれれば良いものを」
「先程のは建前でしてね、話はそれだけじゃないんですよねぇ・・・そもそも、そよ姫のお気に入りというだけでそんな得体の知れない人物を呼ぶと思いますか?」
保科の言葉に、松平と真選組の3人は首を横に振る。
「でしょう?・・・私達はね、彼らに動いてもらいたい事があるから呼ぶんですよ」
そう言った保科は笑顔のまま懐から短刀を取り出し、天井に向けて投げ放つ。
突き刺さった短刀を見てギョッとする4人をよそに、保科は天井に向けて声をかけた。
「春霞、降りてくると良い」
すると、カタリと天井の板が外されてひらりと若い男が降って来た。
「もう少し手加減してください、刺さるかと思いました」
降り立った瞬間ムッとした様子で言った春霞は保科に冷めた視線を向けた。
「すまん。だが、お前なら避けられると思ったのに」
「冗談は止してください。いくら私だっていきなりじゃ避けられませんよ」
「あー・・・保科様?」
「ああ、驚かせて申し訳ない。彼は私の友人で春霞といいます」
「どうも」
ぺこりと頭を下げたその男は保科に対して敬意を払っている様子も見えないため、紹介された通り友人なのだろうと納得できた。
「普段なら彼に頼むのですが、今回は人の出し入れなので、松平殿と真選組にご協力いただけたらと思っているんです」
「それは構いませんが・・・一体彼らに何をさせようというんです?」
松平が問うと保科は表情を消した。
「それはまだ言えません」
その目が一瞬・・・銀時のソレと被った。
城からの帰り、真選組の面々は何とも言えない表情をうかべていた。
「・・・なぁ、トシ、総悟・・・万事屋はこうなることをわかっていたんだろうか?」
「・・・わかってたから、俺達に調べさせようとしたんじゃねェのか?」
「旦那は・・・どっからこの情報を得たんですかねィ?」
銀時が殺気を放ってまでも調べさせようとした“将軍のお気に入り”は、間違いなく保科だ。その保科から万事屋の3人を自分達の前に連れて来いと命じられた。
銀時はどこまで知っていたのか。保科の考えまでもを知っているとしたら、それはどこからの情報なのか。
「・・・奴は、おそらく桂と繋がりがある。よく行動を共にしているようだしな。・・・万が一にも攘夷浪士からの情報だったら・・・本当に奴を茂々公の元にあげても良いのか?」
土方がボソと呟けば、近藤は首を振る。
「連れていかないわけにはいくまい・・・保科様からのお願いという形をとってはいたが、これは勅命だろう」
「そうですぜィ、土方さん。とにかく旦那達を城に連れていかなけりゃなんねェんです。素直に付いて来てくれりゃあ良いですが、万が一にも雲隠れされた日にゃ、俺らの首が飛びかねねェってことです。・・・何寝ぼけたこと言ってんですかィ」
沖田が呆れたように言えば、土方は肩を落とした。
「・・・だよな。俺達に拒否権はねェってことだ」
「あ」
近藤が突如声をあげた。
「どうした?近藤さん」
「いや、あれ・・・万事屋、だよな?」
近藤の指差す方向を見れば銀色が通路の脇に消えていくのが見えた。
自然、その後を追った3人はその背が立ち止まったのを視界に入れて慌てて柱の影に隠れた。
「・・・久しぶりだな」
銀時の声が聞こえる。
「はい。銀時様」
柔らかな女の声がそれに応え、3人から見える位置にその姿を現す。
現れたのは絶世の美女。濡羽色の艶やかな髪がその美貌をより一層引き立てていた。
「・・・最後に会ったのはいつだったか・・・随分と綺麗になったなぁ」
「銀時様に褒めて頂けるなんて、嬉しい」
はにかんだように笑うと、美しいというより可愛らしい雰囲気になる。
「おい、氷柱ばっかり銀時様と話すなよ」
彼女を押しのけるようにムッとした表情の青年が現れる。
「あら、水澄は同じ町中にいたんじゃない、私なんて宇宙よ宇宙」
「それは氷柱が選んだんだろ?」
「だってェ・・・」
「コラコラ、ケンカすんじゃねェよ、オメェら」
言い合う2人の間に割って入り、銀時が呆れたような声を出した。
「ごめんなさい」
「・・・スミマセン」
「・・・まぁ、元気そうで良かった」
「「はい!」」
頷く2人に、銀時は苦笑をうかべる。
「・・・まったく、いい加減大人になりなさい、2人とも」
そんな銀時の脇から現れたのは、真選組の3人にとってはつい先程あったばかりの人物だった。
思わず声をあげそうになった近藤の口を手で塞いだ土方と沖田は一言も聞き漏らすまいと耳をすませた。
「春霞か、夏霧の様子を見て来たんだろ?どうだった?」
「松平様と真選組の3人に会ってまして、私も紹介されました」
「へぇ・・・真選組は早速動いてくれたわけだ」
「そのようですね。・・・それで、予定通りに夏霧が真選組にお願いしてましたよ」
「ふーん・・・じゃあ、近いうちに城にあがることになりそうだな」
そう呟く銀時に、春霞は眉を顰めた。
