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Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)

このサイトは、コードギアス・NARUTO・銀魂の二次創作サイトです。原作者様とは一切関係ありません。各ページの注意事項をよく読んでから閲覧してください。

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注意
・藤ルル
・白主従に厳しい
・騎士団はすでにルル=ゼロは知っています
・藤ルルは出来上がってかなり経つ感じで。
・捏造満載w

以上、同意できる方のみ↓へ・・・








 行政特区の宣言がなされてからというもの、ルルーシュはイライラとしどおしだった。学園祭は失敗に終わるし、もう少しでマスコミに囲まれるところだったし、ナナリーは体調を崩してしまったしで、本当に、踏んだり蹴ったりだったのだ。

 だから、黒の騎士団でも、不機嫌オーラは放出したまま。ということで、必然的に近くにいる幹部達がその犠牲になるわけで・・・。

「あの・・・ゼロ。」

「なんだ?」

 扇は声をかけたことを、その一瞬で後悔した。イライラとしているのはわかってはいたが、それが声にまで出ている。無機質な合成音と表情の無い仮面。それが余計にそれを恐ろしく思わせる。

 ごめんなさい、と謝りたくなったが、それはそれで、用が無いのに呼ぶなと怒られそうなので、腹をくくる。

「いや・・・行政特区のこと、なんだけど・・・。」

「それが、どうした?」

 怖い。怖すぎる。震え上がった扇は二の句を告げずに固まってしまう。

「・・・ゼロ、イライラするのはわかる。だが、騎士団のメンバーにまであたるのはいかがなものかと思うが。」

 見かねた藤堂が口を出す。幹部達は助かったとばかりに藤堂を見つめる。

「・・・ああ、あたるつもりはなかったんだが・・・聞きたくない単語を言われたから、つい、な。」

 すまない、とゼロが謝れば、扇もゆるゆると首を振る。

「いや、こっちこそ・・・。でも、どうするんだ?情勢としては、不参加は不利だと思うんだけど。」

「・・・まあ、な。だからこうして大人しくしているだろう?・・・だが、この行政特区が長続きするとは思えない。参加しても一緒に沈没ということになりかねない。」

 ゼロが言えば、幹部達はしんとする。少なからず、ユーフェミアの言葉は、日本人にとって凄まじい影響だったのだ。

「・・・この中にも、少なからず希望を持った者もいるだろう?・・・だから言わずにいたんだが・・・この政策は恐らくユーフェミアの独断。ブリタニア本国は一切関与しないと思った方が良い。コーネリアも協力するかどうか・・・まあ、妹を一番大切にしているからな、渋々でも協力をするんだろうが。」

 はぁ、と溜め息をつく。

「あ~・・・つまり、ゼロは、この特区に先を見れないと思っているってことか?」

 卜部が問えば、ゼロははっきりと頷く。

「ああ。私はな。・・・だが、特区に参加したいと思っている者達を無理やり止めるつもりはない。確かに、一時的にでも日本という名を取り戻せるこの特区は魅力的だろう。」

 突き放すように言えば、幹部達がざわざわとざわめく。

「・・・ゼロ、それって。」

「騎士団を解散しても良いという事だ。・・・私が先を見れないからといって、お前達にまでそれを強制するつもりはない。」

「ちょっと、ルルーシュ!!」

 立ち上がったのはカレン。

 幹部達にはすでに素性が知れている。だから、この場で、カレンが噛みついてくることはわかっていた。いつもはゼロとその親衛隊長として振舞っているカレンだが、素性が知れて以来は、幹部達だけになると、学園にいる時のように容赦のない言葉を浴びせてくる。 

