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Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)

このサイトは、コードギアス・NARUTO・銀魂の二次創作サイトです。原作者様とは一切関係ありません。各ページの注意事項をよく読んでから閲覧してください。

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注意
・既存の朝ルルとは違います
・朝比奈さん暴走注意w
・ルルは絶滅危惧種(笑)
・シリアス&ギャグ
・捏造満載w

以上、同意できる方のみ↓へ・・・











「・・・へ?」

「・・・っあ。」

 バッタリと出くわしてしまった相手に、ルルーシュはさぁ~と青くなった。





 その日、ルルーシュは、生徒会で山のような仕事を片付けて、黒の騎士団のアジトへと向かうべく、ゲットー内を走っていた。

「・・・くそ、なんだって、今日に限ってこんなに遅くなるんだっ!」

 今日は騎士団で作戦会議が行われる予定だった。ミレイの趣味とも言えるイベントも無く、特にやらなければいけないこともなかったので、早く帰れるはずだった。が、なぜか、ルルーシュの机に書類の山があった。

『会長、これ、なんですか?』

『あ~、ごっめ~ん。裁可前の書類が溜まっちゃっててぇ~、ルルちゃん、お願い。手伝ってv』

 拝まれるように頼まれれば、嫌と言えないルルーシュはがっくりと肩を落としてから、本気を出して、その書類の山を片付けたのだった。

「遅れる・・・本気でっ・・・遅れるッッ!」

 ルルーシュにしてみれば全力ダッシュなのだが、傍から見れば軽いマラソン程度の早さであり、体力の無さが祟って、息も切れ切れだ。

 ようやくたどり着いたトレーラーの中にこそこそと入り込むと、自分の部屋に入り、溜め息をついた。

「遅かったな、ルルーシュ。」

 ソファーに寝そべったまま迎えたC.C.に一瞬眉を顰めるが、彼女にあたっても仕方がないと嘆息する。

「・・・C.C.・・・会議は?」

「まだ、始ってないぞ。・・・扇や藤堂達が斥候から戻ってきていないのでな。」

「まだ戻ってないのか・・・。」

 ホッと溜め息をついたルルーシュを見て、C.C.はクスクスと笑う。

「また、生徒会の仕事か?・・・それとも、あの男か?」

「生徒会だ。・・・スザクなら全力で引き剥がしてくるさ。」

 学校に来るたびに母親の後を追うカルガモのヒナのように後ろをついて回る友人を思い出して、ルルーシュは眉を顰める。その苦虫を噛み潰したような表情を確認し、C.C.は心の中で苦労してるな、と苦笑する。

「そうか。・・・カレンは今日休んだようだが?」

「それが正解だよ。・・・会議に遅れないように念のため休んだんだろうな。」

「お前はそうもいかないからな・・・フフ。」

 C.C.は心底楽しそうに言い、ソファーから立ち上がる。

「・・・ルルーシュ。先にラウンジに降りている。」

「ああ。」

 ルルーシュが返事をするのを確認した後、C.C.は部屋を出ていく。

 ルルーシュもゼロの衣装に着替え、仮面を手にして部屋を出ようと扉を開けて足を踏み出した。

トンッ

 直後、部屋の前にあった“何か”にぶつかり、ルルーシュはフッと顔をあげた。





 そして、冒頭に戻る。

「・・・へ?」

「・・・っあ。」

 目があった瞬間、相手は間抜けな声を上げ、ルルーシュは、とっさに顔を伏せた。

「・・・・・・・・・・・・ぜ、ゼロ?」

 随分間があったが、そのおかげでルルーシュ自身もショックから立ち直っていた。

「あ・・・朝・・・比奈。」

 否定は無理だった。なにせ、ルルーシュはゼロの格好をして、仮面を抱えているのだから。日本人ではないことは知られているが、素性が漏れるのは拙い。ルルーシュは左目に力を込める。

