Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・朝比奈さんショタコン気味は仕様ですw
・仔ルルは素直で可愛いです
・朝比奈さんのターン!!
・藤堂さんは皆の頼れるお父さん化しています
・長編朝ルルはお読みになりましたか?読んでなくても大丈夫だと思いますが、読んでからだとよりわかりやすいと思いますよ???
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
2日後、朝比奈は久しぶりに藤堂に稽古をつけてもらっていた。
対ブリタニアの情勢が一段と厳しくなってきたとの噂が軍内を飛び回り、鍛錬所いる者達も気もそぞろで、藤堂に一喝された後だった。
朝比奈は藤堂と向き合い、精神を集中させる。竹刀を真っ直ぐに構え、藤堂をひたと見据える。そんな様子を見て、藤堂は確信する。
「(迷いは晴れたようだな。)」
「たぁぁぁっ!」
朝比奈が気合を入れ、打ち込んでくる。一瞬気の逸れた藤堂になすすべも無く、左胴一本を取られる。
「藤堂さん、今、一瞬だけですけど、気が逸れたでしょう?」
朝比奈に言われ、藤堂は苦笑する。
「やれやれ・・・俺も気がそぞろらしい。」
「ふふ・・・ねぇ、藤堂さん。息抜きしに行きませんか?」
どこに、とは藤堂は問わなかった。確信を持って頷く藤堂に、朝比奈は会心の笑みを見せる。
「じゃあ、着替えたら、行きましょう。」
「・・・ああ。」
藤堂は頷き、朝比奈と共に鍛錬所を後にした。
トントンと軽い調子で石段を登っていく朝比奈の背を見つめ、藤堂は彼の皇子のことを思い浮かべる。ここ数日、元気が無いという情報を人づてに聞いて、可哀想な事をしたと反省していたのだ。
だが、朝比奈が復調し、どんな判断を己に下したにせよ、彼の皇子も頭の良い子だから納得するだろうと安心した。
土蔵付近まで来た時、盛大な溜め息が聞こえる。
「・・・はぁ。」
それは、ルルーシュの溜め息だった。
「お兄様・・・どうかなさったんですか?」
心配そうなナナリーの声。
「・・・いや。何でもないよ?」
にこり、と笑うその表情が、余計に痛々しい。そんな兄の様子を察したのか、ナナリーが悲しそうに眉を顰め、ぽつりと呟く。
「・・・省吾さん、いらっしゃいませんね。」
「・・・・・・うん。」
ルルーシュは短く応じ、空を見上げた。
「省吾さん・・・。」
ルルーシュが意識せず呟いた己の名に、朝比奈はクス、と笑う。
「・・・は、ぁ、い?」
返事を返されたルルーシュはギョッとして立ち上がる。
目の前にいるのは、会いたくて仕方が無かった相手で、ニコニコと笑いながら、こちらに手を振っていた。
「・・・しょう、ごさん?」
「うん。・・・4日も来れなくてごめんね。連絡の一本でもすればよかったんだろうけど。」
ルルーシュの呟きに答え、朝比奈は少しの距離を置き、立ち止まった。
「省吾さんはお忙しかったんですよね?・・・また、いらして下さって嬉しいです。ね?お兄様。・・・お兄様?」
ナナリーが対応をし、そして、何も言わない兄を不審げに呼ぶ。
「・・・ご、さ・・・省吾さんっ!」
突如叫んだルルーシュが、朝比奈に突進して、抱きつく。
「うわっと・・・。」
一瞬ふらついたが、しっかりと抱きとめて、朝比奈はルルーシュの頭を撫でる。
「・・・ごめんねぇ?・・・本当にごめんね?」
「・・・何かあったのかって・・・僕のこと、嫌いになったのかなって!・・・僕は・・・僕は“死んでいる”から!!」
深く心に刻まれた傷。他でもない実父に言われ、癒えることはないだろう傷。顔を朝比奈の腹の辺りに埋めて、ルルーシュはくぐもった声で叫ぶ。
朝比奈はゆっくりとその頭を撫で続ける。
「そんなことないよ。俺とルルーシュ君は赤い糸でつながってたら良いなって思うくらいだもの。嫌いになるわけないよ。」
はっきり言って告白だ。ギョッとする藤堂だが、言われた本人は顔をあげ、きょとんとする。
