Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・藤ルル♀
・藤堂さんは昔ルル達の身辺警護をしていました
・ルルは女の子ですが、男の子と偽ってました
・捏造満載
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
「ここに、合衆国日本の設立を宣言致します!」
凛とした神楽耶の声。その声と共に、日本中に歓声が沸いた。
そう、黒の騎士団はブリタニアに勝利した。ブリタニアは停戦条約と不可侵条約にサインをし、エリア11を黒の騎士団へと譲渡した。
それに便乗するかのように、各エリアで暴動が起きていて、間もなく、現地民への返還が決定されるだろうということだった。
エリア11での敗北で、ブリタニアの権威は墜ち、最早、エリアを抱えている場合ではなくなってしまった。というのが本音だということは誰もが知る事実だった。
「ようやく終わったな。」
歓声をあげる騎士団の団員達を眺め、藤堂は表情を緩めた。その隣には、黒衣仮面の男、ゼロの姿。
「・・・ああ。」
頷くその声には、様々な感情が込められていたことに気づいた藤堂は、そっと肩に手を置いた。
「もう、そろそろ、重荷を降ろしては?・・・充分だろう。君は頑張った。」
「・・・神楽耶様や桐原公に、合衆国の政治にも携わるように依頼されている。」
「・・・そうか、だが、その前に、俺の願いを聞くという約束を守ってもらおうかな?」
「・・・っ!」
ぴくん、と肩を揺らしたゼロに、藤堂は笑みを深めた。
「約束、忘れたとは言わせないぞ?」
「・・・・・・う。」
呻いたゼロの脳裏に浮かんだのは、藤堂に正体を知られた日のこと。
― そうか、君がゼロか・・・どうりで懐かしい気が感じられると思ったら。
― お久しぶりです・・・藤堂さん。
― ああ。7年ぶりか・・・綺麗になったな。
― か、からかわないで下さい!!
― からかってなどいないさ。・・・髪、切ってしまったんだな。もったいない。あんなに綺麗な黒髪だったのに。
― ・・・偽りの経歴を作らねば生きていけませんでしたから。
― ・・・そうか。・・・なぁ、ルルーシュ君。君に伝えたいことがある。全てが終わったら、俺の願いを聞いてくれないか?
― ・・・・・・・・・わかり、ました。
7年前、藤堂に憧れていたルルーシュ。それは初恋とも言えた。だが、自分のような子供を藤堂が相手をするわけがないと、心の内に秘めてきた想い。その想いが溢れ出てしまいそうで、ルルーシュは苦しかった。
だが、その会話が為された直後、藤堂がいきなり告白をしてきて、猛アタックを始めてくれた時には、呆然としてしまった。
全てが終わったらではなかったのかと聞いたら、それはもう良い笑顔で藤堂は答えてくれた。曰く“その願いの為に、今から君を堕とそうと思っているんだが。”と。
「・・・こんなに積極的とはな。」
ゼロモードのルルーシュは、はぁ、と溜め息をつきつつ、藤堂の手を肩から外させる。
「・・・ゼロの時は、あまり構うなと言ったと思ったが。」
「そうだったな。・・・だが、その仮面を外したら、思う存分構っても良いのだろう?」
「・・・思う存分って・・・。」
思わず絶句したルルーシュに、藤堂はにやりと笑って見せた。
「楽しみにしている。・・・確か、明日は俺も君も休みだったはずだな?」
ポン、と肩を叩き、藤堂はその場を立ち去る。
ルルーシュは仮面を被っていなければ、しゃがみこんでいただろうと思いながら、バクバクと跳ね上がるように鼓動を打つ心臓を押さえた。
「・・・あの笑顔、心臓に悪い・・・。」
呟いたルルーシュ=ゼロに頷いた者達がいた。言わずもがな、黒の騎士団の幹部達+四聖剣である。
珍しい組み合わせに、こっそりと覗いていたのだが、話している内容のほとんどが意味不明だった。が、とにかく、藤堂がゼロに何か願い事をしたくて、それを明日言うのだということだけはわかった。
「しかし、藤堂さんは何をゼロに願うんだろう?」
「・・・っつーか、なんか、やたらと仲良くなかったか?」
首を傾げる扇に、口元を引き攣らせる玉城。四聖剣もそれは思っていたことなので、うんうんと頷く。
「皆さんは聞いてないんですか?」
尋ねるカレンに、四聖剣は揃って頷く。
「残念ながら。」
「まったく。」
「聞いてないな。」
「初耳だよ~・・・。」
口々に言うと、もう一度ゼロの方を見る。
「・・・第一、あんなに仲が良かったことすら、知らなかったんだぜ?」
卜部が言うと、それは確かに、と幹部全員が頷く。こんなにも長く一緒にいるのに、まったくそんな素振りすらなかったのだ。ゼロの言うとおり、“ゼロ”である時は、構わないようにしていたのだろうが。
「と、すればだ。・・・中佐は“ゼロ”の正体を知ってるってことになるんだろうなぁ・・・。」
嘆息し、卜部は恨めしそうに呟いた。
「俺らにも黙ってるなんて・・・ひでぇよ、中佐ぁ・・・。」
「言っても始まらん。・・・明日にはわかるだろうて。」
嘆く卜部をなだめつつ、仙波が言う。
「せ、仙波さん!?」
普段なら止めそうな仙波が率先してそれを言うということは・・・。
「・・・覗くつもりですか?」
扇がおそるおそる訊ねると、仙波は力強く頷いた。
「無論。」
「・・・うわー・・・仙波さんが先頭切るなんて、珍しい。」
「中佐が何を望んでおられるのか、気になるからな・・・。あんな笑顔は終ぞ見たことが無い。」
流石の仙波も、藤堂のあの笑顔には気になることがあったらしい。
「俺もー・・・結構長く一緒にいるのに、あんな笑顔見たこと無いですよ~。」
「俺もだな。・・・千葉は?」
「あいにく、私も見たことがありません。」
それほどに嬉しそうで、そして、何かを企んでいるようなあの笑顔。
「な~んか、ゼロが食べられちゃいそうって思ったのって、私だけかしら?」
ボソ、と呟いた井上に、その場の全員が固まる。
― いやいやいや・・・井上(さん)、それはマスイ、かなりマズイ。
全員の思考が井上につっこむが、声に出すものはいない。それは、一瞬でもありそうと思ってしまったからだ。
「・・・あは・・・私、何変なこと言ってるのかしら。忘れてねぇ?」
にこり、と笑う井上に、から笑いを返しつつ、本当にそうなったら、どうしよう!?と思った幹部達+四聖剣だった。
翌日、合衆国日本の中枢が据えられた政庁より、心なしかウキウキとしているように見える藤堂が、私服に身を包んで出てくる。バッチリとめかしこんでいる様子を見て、事情を知らない衛兵達は揃って首を傾げ、その後を追う幹部+四聖剣を見て、更に首を傾げた。
「あの~・・・本当に良いんでしょうか・・・。」
