Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・完全捏造設定です!
・原作かなり無視しています!
・オリジナルキャラクターがわんさか出ます
・二次創作だということをご理解したうえでお読みください!
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
見目が良い事は武器だった。“色”に最適の人材。
そう言われながら、その手の知識を叩き込まれて育った。
忍の家に生まれた自分は、親に言われるがままその技術を磨き、感情の無い人形のように与えられた課題をこなしていた。
初任務は5歳の時。
“そういう趣味”の男が対象だったため、己に任務の依頼が来た。
まるでお姫様のように着飾り、その男の元へと連れて行かれた。酒を注ぐ手つきも座敷での所作も全て完璧だった。
一枚一枚肌蹴られていく着物を見ても、直接肌をすべる手を見ても、何とも思わなかった。
自分のあられもない姿に夢中になっている男を、仲間が背後からバッサリと斬り捨ててもただ無感動に動かなくなった男を眺めていた。
「帰るぞ、お冬」
生まれた季節が冬だったから、お冬。そんな適当な命名にも腹は立たなかった。
しかし、お冬にも感情を出せる相手はいた。里長の子の秋汰だ。
おっちょこちょいで口が軽い。忍には向かないのではと次期長ともいえる秋汰に不安の声があちこちから囁かれた。
「・・・ばっかみたい」
皆、秋汰のことを良く知らないだけだ。お冬は思う。
同じ年でありながら、組み手をすれば一回りも年上の子にも負けない強さを持っていた。ほんの少しの欠点のために見過ごしていい才能ではなかった。
里長もそのことはわかっていたのか、周囲の蔭口に惑わされることなく彼の才能を伸ばすことに専念していた。
そのせいで、おっちょこちょいも、口の軽さも治らなかったのだが。
「なぁ、冬」
「なに?」
「お前、嫌じゃないか?・・・知らない男に触られるの」
「わかんない」
生まれたその時から自分は“色”専任の忍になるのだと決められていたのだから、嫌も何もないだろう。
「・・・でも、綺麗な着物を着れて、お化粧もしてもらって、美味しいものを食べれて・・・他の子からは羨ましいって言われる」
「ばっかじゃないの・・・自分達もやってみろってんだよ。くノ一は大体そんな任務になることが多いんだから、後でその大変さを知ることになるんだ」
秋汰は自分のことのように怒る。感情に素直なのだ。だから口が軽いと言われる。
一度だけ秋汰と組まされて任務をしたことがあった。戦闘だけならば秋汰は同年代やその少し上の世代と比べても断トツで優れていた。だからお冬に引っかかった男を始末する役目を仰せ付かったわけだ。
結果はその男を含め、周りで囃し立てた連中全てを皆殺し。それも一瞬の出来事だった。
秋汰の武器は千本と呼ばれるもの。それに毒をぬって相手を絶命させる。正確な投擲技術は大人も顔負けだった。
「あんなの、慣れちゃいけない。・・・俺が長になったら、絶対にそんな任務受けさせないから」
「でも、それしか私には出来ないよ?」
そう教育されたのだから、しょうがない。
そうお冬が言えば、秋汰は怒ったように肩を怒らせてお冬を睨んだ。
「今からでも全然遅くないだろ!他の同い年の連中なんか、まだのんびりと修行してんだぞ!」
「それは・・・そうだけど・・・でも、使えるものは使った方が良いと思うの」
のんびりと告げるお冬に、秋汰はガックリと肩を落とした。
「も~・・・なんでお冬はそんなに従順になれるんだよ~」
「・・・だって、母様も父様も褒めてくれる」
「っ・・・そうかよ!」
スクッと立ち上がった秋汰をのんびりと見上げ、お冬は首を傾げた。
「秋汰?」
「お冬のバカ!アホ!間抜け!!」
思いつく限りの悪口を口にして秋汰はその場を後にした。
「・・・・・・なによぅ・・・だって、仕方ないじゃない・・・」