「・・・赤い・・・糸?」
「ああ、ブリタニアじゃ、違うのかな?・・・とにかく、俺はルルーシュ君のこと、嫌いになってなんかいないよ。」
「ホントに・・・?」
潤んだ目で見上げられ、朝比奈はにっこりと笑って頷いた。
「もちろん!ルルーシュ君もナナリーちゃんも大好きだよ。」
後ろでおろおろとしていたナナリーに視線を向け、朝比奈は声をかける。
「・・・ナナリーちゃんも心配かけてごめんね。」
「・・・いいえ、私は・・・でも、お兄様はすごく心配してらしたから・・・ね?」
「な、ナナリーっ!」
ボッと頬を染め、慌てた様子のルルーシュに、ナナリーは笑う。
「ふふふ。お兄様ったら、そんなに慌てなくてもよろしいのに。」
「う・・・。」
「・・・そっか、ホントにごめんね。」
「・・・いえ、省吾さんが悪い訳じゃないですから。僕が、勝手に・・・。藤堂さんも、あの、ここ何日か護衛の方を寄越して下さったり、食材を送って下さったり、本当にありがとうございました。」
ぺこり、とルルーシュに頭を下げられ、藤堂は笑みを浮かべる。
「いや・・・君が気にすることではない。俺の気が晴れるようにしただけのことだから。」
「へぇ?・・・藤堂さん、ありがとうございます。」
朝比奈は不満げな視線を藤堂に向けながらも、礼を言う。背中に冷や汗をかきながら、藤堂は口元を引き攣らせる。
「・・・朝比奈がここ数日来れなかったのは、俺のせいだからな。」
「やっぱり、対ブリタニア情勢が悪いんじゃないんですか?・・・スザクに聞いても“あるわけない”の一点張りで。」
ルルーシュが問えば、誤魔化しは無用とばかりに朝比奈と藤堂が頷く。
「ああ。」
「どうやら近いうち開戦しそうって噂。」
「僕とナナリーをどうするか、枢木首相や桐原さんは何か仰っていましたか?」
そう言ったルルーシュに、藤堂は首を振った。
「いや。ご自分達のお考えは口になさらない。・・・だが、開戦した場合、徹底抗戦の構えであることは、間違いないだろう。」
「・・・そうですか・・・あの、藤堂さん。僕は、藤堂さん達にとって有用な情報を持っています。聞いてくださいますか?」
ルルーシュはほんの少し、躊躇うようにしてからそれを口にした。そっとその肩に触れ、朝比奈が問う。
「良いの?・・・本当に。」
「良いんです。・・・開戦する、ということは、僕達を見捨てるということなんですから。」
言ったルルーシュの目に憎悪がうかぶ。彼が思い浮かべているだろう彼の父帝に、なぜ、と朝比奈は問いたかった。こんなにも優秀で可愛らしい子なのに、どうして、たった一回の、それも、不安定な時期の失態だけで、このような扱いをしなければならないのか。それが、ブリタニアのやり方なのか、と憤る。
「・・・聞こう。」
藤堂の声が朝比奈を思考の淵から現実に呼び戻す。
「ここでは、憚られる・・・土蔵の中に。」
藤堂に促され、皆が土蔵の中に入っていく。
「ナイトメア・フレームについて僕が詳しく知っているのは、第3世代までですが、第4世代も同時に開発されていました。・・・恐らく、アッシュフォードがその開発から手を引いたために、第4世代に重点がおかれ、実戦投入まで秒読みだと思われます。」
「それが、対日本で使われる可能性がある、と?」
「・・・もし、僕が指揮官だったら、投入します。」
自分に置き換えて言うルルーシュに、藤堂は眉を顰める。
「・・・戦略の勉強もしていたのか?」
「異母兄とチェスをしていた関係で・・・あれは戦略ゲームですから、実戦の記録などを見て応用をしたりしました。」
「なるほどな。」
藤堂が納得すると、ルルーシュはホッと息をつく。
「それに、何でも良いから自分を守る武器が必要だったんです。僕の場合は、機を読むことが一番性に合っていたので。」
「ルルーシュ君は本当に機を読むのがうまいよね。・・・どこでどの情報を誰にどう出すか。大人も顔負けだもの。」
枢木首相の驚いた顔を思い浮かべ、朝比奈はクツクツと笑う。