「は~~~・・・君、すっごい美人だねぇ。」

「・・・は?」

 ゼロの素顔が知れたというのに、真っ先に言う言葉がそれか!?とギアスをかけようとしたことすら忘れて、呆れた声を出す。

「若いなぁ~。名前はなんていうの?一応聞くけど、男の子だよねぇ?・・・というか、日本人じゃないとは聞いてたけど、ブリタニア人?他のナンバーズじゃないよね?なんでこんなことやってるの?君くらい頭が良ければ、普通に軍とかに入って出世とかできそうなのに。でさ、ずっと聞きたかったんだけど、さっき、C.C.もここから出てきたけど、ホントに愛人?」

 ずいっと息がかかるほど間近にまで顔を近づけられ、矢継ぎ早に問われる。ルルーシュは目を丸くして固まってしまう。

「あ・・・ぇ・・・へ?」

「・・・あ、ごめんごめん、色々質問しすぎちゃったよ。悪い癖だって藤堂さんにもいつも怒られるんだよね。」

 えへ、と笑う朝比奈に、ルルーシュはキャラクターが違うだろ、と、ツッコミたかった。いつも笑顔ではいるものの、たまにこちらに向ける視線は不満たっぷりなもの。だからこそ、素顔を見ただけで、こんなに態度が変わるというのは、どういった心境の変化なのか、問うてみたくなった。

「・・・ちょっと、来い。」

 ぐい、と朝比奈の手をひっぱり、部屋の中に連れ込んだ。

「え・・・なになに?イイコトでもしてもらえるのかなぁ??」

 朝比奈が少し期待をして言った言葉に、ルルーシュは素で首を傾げた。

「・・・イイコト?なんだそれは。」

「・・・あれれ・・・最近じゃ珍しい絶滅危惧種なわけ?」

 朝比奈が言えば、ルルーシュはきょとん、とした。

「・・・絶滅危惧種?」

― ある意味、皇族は絶滅危惧種ではあるかもしれない、が、うちの皇族に限ってはワラワラといるぞ??・・・それに、なぜ、朝比奈がそれを知っている?・・・第一、俺の顔はまだ一般には知られていなかったはず。日本に来た時会ったか???

 と首を傾げ、真剣に考え込むルルーシュに、朝比奈は腹を抱えて笑いだす。

「あははっ!なにこれ!!ホント可愛いんですけど!!!これがあのゼロなんて、信じらんない!!」

 声を抑えることなく笑い続ける朝比奈を呆れるように見つめ、ルルーシュは仮面をサイドテーブルに置く。

「・・・そんなに笑うことか?」

 さすがにここまで笑われると、複雑な気分になる。それに、なぜ笑われているのかもわからない。

「いやいや・・・ククク、ホント、可愛いねぇ、君。・・・イイコトっていうのはね、ん~・・・例えば、キスとか、かな?」
「はっ!?・・・なんで、俺がそんなことお前にやらなければならないんだ!!?」

