Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・スレナルです(最年少暗部設定)
・サスケとサクラにバレネタ
・オリジナルのキャラが出てきます
・二次創作であることをお忘れなく
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
某所
「・・・だ。・・・の、資料が・・・。」
「ああ。・・・では、・・・して・・・。」
一本のろうそくの灯りだけを頼りに、机に広げられた地図を覗き込む男達。その横には怪しげな術式が書かれた巻物が数本。
「これで・・・も、お終いだな。」
くつくつと笑う首領格の男。顔を上げた瞬間、ろうそくの灯りに照らされて、額当てに刻まれた里の紋様が浮かび上がる。それは、草隠れの里の紋様だった。
「くくく・・・これで、我らの・・・。」
ヒュンッ!
短く空気が切れるような音がして、影がぴくりと反応する。
「・・・なんだ・・・。」
「・・・随分、楽しそうな話をしているじゃないか。」
その場には相応しくないような明るい声。ざざ、と男達はその声を発した影を囲む。
「・・・何者っ!?」
「さぁて、誰でしょお?」
愉悦の混じった声に、男達の殺気が膨れ上がる。男達の中の一人が電気の電源を入れる。灯りが点った瞬間、男達は驚愕した。
「き・・・狐の面に銀髪!!」
「木ノ葉の・・・銀の月!!」
「だぁ~いせいか~い。・・・じゃあ、サヨウナラ。」
クン、と彼が手を手前に引いた瞬間。その場に生きている人間は、彼一人となった。
「・・・木ノ葉に仇為そうとするからだよ・・・馬鹿だね?」
クスクス・・・。
真っ赤に染まった床と動かなくなった人であったもの達を見つめ、彼は印を組んだ。
「火遁・不知火」
ボッと炎が床をなめるように広がる。その後には何も残らない。血も死体も・・・焦げ跡も。
「任務完了。・・・只今より帰還する。」
『了解。』
インカムに向かい任務の終了を告げると、相手が応える。彼は入って来た時のように一瞬でその場から姿を消した。
木の葉の里
「・・・カカシ先生、おっそい。」
ぼそりと呟いたナルトの声に、サクラとサスケはギョッとする。それだけ怒りが込められていたからだ。
いつものように集まってから、かれこれ40分。いつものことであり、これよりももっと遅くなったこともあるためか、3人ともに、諦めていたのだが、なぜか、今日に限って、ナルトの機嫌がすこぶる悪い。
「・・・いつものことだろ?」
サスケが言えば、ナルトはむっつりとして返す。
「カカシ先生と昨日、約束したんだってばよ。・・・今日は大事な予定があるから、遅れずに来てくれってさ!・・・な~の~にぃぃぃぃぃ!!!」
それで怒っているのか、と2人は納得する。ナルトは約束事には律儀だ。だから、自分にも他人にもその点では厳しい。だから、あっさりと約束を破ったカカシに腹を立てているのだろう。
血の雨が降るかもしれない。2人はそう思った。ドベドベと言われても、ナルトも忍である。いくら上忍のカカシでも、怒ったナルトに本気で抵抗できるはずもなく、ましてや、こんなに怒っているのだから、ナルトが容赦するわけがない。
最近メキメキと頭角を現し始めた同期を見やり、サクラとサスケは互いに視線を向け、はぁ、と同じタイミングで溜め息をついた。
1時間後
「いや~・・・遅れてすまん!」
悪びれもせずやってきたカカシにかけられるいつもの叫びは無い。おや、と思いサクラを見ると、サスケと共に、妙に距離をとっている。
本能というか、経験というか、あり得ないほどの殺気を一瞬向けられて、はっとする。おそるおそるナルトの方を見て、カカシはぴしりと固まった。
「・・・カカシ先生。俺と、約束したってばね?」
冷たい笑みを浮かべたナルトに、カカシは、命の危険を感じた。
― 間 ―
「さて、今日の任務だがね・・・。」
切り出したカカシの頭には大きなこぶが2つ。それに、服のあちこちにも破れが目立つ。
先ほどナルトにボコにされたのだ。そりゃもう、裏の顔がバレるんじゃないかと、制裁を加えられながらも心配してしまうくらいに。
ここに、ナルトを怒らせてはいけないという不文律ができた。
「・・・え~・・・ある、廃寺の内部調査を行うらしい。」
「・・・ハイジ?・・・ってなんだってば?」
カカシをボコにして、気分が上々のナルトがいつものおバカ発言をしてくれる。
「廃寺。廃れた寺って書いてハ・イ・ジ。・・・つまり、今は使われてないお寺の事よ。」
サクラが模範解答をすると、ナルトは、おお、と声を上げた。
「つまり、ボロイ寺ってことだってばね?」
まあ、間違ってはいない。・・・先ほどの怒り狂ったナルトを見ているから、強く突っ込めないサクラは、軽く相槌を打った。
「ま、まあ、そんなとこね。」
それがわかるサスケも、先ほど怒りを被ったばかりのカカシも、うんうん、と頷く。
― おいおい、いくら怖いからって、もっときっちり突っ込めよ。
とは、皆の怯える心をしっかりと捉えている、ナルトの心の声である。
「あ~・・・廃寺と言ってもな、随分とカラクリが多いらしい。図面と比べると廃寺はどう見てもそれ以上の広さを持ってるそうだ。・・・つまり、隠し部屋などがある可能性もある。・・・知らずに壊してしまって、重要な資料などが残されていると困るから先に資料や荷を全て運び出して欲しい。・・・これが依頼内容ってわけ。」
一瞬眉を顰めたナルトの表情を見て、怯みながらもカカシは告げる。
「・・・状況次第では、ランクが上がる可能性もある。充分に注意すること。」
「「「了解。」」」
予想外に返事が揃って、カカシはホッとする。どうやら、ナルトは先ほどのお仕置きで少しは許してくれたらしい。裏の顔を知っているだけに怖い。というか、夜の任務で危険な任務に飛ばされるかも、と思い至り、さ~っと青ざめるが、後の祭りである。
「(廃寺って、あそこ?・・・あそこは・・・。)」