今更ながらに二の足を踏むのは扇。いつも煮え切らない態度だが、今回もまた同様だった。
「腹をくくれ、扇。・・・それに、滅多にないチャンスじゃないか。」
南が苦笑する。そう、ようやく“ゼロ”の正体を知れるのだ。頑ななまでに人前で仮面を外そうとしなかった“彼”が、今回限りはその仮面を外しているかもしれないのだ。
「・・・確かに、話の流れでは、そんな感じだったけど・・・でも、俺達まで見ていいものなのか?あれは、藤堂さんと・・・。」
「でもよー、もう、日本を取り戻したんだしさ・・・良いじゃんか、少しくらい。」
玉城が口を尖らせる。
「そうだよな・・・もう、いい加減、俺達のことも信頼して欲しいしな。」
杉山までもが同意するので、扇は嘆息しつつも頷いた。
「わかった・・・でも、後で、ちゃんと謝ろう。黙ったままじゃ、本当の信頼なんて一生得られないぞ。」
扇の言葉に頷き、全員は藤堂の後を気付かれないように、距離を置いてついて行く。
そんな幹部達の動きに、藤堂はしっかりと気付いていた。
「(・・・もう少し尾行術を叩きこんでおくべきだったか?これでは、ルルーシュ君に気づかれるぞ?)」
気配に聡いルルーシュが、こんな下手な尾行に気づかないわけがない。悪くすれば、待ち合わせ場所から遁走される恐れもある。
「・・・そうなったらなったで、捕まえれば良いだけの話か。」
くつり、と笑う。ルルーシュの体力の無さは昔からだった。昔は“少女”らしく、おしとやかなイメージで、スザクに散々振り回されては、藤堂の道場で一休みしていた記憶がある。
が、長じても体力が無いということは、元々の体質だったのだろう。よくあれで、男として偽装していられたと感心する。
それに、確かに背の高さはあるが、肉付きは女性らしい柔らかさがあることを知っている。見ただけで、バレることは無いだろうが、全く触れ合わないということも無いだろうに。
「・・・ああ、もしかして“ゼロ”の時も着ている特殊スーツをいつも・・・?」
肩や胸の辺りを硬くするためのスーツを着て“ゼロ”を演じていることは、本人から聞いたことだが、まさか、学園生活でもそれを利用しているのだろうか?
「・・・毎日それでは、成長するモノもしないだろうに・・・。」
ぼそぼそと呟く藤堂は、かなり怖い。眉間にしわを寄せて歩いているので、通行人が飛ぶように避けて、遠巻きに“奇跡の藤堂”を見つめている。まるで、“モーセの奇跡”のようである。
待ち合わせ場所は、旧シンジュクゲットーの新宿御苑。
以前はEUや日本、様々な様式を兼ね備えた庭園があることで有名な場所だったが、今では見る影も無い。・・・が、その一部が残る旧新宿門衛所前で、ルルーシュと待ち合わせた。それは、今までゆっくりと話せなかった分、たっぷりと会話を楽しみたかったからだ。
旧シンジュクゲットーには滅多に人は来ない。それは恐らく、復興が完全に済むまでは続くだろう。誰だって、嫌な思い出がある場所には近づきたくないものだ。
気配が自分と、尾行している幹部達+四聖剣のみとなって、藤堂は待ち合わせ場所に到着した。待ち合わせの時間よりも随分早い。ルルーシュも時間より早く来るタイプだが、その前にやるべきことをしておかねばならない。
「“検索”と“消毒”の必要は・・・無い、か?」
辺りを見回し、藤堂は呟く。職業柄良く使っていた隠語で、“検索”とは不審者や障害物の有無を調べること、そして“消毒”とはその排除を済ませることを指す。こう言っておけば、四聖剣が気付いてもう少し気配を消すようにするだろうと思ったのだ。
実際、幹部達が身を潜めているだろう場所からの気配が薄くなる。思い通りに動く四聖剣に満足しつつ、藤堂は時計を確認する。
「・・・そろそろ・・・か?」
藤堂の呟きと同時に、コツン、という足音が聞こえる。そちらを向いた藤堂は一瞬、声を失った。
「お早いですね、藤堂さん。」
二コリ、と笑ったその姿は、(実際お姫様なのだが)どこぞのお姫様のようだった。真白のつばの広い帽子を被り、薄い藤色のワンピースが、その瞳の色に良く似合っている。
「・・・藤堂さん?」
コトリ、と首を傾げられ、藤堂はハッとする。
「・・・いや、すまん、君があまりにも綺麗だったから、見惚れてしまった。」
「また、そうやってからかって。」
ムッと頬を軽く膨らませるのも可愛らしい。藤堂は口元が緩むのを自覚しつつ、そっと以前より随分と伸びた髪に手を伸ばす。
「・・・髪は?」
「貴方にもったいないと言われて、それから少しずつ伸ばしたんです。・・・まだ、これだけしか伸びてないんですけど。」
「気付かなかった・・・。」
「当たり前です。編み込んで隠してたんですから。」
クス、と笑うルルーシュに、またも藤堂は見惚れる。
「・・・ああ、本当に、綺麗だ。」
フ、と笑んだ藤堂に、今度はルルーシュが頬を染めた。
「きょ、今日は、私服、なんですね?」
ごまかすように言葉を紡ぐルルーシュを愛しく思いながら、藤堂は肩を竦める。
「せっかくのデートに軍服も無いだろう?・・・それに、君に釣り合わない。」
「・・・藤堂さんって、昔からこんなに気障でした?」
恨めしそうに見上げるルルーシュに、藤堂はノックアウト寸前になりながらも、笑顔をうかべる。
「さて、どうだったかな。・・・出会った頃はそれどころじゃなかっただろうしな。」
「・・・ちょっと前までだって、それどころじゃなかった気がしますけど。」
「でも、据え膳食わぬは男の恥とも言うしな。」
「すえ・・・っ!?」
ブリタニア人のルルーシュにも通じたらしいとわかると、藤堂はにやりと笑う。
「今なら、据え膳だろう?・・・あの時はまだ子供だったから、手を出したら犯罪だったが。」
「犯罪って・・・。」
がっくりと肩を落とすルルーシュに、藤堂はクツクツと笑う。
「俺を好いてくれているというのは、知っていた。・・・ナナリー君に漏らしたのはマズかったな。彼女も俺には懐いてくれていたのだから、俺にも情報が回ってくるのは必然だと思うが。」
「・・・ナナリーが言ったんですか・・・。」
「ああ。お姉様をよろしく、とな。」
「うぅ・・・。言わないでって言ったのに。」
最愛の実妹から情報が漏洩していたと知り、ルルーシュは呻いた。
「まあ、ナナリー君の気持ちも察してやらねば。・・・あの子なりに、君のことを心配しているんだ。」
「それはまあ、そうですけど。」
トン、と壁にもたれ、ルルーシュは俯く。
「服が汚れるぞ。」
「いいんです。どうせ、もう着ませんから。」
そう言うルルーシュに、藤堂は眉を顰めた。
「・・・いつまで象徴・・・“ゼロ”でいるつもりなんだ?」
「・・・必要とされなくなるまで。それが、私に課せられた義務でしょう?」
スッと藤堂を見上げたルルーシュの表情は、すでに、その言葉は決定事項だと言っている。
