Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・にょたルルです
・ルル姫はみんなに愛されていますw
・ギャグですww
・いろいろ矛盾がありますが、敢えては書きませんのであしからずw
・捏造満載w
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
地下牢からカレン達を引き連れ、皇宮の廊下を歩くルルーシュ。
彼女に向けられる視線は様々だった。
「・・・なんか、気持ち悪い」
ボソリ、とカレンが呟く。
敵意や悪意に近い視線もあれば、なぜ罪人と、という困惑の視線もある。それらが集中すれば正常な感覚を持つ者ならば滅入ってしまうのも当然だった。
「大丈夫か?カレン」
「え、ええ・・・」
気遣う扇に頷いて、カレンは平然と前を向いて歩を進めるルルーシュを見つめた。
こっそりと移動すればいいものを、諸事情とやらで堂々と皇帝のいる謁見の間まで行かなければならないという。
面倒なことだと思いながらもルルーシュの困ったような笑顔に何とも言えず黙ってついて行くことを決めた。
何とも思っていないわけではないだろうに、ルルーシュはまるで精巧な人形のように感情の無い表情をうかべて廊下を歩いている。
カレンも貴族の屋敷で暮らしていたからこそ、なんとなくだがわかるのだ。
一瞬でも気を抜いた方が負け。
周り全てを騙しきる演技力と精神力があって初めて、場を制することができる。
「・・・仮面の使い方は堂に入ってるわけね」
自我が育ってから貴族社会に放り込まれたカレンにしてみれば、このような環境で生まれ育ったルルーシュがあのように計算高く物事を考えられるようになったというのは当然のことのように思えた。
「・・・おお、これはルルーシュ皇女殿下ではありませんか」
突如、声をかけられて黒の騎士団の面々は思わず表情を強張らせた。
とにかく表情や態度に気をつけろとルルーシュやスザクに言い含められていたため、余計に緊張する。
「・・・レンテン侯、ご無沙汰しております」
「聞きましたぞ、母君がご無事であったそうで・・・さぞや安心されたでしょう」
「ええ・・・ご心配をおかけしました」
言葉少なに応じるルルーシュは美しい笑みをうかべている。
学園にいた頃に見せていた素の笑顔とはまったく違うソレに、カレンは感心を通り越して呆れてしまった。
「(私の病弱設定もなかなかと思ってたけど・・・これには負けるわ)」
腹のうちをまったく読ませない鉄壁の防御となっているその笑顔に、疑問を抱く者は殆どいないだろうと思えた。
「妃将軍がお戻りになった以上、ブリタニアも安泰ですな」
「・・・今はシュナイゼル兄様がいらっしゃいますから・・・母にそのような権限を持たせることはないと思いますが」
「いやいや、元はラウンズであられたマリアンヌ皇妃の頭脳は、シュナイゼル殿下のソレを上回るとの噂ですぞ」
「そんな・・・シュナイゼル兄様の頭脳に敵うハズがありませんわ」
謙遜してみせるルルーシュに、レンテン侯はわずかに表情を曇らせた。
「それにしても、皇女殿下が皇位継承権を放棄されたのは早計でしたな」
「・・・・・・まだ、子どもでしたから」
わざとなのか、それとも素か。ルルーシュの声が震えた。
レンテン侯の目が鈍く光るのを騎士団の面々は捉えた。
「ルルーシュ殿下は幼き頃より優秀でしたなァ・・・陛下の覚えもめでたく、アリエス宮へ良く通っておられたのを覚えております。・・・いやぁ、一時の感情とはいえもったいない」
「・・・愚かだったのです」
表情を変えずそう言ったルルーシュに、レンテン侯はあからさまに落胆した様子を見せた。
「残念です・・・ああ、お引き留めして申し訳ございませんでした。私はこれで・・・」
「ええ・・・」
慇懃にルルーシュに向かって頭を下げたレンテン侯が去り際にボソリと呟く。
「・・・フン、雑種の黒猫が生意気に・・・」
明らかに聞こえるように呟かれたソレに騎士団の面々は愕然とした。