 ボッと顔を赤くしながら言うルルーシュに、朝比奈はクツクツと笑う。

「だからさ~。そういうコトやってそうな顔なんだもん。なのに、いまどき純情そのものな発言してくれるから、可笑しくってさ。」

「・・・やってそうな顔って・・・。」

「・・・ねぇ、自分がやたらと綺麗な顔してるの、気づいてる?」

 心配だなぁ、と言われ、ルルーシュは首を傾げた。

「まあ、良く女性には声をかけられるが・・・別に、自分の身を切り売りなどしてないぞ?」

「へぇ、じゃあ、この資金力はどうしたの?キョウトからの資金以外は自腹だって扇さんが言ってたけど。」

「・・・貴族との賭けチェスで代打ちを・・・。」

「あ~・・・裏社会ってやつね。良く食べられなかったねぇ。」

「・・・?・・・カニバリズムか?そんな嗜好のある貴族がいるとは聞かないが。」

 本気で言っているようなそれに、朝比奈はまた噴き出す。

「ぶはっ!!・・・ちょっと、食べるってそっちじゃないって。あのね・・・。」

 ちょいちょい、と朝比奈に手招かれるまま、ルルーシュは朝比奈に近寄る。そして、グイッと引っ張られて、ソファーに押し倒された。

「っ!何をする!!」

 身動ぎするが、朝比奈は軍人で、ルルーシュは平均より体力がない。早々に抵抗を諦め、相手の様子を窺うようにその顔を見つめる。

「・・・うん、良い眺め。・・・本気になりそうだ。こういうのを傾国って言うのかな?」

 朝比奈の言っている意味がよく理解できず、眉を顰める。

「・・・よく、わからないんだが。」

「今日は俺、ラッキーデーなのかもねぇ。藤堂さん達が斥候に行ってていないから、ちょっと暇でぶらついてたんだけど。思わぬ拾い物しちゃったかも。」

 くつくつと笑う朝比奈の表情を見て、ルルーシュは心底困ってしまう。こんなにも読めない奴だったろうか?と思う。

「ああ、そうだった。食べるっていうのはね・・・。」

 困った顔も可愛い、と耳元で囁き、朝比奈はルルーシュの唇に己のそれを押し付けた。

「・・・んっ!!?」

「・・・これより先のコトをされるっていうコト。わかった?」

 クス、と笑う朝比奈に、ルルーシュは口を手で押さえ、顔を真っ赤に染めた。

「・・・身を切り売りするとか、そういうのは知ってるのに、もしかして、そういうのに疎い方なのかなぁ?・・・付き合ってる人とかいるの?」

 そう聞かれ、ルルーシュはフルフルと首を横に振る。未だに首まで真っ赤で、目にはうっすらと涙まで浮かんでいる。朝比奈は、一瞬、罪悪感を覚えるが、自分の感情に正直になることにする。

「じゃあ、C.C.は愛人じゃないんだ。・・・ならさ、俺と付き合わない?・・・キス、しちゃったし、ね?」

「・・・き、キスしたら、付き合わなきゃいけないのか!?違うだろ!!」

「あっれー、反撃があるとは思わなかった。・・・さすが、モテるだけはあるね。騙されないか。」

 二ヤリ、と笑う朝比奈。だから、それはお前のキャラクターじゃないだろ!!とルルーシュは叫びたいのだが、どうにもこの体制と状況がそれを許さない。

「でもさぁ・・・俺、君のコト、好きになっちゃったからさ。それに、口説き落とす自信あるよ?」

「っ!・・・な、何も、知らない奴のことを好きになるっていうのか!?」

「なるって。・・・だって、君、危なっかしくてほっとけないんだもん。それにさ、ゼロとしての君はさ、誰も信用してないみたいでさ、時々淋しそうだし、ずっと気になってたんだ。」

 フッと真顔になった朝比奈に、ルルーシュは息を呑む。

「じゃあ、いつも不満げに俺を見てたのは・・・。」

「ああ、やっぱり気付いてたんだ。・・・そうだよ。あんまりにも信用がないもんだから、どうしてかなって思ってたんだ。」

 二コリ、と笑う。

 ルルーシュは押さえつけられた手首を動かしながら、朝比奈を見る。

「・・・とりあえず放してくれないか・・・痛い。」

「あ、ごめん。」

 朝比奈が体を退かし、ルルーシュを引っ張り起こす。

「・・・俺は、お前の思ってるような人間じゃないぞ。」

「うん。だろうね。・・・だって、俺は君のこと何も知らないし。・・・聞いたら教えてくれる?」

 真剣な朝比奈に、ルルーシュが心が揺らぐのを感じた。それから、もし、全てを話して態度を変えられるようなら、ギアスをかけ、無かったことにすれば良いと思い直す。

「・・・俺は・・・。」

 皇族であったこと、母が殺されたこと、妹が身体と心に大きな傷を負ったこと、枢木の家に預けられていたこと、今は皇室から逃げている身であること、ゼロになった動機・・・ルルーシュは問われるまま全てを話した。