「では、俺はいつまで待てば良いのかな?・・・君が必要とされなくなるまでなどと言っていたら、爺さんになってしまう。」
「待つって・・・?」
首を傾げるルルーシュの頬を、藤堂はそっと撫でた。
「・・・願いを、聞いてくれるのだろう?」
「それは・・・もちろん。」
ルルーシュの不安げに揺れる瞳をじっと見据えて、藤堂は意を決した。
「・・・俺と結婚して欲しい。」
「・・・え?」
呆然とした表情と、かすれた声が返ってくる。ルルーシュが相当驚いているのだと気付き、藤堂は苦笑した。
「・・・俺の願いが何か、考えてなかったのか?・・・ここまで、猛アタックしていたというのに。」
ほぼ同時期、草むらに隠れていた幹部達+四聖剣は、必死に自分の口を塞いでいた。カレンに至っては“ゼロ”らしき人物が現れてすぐに叫びだしそうになって、扇が開いている方の手でずっと口を塞いでいる。
息苦しくなってきたのか、カレンがトントンと背を叩くので、扇はそっと手を外す。
「ふはっ・・・はぁ、はぁ・・・。く、苦しかった。」
「す、すまない、カレン。・・・でも、いきなり叫びそうになったものだから・・・。」
「だ、だって、やっぱりあいつが“ゼロ”だったんだって思って・・・っていうか、女装!?っていうか、結婚!?」
カレンは取り留めも無く呟く。その声は潜められているので、扇も注意することは無い。
「・・・知り合いなのか?」
「知り合いも何も、アッシュフォード学園の生徒会の副会長で・・・一度疑った時は否定したのに・・・っていうか、あのカッコ・・・男女逆転祭りの時はあんなに嫌がってたのに・・・。」
「お、女の子じゃないのか?・・・お姉様がどうとか言ってたぞ?」
「男・・・だと思ってたんですけど・・・。」
カレンが首を傾げ、そして、藤堂とルルーシュの方を見る。未だにフリーズするルルーシュを、藤堂は困ったように見つめている。
「女にしか、見えないですよね?・・・藤堂さんは何だか知ってるみたいだけど、どういうことかしら・・・。」
カレンのそんな呟きが聞こえたのか、聞こえてないのか、藤堂が口を開いた。
「・・・偽りの経歴を捨てて、俺の元で生きて欲しい。・・・君は充分に頑張った。父であるブリタニア皇帝に逆らって、異母兄姉達と戦い、そして、日本を勝ち取ってくれた。・・・もう、女としての幸せを得ても良いんじゃないだろうか?」
「・・・ッ、藤堂、さん・・・。」
「ナナリー君のことは気にしなくて良い。共に暮らせばいいのだから。」
「・・・待って下さい!私は、ブリタニアの!」
「君が、ブリタニアの皇女であることなんて、関係ない。・・・本当の意味で、ブリタニアの名を捨ててしまえ。“ルルーシュ・ヴィ・藤堂”これからは、この名が君の本当の名になる。」
「でもっ!・・・それでは、藤堂さんが!!」
「俺は君さえいてくれれば良い。周りの言うことなど、気にするものか。」
「・・・っ。」
きっぱりと言った藤堂に、ルルーシュは黙り込んでしまう。
「願いを、叶えてくれないか?・・・ルルーシュ、愛してる。」
甘さを含んだその言葉に、ルルーシュの瞳が潤む。
どれ程にか望んだだろう。愛に飢えていたルルーシュに惜しみなく愛を与え、生きていることが実感できなかったルルーシュに生きることの希望を見せた、その人が今、自分を求めてくれている。
「私も・・・愛しています。・・・でも、神楽耶や桐原公がなんて言うか・・・。」
「お二人にはすでに許可を頂いている。」
「!?」
「桐原公は結婚式の準備もしてくれるそうだぞ?」
「・・・・・・あンの、タヌキじじぃ・・・。」
低い声で呟くルルーシュに、藤堂は苦笑する。
「女の子がそんな言葉を使うものじゃない。・・・さて、これで問題は無くなったと思うが?」
「・・・でも、ブリタニアが・・・。」
「それこそ、問題ではないだろう?君はすでに皇位継承権を放棄しているし、公的文書では、死亡扱いだ。」
「じゃあ・・・後は、アッシュフォードにも話さないといけませんね・・・ミレイ、怒るだろうなぁ・・・。」
観念したルルーシュは、はぁ、と溜め息をつく。
「なぜ怒られるんだ?」
首を傾げる藤堂に、ルルーシュは苦笑いをうかべる。
「・・・相談も無くここまで進めてしまってって・・・きっと怒ると思うんです。イベントが大好きですから。」
「・・・なら、日本式を桐原公に、ブリタニア式をアッシュフォードにお願いしたらどうだろう?」
「それなら・・・でも、良いのでしょうか・・・。」
「ブリタニア人の友人もいるのだろう?良いじゃないか、こんなことは2度も無いのだから。」
藤堂の笑顔につられる様に、ルルーシュも幸せそうに微笑んで、頷く。
「そうですね。・・・で、今、気付いたんですけれど・・・アレはどういうことでしょうか?」
草むらを指差し、にっこりとルルーシュは笑った。
妙に笑顔に迫力がある。藤堂は背中に汗を流しつつ、視線をさまよわせた。
「藤堂さん程の方が、気付かないわけありませんよね?」
「い、いや・・・君とのデートが嬉しかったので、つい、油断を・・・。」
「下手な嘘はついちゃ駄目です、藤堂さん。嘘をつくなら、もっと本当らしく言わなくては、騙されてあげられません。」
そう、ルルーシュから言われてしまえば、藤堂も言い訳ができずに肩を落とした。
「いや・・・良い機会かと思って。」
藤堂はそう言って、ちょいちょい、と草むらに隠れている幹部達+四聖剣を手招いた。
おずおずと出てくる幹部達+四聖剣に、ルルーシュは呆れたような視線を向けた。
「・・・雁首揃えて、一体お前達は、何をやってるんだ?」
絶世の美女に呆れた視線を向けられて、幹部達+四聖剣はぐっと詰まってしまう。
「それを言うなら、あんただって、なにやってるのよ・・・もう、何を信じて良いかわかんないわ。」
そんな中、負けじとカレンが言い返したので、ルルーシュはクス、と笑った。
「私自身が嘘で塗り固められた存在だ。だから“ゼロ”なんじゃないか。本当のことは何一つ無い“ゼロ”・・・ブリタニアに、父に捨てられてから・・・私は・・・。」
「ルルーシュ。」
そっと藤堂がルルーシュの肩に手を回す。その手の暖かさに、ルルーシュは目を細め、ふんわりと笑む。
「藤堂さんはいつから・・・。」
その中睦まじい様子に表情を緩めて扇が訊ねると、藤堂は肩を竦めた。
「彼女とは日本とブリタニアが開戦する前からの知り合いでな・・・表向き、留学生として枢木神社に預けられていた彼女とその妹の身辺警護をしていたのをきっかけに仲良くなった。・・・彼女が“ゼロ”と知ったのは、半年前くらいになるか・・・作戦の資料を届けに行った時に、たまたまC.C.が出て来て、中に引き入れられたと思ったら、同様に驚いていたルルーシュから仮面をはぎ取ったんだ。」