両親が喜ぶ顔が刷り込まれている。良い子だと頭を撫でてくれるその暖かい手、自慢の娘だと胸を張る父。私の誇りだと称える母。
それらは全て、お冬が“色”の任務をきちんとこなしているから与えられるものなのだ。
美しいと評される顔を歪ませ、お冬は膝に顔を突っ伏した。
そんなお冬達の生活を一変させたのは攘夷の動きだった。依頼は徐々に戦争への参加ばかりになり、対人間の依頼はほとんど無くなった。
父も母も戦争に駆り出されることが多くなった。
秋汰もその戦闘能力を買われ、齢9つで戦争に参加していた。お冬は・・・皆の無事を祈るしか出来なかった。
何回目かの戦争への忍の派遣。
第一陣で出撃した父と母は帰らぬ人となった。遺体は戦場に置いてくるしかなかったと聞けば、そうかと頷くしかなかった。
忍は常に命の危険にさらされる仕事だ。両親の死は覚悟していたことだった。
ただ、秋汰がその遺髪を持ちかえった時、お冬は一筋の涙をこぼした。忍は涙を流してはいけない。その決まりを破ったただ一度の涙だった。
お冬に出陣の命が出たのはその数日後だった。
里の働き手は少しずつ減り、もう、子どもであろうとも任務に出さないわけにはいかなくなっていたのだ。
「お前には“色”の才能がある・・・天人といえど、お前の最大の武器を駆使すれば引っかからないわけがない」
そう言われれば、お冬は素直に頷いた。
秋汰と組まされるのはこれが2回目だった。お互いに次はないかもしれないと思いながら任地へと向かった。
そこには天人達が陣を張っており、お冬はそこに酒を届ける設定だった。
辰羅族―――人間によく似た容姿の天人。とがった長い耳が特徴と言える。彼等は傭兵三大部族の1つであり、戦闘能力は人間の遥か上をいく存在なのだという。
そんな辰羅族に子供2人が勝てるはずはない。だが、その部隊はどこかに援軍を派遣した後らしく、陣に残っていたのは数人の部下だけだった。
「・・・あ、あのう」
「なんだ・・・」
不機嫌そうだがすぐに殺気立たないのは傭兵部族としての誇りか。
「ち、近くの村に住んでるんですが・・・こ、ここに酒を届けろって言われて・・・」
オドオドとした様子で話すお冬に、辰羅族は首を傾げた。
「おまえ頼んだか?」
「いや?・・・俺は頼んでないぞ」
「俺も知らない」
「・・・もしかしたら、隊長達か?」
「ヒマ潰しにと置いて行ったか・・・なかなか隊長達も気を使ってくれているんだな」
お冬が何も言わなくても自分達の良いように解釈してくれる辰羅族に、ひとまずホッとする。
「あ、あの・・・お酒、置いておきますから・・・」
「ん~?・・・おい、おまえ・・・よく見れば綺麗な顔をしてるじゃないか。酌をしろ。出来るだろう?」
「よせよせ、まだ子どもだぞ」
「これだけの素材だ、大人になればもっと楽しめるぞ」
「そういうものか?」
天人にも自分の見目は美しく見えるらしい。お冬は言われるままに酒を注ぎ、懸命に隙を作ろうとするが、やはりそこは傭兵部族であるからか常に警戒を怠ることはない。
辰羅族たちがほろ酔い気分になった頃、いい加減に焦れてきたお冬は眠り薬をそっと酒に混じらせる。
「おい!」
「きゃ!」
「お前、今何を入れた」
見られていたと気付いた時には遅かった。酔っていても辰羅族は傭兵部族。考えるまでもなく嬲られておしまいだ。
はじめて任務で死の恐怖を感じた。
目を閉じ、お冬は全てを受け入れる覚悟をした。
「させるか!!」
千本とクナイの嵐。辰羅族が怯んだ瞬間に手を引かれていた。
「秋汰!」
「何でもかんでも受け入れるんじゃない!!こんな任務、俺達には荷が勝ちすぎる・・・」
懸命に走るが、大人と子どもでは足の長さが違う。すぐに追いつかれ、お冬と秋汰は辰羅族に囲まれてしまっていた。
「このガキ・・・ただのガキじゃねェな」
「聞いたことがあるぞ、地球には侍の他に忍という生き物がいると。侍は刀を振り回す連中ばかりだが、忍はあらゆる手を使って敵を倒すらしい」