くるくると変わるカカシの顔色を眺めながら、ナルトは思考に耽る。
「ナルト、何ぼーっとしてるの。行くわよ?」
サクラに肩を叩かれ、思考を中断する。
「(ま、いっか。)・・・わかったってば。」
返事をして、ナルトはサクラを追った。
廃寺が見えてくると、カカシは3人を一旦止め、再度注意を促す。
「カラクリが多いってことは、トラップもあるかもしれない。気をつけて進むんだよ。・・・ナルト、お前は特に気をつけるようにね。あちこちトラップ発動させたら、皆、道連れだってこと、忘れないように。」
「・・・わかってるってばよ。」
自分のキャラクターを忘れているわけではないが、一瞬ムッとしながらも素直に頷く。
「じゃあ、始め。」
パン、と手を打ち、カカシが合図すると、サクラとサスケが移動を開始する。
その場に残ったナルトに、カカシは首を傾げた。
「行かないの?」
「・・・ここ、少し前の任務で来たんだけど、草隠れの忍が使ってた。」
「・・・えっ!?・・・」
仰天するカカシに、ナルトは眉を潜める。
「なにも言われなかった?じいさまには報告済みだったんだけど。」
「・・・大丈夫だと思ったんじゃないの?お前が始末したんなら。」
「だって、あれから随分たってる。・・・また、草隠れが使ってないとも限らない。・・・サクラちゃんとサスケの様子は逐一伺っといた方が良いと思う。」
「了解。・・・ナルトも気をつけてね。」
「カカシ君もね。・・・っていうか、後で覚えてろよ。」
サクッと思いだしたようにとどめを刺し、ナルトは廃寺の中へと悠然とした態度で入っていく。
「(・・・こ、殺される!!?(ガタブル))」
後に残されたカカシはガタガタと怯えながら、その背を見送った。
ナルトが入って、しばらくの後、外を探索するカカシの背後で、突然廃寺から、カッと光が発せられる。
「・・・何だっ?・・・誰かがトラップでも発動させたのか?・・・ナルト・・・?」
そちらに注意を向けたカカシは、ナルトの忠告を思い出し、顔を青褪めさせた。
「・・・マズイ、かな?」
呟き、カカシは廃寺の中に急いで向かった。
「・・・大丈夫か!!」
気配の集まっている場所の扉を開け放ち、カカシは叫ぶ。
「か、カカシ先生?」
「サクラ!今の光、何!?」
反応したサクラにカカシは焦って問いかける。
「・・・え?・・・ああ、光り玉がいっぱい詰まってる箱を棚から落としてしまって・・・っていうか、この棚、そこの扉を一度開けて閉めると落ちるようになってたみたいで・・・。」
「光り玉って・・・;」
絶句するカカシに、サクラも溜息をつく。
「驚くでしょ?・・・子供騙しじゃあるまいし、普通、お寺に置いてある物じゃないわ。さっきからこんなのばっかり見つかるんです。」
それにしても、とサクラは続ける。
「3人じゃ手が足りないわ。・・・先生も中を手伝ってください。」
軽くサクラに睨まれ、カカシは部屋の奥に入っていく。中では、ナルトとサスケがあちこちの壁を叩いていた。
「・・・何やってんの。」
「ここに隠し部屋とかがあるんじゃないかって、地図より明らかにこの部分が大きいんだってさ。」
ナルトがそう言って、サクラに視線を向ける。
どうやら、サクラの呼びかけで、3人がここに集まったらしい。
「じゃあ、俺もその隠し部屋らしきものを探せばいいわけね。」
カカシはのんびりとそう言って、ナルトとサスケのように壁を叩き始める。横目で確認すれば、ナルトが不審げな顔で同じ場所を叩いていた。
「(・・・ん。ここだけ音が違う。・・・組織を壊滅させて隠し部屋は全部塞いだと思ってたけど・・・ここにもあったのか。)」
黙り込んで同じ場所を叩くナルトに不信感を覚えたのか、サスケが側に寄ってくる。
「・・・どうした?」
「・・・えっ、あ・・・何だか、ココだけ音が違う・・・ってば。」
慌てて壁を指差せば、サスケが眉間にしわを寄せる。
「隠し部屋の入口か?」
そう言うなり、付近の壁を丹念に調べ始める。
「・・・・・・あったぞ。」
にっと笑う。その指の先には小さな突起。
「サクラちゃんの読みどおりだってばね。」
頷くナルトを見て、サスケはカカシ達を振り返る。
「あったぞ。」
その声に、カカシとサクラが寄ってくる。
「はぁ~・・・これはこれは、怪しい突起だねぇ・・・。白眼とかあれば中を透視できるんだけどね。」
カカシの言葉に、3人は同期の少女を思い出す。
「あーあ。ヒナタがいれば良かったのに。」
「ああ、そうだねぇ。・・・でも、ま、しょうがないさ。・・・さて、じゃあ、押してみますか。」
あっさりと言ったカカシに、3人は仰天する。
「い、いいんですか?カカシ先生。よく調べもせずに押してしまって。」
代表してサクラが言うと、カカシはひょい、と肩を竦める。
「大丈夫だよ。・・・いざとなったら、皆、守ってやるから。(最悪、ナルトがいるしね。)」
にーっこり、と笑ったカカシに、皆が黙り込む。あてにされたナルトは、カカシの考えが読めたのか、がっくりと肩を落とす。
「カカシ先生~・・・それ、根拠になってないってばよ・・・。」
ついでに言ってみるものの、カカシに行動を改める様子はない。
「じゃ、押すよ~。」
ぽち。
身構える4人の前で、目の前の壁が重い音をたてて上へとあがる。
「サクラの読みがあたったねぇ。・・・よし、じゃあ、気をつけて前へ進むぞ。」
見た限り、扉の奥は真っ暗で、4人はゆっくりと前に進む。
「“暗視の術”」
カカシが印を組み、暗闇でも見通せる術を使う。それに合わせ、ナルトもこっそりとその印を組む。見えてきた部屋の様子は、先日始末した草隠れの忍達がいた部屋とよく似ていた。
「・・・電気はそこか。」
カカシがスイッチの方まで行き、パチン、と電気をつける。
まず、初めに見えたのは、手術台のような白い台と巻物の山。
「なにこれ。」
「触ったら駄目だよ、サクラ。」
カカシに言われ、伸ばしかけた手を引っ込め、視線だけで問う。
「んー・・・。」