 話している間、朝比奈の表情はくるくるとよく変わったが、一度たりともルルーシュに対し嫌悪の表情をうかべることはなかった。

「・・・そっかー・・・そうだったんだ。そりゃ、他人を信じらんないよね。」

 背中をゆっくりと撫でられて、ルルーシュは詰めていた息を吐き出す。

「・・・憎くないのか?俺は・・・。」

「大切なのは、思い、じゃないの?俺はそう思うな。・・・それに、人種でいえば、ラクシャータとかディートハルトだってブリタニア人なわけだし。皇族って言ったって、今は違うんでしょ?」

「あ、ああ。」

 こっくりと頷くルルーシュのしぐさを可愛いなぁ、と見やりつつ、朝比奈はルルーシュを抱きしめた。

「俺は、君がほっとけない。たぶん、本気で好きなっちゃったかも。・・・男同士って変って思うかもしれないけどさ、こういうのって、理屈じゃないと思うんだ。」

「・・・朝・・・比奈?」

「好きだよ。ルルーシュ。」

 耳元でささやかれ、ルルーシュはくすぐったそうに身を竦める。

「・・・お、れ・・・。」

「信じてとは言わない。見返りを求めてるわけじゃないから。・・・ただ、言っとくね。俺はルルーシュが好き。ゼロとか皇族とかそういうの全部抜きにして・・・君が好きだから。」

― 覚えておいてね?

 そう言って朝比奈はルルーシュの身体を放し、部屋を出ていく。

 残されたルルーシュは顔を真っ赤にして呆然とその朝比奈が出て行った扉を見つめていた。

「あ・・・ギアス・・・かけそびれた・・・。」

 ぽつりと呟くが、あの調子なら朝比奈が自分のことを漏らすとは思えなかったし、必要性を感じなかった。そのかわり、別の心配が頭をもたげる。

「・・・あの馬鹿、この後会議なんだぞ・・・あんなことを言われて、どうやって顔を合わせろと言うんだ。」

 仮面を被っていても、絶対に態度に出てしまうのは明白だ。自分がそんなに器用な人間ではないことは良く知っている。戸惑いながらも朝比奈の言葉が嬉しいと感じた自分がいることに、ルルーシュは激しく動揺したのだった。