「ほう・・・お前達は、忍か?」
「そうだ!」
ギッと相手を睨み据え、秋汰は叫ぶ。
「良い目をしているが・・・邪魔なことには変わりはないな」
陣を狙ってきた以上は始末せねばなるまい。辰羅族は次々と武器を手に包囲網を狭くしていく。
「秋汰・・・」
恐怖で身体が震える。
そんなお冬を庇いながら、秋汰はクナイを構えた。
「伏せろ!!」
どこからか聞こえてきた声に、お冬と秋汰はとっさに従った。
煙幕が張られた後に多くの足音が聞こえ、剣戟の音があちこちから聞こえる。
「大丈夫か!?」
ガシッと掴まれた手にビクリと身体を震わせた。手を掴んだのは、銀髪の少年だった。
「大丈夫だ、俺達の陣に行こう。・・・お前達と同じ里の忍もいるから・・・」
その言葉にホッと息をつき、お冬は秋汰に視線を向けた。
「・・・行こう、冬。ここじゃ俺達は足手まといだ」
「・・・うん」
未だに剣戟の音が響く戦場を抜け出し、彼等の陣へと走った。
途中遅れそうになったお冬を見て銀髪の少年は困ったように笑い、一言謝ったかと思ったらひょいと抱えあげて走りだした。
「お前は、大丈夫か?」
訊ねられて秋汰は頷いた。
「は、はい!行けます!」
秋汰とて忍のはしくれ。大人についていけなければ任務で生き残ることは難しかった。
「うん、良い返事だな」
ニッと笑った少年は、秋汰を気にすることなく速度をあげた。
がむしゃらに少年に付いて走っていた秋汰だったが、殺気を感じて足を止めた。
「良い感度だ・・・さすが忍だな」
少年もまた立ち止まり、お冬を己に預けるとすらりと刀を抜いた。
角が2本生えた馬面の天人達が3人を囲んでいた。
白銀の刃が赤く染まったのはその一瞬の後だった。動体視力は良い方だと自負していた秋汰ですら、全てを見切ることは出来なかった。
「す、げぇ・・・」
思わず漏れた感嘆の言葉に、少年はニヤリと笑った。
「忍に褒められんのは悪い気はしねぇな」
こんな子どもなのに一人前の忍として扱ってくれた。そのことが秋汰は嬉しかった。
少年は再びお冬を担ぎあげると自陣へと走り出す。
秋汰は遅れないようについて行くのが精一杯だったが、秋汰の出せるギリギリのスピードで彼が走ってくれていたことに後から気付いた。
彼等の陣に着いてからは更に大変だった。
里が壊滅し、生き残りはお冬と自分を含めて5人だということを知り、この後はこの攘夷第5部隊と共に動くことに決まった。
お冬と秋汰は子どもということもあり、まだ歳若い者達が集まる別働部隊に配置された。
「俺は桂小太郎だ。よろしくな」
一見すると女のような少年が手を差し伸べてくる。
「あ、はい」
ガッチリと握手を交わしながら頷けば、その脇に立つ少年が秋汰を上から下まで眺めまわした。
「忍ってのは、こんな小さなうちから任務に放り込むのか?」
単純に気になっただけらしく、声音は平坦だ。
「人員も少なくなってきていたので・・・」
お冬が答えれば、彼はそうかと短く呟いてフッと笑った。
「高杉晋助だ。よろしく頼む」
「はいはーい、俺は入江十一ね?よろしくー!」
「古田稔麿だ」
「俺は久坂玄火・・・で、こっちが」
「坂田銀時・・・よろしく」
小さく笑い自己紹介をした彼を見て秋汰は口を開いた。
「攘夷志士として戦うなら、忍としてではなく侍として戦いたい。・・・忍の名を捨てる・・・だから、俺に名前をください!」
ギョッとする銀時に、幼馴染達がニッと笑った。
「ご使命だぜェ、銀時ィ」
「お前が拾って来たようなものだ・・・お前が責任を取れ」
「ちょ、晋助、小太郎!」
「ま、小太郎の言う通りだな。・・・先輩方に進言してこっちの部隊に入れさせたのは銀だしな」
「玄ちゃん!?」
「ま~、面倒は皆で見るけど、基本的に銀時が責任持つのは当然だよね~」
「同意だ」
「ええっ、十一に麿ちゃんまで・・・なんで・・・俺、人の面倒なんて見れねェよ!」
慌てる銀時だが、幼馴染達は銀時が断れないのを知っているからこそ取り合わない。