コレがブリタニア貴族の世界なのか、と。
「・・・姫殿下」
「ダメよ、ビスマルク。“目”と“耳”もやめなさい」
悟らせるような真似はしなかったが、ビスマルクは途中でレンテン侯を無礼打ちする気満々だった。
そして、陰ながらルルーシュを守っている嚮団の者達もだ。
それを留めていたのは当のルルーシュだったため、レンテン侯は命だけは助かったというわけだ。
「陛下にはご報告しておきます」
「ビスマルク達の殺気に気付かれやしないかとヒヤヒヤしたわ・・・そんなに腹を立てなくても良いじゃない。いつものことでしょう?」
眉間に深い皺を刻んで告げるビスマルクに、ルルーシュは困ったように眉根を寄せた。
「看過するわけにはまいりません。私は姫殿下の護衛を陛下より仰せつかっておりますゆえ」
怒れないし憎めない。そんなルルーシュのために自分達がいるのだと告げれば、しょうがないと笑うルルーシュ。
「まぁ、確かに・・・以前なら腹を立てていたのかもしれないけれど・・・いちいち相手にしていたらブリタニアの貴族の大半は無礼打ちよ?」
クスクスと楽しげに笑うルルーシュに、ビスマルクはわずかに肩を落とした。
「・・・ギアスを解いてはいかがでしょうか、姫殿下。いえ、むしろ解いてください。というか、お手伝いしますゆえ」
「・・・ヴァルトシュタイン卿、手伝うとは?」
不穏な空気を感じて、スザクがビスマルクに問いかける。
「無論・・・反逆だ」
憤慨しつつも真面目腐って答えたビスマルクに、全員が口元を引き攣らせた。
「「「「「(言ったよこの人!!!マジで言いやがった!!ナイト・オブ・ワンが反逆するとか言っちゃったよ!!)」」」」」
スザク+黒の騎士団の面々は声に出してツッコミたかったが、場所が場所だけに我慢する。が、やっぱり声に出したい。このままでは消化不良になりそうだ。
「やだわ、ビスマルクったら・・・いつからそんな冗談言えるようになったの?」
「冗談ではありません、姫殿下」
「フフ・・・気持ちは嬉しいけれど、嘘はダメよ?貴方がお父様やお母様に刃向えるハズが無いわ」
「いえ、嘘でもありません」
「まぁ・・・それは大変ね」
クスクスと笑うルルーシュは本気にしていない。
まったくもって自分への好意にはとことん鈍い。
「おいおいおいおい・・・姫さんってもしかしなくても天然か?」
「ちょ、ゼロのイメージがガラガラと崩れていくんだけど」
元々ブリタニアの皇女がゼロ、というだけでもイメージが崩れているのに、この天然っぷりにはさすがに黒の騎士団も面食らってしまった。
「・・・スザク、あんたがルルーシュに言って来なさいよ!親友でしょ!?」
「無理だって、いくら言ってもルルーシュは頑固だから本気にしないよ」
「ゼロ様・・・いえ、ルルーシュ姫に言えるのはスザク、貴方だけではなくて?」
カレンと神楽耶に早く言えと言わんばかりに睨みつけられて、スザクは口元を引き攣らせた。
「だから、無理って言ってるのに・・・」
どうしてこうも自分の周りには強かな女性が多いのか。
たおやかな印象を与える容貌をしていたユーフェミアも根っこには強い信念があり、それを折るような真似は一切許さなかった。
渋々ルルーシュの傍に寄ったスザクは、そっと耳打ちした。
「・・・たぶん、ヴァルトシュタイン卿は本気だと思うんだけど」
「まさか。・・・スザク、口が裂けてもそんなことを他の人に言ったらダメよ?仮にも上司でしょう?」
が、逆にたしなめられた。
ほら見ろ、と言わんばかりに恨めしげな視線をカレンと神楽耶に向ければ、彼女等は気まずそうに視線を逸らした。
幼馴染だからこそわかる。こう見えてルルーシュは超弩級のド天然なのだ。
「・・・あー、えーと。ルルーシュに対してはレンテン侯ってあんな感じなんだね」
何度か会ったことがあるが、ラウンズであるスザクには意外と好意的だったように思う。
「彼は親日家だったのよ」
「・・・へぇ・・・そうだったんだ」
イレヴン、と蔑む者が多い貴族の中では珍しい。