カカシは唸りながら、ちょん、と巻物に触る。悪い気配はない。
「はい、ナルト、出番だよ~。・・・影分身。」
「よっしゃ~。」
ナルトは喜んで印を組む。そして、2体の影分身を出す。
「あの巻物を開けて頂戴。」
カカシに言われるままナルトの影分身がその巻物を手に取り、勢いよく開ける。
「・・・何も、起こらないってば?」
ナルトは首を傾げたまま、その術式を見つめ、突如、ギョッと目を見開いた。
「・・・っ!?(この術式!!)」
息を呑んだナルトに気付いたカカシは、ナルトの傍に寄る。
「どうしたの?」
「・・・せ、んせ。」
「!?・・・これ・・・。」
様子のおかしい分身のナルトとカカシに、本体のナルトが近寄る。
「尾獣の召喚術。」
ぽつり、と言ったナルトに、サクラが首を傾げる。
「尾獣?」
「尾をもつ、妖獣・神、まあ、色々呼び方はあるけど、簡単な例をあげると九尾みたいな生き物のこと。」
九尾というフレーズに、サクラとサスケはギョッとした。
「・・・というか、なんで、お前が・・・そんな事、知ってんだよ。」
即座に不審げな声をあげ、サスケはナルトを睨む。九尾の事は、うちは一族が一番把握していたことを思い出す。なぜなら、そのための写輪眼なのだから。
「知ってちゃ悪いのかってばよ。・・・これは、あの事件の。」
そこまで言って、ナルトは口を噤んだ。
「あの事件って・・・九尾の?」
「そうだよー・・・これは、確か、火影様が必死になって探したものだったのにねぇ。・・・器を守るために。・・・まさか、こんなところにあるなんて。どういうことだろう?」
カカシが答えれば、ますます困惑するサクラとサスケ。
「器?」
「火影様が必死になって探すって。」
「これさえあれば、器はそれほどひどい目に遭わずにすんだってことだよ。恨みや憎しみが、その誰かもわからない愚か者に向くんだから。」
「???」
サクラが眉を顰め、首を傾げる。
「だから、器ってなんだ!!」
イライラとサスケが問う。
「九尾の器だってばよ。・・・あいつは死んでない。四代目は倒せなかったんだ。いや、倒さなかったのか・・・とにかく、九尾はその器に封じられてるんだってば。」
ナルトが投げやりに説明すれば、困惑した視線が向けられる。ドべの仮面が剥がれ落ちる。それがわかって、カカシが右目を眇める。
「ナルト。」
「はぁ。・・・まさか、こんなトコにあるなんてな。・・・草に渡ってたのか、それとも、この寺院の人間が持ってたのか。いずれにしても、じいさまに報告だな。」
溜め息交じりのナルトの言葉に、カカシは頷いて、その頭をゆっくりと撫でた。
「・・・任務は中断。いいね?」
カカシの言葉に、サクラとサスケは戸惑いながらも頷いた。
火影の執務室
巻物を見た瞬間、三代目はううん、と唸って黙り込んだ。
「じいさま、あの寺院は草の忍が使っていた。草に渡っていたのか、あの寺院の人間が隠していたのか。俺には判断は付けづらい。」
平素の口癖を使わないナルトに、黙り込んでいた三代目がハッとして顔をあげた。
「話した・・・のか?」
「まだ。」
だが、もう、演じるつもりはないのだと言外に告げている。
「そう、か。・・・サスケ、そして、サクラ。これから話す事は、里の重要機密じゃ。お主らにも言いたい事はあるじゃろうが、中途半端な情報では余計な誤解を生みかねん。・・・最後まで黙って聞くのじゃ。良いな?」
三代目の確認に、サクラとサスケはこくりと神妙に頷いた。そして話された事実は驚愕の事実。
九尾の器であり、実力を隠して今までドべを演じていたと知り、呆然とするサクラとサスケに、三代目は目を伏せる。
「恐ろしいか?・・・騙されたと思うか?」
訊ねられ、サクラとサスケはフルフルと首を横に振った。
「・・・そうか。ありがとう・・・。」
ゆるりと笑んで、三代目は巻物を示す。
「この巻物は、九尾の召喚に使われたものじゃ。わしはこれをずっと探しておった。・・・器を救うためには、これが必要不可欠だったからのう。・・・じゃが、今更出て来てもあまり意味はないというのに・・・。」
三代目の自嘲に、ナルトが苦笑する。
「じいさま・・・良いんだって。俺は気にしてないしさ。」
「しかしのう、これがもっと早く見つかっておれば、お主とて、こんな事をしなくても良かったものを・・・。」
ナルトはフルフルと首を振る。
「いいって・・・ね、カカシ君?」
ナルトはカカシを振り返る。
「ま。・・・暗部と下忍の両立は絶対条件だからね~。」
「・・・カカシ君や千坐君に、散々、表の顔で忍になって上り詰めろって言われてきたからさ。・・・だからこそ、黙ってドべを演じてきたんだ。・・・来るべき日まで。」
「そうそ。その為に巻物を探してたわけだしね~。これで、上層部は黙らせられるでしょ。・・・里人の方は段々ナルトを認めてきてくれてるし。・・・見つかって万々歳ってわけですよ。火影様。」
「そうか。カカシや・・・お主も千坐もしっかりと考えておったのか。」
「ナルトは強い。なのに、表でその力を見せる事が出来ない。確かに、早々にあの事件の真相を里中に知らしめる必要はあったんですよ。・・・ま。急がなくてもナルトの頑張りのおかげで、環境は良くなってきてましたけどねぇ。」
最近のカカシや千坐の単独行動はこういう理由だったかと三代目は肩を落とす。
「・・・まさか、イタチも危険な事をしてはいまいなぁ?」
「大丈夫だよ。イタチ君は危ない事なんてしてないから。・・・ただ、サスケの事は心配してたなぁ。」
「・・・俺・・・の?」
サスケがのろのろと首をあげると、ナルトはこくりと頷く。
「ああ。・・・この前、会ってお前が復讐に燃えてるって話をしたら、心配してた。」
自分がそう仕向けたとはいえ、復讐に生きる事の辛さは並大抵ではない。そう言っていたと伝えると、サスケは表情を歪めた。
「そう、か。・・・兄さん、が。」
歪めた表情のまま、サスケは呟く。その頭をポンポンと叩き、カカシが微笑む。
