Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・完全捏造設定です!
・原作かなり無視しています!
・オリジナルキャラクターがわんさか出ます
・二次創作だということをご理解したうえでお読みください!
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
「・・・そろそろ来る頃だな、保科」
「はい、上様」
「楽しみか?」
「それは、もちろん」
わずかに頬を紅潮させている夏霧に、将軍は微笑む。
「そなたがそうも嬉しそうにしていると、余も嬉しくなってくるぞ」
将軍に見抜かれた夏霧は、困ったように笑う。
「いけませんね、あの方が来ると思うと気が緩んでしまいます」
「良いではないか。そなたがそれだけ信を置く相手なのであろう?余も何度か会ったが、気の良い男だと思ったぞ」
将軍の人を見る目は確かだ。だてに幼い頃からタヌキ共に囲まれて暮らしてきたわけではないということだろう。
夏霧は頷き、それから視線を落とした。
「それもあの方の素の表情なのでしょう。でも、あの方は・・・心の奥底に様々な想いを封じ込めている。それが漏れ出してしまったら、きっとこの世界は壊れてしまいます。それで悲しむのは他でもないあの方です。だから我等【六花】はあの方の“心”をお守りすると誓ったのです」
「なるほどな・・・あやつの抱えているものはそれ程深く暗いということか」
「・・・そう、聞いています」
「聞いている?」
首を傾げる将軍に、夏霧は悲しそうに笑った。
「はい、我等は直接あの方から聞いてはいないのです。教えてくださったのはあの方の幼馴染の方々です」
「・・・幼馴染?」
「ええ、かつ―――」
「ナルホドなァ・・・どーりでよく知ってると思ったら。やっぱりアイツらが教えやがったのか」
銀時の幼馴染の名を告げようとした夏霧の言葉をさえぎり、部屋の戸が勢いよく開けられて呆れたような声が頭上から降って来た。
「よ、よよよ・・・万事屋ぁ!!」
「な、なんつー無礼な真似を・・・!」
ワタワタとしている真選組の面子をまるっと無視して、銀時は目を真ん丸く見開いてこちらを見ている夏霧に笑いかけた。
「よォ、元気そうじゃねェか」
「ぎ、んとき、様・・・!」
ぶわっと涙をあふれさせ、夏霧は銀時に駆け寄って抱きつくとその胸に顔をうずめた。
「銀、時様・・・銀時様ッ・・・」
「やれやれ・・・泣き虫夏霧は治ってねェなァ・・・」
緩く夏霧の背中を叩きながら銀時は苦笑する。
「ッ・・・だっ、て・・・俺ッ・・・悔しくてッ・・・!」
くぐもった涙声。夏霧が何に悔しがっているのかわかっている銀時は深い溜息をついた。
「はァ~・・・ったく、オメェ1人でどうにかなるもんなら、俺達が命を賭けて戦う必要なんてなかっただろーが」
「そ、ですけどッ・・・ちょ、とくらいは・・・かえ、られると思った、のにッ」
泣きじゃくりながら訴える夏霧に、保科としての姿しか知らない将軍や土方達は目を丸くしていた。
「あのなぁ、夏霧。俺が来たからって、気ィ緩めすぎだぞォ?」
「こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛ぃ゛ぃ゛~!」
銀時に抱きついて号泣する夏霧を、どうやってなだめたものかと銀時が思案しだした時だった。不意に気配を頭上に感じて視線を上にやると、天井から春霞が降って来た。
「いい加減にしなさいッ!!銀時様が困っているでしょうがッッ!!」
春霞は一体どこに持っていたのか、大きなハリセンで小気味のいい音をたてて夏霧の頭を思いっきりはたいた。
「い゛ッ!?~~~ッッ!」
その衝撃で泣きやんだ夏霧は、そのまま頭を押さえて蹲った。
「あ~・・・いや、春霞?ちょい、やり過ぎじゃねェかと俺は思ったりするんだが」
「これくらいしなければ泣きやみませんよ、コイツは」
銀時が苦笑しながら訊ねれば、フン、と鼻を鳴らしながら春霞が答える。
昔から変わらないこの2人の力関係に、ただただ感心するばかりである。
「おーい、大丈夫かぁ?夏霧」
「う~・・・痛い、です」
泣き腫らした目で銀時を見上げ、夏霧は唸る。
「まったく、いつまで経っても泣き虫で。それでよく幕府の高官など勤まりますね」
「・・・それとこれとは別だろ!?」
「別にできるお前がすごいと思いますよ!」
「まーまー・・・とりあえず落ち着け。そして、ここがどこか思い出せ」
言い合いを始めてしまった2人を押さえて銀時が告げれば、春霞も夏霧もハッとなって周りを見回した。