「情人の中に日本人がいたようね」
「・・・・・・あ、それで」
納得のいく答えだが、それ以上にルルーシュに対する態度には首を傾げざるを得ない。
「私は・・・民間出身の皇妃を母に持つから・・・その辺りは普通の貴族と一緒よ」
「それもそうか・・・ナナリーにも冷たかったように思うし」
「私達姉妹には敵は多いけれど味方は少ないの。・・・事実、後ろ盾についていたのはアッシュフォードだけなのよ」
父や母に見捨てられた時にも手を差し伸べてくれたアッシュフォードには感謝してもしきれない。
いずれは家を再興してやりたいが、今の状況では難しい。
歩を進めながらもそう告げるルルーシュに、スザクは目を細めた。
「・・・会長も随分とルルーシュを心配してた」
「そう・・・いつか、謝りに行かないとね」
生徒会のメンバーには特に。性別や身分を偽っていたことは彼らにかなりのショックを与えたことだろう。
声のトーンを落としたルルーシュに、スザクは気遣わしげな視線を向けた。
「ルルーシュ、大丈夫?」
「ええ・・・」
そんな2人のやり取りに、黒の騎士団の面々は複雑な思いを抱えていた。
「・・・本当に仲が良かったんだな」
ポツリ、と扇が漏らすとカレンは困ったように眉を顰める。
「扇さん・・・」
「いや、悪いとか悪くないとか言うつもりはないんだ・・・ただ、友人同士で憎しみ合ったっていうのは辛かっただろうなって」
お人好しの扇らしい言葉に、騎士団創設時の面々は苦笑をうかべる。
「でもさー・・・男と女の友情って有り?」
「「「「「!?」」」」」
ポツリ、と朝比奈が漏らした言葉に黒の騎士団のみならず、ビスマルクまでもが固まった。
「・・・・・・あ、有り、なんじゃないかしら・・・?」
「どもってるよ~、紅月さん」
「そ、そんなこと、無いですよ!?」
今まではルルーシュが男だと思っていたから何とも思っていなかったが、女と知って思い返してみると、様々怪しいんではないかと思える数々の事柄が脳裏を過ぎる。
ダラダラと嫌な汗が背中を伝う。
「・・・姫殿下!」
突如、固まっていたビスマルクが叫んだ。
「え?なぁに?」
「よもや、枢木に恋情など抱いてはおりませぬな!?」
「ちょ!?・・・ヴァルトシュタイン卿!?」
スザクが頬をわずかに赤らめてギョッとする。
「恋情?・・・ビスマルク、何を勘違いしているの?スザクは私の幼馴染で初めての友人よ?恋とは別物だわ」
キッパリと否定したルルーシュにビスマルクは満足げに頷き、スザクはほんの少し残念に思う気持ちがあって挙動不審になる。
「・・・あーあ。スザクの奴、告白する前にフられたわね」
「へぇ~、女性って男との友情は有りなんだ・・・」
ニヤリと笑うカレンと、納得したように頷く朝比奈。
「それにしても・・・ゼロ様・・・いえ、ルルーシュ姫があそこまで鈍感とは・・・」
神楽耶が苦笑をうかべて呟けば、桐原が肩を竦めた。
「ご自分の魅力に気付いてはおりませなんだ。・・・彼の姫は不遇の扱いを受けて来たが故に周りは皆、敵だと思い込む癖があるようですな。例え味方と判断してもそれはいつ裏切られるかもわからない信頼に値しないものだと・・・」
「それは、とても悲しいことです・・・私達は絶対的な味方であるとお約束してさしあげたいのですけれど、きっと信じてくださらないのでしょうね」
育った環境が悪すぎたとしか言いようが無い。
家族ですら信じ切れないその環境は、ルルーシュの中に大きな歪みを生みだしていたのだ。
「・・・なんかさ、彼女がゼロだった時とは違って、守ってやりたいって思うよな」
ポツリと南が呟く。
「確かにな・・・あいつ、なんかほっとけないっていうか・・・危なっかしいって思うぜ」
玉城までそんなことを言い出し、すっかりルルーシュの魅力にやられてしまった男達はそれに同意するかのように頷く。
「・・・確かにほっとけないわよねぇ・・・ド天然に加えてかなりドジっ子だから・・・」
運動神経ゼロとでも言おうか。彼改め彼女の運動神経の無さには呆れてしまう。おまけに体力も平均よりも劣っている。