「まださ、こっちに帰ってくる事は難しいと思うけど・・・まあ、近くに来る時もあるだろう。その時は知らせてやるよ。」
「・・・・・・ああ。」
頷くサスケを見つめ、ナルトはホッと一息をつく。
「ナルト・・・。」
瞬身で現れた暗部。サクラとサスケがギョッとする中で、ナルトは首を傾げた。
「千坐君?・・・どうしたの?」
「いや・・・。」
「・・・暗部で何かあった?・・・良いよ、大丈夫。サクラちゃんもサスケも受け入れてくれたから。」
「ああ、それは聞いていたから・・・だが、ちょっと・・・。」
言い渋り、千坐はナルトを部屋の隅に引っ張っていく。
「・・・何?」
「今、入ってきた情報だ。・・・樹の事だ。」
「・・・樹・・・。」
潜めた声で千坐が告げた名に、ぽつりとナルトは呟いて眉を顰める。
樹、ナルトが暗部として初任務にあたった時に出会った、個人お抱えの忍。“陰陽転化の術”という血継限界を持っており、変化とはまた違うその術でその身を白豹へと獣化させる事ができるのだ。
「どういうコト?」
ひょこ、と千坐とナルトの間に割って入ってきたカカシに、千坐は眉を顰める。
「お前・・・何の為に俺等が声を潜めてるか、わかってるのか?」
「樹の事も話しておいた方がいいでしょ。・・・ナルトを狙ってくるのは間違いないんだし。」
「・・・くそ。何で蒼藍の素性が漏れてるんだ!」
「そりゃ、“根”のせいでしょ。」
あっけらかんと告げるカカシに、ナルトは頭を抱えた。
「・・・カカシ君~~~;」
「お主等は何をやっておるのじゃ・・・まったく。ワシに黙って事を進めおって。」
三代目も頭を抱え、話についていけないサクラとサスケはおろおろとするばかり。
「・・・ごめんな、じいさま。・・・樹はずっと俺を狙ってきてる。だから・・・ずっと千坐君に調べてもらってたんだ・・・。それと・・・“根”にも。」
ナルトの言葉に、今度こそ、カカシと三代目も目を見開く。
「“根”にもじゃと!?・・・ナルト!いつの間にあやつらと!!」
「千坐~?驚いてないねぇ?・・・お前も知ってて止めなかったわけ!?」
詰られた千坐は、困ったように笑う。
「いや、“根”がナルトに危害を加えることは絶対ないから・・・。」
絶対的な自信を持って言う千坐に、カカシも三代目もナルトを見つめる。
「木ノ葉を守るっていう点では、目的は一緒だから。・・・それに・・・“根”の奴らも意外と良い奴らが多いんだよ?カカシ君・・・じいさま。」
へら、と笑うナルトに、2人は溜め息をつく。
「も~・・・どこでどう味方を作ってるの、お前は・・・;」
「・・・で、千坐君。・・・樹の情報って?」
「ああ。・・・拠点としてるらしい地点がいくつかあるらしい。その地図を暗部の待機所に“根”の連中が持って来たんで・・・一時騒然となってな?まあ、何とか理由をつけてその場は収めたんだが・・・頼むから、直接持ってこないでくれって“根”の連中に言ってきてくれないか?」
千坐の言葉に、ナルトはああ、と呟いて遠い目をした。
「・・・たぶん、その“根”の忍は、俺と同年代の奴らだ。正規の暗部ってのがどんなところか知りたいって言ってたから・・・今日“根”に行く予定だから・・・言っておく。」
「・・・予定って・・・“根”に行くことだったの・・・。」
カカシが呟く。
「・・・だから、遅れられないと思って、遅刻するなって言ったのに。・・・誰かさんは遅れてくるしさ?」
じろり、とナルトに睨まれ、カカシは、背中に汗をかきながらヘラりと笑った。
「・・・ご、ごめんね?・・・ゆ、ゆるして・・・?」
「・・・後で覚えてろよって言ったよな?」
許す気はないらしいナルトが、にっこりと笑いながらカカシに向かう。
「えっ・・・ぇえっ・・・結局は遅れることはないんだろうし・・・ダメ?」
「約束は、守るべき、だよなぁ?・・・な?千坐君。」
話を振られ、千坐は肩を竦める。そして、面を外し、心底呆れかえった視線をカカシに向けた。
「ナルトが約束事に厳しいのは、俺達がそう育てたからだぞ?・・・その張本人が約束破ってどうするんだ・・・まったく。」
カカシの味方は一人もいないらしい。そう理解して、さぁ~と顔を青ざめさせる。
「・・・どれがいいかなぁ?・・・“根”の連中と新術作ったんだよねぇ。」
ニコニコと笑うナルトだが、目は笑っていない。
「ま、まって・・・まさか、新術の実験台にするつもり・・・!?」
「ぴーんぽーんv大正解~。さっすがだねvカカシ君。・・・カカシ君なら、ちょっとやそっとの術じゃ、ダウンしないもんね?」
ナルトの周りから、恐怖で足が竦んでしまったカカシ以外全員、(ナルトの素の表情に呆然としていたサクラとサスケすら)が、危険を感じて飛び退る。
「い、いやいや。・・・俺、結構打たれ弱いからっ!ね!!」
「あはは、遠慮しなくて良いって。」
「え、遠慮しとくって・・・うん。ホント・・・。」
笑顔でバキバキと指を鳴らすナルトに、カカシはブンブンと首を振って、じりじりと後退る。
「・・・・・・問答無用。」
ババッっと素早く印を組んだナルトは、すっと目を細めた。それは、暗部として任務をこなす時の“蒼藍”としての表情とそっくりで。
「やめ・・・本気はやめて~~~ッッッ!!!!!」
カカシの叫びがその場に響いた。
それを間近で見てしまったサクラとサスケは、本当にナルトを怒らせないように誓ったとか。
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「・・・だ。・・・の、資料が・・・。」
「ああ。・・・では、・・・して・・・。」
一本のろうそくの灯りだけを頼りに、机に広げられた地図を覗き込む男達。その横には怪しげな術式が書かれた巻物が数本。
「これで・・・も、お終いだな。」
くつくつと笑う首領格の男。顔を上げた瞬間、ろうそくの灯りに照らされて、額当てに刻まれた里の紋様が浮かび上がる。それは、草隠れの里の紋様だった。
「くくく・・・これで、我らの・・・。」
ヒュンッ!