「なんだ?」

「そんな突き放したもの言いをしなくてもいいでしょう!?・・・どうして、いつも、あんたはそうなの・・・。」

 だんだん声が小さくなるカレンに、ゼロは仮面を外す。

「・・・カレン。」

「ルルーシュ君は、皆のためを思って言ったのだろう?」

 気まずそうにするルルーシュの肩を叩き、藤堂が苦笑する。

「ここで理由をつけて引き止めるのは簡単だ。だが、その選択を後悔する時が来るかもしれない。・・・騎士団は、特区が潰れた後にでも再結成できる・・・だろう。」

 呟くようにカレンに告げるルルーシュ。だが、実際、再結成できる可能性は低い。それに気づいた藤堂は眉を顰める。

「ルルーシュ君・・・はっきり言って欲しい。どこを見て、先が無いと思うんだ?」

 ルルーシュの薄い肩を掴み、顔を覗き込む。

「・・・それ、は・・・あの・・・。」

 藤堂の真剣な視線に、ルルーシュは一瞬見惚れて、頬を赤らめる。だが、すぐに、表情を取り繕うと、幹部達に視線を向ける。

「・・・ブリタニア側から見た意見で構わないだろうか?」

 確認すれば、おずおずと頷く幹部達。

「・・・まず、1つ目は、エリアはここだけではない、ということ。だから、他のエリアにも、同等かそれ以上の優遇策を提案しなければ、不満が噴き出すだろう。・・・2つ目は、ユーフェミアの皇位継承権だ。恐らく、総督でもないのに無理を通したことで、返還または格下げということになっているはず。それでは特区で問題が起きた際に、本国へ助力を求めるための交渉をするカードとして使えない。だから、一度問題が起これば、特区はすぐに瓦解する。次に3つめ、これが一番怖い。・・・エリア11には、どれほどの日本人がいる?各地にいる者達がシズオカゲットーに集結してみろ、相当の数になるに違いない。そうしたら、どうしても入れない者も出てくる。入れなかった日本人はどうなる?特区に不満を持つブリタニア人に余計に酷い目にあわされるのではないだろうか。虐げられた日本人と守られた日本人。その間にも亀裂が生じる。その先は想像もたやすいだろう。・・・ゆえに、私は特区が長続きしないと思う。」

 一気に言って、ルルーシュは幹部達を見る。そんなことはない、と反論されるだろうと思って見回すが、皆、ポカンとしたまま、ルルーシュを見つめている。藤堂でさえ、呆然としている風なのに、ルルーシュは首を傾げた。
「・・・?」

 ルルーシュは失念していた。ここにいる者達全員が、政治には疎いということを。だから、今、ルルーシュが言ったことを全く念頭に置かずに、ただ、魅力的なユーフェミアの言葉に傾いてしまっていただけなのだということを。

「・・・それは・・・ユーフェミア皇女は、わかっているのだろうか?」

 すす、と手をあげたのは、仙波。やはり年の功か、我に返るのが早い。

「・・・はぁ、わかっているなら、こんな提案はしないはずだ。・・・彼女はコーネリアに守られ過ぎた。政治にも疎い。目の前にいる人を救いたい、自分の力でできることをしたい、と思ってのことだろうが、これでは“私と一緒に心中してくれ”と言っているようなものだ。・・・まあ、コーネリアや、あわよくばシュナイゼルの協力を得られるのなら、少しは話が違ってくるのだが。」

「誰だって我が身が可愛い。・・・沈没船に一緒に乗ってやることなんかしないさ。救命艇くらいは用意してくれるだろうがな。・・・まぁ、全員が乗れるとは思えないが。」

 ルルーシュの希望的観測に遠まわしな言い方でダメ出しをしたのはC.C.だ。完全に呆れた様子のそれは、幹部達にも理解しやすい例えだった。

「・・・つまり、この特区が失敗したら、俺達は完全に・・・。」

「まあ、失敗したところで、さして、ブリタニアの痛手にはならないだろうな。」

 扇の呟きに、ふっとC.C.は笑って、ルルーシュを見る。

「そうだろう?・・・だって、失敗しても痛手にならないから、あの腹黒皇子や皇帝が黙っているんだ。」

「・・・だろうな。これで特区が失敗した時、日本はもう、一国として立ち上がれなくなる。独立だなんて言える状況ではなくなる。経済的にも国力的にも完全に息の根を止められてしまうからな。・・・むしろ、シュナイゼルや皇帝はそれを望んでいるようにも思う。ユーフェミアという犠牲1つで、日本が完全に手に入る。今、ブリタニアに徹底抗戦ができるほどの資源を持っているエリアはここしかないからな。日本が沈黙すれば、EUや中華連邦に密かに流れているサクラダイトの流通元が断たれたことになり、ブリタニアにとってはこれ以上の結果は無い。」