 ラウンジに降りてきた朝比奈は随分と機嫌が良かった。それに気づいたカレンが首を傾げる。

「どうしたんですか?朝比奈さん。」

「うん、イイ物、拾っちゃって。・・・なかなか警戒心たっぷりだけど、懐いたら可愛いくて手放せなくなるかも。」

 その言い方に、その場にいた者は皆、犬か猫でも拾ったのだろうと思う。

「そう、なんですか。・・・あ、今、連絡があって、扇さんも藤堂さんももうすぐ戻るそうですよ。」

 カレンが言うと、朝比奈は頷いた。

「そ。じゃあ、もうそろそろ会議が始められそうだね。・・・あ、ゼロももうすぐ降りてくるよ、さっきそこで会ったから。」

 いつもの調子で言うが、その眼がわずかにゼロ、と言う時に細められたのに、C.C.だけが気づく。

「・・・おい、朝比奈。」

 C.C.が率先して口を開くのは珍しく、カレン達は首を傾げる。

「ん?何?」

「・・・お前が拾ったのは、黒くて紫電の瞳の“ネコ”か?」

 C.C.の遠まわしな言い方に、朝比奈はニヤリと笑った。

「そうだよ。でも、C.C.の“ネコ”じゃないんでしょ?・・・だったら、俺が貰っても良いよね?」

「・・・はぁ・・・勝手にしろ。だがな、あいつはなかなか懐かないと思うぞ。」

 2人だけで進められる会話に、カレン達は不審そうにしながらも、朝比奈が拾ったのは猫なのか、と納得する。

「C.C.は・・・どうやって懐かれたのさ?」

「私は・・・。」

 C.C.が答えようとした時、ラウンジの扉が開く。

「あ、扇さん。お帰りなさい!」

 扇達が入ってきて、カレンがニコリと笑う。

「ただいま、カレン。」

 扇が答え、後ろを振り返る。

「藤堂さん達ももうすぐ来る。・・・ゼロは?」

「ここだ。」

 上から声が聞こえ、皆がそちらを向くと、ゼロがゆっくりと階段を降りてくる。

「そろそろ会議を始められそうか?」

「はい!ゼロ。・・・ええと、藤堂さん達は・・・。」

「俺達がこちらに来た時に、奥の方に月下の隊長機が見えたから・・・先に格納庫に行ったんだと思うけど。」

「・・・わかった。」

 すたすたと歩くゼロに、朝比奈が歩み寄る。

「ねぇ、ゼロ。今日は何を話し合うんだっけ?」

 ニッコリと笑って、ゼロに話しかける朝比奈に皆がいつもと違うな、と不審げな表情を浮かべる。唯一、C.C.だけが事情を察して溜め息をついた。

「っ・・・今度の作戦についてだが?」

 一瞬言葉に詰まったが、平静を装って答えるゼロに、朝比奈は笑みをうかべる。

「じゃあさ~、俺を、良い場所に配置してよ~。・・・なんか、すっごく、白兜を思いっきりぶっ飛ばしたいんだよねぇ~。」

 ゼロは、なぜ?とは問わなかった。そう言い出した理由は大方、先ほど話したことに所以しているのだろうと察する。

「・・・月下では白兜と性能の差が出てしまうが?」

 性能にかこつけてやめておけと告げると、朝比奈はにやりと笑う。

「だいじょーぶ。性能の差があってもさ、覚悟はこっちの方が上だよ。・・・あ、それとも、心配でもしてくれたの~?」

 目を細め、朝比奈はゼロの仮面を覗き込む。ゼロは光の反射で見えないとわかっているのに、思わずのけぞって、後退る。その足が、がっ、とソファーにひっかかり、そのまま後ろへとひっくり返る。

「・・・っ、ほぅあ!!」

 らしくない悲鳴をあげて倒れたゼロに、その場にいた幹部達はピシッと固まる。

「・・・はぁ。」

 C.C.が額に手をあてる。

「あれ?・・・もしかして、誘ってるの?ゼロ。そっか、そんなに襲って欲しいんだ~。」

 そんなゼロを見つめて、朝比奈が嬉しそうに言う。それを聞いた幹部達がハッと我に返る。

― ちょっと、何そのアブナイ発言!!朝比奈の頭のネジがとうとう飛んだか!?(←失礼)

 言葉には出なかったが、幹部達の意識が同調する。

「なっ!?」

「いいって、大丈夫。わかってるから。」

「わかってるって・・・ちょ、おまっ!・・・圧し掛かるな!朝比奈!!」

 バタバタと暴れるゼロを押さえて、朝比奈がソファーの上に足をかける。

― ・・・お、襲われてる?ゼロが?

― っていうか、シュールじゃね?この光景。

― いやぁぁぁ!ゼロが!ゼロの純潔(?)が!!

 どれが誰の思考かなんてことはこの際どうでもよくて、幹部全員が声すらも出せず、朝比奈がゼロを押し倒しているという視覚の暴力をただただ甘受し続ける。

「・・・何をしている・・・?」

 幹部達の背後から声が聞こえ、全員がバッと振り返る。

「と、藤堂さん!!!あ、朝比奈さんが!!」

「と、止めて下さいっ!・・・このままじゃ、ゼロが!ゼロがぁあ~!!」

 口々に言われ、藤堂は眉を顰める。

「む?・・・朝比奈がゼロに何をしていると・・・?」

「反抗的なのは今に始まったことじゃないだろう。」

「ただ単に、留守番させたから拗ねてんじゃないのか?」

「・・・どれ、その朝比奈はどこにおるのだ。」

 そう言って、藤堂と四聖剣の3人が他の幹部達を退かし、そして、ゼロをソファーの上に押し倒し、右足でその肢体を押さえ付ける朝比奈という光景を視界に入れ、ビシリと固まった。

 さっきの自分達を見ているような気分になって、幹部達はわかるわかるぞ、その気持ち、と頷く。

「・・・な、何を・・・やっている、んだ・・・?」

 問いかけながら、藤堂はケンカにしては嬉しそうな朝比奈の顔に、もっとも考えたくないシチュエーションを脳裏に浮かべる。

「決まってるじゃないですか~・・・ゼロを口説いてるんです。」

― ぎゃああああ!!!!言っちゃった!言っちゃったよ!!この人!!