「ほら、待ってんじゃねェか」
「ううっ、そ、そんなコト言われても・・・」
期待に満ちた目を向けてくる秋汰をチラリと見て、銀時は更に呻く。
「名前なんて・・・責任重大すぎるってェ・・・」
渋る銀時を幼馴染達は容赦なく秋汰達の方へと押しやった。
「俺達いるとまともに考えられなさそーだし、ちょっと出てるから~」
「ちゃんと考えてやれよ」
「逃げてくるのは許さんぞ、銀時」
「えっ!?えぇっっ!!」
ゾロゾロと出ていってしまった幼馴染達を心の中で盛大に罵倒しながら、銀時はぎこちなく彼等に向き直った。
「・・・えっと、じゃあ・・・その、名前をつけるとして、忍としての名前を聞きたいんだけど」
「・・・秋汰です」
「冬」
「・・・・・・えっと、冬も、名前つけんの?」
確認すればこっくりと頷かれて銀時は口元を引き攣らせた。
「ふ・・・2人分・・・」
責任重大だ。名前なんてこれからずっと名乗っていくものをなんで自分に託すんだと不思議になる。
「な、なんで、俺?」
「俺を忍と認めてくれたのは貴方だった。だから、侍としても認めて欲しいんだ」
真っ直ぐな視線に、銀時はくらりとめまいを覚えた。あんなにも真っ直ぐな視線を向けられたのは久しぶりだ。
自分が同じ年頃だった時よりもずっと大人だと思う。
「そっか・・・」
彼等の必死さに松陽といた頃の自分を思い出す。あの人に認めて欲しかった。あの人の役に立ちたかった―――。
あの人に拾われたから、幼馴染達がいたから、今の自分がある。
「迷惑だってわかってます。でも・・・!」
言い募る秋汰に銀時は苦笑した。
「わかった・・・でも、気に入らないって怒るなよ」
「そんなこと、しません!」
秋汰が嬉しそうに言えば、お冬もコクコクと頷く。
「・・・じゃあ、ちょっと時間くれよな。すぐになんて無理だぞ」
「わかってます!」
ご機嫌な秋汰とお冬に、フッと笑みをこぼし銀時は優しいまなざしを向けた。
「約束する・・・お前達が誇って名乗れる名前を考える」
思えば既にその時から決めていたのだ。
――――――――――この人に付いて行く、と。
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そう言われながら、その手の知識を叩き込まれて育った。
忍の家に生まれた自分は、親に言われるがままその技術を磨き、感情の無い人形のように与えられた課題をこなしていた。
初任務は5歳の時。
“そういう趣味”の男が対象だったため、己に任務の依頼が来た。
まるでお姫様のように着飾り、その男の元へと連れて行かれた。酒を注ぐ手つきも座敷での所作も全て完璧だった。
一枚一枚肌蹴られていく着物を見ても、直接肌をすべる手を見ても、何とも思わなかった。
自分のあられもない姿に夢中になっている男を、仲間が背後からバッサリと斬り捨ててもただ無感動に動かなくなった男を眺めていた。
「帰るぞ、お冬」
生まれた季節が冬だったから、お冬。そんな適当な命名にも腹は立たなかった。
しかし、お冬にも感情を出せる相手はいた。里長の子の秋汰だ。
おっちょこちょいで口が軽い。忍には向かないのではと次期長ともいえる秋汰に不安の声があちこちから囁かれた。
「・・・ばっかみたい」
皆、秋汰のことを良く知らないだけだ。お冬は思う。
同じ年でありながら、組み手をすれば一回りも年上の子にも負けない強さを持っていた。ほんの少しの欠点のために見過ごしていい才能ではなかった。
里長もそのことはわかっていたのか、周囲の蔭口に惑わされることなく彼の才能を伸ばすことに専念していた。
そのせいで、おっちょこちょいも、口の軽さも治らなかったのだが。
「なぁ、冬」
「なに?」
「お前、嫌じゃないか?・・・知らない男に触られるの」
「わかんない」
生まれたその時から自分は“色”専任の忍になるのだと決められていたのだから、嫌も何もないだろう。