 ルルーシュの言葉はまさに寝耳に水。考えもしなかった特区日本の行く末。それは絶望的なものだ。

「・・・ルルーシュ君。」

「藤堂さん・・・俺は、未来が見えるわけじゃありません。だから・・・だから。」

 困ったように名を呼ばれ、ルルーシュは言い訳をするようにして、藤堂にしがみついた。

「皆の希望を奪いたくはなかったのだろう?戦わずに日本を取り戻せるのなら、それが一番良い。そう思ったから、君は。」

「・・・本当は、黙っていようって・・・でも、それは、騎士団の皆を見捨てることにもなるって気付いて。それは、ブリタニアのやり方と何ら変わりは無い・・・。」

 苦しそうに言うルルーシュに、幹部達はじん、ときた。ここまで心配してくれているとは思ってもいなかったからだ。やっぱり、ゼロは日本人の味方だった。奇跡を起こす男、ゼロについていけば間違いなしと思えた。

 だからこそ。

「ユーフェミアの言葉は魅力的だ。でも・・・今、ゼロの言葉を聞いて目が覚めた。俺達はやっぱり、君についていく!!・・・そうだろう、皆!」

 扇が問えば、幹部達全員が頷く。

「よっしゃ、そうと決まれば、一般隊員達にも説明してやんなきゃな!!」

 玉城がパシン、と手を打ち合わせると、そうだそうだ、と言って、幹部達が散らばっていく。ラウンジに残されたのは、藤堂とルルーシュとC.C.。

「・・・君の思いはちゃんと伝わったようだ。」

 藤堂がルルーシュに微笑む。こくん、と頷いて、ルルーシュも微笑む。

「はい。・・・よかった。・・・後は・・・。」

「ああ。・・・忠告しに行くか。沈没船に乗り込む日本人を止めることは騎士団の役目とも言える。・・・特区が失敗したら、ユーフェミアは責任を取らねばならない。知らなかった、わからなかったでは済まされないのだ。」

「ええ。そうです。・・・リセットできる問題でもない。失敗したら、それまで。ユフィはそれに気付いていない。」

 異母妹でもあるユーフェミアを無意識に愛称で呼ぶルルーシュに、藤堂はハッとする。

「そうか、彼女と交流が?」

「・・・幼い頃のことです。・・・俺はゼロ。奇跡を起こす男。貴方に責任をとれと言ったからには、俺自身も、日本人に奇跡を見せた責任を果たさなければ。」

 そう言って、ルルーシュは藤堂に会心の笑みを見せる。吹っ切れたのだ。騎士団が味方でいてくれると言ってくれた以上、迷う必要などどこにもなかった。

「・・・俺は、君が倒れないように支える。そのために、ここにいる。・・・それだけは忘れないでくれ。」

 藤堂がルルーシュの手を握り、真面目くさって言うと、ぼんっ、と顔を赤くして、ルルーシュはこくりと頷いた。

「・・・何なんだ、この甘ったるい空気は。お前ら、少しは周りを見てからいちゃつけ。」

 眉を顰めたC.C.に言われて、改めて2人きりではないと思いだしたルルーシュと藤堂はバッと離れる。

「・・・い、行こう。ルルーシュ君。」

「はい。・・・教えてやりましょう。」





 そして、政庁にゼロと黒の騎士団がやってくる。

 表向きは行政特区の件についての話し合い。これは元より、ユーフェミアが騎士団にメディアを通して訴えていたために、あっさりと許可されたのだ。

 騎士団の迎え入れたのは、起案者であるユーフェミアとその騎士スザク。総督のコーネリア、ギルフォード、そして、たまたまエリア11に来ていたシュナイゼル。

「ほう、これだけの方々が我等との交渉の窓口になっていただけるとは。」

 仮面の男、ゼロがそう告げる。スザクが一瞬身構えるが、それを見咎めたギルフォードに制される。

「・・・来て、くださったのですね。ゼロ。」

 ユーフェミアが笑みを見せる。それは、ブリタニア側で、ユーフェミアだけがゼロの正体を知っているからに他ならない。

「ユーフェミア皇女殿下。私は貴女にいくつかの質問をしなければならない。なぜなら、この特区の行く末に日本の未来がかかっているからだ。」

 真っ当な言い分なために、ブリタニア側から不満の声は出なかった。スザクだけは訝しんだ表情をうかべるが、皆の手前、行動を起こすことはなかった。

「・・・それでは、伺いましょう。」

 ユーフェミアはきゅっと口を結び、姿勢を正した。

 それを見たゼロは、ちらりと扇を見る。今回のメンバーは黒の騎士団の幹部の中でも特に落ち着きのある者で編成されている。藤堂を筆頭とし、仙波、卜部、扇、南、そして、親衛隊の代表として、カレン。