 藤堂以外全員が心の中で絶叫をあげ、頭を抱える。

「・・・朝比奈、お前・・・。」

 一瞬、ギョッとしたものの、藤堂はあることに気づいてゼロを見る。

 ゼロは朝比奈に押し倒されたまま抵抗をせずに、じっとしている。表情は仮面のせいで窺えないが、おそらく固まっているのだろうと察する。

「・・・口説いているのはわかった・・・とりあえず、ところ構わず押し倒すのはよせ。」

「・・・はーい。」

 藤堂の言うことには逆らわない朝比奈は、あっさりとゼロの上から退く。

「・・・大丈夫か、ゼロ。」

 藤堂に問われ、ゼロはむくりと無言で起き上がる。朝比奈にはそれが、せめての反応とわかっているので、顔がにやけてくる。おそらく仮面の下は、顔が真っ赤になって、あの綺麗な紫の瞳が涙で潤んでいるに違いない。

「かっわい~vゼロ。」

 のたまう朝比奈に、もう、どう反応したらいいのかわからず、幹部達は途方に暮れる。あの仮面のどこを見て可愛いと言っているのか。

「やはりそうか・・・朝比奈、お前、ゼロの仮面の下を見たんだな?」

 溜め息交じりに藤堂が言う。

― なーんだ・・・仮面の下を見たんだぁ・・・って!!!???