「まったく、C.C.も余計な真似を。」
「君にとっては余計だったかもしれないが、美しく成長したその姿を見れて、俺はC.C.の気まぐれに感謝しているんだ。」
くつりと笑う藤堂に、ルルーシュは顔を真っ赤に染める。
「だからっ!・・・わかってて、からかわないで下さい!!」
「くっくっ・・・そうやっていちいち反応するのが可愛いからからかうんじゃないか。」
「~~~っっっ!!!!」
すっかりルルーシュで遊んでいる藤堂を見て、長年連れ添っている四聖剣が、こんな人だったのか?と一斉に首を傾げ、幹部達も呆然とその様子を見つめる。
「っつーかよ、本当に、お前がゼロなのか?」
玉城が突如、まともな発言をしたので、ルルーシュは素に戻って玉城を凝視した。
「・・・玉城がまともなこと言ってる。」
カレンも同じことを思っていたらしく、そう呟いたので、ルルーシュはうんうんと頷いてしまう。
「し、失礼だな!!・・・ってか、答えろっての!!」
「さっきも言ったが、私が“ゼロ”だ。・・・これで良いか?」
「・・・おまえ、女、なんだな?」
「そうだ。」
「・・・・・・ブリタニアの皇女って・・・マジか?」
「ああ、マジだ。・・・藤堂さんもさっき言っていたが、皇位継承権は無いし、公的文書では死亡扱いになっている。が、ブリタニアの皇族として生まれたのは間違いない。」
「・・・で、何で、藤堂さんと俺らと話し方が違うんだよ。」
ぴたり、とルルーシュが動きを止める。幹部達や四聖剣もそういえば、と呟き、1人納得顔の藤堂がルルーシュの頭を撫でた。
「お前達と話すと“ゼロモード”になってしまうんだろう。その姿でしか対したことが無いのだから。逆に俺とは以前からの知り合いで、女性であることもブリタニアの皇族であることも知っていたから、こうやって素の自分をさらけ出してくれているにすぎない。他意は無いはずだ。この子はそんなに器用じゃない。」
藤堂の説明に納得した幹部達は、大人しく藤堂に頭を撫でられているルルーシュに、視線を向ける。
「・・・どうして、そんなに私のことを把握してるんです、貴方は・・・。」
視線が集まるのを感じながら、ルルーシュは恨めしげに藤堂を見上げる。
「俺が君を愛しているから、だろう。・・・それよりも、どうしてそう、君は無自覚に俺を刺激するんだろうか?いくら俺でも自分の限界に挑戦するのが1日に何度もとなると我慢しきれなくなるぞ。」
「・・・?」
ルルーシュは藤堂の言った意味を捉えかねて、首を傾げる。その様子に、藤堂はフ、と息をつく。
「だから、そういう反応は止せ。・・・襲うぞ。」
「「「「「とっ・・・藤堂さん!?」」」」」
幹部達+四聖剣が慌てて藤堂とルルーシュを引き離す。呆然とするルルーシュの肩を掴み、カレンが必死に言い聞かせる。
「る、ルルーシュ!!あんたのその仕草はね、藤堂さんをっていうか、男をオオカミにするの!わかる!?・・・そのうち押し倒されて襲われちゃうわよ!!だから、無自覚でやるのは止めなさい!!いくら鈍感なあんたでもわかるでしょ!!・・・どうして“据え膳云々”はわかるくせに、こんなこともわかんないのよ!!!」
すっかり藤堂の言動に流されて、皇族やら女であることをきつく詰問されることなく済んでしまっていることに気付いて、ルルーシュは幹部達を隔てて藤堂を見る。
藤堂もその視線を感じて、押し留めようとする幹部達の腕に押されつつルルーシュに視線を合わせて微笑んだ。
「(そうか・・・わざと、場を混乱させて・・・。)」
藤堂の優しさに気付いて、ルルーシュは思わず泣きそうになる。
「ちょ、ルルーシュ!!泣いてるの!?」
カレンが慌てて頬に手をあててくる。そのひんやりとした手を自分の手でそっと押え、頬を擦りつけた。
「泣いてない。・・・でも、カレンの手、冷たくて気持ちいい・・・。」
ふんわりと笑んだその表情に、同性と知ったはずなのに、カレンは顔が熱くなるのを感じる。
「・・・ごめん、ルルーシュ、訂正する・・・男も女も危ないわ・・・。」
がっくりと肩を落とし、カレンが呟くのに、幹部達+四聖剣は同情的な視線を向けた。
「・・・親衛隊長の紅月君を始めとする女性陣は良いとしても・・・男共、ルルーシュに手を出したら、明日は迎えられないと思え・・・。」
地獄の底から聞こえるような、殺気交じりの藤堂の声に、幹部達+四聖剣の男性陣は震え上がった。
「「「「「は、はいぃぃぃ!!」」」」」
その後、盛大な結婚披露宴が日本式・ブリタニア式の両方で行われ、ルルーシュは今までで一番の笑顔を見せ、男達の理性を盛大にぐらつかせたことを追記しておく。(が、藤堂の一睨みですぐに正気に戻ったらしい・・・。)
おしまい
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・藤ルル♀
・藤堂さんは昔ルル達の身辺警護をしていました
・ルルは女の子ですが、男の子と偽ってました
・捏造満載
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
「ここに、合衆国日本の設立を宣言致します!」
凛とした神楽耶の声。その声と共に、日本中に歓声が沸いた。
そう、黒の騎士団はブリタニアに勝利した。ブリタニアは停戦条約と不可侵条約にサインをし、エリア11を黒の騎士団へと譲渡した。
それに便乗するかのように、各エリアで暴動が起きていて、間もなく、現地民への返還が決定されるだろうということだった。
エリア11での敗北で、ブリタニアの権威は墜ち、最早、エリアを抱えている場合ではなくなってしまった。というのが本音だということは誰もが知る事実だった。
「ようやく終わったな。」
歓声をあげる騎士団の団員達を眺め、藤堂は表情を緩めた。その隣には、黒衣仮面の男、ゼロの姿。
「・・・ああ。」
頷くその声には、様々な感情が込められていたことに気づいた藤堂は、そっと肩に手を置いた。
「もう、そろそろ、重荷を降ろしては?・・・充分だろう。君は頑張った。」
「・・・神楽耶様や桐原公に、合衆国の政治にも携わるように依頼されている。」
「・・・そうか、だが、その前に、俺の願いを聞くという約束を守ってもらおうかな?」
「・・・っ!」
ぴくん、と肩を揺らしたゼロに、藤堂は笑みを深めた。
「約束、忘れたとは言わせないぞ?」
「・・・・・・う。」
呻いたゼロの脳裏に浮かんだのは、藤堂に正体を知られた日のこと。
― そうか、君がゼロか・・・どうりで懐かしい気が感じられると思ったら。
― お久しぶりです・・・藤堂さん。
― ああ。7年ぶりか・・・綺麗になったな。
― か、からかわないで下さい!!