短く空気が切れるような音がして、影がぴくりと反応する。
「・・・なんだ・・・。」
「・・・随分、楽しそうな話をしているじゃないか。」
その場には相応しくないような明るい声。ざざ、と男達はその声を発した影を囲む。
「・・・何者っ!?」
「さぁて、誰でしょお?」
愉悦の混じった声に、男達の殺気が膨れ上がる。男達の中の一人が電気の電源を入れる。灯りが点った瞬間、男達は驚愕した。
「き・・・狐の面に銀髪!!」
「木ノ葉の・・・銀の月!!」
「だぁ~いせいか~い。・・・じゃあ、サヨウナラ。」
クン、と彼が手を手前に引いた瞬間。その場に生きている人間は、彼一人となった。
「・・・木ノ葉に仇為そうとするからだよ・・・馬鹿だね?」
クスクス・・・。
真っ赤に染まった床と動かなくなった人であったもの達を見つめ、彼は印を組んだ。
「火遁・不知火」
ボッと炎が床をなめるように広がる。その後には何も残らない。血も死体も・・・焦げ跡も。
「任務完了。・・・只今より帰還する。」
『了解。』
インカムに向かい任務の終了を告げると、相手が応える。彼は入って来た時のように一瞬でその場から姿を消した。
木の葉の里
「・・・カカシ先生、おっそい。」
ぼそりと呟いたナルトの声に、サクラとサスケはギョッとする。それだけ怒りが込められていたからだ。
いつものように集まってから、かれこれ40分。いつものことであり、これよりももっと遅くなったこともあるためか、3人ともに、諦めていたのだが、なぜか、今日に限って、ナルトの機嫌がすこぶる悪い。
「・・・いつものことだろ?」
サスケが言えば、ナルトはむっつりとして返す。
「カカシ先生と昨日、約束したんだってばよ。・・・今日は大事な予定があるから、遅れずに来てくれってさ!・・・な~の~にぃぃぃぃぃ!!!」
それで怒っているのか、と2人は納得する。ナルトは約束事には律儀だ。だから、自分にも他人にもその点では厳しい。だから、あっさりと約束を破ったカカシに腹を立てているのだろう。
血の雨が降るかもしれない。2人はそう思った。ドベドベと言われても、ナルトも忍である。いくら上忍のカカシでも、怒ったナルトに本気で抵抗できるはずもなく、ましてや、こんなに怒っているのだから、ナルトが容赦するわけがない。
最近メキメキと頭角を現し始めた同期を見やり、サクラとサスケは互いに視線を向け、はぁ、と同じタイミングで溜め息をついた。
1時間後
「いや~・・・遅れてすまん!」
悪びれもせずやってきたカカシにかけられるいつもの叫びは無い。おや、と思いサクラを見ると、サスケと共に、妙に距離をとっている。
本能というか、経験というか、あり得ないほどの殺気を一瞬向けられて、はっとする。おそるおそるナルトの方を見て、カカシはぴしりと固まった。
「・・・カカシ先生。俺と、約束したってばね?」
冷たい笑みを浮かべたナルトに、カカシは、命の危険を感じた。
― 間 ―
「さて、今日の任務だがね・・・。」
切り出したカカシの頭には大きなこぶが2つ。それに、服のあちこちにも破れが目立つ。
先ほどナルトにボコにされたのだ。そりゃもう、裏の顔がバレるんじゃないかと、制裁を加えられながらも心配してしまうくらいに。
ここに、ナルトを怒らせてはいけないという不文律ができた。
「・・・え~・・・ある、廃寺の内部調査を行うらしい。」
「・・・ハイジ?・・・ってなんだってば?」
カカシをボコにして、気分が上々のナルトがいつものおバカ発言をしてくれる。
「廃寺。廃れた寺って書いてハ・イ・ジ。・・・つまり、今は使われてないお寺の事よ。」
サクラが模範解答をすると、ナルトは、おお、と声を上げた。
「つまり、ボロイ寺ってことだってばね?」
まあ、間違ってはいない。・・・先ほどの怒り狂ったナルトを見ているから、強く突っ込めないサクラは、軽く相槌を打った。
「ま、まあ、そんなとこね。」
それがわかるサスケも、先ほど怒りを被ったばかりのカカシも、うんうん、と頷く。
― おいおい、いくら怖いからって、もっときっちり突っ込めよ。
とは、皆の怯える心をしっかりと捉えている、ナルトの心の声である。
「あ~・・・廃寺と言ってもな、随分とカラクリが多いらしい。図面と比べると廃寺はどう見てもそれ以上の広さを持ってるそうだ。・・・つまり、隠し部屋などがある可能性もある。・・・知らずに壊してしまって、重要な資料などが残されていると困るから先に資料や荷を全て運び出して欲しい。・・・これが依頼内容ってわけ。」
一瞬眉を顰めたナルトの表情を見て、怯みながらもカカシは告げる。
「・・・状況次第では、ランクが上がる可能性もある。充分に注意すること。」
「「「了解。」」」
予想外に返事が揃って、カカシはホッとする。どうやら、ナルトは先ほどのお仕置きで少しは許してくれたらしい。裏の顔を知っているだけに怖い。というか、夜の任務で危険な任務に飛ばされるかも、と思い至り、さ~っと青ざめるが、後の祭りである。
「(廃寺って、あそこ?・・・あそこは・・・。)」
くるくると変わるカカシの顔色を眺めながら、ナルトは思考に耽る。
「ナルト、何ぼーっとしてるの。行くわよ?」
サクラに肩を叩かれ、思考を中断する。
「(ま、いっか。)・・・わかったってば。」
返事をして、ナルトはサクラを追った。
廃寺が見えてくると、カカシは3人を一旦止め、再度注意を促す。
「カラクリが多いってことは、トラップもあるかもしれない。気をつけて進むんだよ。・・・ナルト、お前は特に気をつけるようにね。あちこちトラップ発動させたら、皆、道連れだってこと、忘れないように。」