「・・・皇宮では、どんな子どもでも不用意な発言は命取りになります。母もその面ではとても厳しかった。仲の良い異母兄弟達の前でさえも、発言には気をつけていましたし・・・母とナナリーだけの前以外では、常に気を張らなければならない状況でしたから。」
どんな生活環境かと思ってはいたが、ルルーシュの言葉に、大人2人は呆然としてしまう。
「いや・・・まぁ、本当に、すごいトコなんだね・・・。」
朝比奈がなんとか感想を口にすると、ナナリーがクスクスと笑った。
「すごいところなんです。あそこは。・・・あの中にいた頃はそれが普通だと思っていました。そうは言っても、私は、ほとんどアリエスの離宮にいて、あまり皇宮には行きませんでしたけど。」
「ナナリーはまだ7歳だからね。僕は、もう、単独で皇宮に上がることを許されていた年齢で・・・。」
そこまで言って、ルルーシュの頭の中に、最後の謁見の様子がよぎる。
「・・・だから、僕は。」
「ルルーシュ君っ。」
「ほわぁっ!?」
表情が暗くなったことに気付いた朝比奈が、背後からルルーシュを抱きしめる。素っ頓狂な声をあげて驚いたルルーシュに、朝比奈はクツクツと笑った。
「・・・かっわいい、悲鳴。」
呟いて、ルルーシュの肩に顔を埋める。プルプルと体が震えているのは、未だに笑っているからだろうとわかって、ルルーシュが顔を真っ赤に染める。
「ぼ、僕・・・。」
「朝比奈。可愛いからとからかうのは、止せ。」
藤堂が呆れたように言い、ルルーシュから朝比奈を引き剥がす。
「あは・・・。はぁ、ごめんごめん。本当に可愛かったから。」
にこり、と笑えば、ますますルルーシュの顔の赤みが増す。それを見た藤堂が、そうか、と思うが、それを口に出すことはしなかった。朝比奈も気付いただろうに、ニコニコと笑うだけ。
「もう!からかわないでください・・・それで、さっきの続きなんですが・・・。」
まだ顔の赤いルルーシュだが、話を戻すと、藤堂を見つめる。
「・・・うん?」
「実戦投入されるにしても、まだ、試験段階。だから、作戦次第では戦力差を上回れるはずです。ですから・・・あの・・・。」
「わかった。投入されることを念頭に、作戦を練ることにしよう。・・・話してくれてありがとう。ルルーシュ君。」
「・・・いえ。」
「早速だが、知っていたらで良い、教えてくれ・・・ナイトメア・フレームに弱点はあるだろうか?」
藤堂の言葉に、ルルーシュは力強く頷く。
「・・・人型ですから、足を狙えば、動けなくなります。後、狙うべきところは、頭の部分かコックピットですね。」
「承知した。君の協力に感謝する。」
「・・・いえ。」
ルルーシュは首を振り、うつむく。
「この情報で、1人でも、多くの人を救えればと・・・。」
ルルーシュの言葉は、まるで、日本の負けを前提としているようで、藤堂と朝比奈は顔を見合わせる。
「・・・ルルーシュ君は、日本が負けると思ってるんだねぇ?」
「あッ・・・す、すみません。僕は、そんな・・・。」
朝比奈の苦笑交じりの言葉に、ルルーシュはハッとした後、おろおろとしだす。
「いや・・・確かに、ナイトメアのことにせよ、その他の戦力にせよ、日本が負けているのは間違いが無い。どれほど優れた指揮官がいても、それは、多くの人命を救うだろうが、勝ちを得られるかと言われれば、首を振らざるを得ない。」
藤堂が真面目くさって言うのに、ルルーシュはすまなそうにうつむいた。
「・・・すみません・・・。」
「ほら~、駄目ですよぅ、藤堂さん。ますます、ルルーシュ君が落ち込んじゃったじゃないですかぁ。・・・ルルーシュ君、気にしなくて良いんだよ?」
「・・・す、すまん。責めたつもりはないんだ。事実だと、そう思って。」
朝比奈に責められて、今度は藤堂がおろおろとする。
「省吾さん、藤堂さん・・・。」
名を呼ばれ、2人はルルーシュを見つめる。
「・・・負けを前提としてしまってすみません。でも、生き残って下さい。生きていれば、いつか・・・ブリタニアに勝てる時が来るはずですから・・・。」