― からかってなどいないさ。・・・髪、切ってしまったんだな。もったいない。あんなに綺麗な黒髪だったのに。
― ・・・偽りの経歴を作らねば生きていけませんでしたから。
― ・・・そうか。・・・なぁ、ルルーシュ君。君に伝えたいことがある。全てが終わったら、俺の願いを聞いてくれないか?
― ・・・・・・・・・わかり、ました。
7年前、藤堂に憧れていたルルーシュ。それは初恋とも言えた。だが、自分のような子供を藤堂が相手をするわけがないと、心の内に秘めてきた想い。その想いが溢れ出てしまいそうで、ルルーシュは苦しかった。
だが、その会話が為された直後、藤堂がいきなり告白をしてきて、猛アタックを始めてくれた時には、呆然としてしまった。
全てが終わったらではなかったのかと聞いたら、それはもう良い笑顔で藤堂は答えてくれた。曰く“その願いの為に、今から君を堕とそうと思っているんだが。”と。
「・・・こんなに積極的とはな。」
ゼロモードのルルーシュは、はぁ、と溜め息をつきつつ、藤堂の手を肩から外させる。
「・・・ゼロの時は、あまり構うなと言ったと思ったが。」
「そうだったな。・・・だが、その仮面を外したら、思う存分構っても良いのだろう?」
「・・・思う存分って・・・。」
思わず絶句したルルーシュに、藤堂はにやりと笑って見せた。
「楽しみにしている。・・・確か、明日は俺も君も休みだったはずだな?」
ポン、と肩を叩き、藤堂はその場を立ち去る。
ルルーシュは仮面を被っていなければ、しゃがみこんでいただろうと思いながら、バクバクと跳ね上がるように鼓動を打つ心臓を押さえた。
「・・・あの笑顔、心臓に悪い・・・。」
呟いたルルーシュ=ゼロに頷いた者達がいた。言わずもがな、黒の騎士団の幹部達+四聖剣である。
珍しい組み合わせに、こっそりと覗いていたのだが、話している内容のほとんどが意味不明だった。が、とにかく、藤堂がゼロに何か願い事をしたくて、それを明日言うのだということだけはわかった。
「しかし、藤堂さんは何をゼロに願うんだろう?」
「・・・っつーか、なんか、やたらと仲良くなかったか?」
首を傾げる扇に、口元を引き攣らせる玉城。四聖剣もそれは思っていたことなので、うんうんと頷く。
「皆さんは聞いてないんですか?」
尋ねるカレンに、四聖剣は揃って頷く。
「残念ながら。」
「まったく。」
「聞いてないな。」
「初耳だよ~・・・。」
口々に言うと、もう一度ゼロの方を見る。
「・・・第一、あんなに仲が良かったことすら、知らなかったんだぜ?」
卜部が言うと、それは確かに、と幹部全員が頷く。こんなにも長く一緒にいるのに、まったくそんな素振りすらなかったのだ。ゼロの言うとおり、“ゼロ”である時は、構わないようにしていたのだろうが。
「と、すればだ。・・・中佐は“ゼロ”の正体を知ってるってことになるんだろうなぁ・・・。」
嘆息し、卜部は恨めしそうに呟いた。
「俺らにも黙ってるなんて・・・ひでぇよ、中佐ぁ・・・。」
「言っても始まらん。・・・明日にはわかるだろうて。」
嘆く卜部をなだめつつ、仙波が言う。
「せ、仙波さん!?」
普段なら止めそうな仙波が率先してそれを言うということは・・・。
「・・・覗くつもりですか?」
扇がおそるおそる訊ねると、仙波は力強く頷いた。
「無論。」
「・・・うわー・・・仙波さんが先頭切るなんて、珍しい。」
「中佐が何を望んでおられるのか、気になるからな・・・。あんな笑顔は終ぞ見たことが無い。」
流石の仙波も、藤堂のあの笑顔には気になることがあったらしい。
「俺もー・・・結構長く一緒にいるのに、あんな笑顔見たこと無いですよ~。」
「俺もだな。・・・千葉は?」
「あいにく、私も見たことがありません。」
それほどに嬉しそうで、そして、何かを企んでいるようなあの笑顔。
「な~んか、ゼロが食べられちゃいそうって思ったのって、私だけかしら?」
ボソ、と呟いた井上に、その場の全員が固まる。
― いやいやいや・・・井上(さん)、それはマスイ、かなりマズイ。
全員の思考が井上につっこむが、声に出すものはいない。それは、一瞬でもありそうと思ってしまったからだ。
「・・・あは・・・私、何変なこと言ってるのかしら。忘れてねぇ?」
にこり、と笑う井上に、から笑いを返しつつ、本当にそうなったら、どうしよう!?と思った幹部達+四聖剣だった。
翌日、合衆国日本の中枢が据えられた政庁より、心なしかウキウキとしているように見える藤堂が、私服に身を包んで出てくる。バッチリとめかしこんでいる様子を見て、事情を知らない衛兵達は揃って首を傾げ、その後を追う幹部+四聖剣を見て、更に首を傾げた。
「あの~・・・本当に良いんでしょうか・・・。」
今更ながらに二の足を踏むのは扇。いつも煮え切らない態度だが、今回もまた同様だった。
「腹をくくれ、扇。・・・それに、滅多にないチャンスじゃないか。」
南が苦笑する。そう、ようやく“ゼロ”の正体を知れるのだ。頑ななまでに人前で仮面を外そうとしなかった“彼”が、今回限りはその仮面を外しているかもしれないのだ。
「・・・確かに、話の流れでは、そんな感じだったけど・・・でも、俺達まで見ていいものなのか?あれは、藤堂さんと・・・。」
「でもよー、もう、日本を取り戻したんだしさ・・・良いじゃんか、少しくらい。」
玉城が口を尖らせる。
「そうだよな・・・もう、いい加減、俺達のことも信頼して欲しいしな。」
杉山までもが同意するので、扇は嘆息しつつも頷いた。
「わかった・・・でも、後で、ちゃんと謝ろう。黙ったままじゃ、本当の信頼なんて一生得られないぞ。」
扇の言葉に頷き、全員は藤堂の後を気付かれないように、距離を置いてついて行く。
そんな幹部達の動きに、藤堂はしっかりと気付いていた。