一応、生徒会の催しなどでは逃げ回ることも多く、単純に走る程度なら早い方だとは思うが、いかんせん体力が無いために途中で息切れを起こしてしまうのだ。
「・・・・・・あ、ダメ。もう、俺の中でゼロのイメージ全部瓦解した・・・」
朝比奈が呟けば、藤堂が苦笑をうかべた。
「・・・確かに、これでは、あの姫とゼロを結び付けるのは容易ではないな」
「ですよねぇ~」
心強い賛同者の登場に、朝比奈は二ヘラと笑う。
「おい、朝比奈・・・一応確認するが、相手はブリタニアの皇女殿下だからな?変な真似はするなよ?」
朝比奈の笑顔に危機を感じたのか、卜部が眉間にしわを寄せる。
「わかってますよ~、卜部さん」
「と言いながら、お近づきになれるチャンスとか思っているのだろう」
更には仙波までもがそう言いだし、朝比奈は苦笑いをうかべた。
「やだな~、牢屋の中での話は冗談ですってば~」
「どうだか。姫さんが俺達のことを認識してたって知った時、秘かにガッツポーズしてたのを見てたぞ」
「げ、マジですか・・・卜部さん」
皆がマリアンヌとのやり取りに夢中になっている中で誰も見ていないだろうという一瞬の気の緩みと、ルルーシュが自分達を黒の騎士団幹部と認識していたという喜びのガッツポーズを、よもや卜部に見られていると思ってもいなかった朝比奈は口元を引き攣らせた。
「んんっ」
皇宮の奥に来たせいか人目を気にせずにいられるという状況だったからか、いささか賑やかにし過ぎたらしい。ビスマルクの咳払いでハッと騎士団の面々は自分達の置かれている立場を思い出した。
「・・・間もなく謁見の間に着く。私語は慎んでもらいたい」
ジロリ、とビスマルクに睨まれて、朝比奈は苦笑して肩を竦めた。
そして、見えて来た大きな扉の前にいる衛兵の姿を認め、皆の表情が緊張で強張る。
「ルルーシュ第3皇女殿下、ご入場です!」
衛兵の声が廊下に響き、大きな扉が重い音を立てて開いた。
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・にょたルルです
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地下牢からカレン達を引き連れ、皇宮の廊下を歩くルルーシュ。
彼女に向けられる視線は様々だった。
「・・・なんか、気持ち悪い」
ボソリ、とカレンが呟く。
敵意や悪意に近い視線もあれば、なぜ罪人と、という困惑の視線もある。それらが集中すれば正常な感覚を持つ者ならば滅入ってしまうのも当然だった。
「大丈夫か?カレン」
「え、ええ・・・」
気遣う扇に頷いて、カレンは平然と前を向いて歩を進めるルルーシュを見つめた。
こっそりと移動すればいいものを、諸事情とやらで堂々と皇帝のいる謁見の間まで行かなければならないという。
面倒なことだと思いながらもルルーシュの困ったような笑顔に何とも言えず黙ってついて行くことを決めた。
何とも思っていないわけではないだろうに、ルルーシュはまるで精巧な人形のように感情の無い表情をうかべて廊下を歩いている。
カレンも貴族の屋敷で暮らしていたからこそ、なんとなくだがわかるのだ。
一瞬でも気を抜いた方が負け。
周り全てを騙しきる演技力と精神力があって初めて、場を制することができる。
「・・・仮面の使い方は堂に入ってるわけね」
自我が育ってから貴族社会に放り込まれたカレンにしてみれば、このような環境で生まれ育ったルルーシュがあのように計算高く物事を考えられるようになったというのは当然のことのように思えた。
「・・・おお、これはルルーシュ皇女殿下ではありませんか」
突如、声をかけられて黒の騎士団の面々は思わず表情を強張らせた。
とにかく表情や態度に気をつけろとルルーシュやスザクに言い含められていたため、余計に緊張する。
「・・・レンテン侯、ご無沙汰しております」
「聞きましたぞ、母君がご無事であったそうで・・・さぞや安心されたでしょう」