希望も含まれたその言葉に、朝比奈と藤堂は力強く頷いた。
「もちろん!」
「・・・ああ、約束しよう。」
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・朝比奈さんショタコン気味は仕様ですw
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・藤堂さんは皆の頼れるお父さん化しています
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2日後、朝比奈は久しぶりに藤堂に稽古をつけてもらっていた。
対ブリタニアの情勢が一段と厳しくなってきたとの噂が軍内を飛び回り、鍛錬所いる者達も気もそぞろで、藤堂に一喝された後だった。
朝比奈は藤堂と向き合い、精神を集中させる。竹刀を真っ直ぐに構え、藤堂をひたと見据える。そんな様子を見て、藤堂は確信する。
「(迷いは晴れたようだな。)」
「たぁぁぁっ!」
朝比奈が気合を入れ、打ち込んでくる。一瞬気の逸れた藤堂になすすべも無く、左胴一本を取られる。
「藤堂さん、今、一瞬だけですけど、気が逸れたでしょう?」
朝比奈に言われ、藤堂は苦笑する。
「やれやれ・・・俺も気がそぞろらしい。」
「ふふ・・・ねぇ、藤堂さん。息抜きしに行きませんか?」
どこに、とは藤堂は問わなかった。確信を持って頷く藤堂に、朝比奈は会心の笑みを見せる。
「じゃあ、着替えたら、行きましょう。」
「・・・ああ。」
藤堂は頷き、朝比奈と共に鍛錬所を後にした。
トントンと軽い調子で石段を登っていく朝比奈の背を見つめ、藤堂は彼の皇子のことを思い浮かべる。ここ数日、元気が無いという情報を人づてに聞いて、可哀想な事をしたと反省していたのだ。
だが、朝比奈が復調し、どんな判断を己に下したにせよ、彼の皇子も頭の良い子だから納得するだろうと安心した。
土蔵付近まで来た時、盛大な溜め息が聞こえる。
「・・・はぁ。」
それは、ルルーシュの溜め息だった。
「お兄様・・・どうかなさったんですか?」
心配そうなナナリーの声。
「・・・いや。何でもないよ?」
にこり、と笑うその表情が、余計に痛々しい。そんな兄の様子を察したのか、ナナリーが悲しそうに眉を顰め、ぽつりと呟く。
「・・・省吾さん、いらっしゃいませんね。」
「・・・・・・うん。」
ルルーシュは短く応じ、空を見上げた。
「省吾さん・・・。」
ルルーシュが意識せず呟いた己の名に、朝比奈はクス、と笑う。
「・・・は、ぁ、い?」
返事を返されたルルーシュはギョッとして立ち上がる。
目の前にいるのは、会いたくて仕方が無かった相手で、ニコニコと笑いながら、こちらに手を振っていた。
「・・・しょう、ごさん?」
「うん。・・・4日も来れなくてごめんね。連絡の一本でもすればよかったんだろうけど。」
ルルーシュの呟きに答え、朝比奈は少しの距離を置き、立ち止まった。
「省吾さんはお忙しかったんですよね?・・・また、いらして下さって嬉しいです。ね?お兄様。・・・お兄様?」
ナナリーが対応をし、そして、何も言わない兄を不審げに呼ぶ。
「・・・ご、さ・・・省吾さんっ!」
突如叫んだルルーシュが、朝比奈に突進して、抱きつく。
「うわっと・・・。」
一瞬ふらついたが、しっかりと抱きとめて、朝比奈はルルーシュの頭を撫でる。
「・・・ごめんねぇ?・・・本当にごめんね?」
「・・・何かあったのかって・・・僕のこと、嫌いになったのかなって!・・・僕は・・・僕は“死んでいる”から!!」
深く心に刻まれた傷。他でもない実父に言われ、癒えることはないだろう傷。顔を朝比奈の腹の辺りに埋めて、ルルーシュはくぐもった声で叫ぶ。
朝比奈はゆっくりとその頭を撫で続ける。
「そんなことないよ。俺とルルーシュ君は赤い糸でつながってたら良いなって思うくらいだもの。嫌いになるわけないよ。」