「・・・わかってるってばよ。」
自分のキャラクターを忘れているわけではないが、一瞬ムッとしながらも素直に頷く。
「じゃあ、始め。」
パン、と手を打ち、カカシが合図すると、サクラとサスケが移動を開始する。
その場に残ったナルトに、カカシは首を傾げた。
「行かないの?」
「・・・ここ、少し前の任務で来たんだけど、草隠れの忍が使ってた。」
「・・・えっ!?・・・」
仰天するカカシに、ナルトは眉を潜める。
「なにも言われなかった?じいさまには報告済みだったんだけど。」
「・・・大丈夫だと思ったんじゃないの?お前が始末したんなら。」
「だって、あれから随分たってる。・・・また、草隠れが使ってないとも限らない。・・・サクラちゃんとサスケの様子は逐一伺っといた方が良いと思う。」
「了解。・・・ナルトも気をつけてね。」
「カカシ君もね。・・・っていうか、後で覚えてろよ。」
サクッと思いだしたようにとどめを刺し、ナルトは廃寺の中へと悠然とした態度で入っていく。
「(・・・こ、殺される!!?(ガタブル))」
後に残されたカカシはガタガタと怯えながら、その背を見送った。
ナルトが入って、しばらくの後、外を探索するカカシの背後で、突然廃寺から、カッと光が発せられる。
「・・・何だっ?・・・誰かがトラップでも発動させたのか?・・・ナルト・・・?」
そちらに注意を向けたカカシは、ナルトの忠告を思い出し、顔を青褪めさせた。
「・・・マズイ、かな?」
呟き、カカシは廃寺の中に急いで向かった。
「・・・大丈夫か!!」
気配の集まっている場所の扉を開け放ち、カカシは叫ぶ。
「か、カカシ先生?」
「サクラ!今の光、何!?」
反応したサクラにカカシは焦って問いかける。
「・・・え?・・・ああ、光り玉がいっぱい詰まってる箱を棚から落としてしまって・・・っていうか、この棚、そこの扉を一度開けて閉めると落ちるようになってたみたいで・・・。」
「光り玉って・・・;」
絶句するカカシに、サクラも溜息をつく。
「驚くでしょ?・・・子供騙しじゃあるまいし、普通、お寺に置いてある物じゃないわ。さっきからこんなのばっかり見つかるんです。」
それにしても、とサクラは続ける。
「3人じゃ手が足りないわ。・・・先生も中を手伝ってください。」
軽くサクラに睨まれ、カカシは部屋の奥に入っていく。中では、ナルトとサスケがあちこちの壁を叩いていた。
「・・・何やってんの。」
「ここに隠し部屋とかがあるんじゃないかって、地図より明らかにこの部分が大きいんだってさ。」
ナルトがそう言って、サクラに視線を向ける。
どうやら、サクラの呼びかけで、3人がここに集まったらしい。
「じゃあ、俺もその隠し部屋らしきものを探せばいいわけね。」
カカシはのんびりとそう言って、ナルトとサスケのように壁を叩き始める。横目で確認すれば、ナルトが不審げな顔で同じ場所を叩いていた。
「(・・・ん。ここだけ音が違う。・・・組織を壊滅させて隠し部屋は全部塞いだと思ってたけど・・・ここにもあったのか。)」
黙り込んで同じ場所を叩くナルトに不信感を覚えたのか、サスケが側に寄ってくる。
「・・・どうした?」
「・・・えっ、あ・・・何だか、ココだけ音が違う・・・ってば。」
慌てて壁を指差せば、サスケが眉間にしわを寄せる。
「隠し部屋の入口か?」
そう言うなり、付近の壁を丹念に調べ始める。
「・・・・・・あったぞ。」
にっと笑う。その指の先には小さな突起。
「サクラちゃんの読みどおりだってばね。」
頷くナルトを見て、サスケはカカシ達を振り返る。
「あったぞ。」
その声に、カカシとサクラが寄ってくる。
「はぁ~・・・これはこれは、怪しい突起だねぇ・・・。白眼とかあれば中を透視できるんだけどね。」
カカシの言葉に、3人は同期の少女を思い出す。
「あーあ。ヒナタがいれば良かったのに。」
「ああ、そうだねぇ。・・・でも、ま、しょうがないさ。・・・さて、じゃあ、押してみますか。」
あっさりと言ったカカシに、3人は仰天する。
「い、いいんですか?カカシ先生。よく調べもせずに押してしまって。」
代表してサクラが言うと、カカシはひょい、と肩を竦める。
「大丈夫だよ。・・・いざとなったら、皆、守ってやるから。(最悪、ナルトがいるしね。)」
にーっこり、と笑ったカカシに、皆が黙り込む。あてにされたナルトは、カカシの考えが読めたのか、がっくりと肩を落とす。
「カカシ先生~・・・それ、根拠になってないってばよ・・・。」
ついでに言ってみるものの、カカシに行動を改める様子はない。
「じゃ、押すよ~。」
ぽち。
身構える4人の前で、目の前の壁が重い音をたてて上へとあがる。
「サクラの読みがあたったねぇ。・・・よし、じゃあ、気をつけて前へ進むぞ。」
見た限り、扉の奥は真っ暗で、4人はゆっくりと前に進む。
「“暗視の術”」
カカシが印を組み、暗闇でも見通せる術を使う。それに合わせ、ナルトもこっそりとその印を組む。見えてきた部屋の様子は、先日始末した草隠れの忍達がいた部屋とよく似ていた。
「・・・電気はそこか。」
カカシがスイッチの方まで行き、パチン、と電気をつける。
まず、初めに見えたのは、手術台のような白い台と巻物の山。
「なにこれ。」
「触ったら駄目だよ、サクラ。」
カカシに言われ、伸ばしかけた手を引っ込め、視線だけで問う。
「んー・・・。」
カカシは唸りながら、ちょん、と巻物に触る。悪い気配はない。
「はい、ナルト、出番だよ~。・・・影分身。」
「よっしゃ~。」
ナルトは喜んで印を組む。そして、2体の影分身を出す。
「あの巻物を開けて頂戴。」