「「「「み、見たぁぁあ!??誰の!?ゼロのッ!!!??」」」」

 声が揃う。この団結力を作戦でも発揮できないものか、とゼロが飛んだ意識の中で考えているとも知らず、幹部達はあわあわと朝比奈に詰め寄る。

「え、どこで!いつ!!?」

「おま、1人だけずっりーぞ!!」

「ホントに、ホントに見たんですか!!」

「え~・・・まあ、ついさっき、ですね。見たのは。」

 さらっと答える朝比奈に、ゼロが慌て始める。

「朝比奈!!」

「大丈夫。」

 何が大丈夫なのかはわからないが、自信たっぷりのその言葉に、思わずゼロが黙ると、C.C.が目を瞠る。

「こいつがあっさり説得されて引き下がるなんて、珍しい。・・・朝比奈、お前、どうやってゼロを手懐けた?」

「え?そうなの?・・・へぇ、俺ってスゴイんだ~。」

 嬉しそうに言って、朝比奈はニコニコとゼロを見る。

「信じてくれてるんだ?俺のこと。」

 そう問いかければ、無言が返ってくる。なぜか仮面の下で動揺しているのがハッキリとわかって、朝比奈は、俺ってエスパー?などと思ってしまう。

 このままでは埒があかないと判断した藤堂は、朝比奈をゼロから引き離す。

「・・・千葉、卜部。・・・朝比奈を押さえとけ。」

「「承知。」」

「え~、ちょっと、藤堂さん~。」

 不満げな朝比奈を千葉と卜部が両脇で押さえる。

「ゼロ・・・まずは、部下の非礼を詫びよう。すまなかった。」

 藤堂が頭を下げれば、ゼロは嘆息した。

「・・・元から、あんななのか?」

「・・・いや・・・もう少し、冷静な態度をとれるはずなんだが・・・。」

 藤堂も困惑して朝比奈を見つめているのを見て、ゼロは首を傾げた。

「何で、いきなりあんなに暴走するんだ・・・。」

 はぁ、と溜め息をつく様子は、幹部達の同情を誘う。

「え~、誰だってゼロの素顔を見れば、暴走すると思うよ~・・・だって、傾国だもん!!」

 朝比奈が反論すると、千葉が首を傾げる。

「傾国?・・・それは女に使う言葉だぞ?ゼロは女なのか?」

「違うよ、千葉さん。男だよ、ゼロは。・・・そうじゃなくて、もう、それくらい美人なの!男だけど、そこらの女の子より可愛いの!!!」

 力説する朝比奈に、幹部達の視線がゼロに集まる。

「見てぇ・・・。」

「美人か・・・。」

「興味がないとは、言えねーな。」

 興味津々の視線が集中したゼロは、思わずC.C.の方に助けを求めるように顔を向ける。

「・・・集団心理とは怖いな。抑えが効かないのだから。」

 フッと笑ったC.C.は助けてくれる様子はない。もはや収集がつかなくなりつつあるこれをどうしたものかと考える。が、ギアスは一度使っているカレンがいるので却下だ。

「・・・朝比奈・・・。」

 低い声でこの騒動の原因を作った朝比奈の名を呼ぶ。

「うん。俺、確信犯だから。・・・わかってるよね?ゼロ。」

 やはりそうか、とゼロは思う。朝比奈は素性を話してしまえと言っているのだ。そのための機会はこうして用意されている。騎士団内で素性を話し、受け入れられれば、これほど楽なことはないだろう。が、逆に、反抗される恐れだってあるのだ。誰もが朝比奈のように受け入れるとは限らない。

「だが・・・。」

「ゼロ・・・朝比奈のやり方は少々行きすぎもあるが・・・俺も、もう少し腹を割って話すべきだと思う。」

 躊躇うゼロに、藤堂が朝比奈を援護するような言葉を告げる。

「さっすが、藤堂さん。わかってる~v・・・ほら、ゼロ。大丈夫だよ。いざとなったら、俺が守ってあげるからさ。・・・それに、藤堂さんとは昔会ってるんでしょ?だから、きっと藤堂さんも守ってくれるって。」

 にっこり。

 朝比奈の言葉に、藤堂は一瞬目を瞠り、ゼロを凝視する。

「・・・昔・・・会っている?」

 藤堂は考え込んで、いくつものパーツを脳内で組み上げていく。キョウトの桐原と知人であるらしい、日本人ではないゼロ。そして、昔、己と会っている・・・。そんな人物に、1人だけ思い当って、ハッと息を呑み、口元を押さえる。

「・・・まさか・・・そんな・・・いや、だが・・・。」

 藤堂の戸惑った様子に、幹部達は首を傾げる。

「中佐・・・本当にお知り合いなのですか?」

 仙波が問えば、藤堂は顔を顰め、頷く。

「ああ・・・そうだとしたら・・・これは、無理やりにでも仮面を剥がすべきだな。」

「なっ!?」

 ゼロが身構え、朝比奈が千葉と卜部を引き剥がし、ゼロを庇うようにその藤堂の前に出る。

「信じてない訳じゃないですけど、一応聞いて良いですか?・・・藤堂さんは彼の味方ですよね?」

「もちろんだ。だからこそ、憤っている。・・・なぜ、そんな仮面を被っているのかは良くわかった。事情が事情だ、必要だろう。だがな、それを俺達の前でまで伏せる必要は感じない。ここにいる者達は君が信用して・・・黒の騎士団の幹部として相応しいと認めた者達ではないのか?」

 はっきりと味方だと言い切り、藤堂はゼロを見つめる。それにハッとしたのはゼロだけでなく、幹部達もだった。

 ゼロが自分達を信用している。幹部として相応しいと認めている。それは、ずっとゼロの態度に不満を感じていた幹部達にとっては考えたこともないものであり、ずっと訊ねてみたいと思っていたことでもあった。