はっきり言って告白だ。ギョッとする藤堂だが、言われた本人は顔をあげ、きょとんとする。
「・・・赤い・・・糸?」
「ああ、ブリタニアじゃ、違うのかな?・・・とにかく、俺はルルーシュ君のこと、嫌いになってなんかいないよ。」
「ホントに・・・?」
潤んだ目で見上げられ、朝比奈はにっこりと笑って頷いた。
「もちろん!ルルーシュ君もナナリーちゃんも大好きだよ。」
後ろでおろおろとしていたナナリーに視線を向け、朝比奈は声をかける。
「・・・ナナリーちゃんも心配かけてごめんね。」
「・・・いいえ、私は・・・でも、お兄様はすごく心配してらしたから・・・ね?」
「な、ナナリーっ!」
ボッと頬を染め、慌てた様子のルルーシュに、ナナリーは笑う。
「ふふふ。お兄様ったら、そんなに慌てなくてもよろしいのに。」
「う・・・。」
「・・・そっか、ホントにごめんね。」
「・・・いえ、省吾さんが悪い訳じゃないですから。僕が、勝手に・・・。藤堂さんも、あの、ここ何日か護衛の方を寄越して下さったり、食材を送って下さったり、本当にありがとうございました。」
ぺこり、とルルーシュに頭を下げられ、藤堂は笑みを浮かべる。
「いや・・・君が気にすることではない。俺の気が晴れるようにしただけのことだから。」
「へぇ?・・・藤堂さん、ありがとうございます。」
朝比奈は不満げな視線を藤堂に向けながらも、礼を言う。背中に冷や汗をかきながら、藤堂は口元を引き攣らせる。
「・・・朝比奈がここ数日来れなかったのは、俺のせいだからな。」
「やっぱり、対ブリタニア情勢が悪いんじゃないんですか?・・・スザクに聞いても“あるわけない”の一点張りで。」
ルルーシュが問えば、誤魔化しは無用とばかりに朝比奈と藤堂が頷く。
「ああ。」
「どうやら近いうち開戦しそうって噂。」
「僕とナナリーをどうするか、枢木首相や桐原さんは何か仰っていましたか?」
そう言ったルルーシュに、藤堂は首を振った。
「いや。ご自分達のお考えは口になさらない。・・・だが、開戦した場合、徹底抗戦の構えであることは、間違いないだろう。」
「・・・そうですか・・・あの、藤堂さん。僕は、藤堂さん達にとって有用な情報を持っています。聞いてくださいますか?」
ルルーシュはほんの少し、躊躇うようにしてからそれを口にした。そっとその肩に触れ、朝比奈が問う。
「良いの?・・・本当に。」
「良いんです。・・・開戦する、ということは、僕達を見捨てるということなんですから。」
言ったルルーシュの目に憎悪がうかぶ。彼が思い浮かべているだろう彼の父帝に、なぜ、と朝比奈は問いたかった。こんなにも優秀で可愛らしい子なのに、どうして、たった一回の、それも、不安定な時期の失態だけで、このような扱いをしなければならないのか。それが、ブリタニアのやり方なのか、と憤る。
「・・・聞こう。」
藤堂の声が朝比奈を思考の淵から現実に呼び戻す。
「ここでは、憚られる・・・土蔵の中に。」
藤堂に促され、皆が土蔵の中に入っていく。
「ナイトメア・フレームについて僕が詳しく知っているのは、第3世代までですが、第4世代も同時に開発されていました。・・・恐らく、アッシュフォードがその開発から手を引いたために、第4世代に重点がおかれ、実戦投入まで秒読みだと思われます。」
「それが、対日本で使われる可能性がある、と?」
「・・・もし、僕が指揮官だったら、投入します。」
自分に置き換えて言うルルーシュに、藤堂は眉を顰める。
「・・・戦略の勉強もしていたのか?」
「異母兄とチェスをしていた関係で・・・あれは戦略ゲームですから、実戦の記録などを見て応用をしたりしました。」
「なるほどな。」
藤堂が納得すると、ルルーシュはホッと息をつく。
「それに、何でも良いから自分を守る武器が必要だったんです。僕の場合は、機を読むことが一番性に合っていたので。」
「ルルーシュ君は本当に機を読むのがうまいよね。・・・どこでどの情報を誰にどう出すか。大人も顔負けだもの。」