カカシに言われるままナルトの影分身がその巻物を手に取り、勢いよく開ける。
「・・・何も、起こらないってば?」
ナルトは首を傾げたまま、その術式を見つめ、突如、ギョッと目を見開いた。
「・・・っ!?(この術式!!)」
息を呑んだナルトに気付いたカカシは、ナルトの傍に寄る。
「どうしたの?」
「・・・せ、んせ。」
「!?・・・これ・・・。」
様子のおかしい分身のナルトとカカシに、本体のナルトが近寄る。
「尾獣の召喚術。」
ぽつり、と言ったナルトに、サクラが首を傾げる。
「尾獣?」
「尾をもつ、妖獣・神、まあ、色々呼び方はあるけど、簡単な例をあげると九尾みたいな生き物のこと。」
九尾というフレーズに、サクラとサスケはギョッとした。
「・・・というか、なんで、お前が・・・そんな事、知ってんだよ。」
即座に不審げな声をあげ、サスケはナルトを睨む。九尾の事は、うちは一族が一番把握していたことを思い出す。なぜなら、そのための写輪眼なのだから。
「知ってちゃ悪いのかってばよ。・・・これは、あの事件の。」
そこまで言って、ナルトは口を噤んだ。
「あの事件って・・・九尾の?」
「そうだよー・・・これは、確か、火影様が必死になって探したものだったのにねぇ。・・・器を守るために。・・・まさか、こんなところにあるなんて。どういうことだろう?」
カカシが答えれば、ますます困惑するサクラとサスケ。
「器?」
「火影様が必死になって探すって。」
「これさえあれば、器はそれほどひどい目に遭わずにすんだってことだよ。恨みや憎しみが、その誰かもわからない愚か者に向くんだから。」
「???」
サクラが眉を顰め、首を傾げる。
「だから、器ってなんだ!!」
イライラとサスケが問う。
「九尾の器だってばよ。・・・あいつは死んでない。四代目は倒せなかったんだ。いや、倒さなかったのか・・・とにかく、九尾はその器に封じられてるんだってば。」
ナルトが投げやりに説明すれば、困惑した視線が向けられる。ドべの仮面が剥がれ落ちる。それがわかって、カカシが右目を眇める。
「ナルト。」
「はぁ。・・・まさか、こんなトコにあるなんてな。・・・草に渡ってたのか、それとも、この寺院の人間が持ってたのか。いずれにしても、じいさまに報告だな。」
溜め息交じりのナルトの言葉に、カカシは頷いて、その頭をゆっくりと撫でた。
「・・・任務は中断。いいね?」
カカシの言葉に、サクラとサスケは戸惑いながらも頷いた。
火影の執務室
巻物を見た瞬間、三代目はううん、と唸って黙り込んだ。
「じいさま、あの寺院は草の忍が使っていた。草に渡っていたのか、あの寺院の人間が隠していたのか。俺には判断は付けづらい。」
平素の口癖を使わないナルトに、黙り込んでいた三代目がハッとして顔をあげた。
「話した・・・のか?」
「まだ。」
だが、もう、演じるつもりはないのだと言外に告げている。
「そう、か。・・・サスケ、そして、サクラ。これから話す事は、里の重要機密じゃ。お主らにも言いたい事はあるじゃろうが、中途半端な情報では余計な誤解を生みかねん。・・・最後まで黙って聞くのじゃ。良いな?」
三代目の確認に、サクラとサスケはこくりと神妙に頷いた。そして話された事実は驚愕の事実。
九尾の器であり、実力を隠して今までドべを演じていたと知り、呆然とするサクラとサスケに、三代目は目を伏せる。
「恐ろしいか?・・・騙されたと思うか?」
訊ねられ、サクラとサスケはフルフルと首を横に振った。
「・・・そうか。ありがとう・・・。」
ゆるりと笑んで、三代目は巻物を示す。
「この巻物は、九尾の召喚に使われたものじゃ。わしはこれをずっと探しておった。・・・器を救うためには、これが必要不可欠だったからのう。・・・じゃが、今更出て来てもあまり意味はないというのに・・・。」
三代目の自嘲に、ナルトが苦笑する。
「じいさま・・・良いんだって。俺は気にしてないしさ。」
「しかしのう、これがもっと早く見つかっておれば、お主とて、こんな事をしなくても良かったものを・・・。」
ナルトはフルフルと首を振る。
「いいって・・・ね、カカシ君?」
ナルトはカカシを振り返る。
「ま。・・・暗部と下忍の両立は絶対条件だからね~。」
「・・・カカシ君や千坐君に、散々、表の顔で忍になって上り詰めろって言われてきたからさ。・・・だからこそ、黙ってドべを演じてきたんだ。・・・来るべき日まで。」
「そうそ。その為に巻物を探してたわけだしね~。これで、上層部は黙らせられるでしょ。・・・里人の方は段々ナルトを認めてきてくれてるし。・・・見つかって万々歳ってわけですよ。火影様。」
「そうか。カカシや・・・お主も千坐もしっかりと考えておったのか。」
「ナルトは強い。なのに、表でその力を見せる事が出来ない。確かに、早々にあの事件の真相を里中に知らしめる必要はあったんですよ。・・・ま。急がなくてもナルトの頑張りのおかげで、環境は良くなってきてましたけどねぇ。」
最近のカカシや千坐の単独行動はこういう理由だったかと三代目は肩を落とす。
「・・・まさか、イタチも危険な事をしてはいまいなぁ?」
「大丈夫だよ。イタチ君は危ない事なんてしてないから。・・・ただ、サスケの事は心配してたなぁ。」
「・・・俺・・・の?」
サスケがのろのろと首をあげると、ナルトはこくりと頷く。
「ああ。・・・この前、会ってお前が復讐に燃えてるって話をしたら、心配してた。」
自分がそう仕向けたとはいえ、復讐に生きる事の辛さは並大抵ではない。そう言っていたと伝えると、サスケは表情を歪めた。
「そう、か。・・・兄さん、が。」