「(・・・もう少し尾行術を叩きこんでおくべきだったか?これでは、ルルーシュ君に気づかれるぞ?)」
気配に聡いルルーシュが、こんな下手な尾行に気づかないわけがない。悪くすれば、待ち合わせ場所から遁走される恐れもある。
「・・・そうなったらなったで、捕まえれば良いだけの話か。」
くつり、と笑う。ルルーシュの体力の無さは昔からだった。昔は“少女”らしく、おしとやかなイメージで、スザクに散々振り回されては、藤堂の道場で一休みしていた記憶がある。
が、長じても体力が無いということは、元々の体質だったのだろう。よくあれで、男として偽装していられたと感心する。
それに、確かに背の高さはあるが、肉付きは女性らしい柔らかさがあることを知っている。見ただけで、バレることは無いだろうが、全く触れ合わないということも無いだろうに。
「・・・ああ、もしかして“ゼロ”の時も着ている特殊スーツをいつも・・・?」
肩や胸の辺りを硬くするためのスーツを着て“ゼロ”を演じていることは、本人から聞いたことだが、まさか、学園生活でもそれを利用しているのだろうか?
「・・・毎日それでは、成長するモノもしないだろうに・・・。」
ぼそぼそと呟く藤堂は、かなり怖い。眉間にしわを寄せて歩いているので、通行人が飛ぶように避けて、遠巻きに“奇跡の藤堂”を見つめている。まるで、“モーセの奇跡”のようである。
待ち合わせ場所は、旧シンジュクゲットーの新宿御苑。
以前はEUや日本、様々な様式を兼ね備えた庭園があることで有名な場所だったが、今では見る影も無い。・・・が、その一部が残る旧新宿門衛所前で、ルルーシュと待ち合わせた。それは、今までゆっくりと話せなかった分、たっぷりと会話を楽しみたかったからだ。
旧シンジュクゲットーには滅多に人は来ない。それは恐らく、復興が完全に済むまでは続くだろう。誰だって、嫌な思い出がある場所には近づきたくないものだ。
気配が自分と、尾行している幹部達+四聖剣のみとなって、藤堂は待ち合わせ場所に到着した。待ち合わせの時間よりも随分早い。ルルーシュも時間より早く来るタイプだが、その前にやるべきことをしておかねばならない。
「“検索”と“消毒”の必要は・・・無い、か?」
辺りを見回し、藤堂は呟く。職業柄良く使っていた隠語で、“検索”とは不審者や障害物の有無を調べること、そして“消毒”とはその排除を済ませることを指す。こう言っておけば、四聖剣が気付いてもう少し気配を消すようにするだろうと思ったのだ。
実際、幹部達が身を潜めているだろう場所からの気配が薄くなる。思い通りに動く四聖剣に満足しつつ、藤堂は時計を確認する。
「・・・そろそろ・・・か?」
藤堂の呟きと同時に、コツン、という足音が聞こえる。そちらを向いた藤堂は一瞬、声を失った。
「お早いですね、藤堂さん。」
二コリ、と笑ったその姿は、(実際お姫様なのだが)どこぞのお姫様のようだった。真白のつばの広い帽子を被り、薄い藤色のワンピースが、その瞳の色に良く似合っている。
「・・・藤堂さん?」
コトリ、と首を傾げられ、藤堂はハッとする。
「・・・いや、すまん、君があまりにも綺麗だったから、見惚れてしまった。」
「また、そうやってからかって。」
ムッと頬を軽く膨らませるのも可愛らしい。藤堂は口元が緩むのを自覚しつつ、そっと以前より随分と伸びた髪に手を伸ばす。
「・・・髪は?」
「貴方にもったいないと言われて、それから少しずつ伸ばしたんです。・・・まだ、これだけしか伸びてないんですけど。」
「気付かなかった・・・。」
「当たり前です。編み込んで隠してたんですから。」
クス、と笑うルルーシュに、またも藤堂は見惚れる。
「・・・ああ、本当に、綺麗だ。」
フ、と笑んだ藤堂に、今度はルルーシュが頬を染めた。
「きょ、今日は、私服、なんですね?」
ごまかすように言葉を紡ぐルルーシュを愛しく思いながら、藤堂は肩を竦める。
「せっかくのデートに軍服も無いだろう?・・・それに、君に釣り合わない。」
「・・・藤堂さんって、昔からこんなに気障でした?」
恨めしそうに見上げるルルーシュに、藤堂はノックアウト寸前になりながらも、笑顔をうかべる。
「さて、どうだったかな。・・・出会った頃はそれどころじゃなかっただろうしな。」
「・・・ちょっと前までだって、それどころじゃなかった気がしますけど。」
「でも、据え膳食わぬは男の恥とも言うしな。」
「すえ・・・っ!?」
ブリタニア人のルルーシュにも通じたらしいとわかると、藤堂はにやりと笑う。
「今なら、据え膳だろう?・・・あの時はまだ子供だったから、手を出したら犯罪だったが。」
「犯罪って・・・。」
がっくりと肩を落とすルルーシュに、藤堂はクツクツと笑う。
「俺を好いてくれているというのは、知っていた。・・・ナナリー君に漏らしたのはマズかったな。彼女も俺には懐いてくれていたのだから、俺にも情報が回ってくるのは必然だと思うが。」
「・・・ナナリーが言ったんですか・・・。」
「ああ。お姉様をよろしく、とな。」
「うぅ・・・。言わないでって言ったのに。」
最愛の実妹から情報が漏洩していたと知り、ルルーシュは呻いた。
「まあ、ナナリー君の気持ちも察してやらねば。・・・あの子なりに、君のことを心配しているんだ。」
「それはまあ、そうですけど。」
トン、と壁にもたれ、ルルーシュは俯く。
「服が汚れるぞ。」
「いいんです。どうせ、もう着ませんから。」
そう言うルルーシュに、藤堂は眉を顰めた。
「・・・いつまで象徴・・・“ゼロ”でいるつもりなんだ?」
「・・・必要とされなくなるまで。それが、私に課せられた義務でしょう?」
スッと藤堂を見上げたルルーシュの表情は、すでに、その言葉は決定事項だと言っている。