「・・・でも、綺麗な着物を着れて、お化粧もしてもらって、美味しいものを食べれて・・・他の子からは羨ましいって言われる」
「ばっかじゃないの・・・自分達もやってみろってんだよ。くノ一は大体そんな任務になることが多いんだから、後でその大変さを知ることになるんだ」
秋汰は自分のことのように怒る。感情に素直なのだ。だから口が軽いと言われる。
一度だけ秋汰と組まされて任務をしたことがあった。戦闘だけならば秋汰は同年代やその少し上の世代と比べても断トツで優れていた。だからお冬に引っかかった男を始末する役目を仰せ付かったわけだ。
結果はその男を含め、周りで囃し立てた連中全てを皆殺し。それも一瞬の出来事だった。
秋汰の武器は千本と呼ばれるもの。それに毒をぬって相手を絶命させる。正確な投擲技術は大人も顔負けだった。
「あんなの、慣れちゃいけない。・・・俺が長になったら、絶対にそんな任務受けさせないから」
「でも、それしか私には出来ないよ?」
そう教育されたのだから、しょうがない。
そうお冬が言えば、秋汰は怒ったように肩を怒らせてお冬を睨んだ。
「今からでも全然遅くないだろ!他の同い年の連中なんか、まだのんびりと修行してんだぞ!」
「それは・・・そうだけど・・・でも、使えるものは使った方が良いと思うの」
のんびりと告げるお冬に、秋汰はガックリと肩を落とした。
「も~・・・なんでお冬はそんなに従順になれるんだよ~」
「・・・だって、母様も父様も褒めてくれる」
「っ・・・そうかよ!」
スクッと立ち上がった秋汰をのんびりと見上げ、お冬は首を傾げた。
「秋汰?」
「お冬のバカ!アホ!間抜け!!」
思いつく限りの悪口を口にして秋汰はその場を後にした。
「・・・・・・なによぅ・・・だって、仕方ないじゃない・・・」
両親が喜ぶ顔が刷り込まれている。良い子だと頭を撫でてくれるその暖かい手、自慢の娘だと胸を張る父。私の誇りだと称える母。
それらは全て、お冬が“色”の任務をきちんとこなしているから与えられるものなのだ。
美しいと評される顔を歪ませ、お冬は膝に顔を突っ伏した。
そんなお冬達の生活を一変させたのは攘夷の動きだった。依頼は徐々に戦争への参加ばかりになり、対人間の依頼はほとんど無くなった。
父も母も戦争に駆り出されることが多くなった。
秋汰もその戦闘能力を買われ、齢9つで戦争に参加していた。お冬は・・・皆の無事を祈るしか出来なかった。
何回目かの戦争への忍の派遣。
第一陣で出撃した父と母は帰らぬ人となった。遺体は戦場に置いてくるしかなかったと聞けば、そうかと頷くしかなかった。
忍は常に命の危険にさらされる仕事だ。両親の死は覚悟していたことだった。
ただ、秋汰がその遺髪を持ちかえった時、お冬は一筋の涙をこぼした。忍は涙を流してはいけない。その決まりを破ったただ一度の涙だった。
お冬に出陣の命が出たのはその数日後だった。
里の働き手は少しずつ減り、もう、子どもであろうとも任務に出さないわけにはいかなくなっていたのだ。
「お前には“色”の才能がある・・・天人といえど、お前の最大の武器を駆使すれば引っかからないわけがない」
そう言われれば、お冬は素直に頷いた。
秋汰と組まされるのはこれが2回目だった。お互いに次はないかもしれないと思いながら任地へと向かった。
そこには天人達が陣を張っており、お冬はそこに酒を届ける設定だった。
辰羅族―――人間によく似た容姿の天人。とがった長い耳が特徴と言える。彼等は傭兵三大部族の1つであり、戦闘能力は人間の遥か上をいく存在なのだという。
そんな辰羅族に子供2人が勝てるはずはない。だが、その部隊はどこかに援軍を派遣した後らしく、陣に残っていたのは数人の部下だけだった。
「・・・あ、あのう」
「なんだ・・・」
不機嫌そうだがすぐに殺気立たないのは傭兵部族としての誇りか。
「ち、近くの村に住んでるんですが・・・こ、ここに酒を届けろって言われて・・・」
オドオドとした様子で話すお冬に、辰羅族は首を傾げた。
「おまえ頼んだか?」