歪めた表情のまま、サスケは呟く。その頭をポンポンと叩き、カカシが微笑む。
「まださ、こっちに帰ってくる事は難しいと思うけど・・・まあ、近くに来る時もあるだろう。その時は知らせてやるよ。」
「・・・・・・ああ。」
頷くサスケを見つめ、ナルトはホッと一息をつく。
「ナルト・・・。」
瞬身で現れた暗部。サクラとサスケがギョッとする中で、ナルトは首を傾げた。
「千坐君?・・・どうしたの?」
「いや・・・。」
「・・・暗部で何かあった?・・・良いよ、大丈夫。サクラちゃんもサスケも受け入れてくれたから。」
「ああ、それは聞いていたから・・・だが、ちょっと・・・。」
言い渋り、千坐はナルトを部屋の隅に引っ張っていく。
「・・・何?」
「今、入ってきた情報だ。・・・樹の事だ。」
「・・・樹・・・。」
潜めた声で千坐が告げた名に、ぽつりとナルトは呟いて眉を顰める。
樹、ナルトが暗部として初任務にあたった時に出会った、個人お抱えの忍。“陰陽転化の術”という血継限界を持っており、変化とはまた違うその術でその身を白豹へと獣化させる事ができるのだ。
「どういうコト?」
ひょこ、と千坐とナルトの間に割って入ってきたカカシに、千坐は眉を顰める。
「お前・・・何の為に俺等が声を潜めてるか、わかってるのか?」
「樹の事も話しておいた方がいいでしょ。・・・ナルトを狙ってくるのは間違いないんだし。」
「・・・くそ。何で蒼藍の素性が漏れてるんだ!」
「そりゃ、“根”のせいでしょ。」
あっけらかんと告げるカカシに、ナルトは頭を抱えた。
「・・・カカシ君~~~;」
「お主等は何をやっておるのじゃ・・・まったく。ワシに黙って事を進めおって。」
三代目も頭を抱え、話についていけないサクラとサスケはおろおろとするばかり。
「・・・ごめんな、じいさま。・・・樹はずっと俺を狙ってきてる。だから・・・ずっと千坐君に調べてもらってたんだ・・・。それと・・・“根”にも。」
ナルトの言葉に、今度こそ、カカシと三代目も目を見開く。
「“根”にもじゃと!?・・・ナルト!いつの間にあやつらと!!」
「千坐~?驚いてないねぇ?・・・お前も知ってて止めなかったわけ!?」
詰られた千坐は、困ったように笑う。
「いや、“根”がナルトに危害を加えることは絶対ないから・・・。」
絶対的な自信を持って言う千坐に、カカシも三代目もナルトを見つめる。
「木ノ葉を守るっていう点では、目的は一緒だから。・・・それに・・・“根”の奴らも意外と良い奴らが多いんだよ?カカシ君・・・じいさま。」
へら、と笑うナルトに、2人は溜め息をつく。
「も~・・・どこでどう味方を作ってるの、お前は・・・;」
「・・・で、千坐君。・・・樹の情報って?」
「ああ。・・・拠点としてるらしい地点がいくつかあるらしい。その地図を暗部の待機所に“根”の連中が持って来たんで・・・一時騒然となってな?まあ、何とか理由をつけてその場は収めたんだが・・・頼むから、直接持ってこないでくれって“根”の連中に言ってきてくれないか?」
千坐の言葉に、ナルトはああ、と呟いて遠い目をした。
「・・・たぶん、その“根”の忍は、俺と同年代の奴らだ。正規の暗部ってのがどんなところか知りたいって言ってたから・・・今日“根”に行く予定だから・・・言っておく。」
「・・・予定って・・・“根”に行くことだったの・・・。」
カカシが呟く。
「・・・だから、遅れられないと思って、遅刻するなって言ったのに。・・・誰かさんは遅れてくるしさ?」
じろり、とナルトに睨まれ、カカシは、背中に汗をかきながらヘラりと笑った。
「・・・ご、ごめんね?・・・ゆ、ゆるして・・・?」
「・・・後で覚えてろよって言ったよな?」
許す気はないらしいナルトが、にっこりと笑いながらカカシに向かう。
「えっ・・・ぇえっ・・・結局は遅れることはないんだろうし・・・ダメ?」
「約束は、守るべき、だよなぁ?・・・な?千坐君。」
話を振られ、千坐は肩を竦める。そして、面を外し、心底呆れかえった視線をカカシに向けた。
「ナルトが約束事に厳しいのは、俺達がそう育てたからだぞ?・・・その張本人が約束破ってどうするんだ・・・まったく。」
カカシの味方は一人もいないらしい。そう理解して、さぁ~と顔を青ざめさせる。
「・・・どれがいいかなぁ?・・・“根”の連中と新術作ったんだよねぇ。」
ニコニコと笑うナルトだが、目は笑っていない。
「ま、まって・・・まさか、新術の実験台にするつもり・・・!?」
「ぴーんぽーんv大正解~。さっすがだねvカカシ君。・・・カカシ君なら、ちょっとやそっとの術じゃ、ダウンしないもんね?」
ナルトの周りから、恐怖で足が竦んでしまったカカシ以外全員、(ナルトの素の表情に呆然としていたサクラとサスケすら)が、危険を感じて飛び退る。
「い、いやいや。・・・俺、結構打たれ弱いからっ!ね!!」
「あはは、遠慮しなくて良いって。」
「え、遠慮しとくって・・・うん。ホント・・・。」
笑顔でバキバキと指を鳴らすナルトに、カカシはブンブンと首を振って、じりじりと後退る。
「・・・・・・問答無用。」
ババッっと素早く印を組んだナルトは、すっと目を細めた。それは、暗部として任務をこなす時の“蒼藍”としての表情とそっくりで。
「やめ・・・本気はやめて~~~ッッッ!!!!!」
カカシの叫びがその場に響いた。
それを間近で見てしまったサクラとサスケは、本当にナルトを怒らせないように誓ったとか。
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