「では、俺はいつまで待てば良いのかな?・・・君が必要とされなくなるまでなどと言っていたら、爺さんになってしまう。」
「待つって・・・?」
首を傾げるルルーシュの頬を、藤堂はそっと撫でた。
「・・・願いを、聞いてくれるのだろう?」
「それは・・・もちろん。」
ルルーシュの不安げに揺れる瞳をじっと見据えて、藤堂は意を決した。
「・・・俺と結婚して欲しい。」
「・・・え?」
呆然とした表情と、かすれた声が返ってくる。ルルーシュが相当驚いているのだと気付き、藤堂は苦笑した。
「・・・俺の願いが何か、考えてなかったのか?・・・ここまで、猛アタックしていたというのに。」
ほぼ同時期、草むらに隠れていた幹部達+四聖剣は、必死に自分の口を塞いでいた。カレンに至っては“ゼロ”らしき人物が現れてすぐに叫びだしそうになって、扇が開いている方の手でずっと口を塞いでいる。
息苦しくなってきたのか、カレンがトントンと背を叩くので、扇はそっと手を外す。
「ふはっ・・・はぁ、はぁ・・・。く、苦しかった。」
「す、すまない、カレン。・・・でも、いきなり叫びそうになったものだから・・・。」
「だ、だって、やっぱりあいつが“ゼロ”だったんだって思って・・・っていうか、女装!?っていうか、結婚!?」
カレンは取り留めも無く呟く。その声は潜められているので、扇も注意することは無い。
「・・・知り合いなのか?」
「知り合いも何も、アッシュフォード学園の生徒会の副会長で・・・一度疑った時は否定したのに・・・っていうか、あのカッコ・・・男女逆転祭りの時はあんなに嫌がってたのに・・・。」
「お、女の子じゃないのか?・・・お姉様がどうとか言ってたぞ?」
「男・・・だと思ってたんですけど・・・。」
カレンが首を傾げ、そして、藤堂とルルーシュの方を見る。未だにフリーズするルルーシュを、藤堂は困ったように見つめている。
「女にしか、見えないですよね?・・・藤堂さんは何だか知ってるみたいだけど、どういうことかしら・・・。」
カレンのそんな呟きが聞こえたのか、聞こえてないのか、藤堂が口を開いた。
「・・・偽りの経歴を捨てて、俺の元で生きて欲しい。・・・君は充分に頑張った。父であるブリタニア皇帝に逆らって、異母兄姉達と戦い、そして、日本を勝ち取ってくれた。・・・もう、女としての幸せを得ても良いんじゃないだろうか?」
「・・・ッ、藤堂、さん・・・。」
「ナナリー君のことは気にしなくて良い。共に暮らせばいいのだから。」
「・・・待って下さい!私は、ブリタニアの!」
「君が、ブリタニアの皇女であることなんて、関係ない。・・・本当の意味で、ブリタニアの名を捨ててしまえ。“ルルーシュ・ヴィ・藤堂”これからは、この名が君の本当の名になる。」
「でもっ!・・・それでは、藤堂さんが!!」
「俺は君さえいてくれれば良い。周りの言うことなど、気にするものか。」
「・・・っ。」
きっぱりと言った藤堂に、ルルーシュは黙り込んでしまう。
「願いを、叶えてくれないか?・・・ルルーシュ、愛してる。」
甘さを含んだその言葉に、ルルーシュの瞳が潤む。
どれ程にか望んだだろう。愛に飢えていたルルーシュに惜しみなく愛を与え、生きていることが実感できなかったルルーシュに生きることの希望を見せた、その人が今、自分を求めてくれている。
「私も・・・愛しています。・・・でも、神楽耶や桐原公がなんて言うか・・・。」
「お二人にはすでに許可を頂いている。」
「!?」
「桐原公は結婚式の準備もしてくれるそうだぞ?」
「・・・・・・あンの、タヌキじじぃ・・・。」
低い声で呟くルルーシュに、藤堂は苦笑する。
「女の子がそんな言葉を使うものじゃない。・・・さて、これで問題は無くなったと思うが?」
「・・・でも、ブリタニアが・・・。」
「それこそ、問題ではないだろう?君はすでに皇位継承権を放棄しているし、公的文書では、死亡扱いだ。」
「じゃあ・・・後は、アッシュフォードにも話さないといけませんね・・・ミレイ、怒るだろうなぁ・・・。」
観念したルルーシュは、はぁ、と溜め息をつく。
「なぜ怒られるんだ?」
首を傾げる藤堂に、ルルーシュは苦笑いをうかべる。
「・・・相談も無くここまで進めてしまってって・・・きっと怒ると思うんです。イベントが大好きですから。」
「・・・なら、日本式を桐原公に、ブリタニア式をアッシュフォードにお願いしたらどうだろう?」
「それなら・・・でも、良いのでしょうか・・・。」
「ブリタニア人の友人もいるのだろう?良いじゃないか、こんなことは2度も無いのだから。」
藤堂の笑顔につられる様に、ルルーシュも幸せそうに微笑んで、頷く。
「そうですね。・・・で、今、気付いたんですけれど・・・アレはどういうことでしょうか?」
草むらを指差し、にっこりとルルーシュは笑った。
妙に笑顔に迫力がある。藤堂は背中に汗を流しつつ、視線をさまよわせた。
「藤堂さん程の方が、気付かないわけありませんよね?」
「い、いや・・・君とのデートが嬉しかったので、つい、油断を・・・。」
「下手な嘘はついちゃ駄目です、藤堂さん。嘘をつくなら、もっと本当らしく言わなくては、騙されてあげられません。」
そう、ルルーシュから言われてしまえば、藤堂も言い訳ができずに肩を落とした。
「いや・・・良い機会かと思って。」
藤堂はそう言って、ちょいちょい、と草むらに隠れている幹部達+四聖剣を手招いた。
おずおずと出てくる幹部達+四聖剣に、ルルーシュは呆れたような視線を向けた。
「・・・雁首揃えて、一体お前達は、何をやってるんだ?」
絶世の美女に呆れた視線を向けられて、幹部達+四聖剣はぐっと詰まってしまう。
「それを言うなら、あんただって、なにやってるのよ・・・もう、何を信じて良いかわかんないわ。」