最初は驚いていた将軍は畳に撃沈して爆笑しているし、真選組の4人は何とも言えない微妙な表情をうかべているし、万事屋のお子様ーズはこんな騒ぎは慣れていると言わんばかりに呆れた様子でこちらを見ていて。
「「(穴があったら入りたい・・・!)」」
銀時がいることで思考が昔に戻っていたらしい。2人共に顔を真っ赤にしてうつむく。
「すいませんねェ、上様。ウチの泣き虫を重用してくださっていて、感謝してますよ」
「くっくっくっ・・・いや、実際に保科はよくやってくれている。天導衆とのやり取りもなかなかのもので、余の願いを叶えんがために上手く取り引きをしてくれているぞ」
「そーですか。上様のお役に立ってるようで何よりです」
「・・・それ以上に、そなたのためにコツコツと周りの者達を説得して回っていたのも保科だ。ようやく形になって来たからそなたを呼ぶことにしたのだ」
「・・・じゃあ早速なんですが、幕府にとっちゃ危険人物以外の何者でもない“白夜叉”を、こうして城に上げる危険を冒してまで呼んだ理由をお教え願えますかねェ?」
そう問いかけた銀時に、将軍は姿勢を正した。
「ああ、心して聞いてくれ・・・保科が養父の後を継いで3年間、必死になって説得して回ったその成果を」
夏霧に視線を向ければ力強く頷いてくる。
「(ああ・・・成長したな)」
「まずは、預かっていたコレをお返しします」
そう言って夏霧が差し出したモノを見て銀時は目を細めた。
「・・・・・・大事に、持っていてくれたみてェだな」
「もちろんです。父の形見と偽って養父に頼みこんで手入れもしていましたから」
「・・・そうか」
「はい・・・銀時様の刀“雪月花”確かにお返しいたします」
促されるままに手に取り、銀時はほぅ、と息をついた。
「・・・俺の手に戻って来る運命だったのかねェ」
手に馴染んだ重みは昔のままで。
「なぁ、抜いても良いか?」
銀時が将軍に訊ねると、にこやかに彼は頷いた。
「構わないぞ。余も見てみたい」
「悪いね、御前で抜刀なんて本来なら切腹モンなんだろうが」
そう言いながら、銀時は将軍に切っ先を向けないように静かに抜刀した。
戦時中に何百、何千と敵を屠った愛刀“雪月花”は、夏霧に渡した時は血で曇り刃こぼれも酷かった。
だが、再びこの手に戻った愛刀はしっかりと手入れされて曇り一つない美しい刀身を己に見せていた。
「・・・“雪月花”は銀時様が持つに相応しい刀です。貴方が持ってこそその美しさが際立つ」
銀時の銀髪を映したその刀身は美しく輝く。
「戦時中、銀時様は白一色の装いだったため、その輝きは敵さえも魅せてしまうような美しさでした」
夏霧の言葉を補足するかのようにそう春霞が呟けば、将軍がなるほどと頷いた。
「確かに・・・そなたが手に取るのを待ち望んでいたかのようだな」
「そうですかねェ・・・これは、多くの天人を斬ってきた刀だ・・・俺が持てば、また血で曇るかもしれねーってのに」
銀時はそう言いながらもじっとその愛刀を見つめる。
そんな銀時を見やりながら、夏霧はわずかに緊張した面持ちで口を開いた。
「それから・・・これは話すかどうかずっと悩んでおりました。春霞や氷柱、水澄とも話し合って、やはりお伝えした方が良いと判断しました」
「・・・随分ともったいぶるじゃねェか。どうしたよ?」
銀時は先を促すようにそう訊ねた。
「私は、一度だけ“ヤツ”の顔を見たことがあります。銀時様に無理を言ってついて行った戦場で・・・あの顔だけは忘れられません、それに、あの時の銀時様や高杉さんはとても恐ろしかった」
夏霧の言葉に銀時は目を細めた。一体何の情報を伝えようとしているのか、なんとなくわかってしまったからだ。
「・・・なるほどな、オメーらが言い渋るのはそういうワケかよ。確かに俺やヅラ、晋助にゃ喉の奥に刺さった魚の骨みてーなモンだ・・・だが、ヤツの居場所の調べがついたんなら包み隠さず話せ。大人しく聞いてやるから」
美しい刀身を鞘に収めドカッとその場に座り、銀時は夏霧を見つめる。
息を呑んでその様子を見ていた真選組の4人は、わずかに銀時から漏れる鋭い殺気に背中に冷たい汗が流れるのを感じていた。
「(・・・チンピラ攘夷浪士共の殺気なんざ比べもんにならねェ・・・)」
ゴクリ、と喉を鳴らして土方は隣にいる沖田にチラリと視線を送る。彼は反射的に柄に手をかけて緊張した表情をうかべていた。
近藤も本能で恐怖を感じているのか表情を強張らせており、山崎に至っては全力で逃げようとする己の身体を何とかその場に縫い付けているような有様だった。
それなりの修羅場をくぐり抜けて来ている自分達でさえこうなのだ。余程の鈍感でなければこの殺気には気づいている―――。