「いや?・・・俺は頼んでないぞ」
「俺も知らない」
「・・・もしかしたら、隊長達か?」
「ヒマ潰しにと置いて行ったか・・・なかなか隊長達も気を使ってくれているんだな」
お冬が何も言わなくても自分達の良いように解釈してくれる辰羅族に、ひとまずホッとする。
「あ、あの・・・お酒、置いておきますから・・・」
「ん~?・・・おい、おまえ・・・よく見れば綺麗な顔をしてるじゃないか。酌をしろ。出来るだろう?」
「よせよせ、まだ子どもだぞ」
「これだけの素材だ、大人になればもっと楽しめるぞ」
「そういうものか?」
天人にも自分の見目は美しく見えるらしい。お冬は言われるままに酒を注ぎ、懸命に隙を作ろうとするが、やはりそこは傭兵部族であるからか常に警戒を怠ることはない。
辰羅族たちがほろ酔い気分になった頃、いい加減に焦れてきたお冬は眠り薬をそっと酒に混じらせる。
「おい!」
「きゃ!」
「お前、今何を入れた」
見られていたと気付いた時には遅かった。酔っていても辰羅族は傭兵部族。考えるまでもなく嬲られておしまいだ。
はじめて任務で死の恐怖を感じた。
目を閉じ、お冬は全てを受け入れる覚悟をした。
「させるか!!」
千本とクナイの嵐。辰羅族が怯んだ瞬間に手を引かれていた。
「秋汰!」
「何でもかんでも受け入れるんじゃない!!こんな任務、俺達には荷が勝ちすぎる・・・」
懸命に走るが、大人と子どもでは足の長さが違う。すぐに追いつかれ、お冬と秋汰は辰羅族に囲まれてしまっていた。
「このガキ・・・ただのガキじゃねェな」
「聞いたことがあるぞ、地球には侍の他に忍という生き物がいると。侍は刀を振り回す連中ばかりだが、忍はあらゆる手を使って敵を倒すらしい」
「ほう・・・お前達は、忍か?」
「そうだ!」
ギッと相手を睨み据え、秋汰は叫ぶ。
「良い目をしているが・・・邪魔なことには変わりはないな」
陣を狙ってきた以上は始末せねばなるまい。辰羅族は次々と武器を手に包囲網を狭くしていく。
「秋汰・・・」
恐怖で身体が震える。
そんなお冬を庇いながら、秋汰はクナイを構えた。
「伏せろ!!」
どこからか聞こえてきた声に、お冬と秋汰はとっさに従った。
煙幕が張られた後に多くの足音が聞こえ、剣戟の音があちこちから聞こえる。
「大丈夫か!?」
ガシッと掴まれた手にビクリと身体を震わせた。手を掴んだのは、銀髪の少年だった。
「大丈夫だ、俺達の陣に行こう。・・・お前達と同じ里の忍もいるから・・・」
その言葉にホッと息をつき、お冬は秋汰に視線を向けた。
「・・・行こう、冬。ここじゃ俺達は足手まといだ」
「・・・うん」
未だに剣戟の音が響く戦場を抜け出し、彼等の陣へと走った。
途中遅れそうになったお冬を見て銀髪の少年は困ったように笑い、一言謝ったかと思ったらひょいと抱えあげて走りだした。
「お前は、大丈夫か?」
訊ねられて秋汰は頷いた。
「は、はい!行けます!」
秋汰とて忍のはしくれ。大人についていけなければ任務で生き残ることは難しかった。
「うん、良い返事だな」
ニッと笑った少年は、秋汰を気にすることなく速度をあげた。
がむしゃらに少年に付いて走っていた秋汰だったが、殺気を感じて足を止めた。
「良い感度だ・・・さすが忍だな」
少年もまた立ち止まり、お冬を己に預けるとすらりと刀を抜いた。
角が2本生えた馬面の天人達が3人を囲んでいた。
白銀の刃が赤く染まったのはその一瞬の後だった。動体視力は良い方だと自負していた秋汰ですら、全てを見切ることは出来なかった。
「す、げぇ・・・」
思わず漏れた感嘆の言葉に、少年はニヤリと笑った。
「忍に褒められんのは悪い気はしねぇな」
こんな子どもなのに一人前の忍として扱ってくれた。そのことが秋汰は嬉しかった。
少年は再びお冬を担ぎあげると自陣へと走り出す。
秋汰は遅れないようについて行くのが精一杯だったが、秋汰の出せるギリギリのスピードで彼が走ってくれていたことに後から気付いた。