そんな中、負けじとカレンが言い返したので、ルルーシュはクス、と笑った。
「私自身が嘘で塗り固められた存在だ。だから“ゼロ”なんじゃないか。本当のことは何一つ無い“ゼロ”・・・ブリタニアに、父に捨てられてから・・・私は・・・。」
「ルルーシュ。」
そっと藤堂がルルーシュの肩に手を回す。その手の暖かさに、ルルーシュは目を細め、ふんわりと笑む。
「藤堂さんはいつから・・・。」
その中睦まじい様子に表情を緩めて扇が訊ねると、藤堂は肩を竦めた。
「彼女とは日本とブリタニアが開戦する前からの知り合いでな・・・表向き、留学生として枢木神社に預けられていた彼女とその妹の身辺警護をしていたのをきっかけに仲良くなった。・・・彼女が“ゼロ”と知ったのは、半年前くらいになるか・・・作戦の資料を届けに行った時に、たまたまC.C.が出て来て、中に引き入れられたと思ったら、同様に驚いていたルルーシュから仮面をはぎ取ったんだ。」
「まったく、C.C.も余計な真似を。」
「君にとっては余計だったかもしれないが、美しく成長したその姿を見れて、俺はC.C.の気まぐれに感謝しているんだ。」
くつりと笑う藤堂に、ルルーシュは顔を真っ赤に染める。
「だからっ!・・・わかってて、からかわないで下さい!!」
「くっくっ・・・そうやっていちいち反応するのが可愛いからからかうんじゃないか。」
「~~~っっっ!!!!」
すっかりルルーシュで遊んでいる藤堂を見て、長年連れ添っている四聖剣が、こんな人だったのか?と一斉に首を傾げ、幹部達も呆然とその様子を見つめる。
「っつーかよ、本当に、お前がゼロなのか?」
玉城が突如、まともな発言をしたので、ルルーシュは素に戻って玉城を凝視した。
「・・・玉城がまともなこと言ってる。」
カレンも同じことを思っていたらしく、そう呟いたので、ルルーシュはうんうんと頷いてしまう。
「し、失礼だな!!・・・ってか、答えろっての!!」
「さっきも言ったが、私が“ゼロ”だ。・・・これで良いか?」
「・・・おまえ、女、なんだな?」
「そうだ。」
「・・・・・・ブリタニアの皇女って・・・マジか?」
「ああ、マジだ。・・・藤堂さんもさっき言っていたが、皇位継承権は無いし、公的文書では死亡扱いになっている。が、ブリタニアの皇族として生まれたのは間違いない。」
「・・・で、何で、藤堂さんと俺らと話し方が違うんだよ。」
ぴたり、とルルーシュが動きを止める。幹部達や四聖剣もそういえば、と呟き、1人納得顔の藤堂がルルーシュの頭を撫でた。
「お前達と話すと“ゼロモード”になってしまうんだろう。その姿でしか対したことが無いのだから。逆に俺とは以前からの知り合いで、女性であることもブリタニアの皇族であることも知っていたから、こうやって素の自分をさらけ出してくれているにすぎない。他意は無いはずだ。この子はそんなに器用じゃない。」
藤堂の説明に納得した幹部達は、大人しく藤堂に頭を撫でられているルルーシュに、視線を向ける。
「・・・どうして、そんなに私のことを把握してるんです、貴方は・・・。」
視線が集まるのを感じながら、ルルーシュは恨めしげに藤堂を見上げる。
「俺が君を愛しているから、だろう。・・・それよりも、どうしてそう、君は無自覚に俺を刺激するんだろうか?いくら俺でも自分の限界に挑戦するのが1日に何度もとなると我慢しきれなくなるぞ。」
「・・・?」
ルルーシュは藤堂の言った意味を捉えかねて、首を傾げる。その様子に、藤堂はフ、と息をつく。
「だから、そういう反応は止せ。・・・襲うぞ。」
「「「「「とっ・・・藤堂さん!?」」」」」
幹部達+四聖剣が慌てて藤堂とルルーシュを引き離す。呆然とするルルーシュの肩を掴み、カレンが必死に言い聞かせる。
「る、ルルーシュ!!あんたのその仕草はね、藤堂さんをっていうか、男をオオカミにするの!わかる!?・・・そのうち押し倒されて襲われちゃうわよ!!だから、無自覚でやるのは止めなさい!!いくら鈍感なあんたでもわかるでしょ!!・・・どうして“据え膳云々”はわかるくせに、こんなこともわかんないのよ!!!」
すっかり藤堂の言動に流されて、皇族やら女であることをきつく詰問されることなく済んでしまっていることに気付いて、ルルーシュは幹部達を隔てて藤堂を見る。
藤堂もその視線を感じて、押し留めようとする幹部達の腕に押されつつルルーシュに視線を合わせて微笑んだ。
「(そうか・・・わざと、場を混乱させて・・・。)」
藤堂の優しさに気付いて、ルルーシュは思わず泣きそうになる。
「ちょ、ルルーシュ!!泣いてるの!?」
カレンが慌てて頬に手をあててくる。そのひんやりとした手を自分の手でそっと押え、頬を擦りつけた。
「泣いてない。・・・でも、カレンの手、冷たくて気持ちいい・・・。」
ふんわりと笑んだその表情に、同性と知ったはずなのに、カレンは顔が熱くなるのを感じる。
「・・・ごめん、ルルーシュ、訂正する・・・男も女も危ないわ・・・。」
がっくりと肩を落とし、カレンが呟くのに、幹部達+四聖剣は同情的な視線を向けた。
「・・・親衛隊長の紅月君を始めとする女性陣は良いとしても・・・男共、ルルーシュに手を出したら、明日は迎えられないと思え・・・。」
地獄の底から聞こえるような、殺気交じりの藤堂の声に、幹部達+四聖剣の男性陣は震え上がった。
「「「「「は、はいぃぃぃ!!」」」」」
その後、盛大な結婚披露宴が日本式・ブリタニア式の両方で行われ、ルルーシュは今までで一番の笑顔を見せ、男達の理性を盛大にぐらつかせたことを追記しておく。(が、藤堂の一睨みですぐに正気に戻ったらしい・・・。)
おしまい
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