「ええ・・・ご心配をおかけしました」
言葉少なに応じるルルーシュは美しい笑みをうかべている。
学園にいた頃に見せていた素の笑顔とはまったく違うソレに、カレンは感心を通り越して呆れてしまった。
「(私の病弱設定もなかなかと思ってたけど・・・これには負けるわ)」
腹のうちをまったく読ませない鉄壁の防御となっているその笑顔に、疑問を抱く者は殆どいないだろうと思えた。
「妃将軍がお戻りになった以上、ブリタニアも安泰ですな」
「・・・今はシュナイゼル兄様がいらっしゃいますから・・・母にそのような権限を持たせることはないと思いますが」
「いやいや、元はラウンズであられたマリアンヌ皇妃の頭脳は、シュナイゼル殿下のソレを上回るとの噂ですぞ」
「そんな・・・シュナイゼル兄様の頭脳に敵うハズがありませんわ」
謙遜してみせるルルーシュに、レンテン侯はわずかに表情を曇らせた。
「それにしても、皇女殿下が皇位継承権を放棄されたのは早計でしたな」
「・・・・・・まだ、子どもでしたから」
わざとなのか、それとも素か。ルルーシュの声が震えた。
レンテン侯の目が鈍く光るのを騎士団の面々は捉えた。
「ルルーシュ殿下は幼き頃より優秀でしたなァ・・・陛下の覚えもめでたく、アリエス宮へ良く通っておられたのを覚えております。・・・いやぁ、一時の感情とはいえもったいない」
「・・・愚かだったのです」
表情を変えずそう言ったルルーシュに、レンテン侯はあからさまに落胆した様子を見せた。
「残念です・・・ああ、お引き留めして申し訳ございませんでした。私はこれで・・・」
「ええ・・・」
慇懃にルルーシュに向かって頭を下げたレンテン侯が去り際にボソリと呟く。
「・・・フン、雑種の黒猫が生意気に・・・」
明らかに聞こえるように呟かれたソレに騎士団の面々は愕然とした。
コレがブリタニア貴族の世界なのか、と。
「・・・姫殿下」
「ダメよ、ビスマルク。“目”と“耳”もやめなさい」
悟らせるような真似はしなかったが、ビスマルクは途中でレンテン侯を無礼打ちする気満々だった。
そして、陰ながらルルーシュを守っている嚮団の者達もだ。
それを留めていたのは当のルルーシュだったため、レンテン侯は命だけは助かったというわけだ。
「陛下にはご報告しておきます」
「ビスマルク達の殺気に気付かれやしないかとヒヤヒヤしたわ・・・そんなに腹を立てなくても良いじゃない。いつものことでしょう?」
眉間に深い皺を刻んで告げるビスマルクに、ルルーシュは困ったように眉根を寄せた。
「看過するわけにはまいりません。私は姫殿下の護衛を陛下より仰せつかっておりますゆえ」
怒れないし憎めない。そんなルルーシュのために自分達がいるのだと告げれば、しょうがないと笑うルルーシュ。
「まぁ、確かに・・・以前なら腹を立てていたのかもしれないけれど・・・いちいち相手にしていたらブリタニアの貴族の大半は無礼打ちよ?」
クスクスと楽しげに笑うルルーシュに、ビスマルクはわずかに肩を落とした。
「・・・ギアスを解いてはいかがでしょうか、姫殿下。いえ、むしろ解いてください。というか、お手伝いしますゆえ」
「・・・ヴァルトシュタイン卿、手伝うとは?」
不穏な空気を感じて、スザクがビスマルクに問いかける。
「無論・・・反逆だ」
憤慨しつつも真面目腐って答えたビスマルクに、全員が口元を引き攣らせた。
「「「「「(言ったよこの人!!!マジで言いやがった!!ナイト・オブ・ワンが反逆するとか言っちゃったよ!!)」」」」」
スザク+黒の騎士団の面々は声に出してツッコミたかったが、場所が場所だけに我慢する。が、やっぱり声に出したい。このままでは消化不良になりそうだ。
「やだわ、ビスマルクったら・・・いつからそんな冗談言えるようになったの?」
「冗談ではありません、姫殿下」
「フフ・・・気持ちは嬉しいけれど、嘘はダメよ?貴方がお父様やお母様に刃向えるハズが無いわ」
「いえ、嘘でもありません」
「まぁ・・・それは大変ね」
クスクスと笑うルルーシュは本気にしていない。