 日本人である彼等からの言葉の方が良いという判断で、質問や折衝はすべて扇達に任せることにしたのだ。もちろん、シナリオはルルーシュが考えたものなのだが。

「では、俺から。」

 そう言って、扇は懐から封書を取り出し、その中から紙を1枚引き抜き、南に渡す。

「・・・一つ、この政策はこのエリアにおいてのみの特別政策と思われるが、これについて、他のエリアからの指摘があった場合、どう対処されるおつもりか。」

 そのまま読み上げた扇は、ユーフェミアをまっすぐに見つめる。

 とつぜん、そんな質問をされたユーフェミアは目を丸くして、呆然となる。対して、渋い顔をしたのは姉のコーネリア。ぴくり、と眉を動かしたのはシュナイゼルだ。

「・・・二つ、皇女殿下におかれては、この政策においての起案者であり、責任者でもある。万が一、この特区で問題が起こった際に、本国の協力は得られるものと考えても良いか。」

 南が続けて問う。その視線は、シュナイゼルに向けられている。現在、本国の意思を伝えられる立場にいるのは、彼だからだ。

「・・・ふむ。道理だね。・・・まあ、条件付きではあるが考えよう。」

 答えたシュナイゼルは得体の知れぬ笑みをうかべる。

「三つ、全ての日本人の特区への参加を認めて下さるか。」

 南から封書を受取った仙波が問う。それには、我にかえったユーフェミアが力強く頷く。

「も、もちろんです!」

「では、特区とされるシズオカゲットーに入りきることができなかった日本人については、どうされるおつもりか。・・・まさか、ひしめきあって暮らせとは申されまいな?」

 重ねて問う仙波に、ユーフェミアは言葉を詰まらせる。

「それは・・・少しずつ範囲を拡大していって・・・。」

「では、それに関してもう一つ。・・・入りきらなかった日本人が、その範囲が拡大されるまでに、ブリタニアの市民によって虐げられることのないように配慮してもらえるだろうか?」

 これは、卜部だ。彼の手にも封書から取り出した紙が握られている。

「・・・あ、はい。もちろんです・・・。」

 何とも頼りの無い返事に、卜部の眉が顰められる。そして、封書は藤堂の手に渡る。

「四つ、特区が失敗した際に、責任を取られるお覚悟は?」

「失敗なんて――――!」

 とうとう我慢しきれず叫んだスザクに、藤堂は厳しい視線を向ける。

「こちらとしても失敗はして頂きたくない。だが、万一のことを考えるのは当然ではないのか?この特区が失敗に終われば、今度こそ、日本は立ち直れない。・・・なぜなら、希望を持てなくなるからだ。その責任は重い。・・・違うか?スザク君。俺は間違ったことを言っているだろうか。」

 スザクは言い負かされて沈黙する。今回に限って、黒の騎士団は全くの正攻法できたのだ。批判はできない。

「ゼロ・・・優秀だね。君の部下は。」

 クツクツと笑うシュナイゼルが、ゼロを見つめる。それに揶揄が含まれていることに気付いたが、誰もが無反応で返す。そう、ルルーシュから言い聞かされてきたからだ。

「無論です。そうでなければ、ここには連れてきません。」

「・・・今の質問は、確かに君達にとって切実なものだ。さぁ、ユフィ。答えなさい。」

 今の一言で、シュナイゼルはユーフェミアを切り捨てたことになる。C.C.の言葉を返りるなら、沈没船に乗るつもりはないと宣言したも同じだ。

「・・・責任は・・・もちろんとります。」

「軽々しい返事ね。」

 ユーフェミアが言うのと同時に、カレンが挑発するように言う。

「カレン!!」

 ギッと睨みつけてくるスザクに、カレンはふん、と鼻を鳴らす。

「本当のことを言って何が悪いの?・・・日本にとって特区に参加するということは、命をかけると同義なのよ。これにかけるしかない人達の身にもなって頂戴。やり直しはきかないの。失敗したらごめんなさいじゃ済まないのよ!!」