枢木首相の驚いた顔を思い浮かべ、朝比奈はクツクツと笑う。
「・・・皇宮では、どんな子どもでも不用意な発言は命取りになります。母もその面ではとても厳しかった。仲の良い異母兄弟達の前でさえも、発言には気をつけていましたし・・・母とナナリーだけの前以外では、常に気を張らなければならない状況でしたから。」
どんな生活環境かと思ってはいたが、ルルーシュの言葉に、大人2人は呆然としてしまう。
「いや・・・まぁ、本当に、すごいトコなんだね・・・。」
朝比奈がなんとか感想を口にすると、ナナリーがクスクスと笑った。
「すごいところなんです。あそこは。・・・あの中にいた頃はそれが普通だと思っていました。そうは言っても、私は、ほとんどアリエスの離宮にいて、あまり皇宮には行きませんでしたけど。」
「ナナリーはまだ7歳だからね。僕は、もう、単独で皇宮に上がることを許されていた年齢で・・・。」
そこまで言って、ルルーシュの頭の中に、最後の謁見の様子がよぎる。
「・・・だから、僕は。」
「ルルーシュ君っ。」
「ほわぁっ!?」
表情が暗くなったことに気付いた朝比奈が、背後からルルーシュを抱きしめる。素っ頓狂な声をあげて驚いたルルーシュに、朝比奈はクツクツと笑った。
「・・・かっわいい、悲鳴。」
呟いて、ルルーシュの肩に顔を埋める。プルプルと体が震えているのは、未だに笑っているからだろうとわかって、ルルーシュが顔を真っ赤に染める。
「ぼ、僕・・・。」
「朝比奈。可愛いからとからかうのは、止せ。」
藤堂が呆れたように言い、ルルーシュから朝比奈を引き剥がす。
「あは・・・。はぁ、ごめんごめん。本当に可愛かったから。」
にこり、と笑えば、ますますルルーシュの顔の赤みが増す。それを見た藤堂が、そうか、と思うが、それを口に出すことはしなかった。朝比奈も気付いただろうに、ニコニコと笑うだけ。
「もう!からかわないでください・・・それで、さっきの続きなんですが・・・。」
まだ顔の赤いルルーシュだが、話を戻すと、藤堂を見つめる。
「・・・うん?」
「実戦投入されるにしても、まだ、試験段階。だから、作戦次第では戦力差を上回れるはずです。ですから・・・あの・・・。」
「わかった。投入されることを念頭に、作戦を練ることにしよう。・・・話してくれてありがとう。ルルーシュ君。」
「・・・いえ。」
「早速だが、知っていたらで良い、教えてくれ・・・ナイトメア・フレームに弱点はあるだろうか?」
藤堂の言葉に、ルルーシュは力強く頷く。
「・・・人型ですから、足を狙えば、動けなくなります。後、狙うべきところは、頭の部分かコックピットですね。」
「承知した。君の協力に感謝する。」
「・・・いえ。」
ルルーシュは首を振り、うつむく。
「この情報で、1人でも、多くの人を救えればと・・・。」
ルルーシュの言葉は、まるで、日本の負けを前提としているようで、藤堂と朝比奈は顔を見合わせる。
「・・・ルルーシュ君は、日本が負けると思ってるんだねぇ?」
「あッ・・・す、すみません。僕は、そんな・・・。」
朝比奈の苦笑交じりの言葉に、ルルーシュはハッとした後、おろおろとしだす。
「いや・・・確かに、ナイトメアのことにせよ、その他の戦力にせよ、日本が負けているのは間違いが無い。どれほど優れた指揮官がいても、それは、多くの人命を救うだろうが、勝ちを得られるかと言われれば、首を振らざるを得ない。」
藤堂が真面目くさって言うのに、ルルーシュはすまなそうにうつむいた。
「・・・すみません・・・。」
「ほら~、駄目ですよぅ、藤堂さん。ますます、ルルーシュ君が落ち込んじゃったじゃないですかぁ。・・・ルルーシュ君、気にしなくて良いんだよ?」
「・・・す、すまん。責めたつもりはないんだ。事実だと、そう思って。」
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