まったくもって自分への好意にはとことん鈍い。
「おいおいおいおい・・・姫さんってもしかしなくても天然か?」
「ちょ、ゼロのイメージがガラガラと崩れていくんだけど」
元々ブリタニアの皇女がゼロ、というだけでもイメージが崩れているのに、この天然っぷりにはさすがに黒の騎士団も面食らってしまった。
「・・・スザク、あんたがルルーシュに言って来なさいよ!親友でしょ!?」
「無理だって、いくら言ってもルルーシュは頑固だから本気にしないよ」
「ゼロ様・・・いえ、ルルーシュ姫に言えるのはスザク、貴方だけではなくて?」
カレンと神楽耶に早く言えと言わんばかりに睨みつけられて、スザクは口元を引き攣らせた。
「だから、無理って言ってるのに・・・」
どうしてこうも自分の周りには強かな女性が多いのか。
たおやかな印象を与える容貌をしていたユーフェミアも根っこには強い信念があり、それを折るような真似は一切許さなかった。
渋々ルルーシュの傍に寄ったスザクは、そっと耳打ちした。
「・・・たぶん、ヴァルトシュタイン卿は本気だと思うんだけど」
「まさか。・・・スザク、口が裂けてもそんなことを他の人に言ったらダメよ?仮にも上司でしょう?」
が、逆にたしなめられた。
ほら見ろ、と言わんばかりに恨めしげな視線をカレンと神楽耶に向ければ、彼女等は気まずそうに視線を逸らした。
幼馴染だからこそわかる。こう見えてルルーシュは超弩級のド天然なのだ。
「・・・あー、えーと。ルルーシュに対してはレンテン侯ってあんな感じなんだね」
何度か会ったことがあるが、ラウンズであるスザクには意外と好意的だったように思う。
「彼は親日家だったのよ」
「・・・へぇ・・・そうだったんだ」
イレヴン、と蔑む者が多い貴族の中では珍しい。
「情人の中に日本人がいたようね」
「・・・・・・あ、それで」
納得のいく答えだが、それ以上にルルーシュに対する態度には首を傾げざるを得ない。
「私は・・・民間出身の皇妃を母に持つから・・・その辺りは普通の貴族と一緒よ」
「それもそうか・・・ナナリーにも冷たかったように思うし」
「私達姉妹には敵は多いけれど味方は少ないの。・・・事実、後ろ盾についていたのはアッシュフォードだけなのよ」
父や母に見捨てられた時にも手を差し伸べてくれたアッシュフォードには感謝してもしきれない。
いずれは家を再興してやりたいが、今の状況では難しい。
歩を進めながらもそう告げるルルーシュに、スザクは目を細めた。
「・・・会長も随分とルルーシュを心配してた」
「そう・・・いつか、謝りに行かないとね」
生徒会のメンバーには特に。性別や身分を偽っていたことは彼らにかなりのショックを与えたことだろう。
声のトーンを落としたルルーシュに、スザクは気遣わしげな視線を向けた。
「ルルーシュ、大丈夫?」
「ええ・・・」
そんな2人のやり取りに、黒の騎士団の面々は複雑な思いを抱えていた。
「・・・本当に仲が良かったんだな」
ポツリ、と扇が漏らすとカレンは困ったように眉を顰める。
「扇さん・・・」
「いや、悪いとか悪くないとか言うつもりはないんだ・・・ただ、友人同士で憎しみ合ったっていうのは辛かっただろうなって」
お人好しの扇らしい言葉に、騎士団創設時の面々は苦笑をうかべる。
「でもさー・・・男と女の友情って有り?」
「「「「「!?」」」」」
ポツリ、と朝比奈が漏らした言葉に黒の騎士団のみならず、ビスマルクまでもが固まった。
「・・・・・・あ、有り、なんじゃないかしら・・・?」
「どもってるよ~、紅月さん」
「そ、そんなこと、無いですよ!?」
今まではルルーシュが男だと思っていたから何とも思っていなかったが、女と知って思い返してみると、様々怪しいんではないかと思える数々の事柄が脳裏を過ぎる。
ダラダラと嫌な汗が背中を伝う。
「・・・姫殿下!」
突如、固まっていたビスマルクが叫んだ。
「え?なぁに?」
「よもや、枢木に恋情など抱いてはおりませぬな!?」