「・・・大丈夫ですか?」
「まぁ、夏霧が大丈夫だっつってんだから、大丈夫だろ」
銀時がそう言えば、3人は頷く。【六花】の頭脳と呼ばれた夏霧の判断だからこそ、春霞も水澄も氷柱も動いているのだ。
「で、氷柱はあっちで大切にしてもらってんのか?もし虐められてんなら俺に言え?アイツをブン殴りに行くから」
「だ、大丈夫です、銀時様・・・あの方はたぶん、私が銀時様の手駒と気付いているんだと思いますけど、普通に接してくれていますから」
「ふぅん、アイツがねェ・・・まぁ、元々は優しい奴だからなぁ。今のアレはその反動なんだよなァ」
「銀時様・・・あの、それで・・・あの方から甘味を所望されたんですけど・・・」
言い難そうにしながらも氷柱が告げると、銀時は目を丸くし、春霞が眦をつりあげた。
「氷柱、まさか今日のこと、あの方にバレたんですか!?」
「う、ごめんなさい・・・」
「へ~、それでも大人しく出してくれたわけだ・・・」
「銀時様!感心している場合じゃありません!・・・氷柱、もう戻るのは止めなさい!」
珍しく声を荒げる春霞に、氷柱は身を竦めながらも反論した。
「そ、そういうわけにはいかないわ・・・だって、私が逃げたら銀時様とあの方の繋がりは一切無くなってしまう・・・」
「しかし・・・」
「なぁ、春霞・・・大丈夫だよ、あの方は俺達にだって優しかったろ?」
渋る春霞を水澄が宥める。
「それは・・・そうですが・・・」
春霞は銀時に視線を送る。こういう時は銀時の判断に従うべきと学習しているのだ。
「まぁ、大丈夫だろ。・・・氷柱、アイツは甘味を寄越せと言ったんだな?」
「・・・はい」
「じゃあ、これでも持っていけ」
銀時が渡したのは常に腰に佩いていた木刀・洞爺湖だった。
「!・・・でも、銀時様・・・」
「ま、夏霧から代わりを貰うよ。元々あっちもそのつもりっぽいし」
「夏霧が、持っていたんでしたっけ・・・アレ」
水澄が問えば、銀時は耳をほじりながら答える。
「ああ、夏霧は武家の子で、身内が幕府の高官だったしな~持たせるにはもってこいだろ」
「・・・良いんですか?」
春霞が銀時の表情を窺えば、死んだ魚のような瞳を向けられる。
「いーんだよ。ポリシーがあって木刀持ってたわけじゃねぇしな」
「そう、ですか」
「・・・じゃあ、あの方にはこれをお届けします」
納得する春霞と、洞爺湖を大事そうに抱える氷柱。その2人の頭を撫でて銀時は笑った。
「まぁ、心配すんな・・・大丈夫だから」
「・・・いいなぁ」
ボソ、と水澄が呟く。
「ん?・・・ああ」
銀時は一瞬首を傾げ、それから破顔すると水澄の頭も撫でた。目を細めた水澄に、銀時は慈愛に満ちた笑みをうかべる。
「・・・仲が良いでござるな」
その時、奥の方から声が聞こえ、銀時達が身構える。
「!・・・河上、万斉」
銀時の声が緊張している。
そして、その名は真選組にとっても忌まわしい名だった。思わず刀に手をかけた沖田を抑え、土方はその男を見つめる。
「万斉、様」
氷柱の声がその名を呼ぶ。
「帰るでござるよ、氷柱。間もなく出立だ」
「・・・あ」
万斉の言葉に、氷柱は銀時を振り返る。
「・・・行け、氷柱。・・・それと、アイツにマジで次はねェって伝えとけ」
「はい・・・」
頷いた氷柱は、万斉の傍に走り寄る。
「・・・おい、氷柱に万が一にでも危害を加えるようなことをしてみろ、完膚なきまでに叩きつぶしてやるからな」
銀時の鋭い殺気が万斉に向けられる。
「わかっている・・・晋助にも伝えておくでござる」
そう言うと、万斉は氷柱を連れてその場を去る。
その背を見送りながら、春霞は銀時を見上げる。
「本当に氷柱を行かせても良かったんですか?」
「・・・氷柱に手を出すようなら、アイツも堕ちるとこまで堕ちたってことだ」
銀時は万斉の背を睨み据えてそう答える。
「・・・俺、桂さんに言っておきます」
水澄が堪らず言えば、銀時は溜息を漏らした。
「はぁ、余計な火種を蒔くなって言っても、聞かねェんだろ?」
「絶対、桂さんに言います」
「あー、はいはい。わーったよ。・・・言っとけ言っとけ」
ヒラヒラと手を振る銀時に頭を下げて水澄は万斉達とは別の方向へと走り去る。
「・・・銀時様」
「なんだ、春霞」
「あちらに情報は?」
「・・・ん~、まぁ、回しとけ。自分だけ仲間外れかと大騒ぎしそうだしな」
「わかりました。・・・我等【六花】・・・貴方の“心”を必ずお守り致します」
深々と頭を下げた春霞は、そのまま姿を消した。
「・・・ったく、どいつもこいつも。俺は・・・まだ大丈夫だっつのに」
呟いた言葉はどこか頼りなさげに響き、息を殺して聞いていた真選組の3人は思わず顔を見合わせた。
だから、気付かなかった。
銀色が、苦笑をうかべて自分達を見ていたことを。
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