「・・・扇グループ・・・は、確かに、黒の騎士団としての母体として相応しいと思った。だから・・・一番最初に、コンタクトをとった。」

 ゼロが認めると、明らかに幹部達の空気が軟化した。ホッとした、とも言える。ゼロはただの駒として自分達を見ていたのだと思っていたからだ。

「ならば、なぜ、素性を明かさない?」

「事情が事情だ。・・・それは今、お前も言っただろう?」

「・・・彼らには受け止めきれないと?」

 藤堂の眉間にしわが寄る。すでに藤堂はゼロ=ルルーシュとして話している。いつもより説教臭くなるのは当然であろう。

「・・・信じて裏切られるくらいなら、最初から信じない方が良い。」

 ぐ、と詰まった後、ルルーシュは藤堂から視線を逸らした。気配でそれを感じた朝比奈は藤堂を困ったように見る。

「藤堂さん・・・俺、無理強いはしたくないです。ほら、枢木スザクの件もあるし・・・。」

「・・・そうか・・・再会していたのか・・・君達は仲の良い友人だったしな。」

 藤堂が言った言葉に、カレンが反応する。

「は?スザクと友達?・・・まさか、ルルーシュ!?・・・だって、あの時・・・。」

 ゼロではないかと疑った時のことを思い出して、カレンの表情が険しくなる。

「事情を聞けば、紅月さんもわかると思うけど・・・彼がゼロだと嫌?」

 朝比奈の目が剣呑な光を帯びる。まっすぐに見据えられ、それでもカレンは少し考える様子を見せて、ルルーシュに向き直る。

「・・・学生じゃ何も出来ないんじゃなかったの?」

「・・・ルルーシュという学生では、な。・・・ゼロになれば、できなくはない。」

 ルルーシュが肯定すると、カレンはあからさまに溜め息をついた。

「・・・朝比奈さんや藤堂さんが納得するような事情があるのなら、いつかちゃんと私達も納得させて頂戴よね。」

 ルルーシュは諦めて溜め息をつく。これでここで己の顔を隠す意味がなくなってしまった。

 ゆっくりとした動作で仮面に手をかけ、カシュッという音と同時に仮面を取り外す。

「「「「お~・・・。」」」」

 己の素顔を知らなかった面子が、揃って声を上げたのを見て、ルルーシュは首を傾げた。

「(天然たらしがっ!!)・・・そうやって首傾げないの。朝比奈さんが悶えてるから;」

 カレンが呆れたように言い、朝比奈を指差すので、ルルーシュはそちらに視線を向け、静かに悶える朝比奈を視界に入れ、盛大に顔を顰めた。

「・・・何なんだ、お前は。」

 はぁ、と溜め息をつく様子まで絵になる。朝比奈が傾国と言った理由がわかった幹部達は、その素顔に見惚れてしまっていた。

「は~、かっわい~。ホント、可愛いよ。自覚無しなトコがなお良いよ。」

 朝比奈はそう言って、ルルーシュを抱きしめる。もう、抵抗する気すら起きないのか、ルルーシュはされるがままになっている。

 それを見て驚いたのはカレンだった。某白兜のあいつには、容赦なく棘のある言葉を叩きつけ、その身体を振り払ってしまうのに。

「あのルルーシュがおとなしく・・・。朝比奈さんって・・・。」

「あはは~。俺って猫を懐かせるのは得意なんだぁ~。」

「・・・俺は猫じゃない。」

「うんうん。わかってるー。(でもある意味で“ネコ”だよね、絶対。C.C.も言ってたし。)」

 朝比奈はおとなしくしているルルーシュにすっかりご機嫌で、周りの目など全く気にしていない。

「愛してるよーvルルーシュvV」

「・・・わかったから、離れろ。とりあえず放せ。・・・・・・・・・ホント、放して下さい///(泣)」

 恥ずかしさのあまり涙目になるルルーシュに、幹部達が次々と絆されはじめ、険を持って見ていたカレンさえも、思わず同情してしまった。





- 後日


「ホント、好きだよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・お、れも・・・好・・きだぞ!!」

 本格的にルルーシュが朝比奈に口説き落とされて、美味しく頂かれるまではあとちょっと・・・?


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