「ちょ!?・・・ヴァルトシュタイン卿!?」
スザクが頬をわずかに赤らめてギョッとする。
「恋情?・・・ビスマルク、何を勘違いしているの?スザクは私の幼馴染で初めての友人よ?恋とは別物だわ」
キッパリと否定したルルーシュにビスマルクは満足げに頷き、スザクはほんの少し残念に思う気持ちがあって挙動不審になる。
「・・・あーあ。スザクの奴、告白する前にフられたわね」
「へぇ~、女性って男との友情は有りなんだ・・・」
ニヤリと笑うカレンと、納得したように頷く朝比奈。
「それにしても・・・ゼロ様・・・いえ、ルルーシュ姫があそこまで鈍感とは・・・」
神楽耶が苦笑をうかべて呟けば、桐原が肩を竦めた。
「ご自分の魅力に気付いてはおりませなんだ。・・・彼の姫は不遇の扱いを受けて来たが故に周りは皆、敵だと思い込む癖があるようですな。例え味方と判断してもそれはいつ裏切られるかもわからない信頼に値しないものだと・・・」
「それは、とても悲しいことです・・・私達は絶対的な味方であるとお約束してさしあげたいのですけれど、きっと信じてくださらないのでしょうね」
育った環境が悪すぎたとしか言いようが無い。
家族ですら信じ切れないその環境は、ルルーシュの中に大きな歪みを生みだしていたのだ。
「・・・なんかさ、彼女がゼロだった時とは違って、守ってやりたいって思うよな」
ポツリと南が呟く。
「確かにな・・・あいつ、なんかほっとけないっていうか・・・危なっかしいって思うぜ」
玉城までそんなことを言い出し、すっかりルルーシュの魅力にやられてしまった男達はそれに同意するかのように頷く。
「・・・確かにほっとけないわよねぇ・・・ド天然に加えてかなりドジっ子だから・・・」
運動神経ゼロとでも言おうか。彼改め彼女の運動神経の無さには呆れてしまう。おまけに体力も平均よりも劣っている。
一応、生徒会の催しなどでは逃げ回ることも多く、単純に走る程度なら早い方だとは思うが、いかんせん体力が無いために途中で息切れを起こしてしまうのだ。
「・・・・・・あ、ダメ。もう、俺の中でゼロのイメージ全部瓦解した・・・」
朝比奈が呟けば、藤堂が苦笑をうかべた。
「・・・確かに、これでは、あの姫とゼロを結び付けるのは容易ではないな」
「ですよねぇ~」
心強い賛同者の登場に、朝比奈は二ヘラと笑う。
「おい、朝比奈・・・一応確認するが、相手はブリタニアの皇女殿下だからな?変な真似はするなよ?」
朝比奈の笑顔に危機を感じたのか、卜部が眉間にしわを寄せる。
「わかってますよ~、卜部さん」
「と言いながら、お近づきになれるチャンスとか思っているのだろう」
更には仙波までもがそう言いだし、朝比奈は苦笑いをうかべた。
「やだな~、牢屋の中での話は冗談ですってば~」
「どうだか。姫さんが俺達のことを認識してたって知った時、秘かにガッツポーズしてたのを見てたぞ」
「げ、マジですか・・・卜部さん」
皆がマリアンヌとのやり取りに夢中になっている中で誰も見ていないだろうという一瞬の気の緩みと、ルルーシュが自分達を黒の騎士団幹部と認識していたという喜びのガッツポーズを、よもや卜部に見られていると思ってもいなかった朝比奈は口元を引き攣らせた。
「んんっ」
皇宮の奥に来たせいか人目を気にせずにいられるという状況だったからか、いささか賑やかにし過ぎたらしい。ビスマルクの咳払いでハッと騎士団の面々は自分達の置かれている立場を思い出した。
「・・・間もなく謁見の間に着く。私語は慎んでもらいたい」
ジロリ、とビスマルクに睨まれて、朝比奈は苦笑して肩を竦めた。
そして、見えて来た大きな扉の前にいる衛兵の姿を認め、皆の表情が緊張で強張る。
「ルルーシュ第3皇女殿下、ご入場です!」
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☆ 感 想 ☆ : 感想書き込みコーナー
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