 カレンの裂帛の気迫に、スザクは後退る。

「あんたも、騎士なら、主の言うことに何でも頷いてんじゃないわよ!!良いことは良い。悪いことは悪い!そう言って、主を諌めるのも騎士の役目なんじゃないの!?騎士は恋人でもお友達でもないの!ただ主の言うことに頷くだけなら、誰だって良いってことになるんだよ!!」

 言い募るカレンに、ゼロがストップをかける。

「カレン。言い過ぎだ。」

 その声には愉悦が含まれていることに、その場の数人が気付く。

「日本人が騎士が何たるかを説くなんてことは、失礼だろう?・・・まがりなりにも、彼はブリタニア皇族の騎士なのだから。充分に知っていることだろう。」

 完全なる揶揄だ。それがわかったコーネリアとギルフォード主従が眉を顰める。お世辞にもユーフェミアとスザクの主従が理想的な主従関係であるとは言い難いからだ。

「ゼロ・・・お前は結局何が言いたい。」

 コーネリアが口を開く。このままユーフェミアに任せておけば、要らぬ発言をしかねないと判断したからだ。

「・・・責任もちゃんと取れぬ相手に、命は預けかねる。そう言いたいだけだ。」

「ですがっ!・・・ゼロ、貴方が協力して下さるなら!!」

 ガタン、と立ち上がるユーフェミアに、コーネリアはハッとする。

「ユフィ!」

「貴方の、その、頭脳を貸して下さい。・・・お願いです!!」

 ツカツカとゼロに歩み寄ったユーフェミアはその袖を掴み、潤んだ瞳でゼロを見上げる。

「お願いです・・・ゼロ。」

「・・・申し訳ないが、協力しかねる。私の立場をお忘れか?」

「・・・ですが!」

「・・・ユーフェミア皇女殿下。私はゼロ。ブリタニアにとっては犯罪者ですよ。その犯罪者に皇族である貴女が頭を下げますか。」

「貴方の罪を許すように、本国にお願いしました!!ですから、貴方はもう!」

「・・・皇位継承権と引き換えに、ですか?」

 ゼロに確認され、ユーフェミアは素直に頷く。

「ユフィ!!」

 誘導尋問だとコーネリアが気付いたが、もうすでにユーフェミアは頷いてしまった。

「・・・やはりそうか。・・・貴女は、皇位継承権の重さを知らない。」

 溜め息をつき、ゼロは首を振る。

「皇位継承権はそのまま皇室内での発言力に繋がる。・・・シュナイゼル殿下がいい例でしょう。私の罪を無くす代わりに、貴女はご自身の発言権を失ったのです。これでは、特区にこれ以上の本国の協力は得られないと考えますが?」

 そこで、初めてシュナイゼルの余裕の表情が崩れる。

「・・・良くご存じだね。皇室のことを。」

 表情を硬くするシュナイゼルに、ゼロはクツクツと笑う。

「それはそうでしょう。・・・私も、元は“そこ”にいた人間ですから。」

 その発言には、ブリタニア側の全員が仰天する。つまり、彼は、皇族だということになるからだ。

「・・・あ・・・。」

 ユーフェミアが小さく声を発する。恐る恐る、顔をあげると、無機質なゼロの仮面の奥で、ルルーシュが目を眇めたのが見えた。

「ユフィ。もう少し、君は発言に注意した方が良い。これでは、スケープゴートにして下さいと言わんばかりだ。・・・これは忠告だよ。君の兄からのね。」

「私・・・でも!・・・日本の皆さんを・・・貴方とあの子の居場所を作るために・・・。」

「ああ。それには感謝している。でも、特区に俺達の居場所はない。・・・どこからどう見てもブリタニア人の俺達には。・・・人間とは弱いものだ。特区の中で日本の名を取り戻した者達が、ブリタニアとそのまま仲良くなれると思っているのか?違うだろう?その中の異質はけして認めないはずだ。・・・起案者である君を除いてね。」