彼等の陣に着いてからは更に大変だった。
里が壊滅し、生き残りはお冬と自分を含めて5人だということを知り、この後はこの攘夷第5部隊と共に動くことに決まった。
お冬と秋汰は子どもということもあり、まだ歳若い者達が集まる別働部隊に配置された。
「俺は桂小太郎だ。よろしくな」
一見すると女のような少年が手を差し伸べてくる。
「あ、はい」
ガッチリと握手を交わしながら頷けば、その脇に立つ少年が秋汰を上から下まで眺めまわした。
「忍ってのは、こんな小さなうちから任務に放り込むのか?」
単純に気になっただけらしく、声音は平坦だ。
「人員も少なくなってきていたので・・・」
お冬が答えれば、彼はそうかと短く呟いてフッと笑った。
「高杉晋助だ。よろしく頼む」
「はいはーい、俺は入江十一ね?よろしくー!」
「古田稔麿だ」
「俺は久坂玄火・・・で、こっちが」
「坂田銀時・・・よろしく」
小さく笑い自己紹介をした彼を見て秋汰は口を開いた。
「攘夷志士として戦うなら、忍としてではなく侍として戦いたい。・・・忍の名を捨てる・・・だから、俺に名前をください!」
ギョッとする銀時に、幼馴染達がニッと笑った。
「ご使命だぜェ、銀時ィ」
「お前が拾って来たようなものだ・・・お前が責任を取れ」
「ちょ、晋助、小太郎!」
「ま、小太郎の言う通りだな。・・・先輩方に進言してこっちの部隊に入れさせたのは銀だしな」
「玄ちゃん!?」
「ま~、面倒は皆で見るけど、基本的に銀時が責任持つのは当然だよね~」
「同意だ」
「ええっ、十一に麿ちゃんまで・・・なんで・・・俺、人の面倒なんて見れねェよ!」
慌てる銀時だが、幼馴染達は銀時が断れないのを知っているからこそ取り合わない。
「ほら、待ってんじゃねェか」
「ううっ、そ、そんなコト言われても・・・」
期待に満ちた目を向けてくる秋汰をチラリと見て、銀時は更に呻く。
「名前なんて・・・責任重大すぎるってェ・・・」
渋る銀時を幼馴染達は容赦なく秋汰達の方へと押しやった。
「俺達いるとまともに考えられなさそーだし、ちょっと出てるから~」
「ちゃんと考えてやれよ」
「逃げてくるのは許さんぞ、銀時」
「えっ!?えぇっっ!!」
ゾロゾロと出ていってしまった幼馴染達を心の中で盛大に罵倒しながら、銀時はぎこちなく彼等に向き直った。
「・・・えっと、じゃあ・・・その、名前をつけるとして、忍としての名前を聞きたいんだけど」
「・・・秋汰です」
「冬」
「・・・・・・えっと、冬も、名前つけんの?」
確認すればこっくりと頷かれて銀時は口元を引き攣らせた。
「ふ・・・2人分・・・」
責任重大だ。名前なんてこれからずっと名乗っていくものをなんで自分に託すんだと不思議になる。
「な、なんで、俺?」
「俺を忍と認めてくれたのは貴方だった。だから、侍としても認めて欲しいんだ」
真っ直ぐな視線に、銀時はくらりとめまいを覚えた。あんなにも真っ直ぐな視線を向けられたのは久しぶりだ。
自分が同じ年頃だった時よりもずっと大人だと思う。
「そっか・・・」
彼等の必死さに松陽といた頃の自分を思い出す。あの人に認めて欲しかった。あの人の役に立ちたかった―――。
あの人に拾われたから、幼馴染達がいたから、今の自分がある。
「迷惑だってわかってます。でも・・・!」
言い募る秋汰に銀時は苦笑した。
「わかった・・・でも、気に入らないって怒るなよ」
「そんなこと、しません!」
秋汰が嬉しそうに言えば、お冬もコクコクと頷く。
「・・・じゃあ、ちょっと時間くれよな。すぐになんて無理だぞ」
「わかってます!」
ご機嫌な秋汰とお冬に、フッと笑みをこぼし銀時は優しいまなざしを向けた。
「約束する・・・お前達が誇って名乗れる名前を考える」
思えば既にその時から決めていたのだ。
――――――――――この人に付いて行く、と。
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