 優しく告げるがその内容は手厳しい。

 会話をする2人を見て、ユーフェミアがゼロの正体を知っているとようやく気付いたブリタニア側の面々は、ゼロを凝視する。

「・・・ゼロ、お前は一体。」

 呻くように言うコーネリアに、ゼロはクスリと笑った。

「おわかりになりませんか?・・・コーネリア姉上。私ですよ。」

 仮面を取り去ったその素顔に、コーネリアとスザクは驚愕し、さしものシュナイゼルも呆然となる。

「・・・る、ルルーシュ・・・。」

 スザクが呟く。何度も否定してきた相手が、己の親友であるなどと、信じ難かったのだろう。何度も何度もあり得ないと呟く。

「お前がゼロ?本当に・・・。生きていた?」

 コーネリアがふらふらとルルーシュに近寄る。

「本当ですよ、姉上。・・・地獄の底から舞い戻って参りました。・・・では、改めて、ユフィのお願いに答えるとしようか。」

 スッと、ユーフェミアに視線を落としたルルーシュは表情から一切の感情をぬぐい去る。それだけで、精密な人形のように思えてくる。物理的な仮面だけでなく、精神的な仮面をかぶってこそのゼロなのだ。

「今までお聞きした質問に、しっかりとしたお答えが得られるまでは、騎士団の特区日本への参加はお断りさせていただく。それと同時に、合衆国日本として、今あるゲットーの騎士団拠点を中心とした国家を設立せて頂くので、あしからず。」

 あっさりと言ってのけると、ルルーシュは袖を掴むユーフェミアの手を外し、騎士団のメンバーに視線を向ける。

「行こう。・・・やはり、我等の危惧していることが現実になりそうだ。少しでもダメージが少ないうちに、日本人を救う。」

「「「「承知!!」」」」

 シナリオ通りに返事を返すと、藤堂を残し、メンバーは会談の場を後にする。

「ルルーシュ!!・・・どうして君が!!」

 スザクが駆け寄って、ふらふらとしているユーフェミアを支える。

「・・・どうして?・・・お前がそれを聞くのか?・・・幼い頃、俺はお前に言ったな?・・・ブリタニアをぶっ壊す、と。そうしなければ、俺達が一生陽のあたらない場所で暮らさなければいけないことも、お前は知っていたはずだな?」

「それは、でも!・・・君のやり方は・・・。」

「間違っている。か。・・・ならば、お前はどうなのだ!!己こそが正義と言うか!・・・どこを見て、正義か悪かと判断している!!ブリタニアだけが正義などとのたまうつもりではないだろうな!?」

 藤堂が激高したように叫ぶ。

「でも!日本はブリタニアに!!!」

「愚か者!!たとえ、支配を受けようが、矜持を持ち続けなければならぬ。ブリタニアを内側から変える?世迷言もほどほどにしろ!誰もがお前のようにチャンスに恵まれているわけではないのだ!・・・我等は誇りも高き日本人だ。矜持を守るために、我等は戦う!・・・どんなに強い敵が現れても、最後まで、奇跡の名がズタボロになるまで、俺は戦う!!」

 宣言した藤堂は、ルルーシュの肩を抱き、会談の場の扉を荒々しく開いて、出て行った。

 その後、特区は表向き延期となり、期待を寄せていた日本人達は裏切られた形となり、ほぼ同時期に設立された合衆国日本に、どっと流れ込むことになった。

「・・・ルルーシュ君。良かったのか?学校までやめてしまって。」

 藤堂がモニターに映る騎士団に参加を訴える日本人達を眺めながら問いかける。その問いに、ルルーシュはうっすらと微笑む。

「いいんです。・・・ナナリーも納得してくれましたから。・・・それに。」

「それに?」

 藤堂が首を傾げると、ルルーシュは頬を赤く染めて、少し視線をずらす。

「・・・藤堂さんとずっと一緒にいられるので・・・俺、それだけで、充分です。」

「///・・・ルルーシュ君。」

「藤堂さん///」

 見つめ合う2人。だが、2人はまたも忘れていた。ここは騎士団幹部のラウンジなのだ。

 そして、さっきから息を潜めて2人を見ていた幹部達がそそくさとラウンジを後にする中、どうしてもゼロの裁可が欲しい扇が、砂を吐きそうになりながらも、いつ声をかけるべきかとおろおろしていたのだった。





「誰か!!この2人を止めてくれ!!!!」


 おしまい


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