そう思って万事屋の子ども達の様子を窺えば、わずかに表情は曇っているもののさほど怯えていないのがわかった。もしかしたら初めてではないのかもしれないと思い至る。
「・・・天導衆の私兵団、そのまとめ役がヤツです。この3年間奴らに近付いて引き出した情報によると数年前からこの私兵団は・・・萩に出向しているようです」
「「「「萩?」」」」
思わず洩れた疑問の声に、夏霧と春霞は困ったように顔を見合わせた。
「・・・俺の、俺達の故郷だよ」
答えたのは銀時だった。やたらと感情を抑えたその声にゾッと背すじに悪寒を感じながら土方は眉間にしわを寄せた。
「なんでまたテメェらの故郷に・・・」
「探してるんです・・・」
今度は夏霧が答える。
「探す、ですか?」
近藤が首を捻ると夏霧は頷く。
「そう、探している・・・“白夜叉”を」
ハッとしてその場の全員が銀時を見つめる。
「ま、そうだろーな。あの時ヤツに唯一、一太刀浴びせた俺を探してるんだろうよ・・・逆に戦場じゃ晋助の顔に一太刀くれやがったが」
「・・・じゃあ、あの高杉さんの左目の包帯って」
「あー、そうそう。ヤツが斬りつけたんだよ。バカ強ェヤツでなァ・・・俺と晋助2人がかりでも倒せなかった」
その言葉に驚いたのは真選組だった。今でも強い銀時の全盛期の頃に高杉と2人がかりで倒せなかった相手ともなれば驚かない方がおかしい。
「・・・銀時様」
不安そうな表情をうかべた春霞が、手ぬぐいを懐から取り出して銀時に差し出す。
そこでようやく他の者も気付いた。
銀時の右手が白くなるほどに握り締められて、爪が食い込んだ所から血がにじんでいたのだ。
「・・・ワリィな・・・春霞」
銀時は手ぬぐいを受け取るとそれを右手に巻いて握り締める。
「いえ・・・嫌なことを思い出させてしまい申し訳ございません」
「そうじゃねェんだよ。ただ・・・ヤツだけは、この手で・・・そう思ってるだけだ」
ギリ、と歯を食いしばる銀時の赤い瞳がギラリと剣呑な光をおびる。
「・・・ヤツは萩の探索を終えて、明後日、江戸入りをするそうです」
夏霧の言葉に、ピクリと銀時は肩を揺らす。
「・・・・・・・・・他の連中には知らせたのか?」
そう問いかける銀時に、夏霧は首を振った。
「いえ、まずは銀時様にお知らせして指示を仰ぐつもりでした」
「そうか・・・懸命だな。晋助に知られた日にゃ萩まで突っ込んで行きかねねェ」
「だと思ったので氷柱にも話していません・・・知らないものは話せないので」
春霞の言葉に今度こそ銀時は苦笑した。
「ったく・・・晋ちゃんったら、わっかりやすい性格してっからなァ。オメェらにまで気ィ使わせて、仕方ねェ奴」
当人の目の前で晋ちゃんなんて呼んだら斬られるだろうな、なんてことを思いながら春霞は目の前で苦笑をうかべている銀時を見てホッと息を吐いた。
「良かった・・・このまま銀時様の怒りが治まらなかったらどうしようかと思いました」
「・・・だーから、大丈夫だッつってんだろ?・・・まだ、な」
これで当人と会ったりしたら落ち着いていられる自信はないが、そう簡単に決壊してしまうようなやわな精神はしていない。
銀時の言葉に頷いて夏霧は将軍に視線を向ける。将軍はその視線を受けて銀時をじっと見つめて口を開いた。
「・・・坂田に帯刀を許可する。それから“ヤツ”とやらの件についても一任しよう」
「!?」
ギョッとする真選組に視線を向け、将軍は尚も続けた。
「今後真選組は坂田に協力を求められた場合は惜しむことなく力を貸すのだ。桂、高杉に関しても坂田の指示に従い、罪人として捕らえる等の手出しはまかりならぬ」
「・・・上様、アンタ・・・」
目を瞠る銀時に笑みを見せ、将軍は力強く頷いた。
「思う存分にやるが良いぞ」
―――そのための体制は全て整っている。
「・・・夏霧、どういうことだ?」
銀時は妙な予感を感じた。
「銀時様が心配されることではありませんから」
ニコリと笑って夏霧は誤魔化す。
「春霞」
「何も問題はありませんよ?」
春霞も話すつもりはないらしい。銀時は眉間にしわを寄せる。
「・・・情報戦に特化したオメェらが全力で隠そうとする情報を得るには、それ相当の情報網が必要ってことか」
「銀時様は、雑事に惑わされず“ヤツ”に集中してください」
春霞は雑事と言い捨てたが、それがこの国の根幹を揺るがしかねない事態だということに銀時は気づいていた。
「・・・まさかとは思うが」
「銀時様!・・・“ヤツ”の件、他の方々にもお知らせした方が良いと思います!」
夏霧が無理矢理話題を変える。
「・・・ったく。わーったよ、アイツらに連絡してくれ。ただし“ヤツ”のことは言うな、俺から話す」
ガシガシと頭を掻きながら銀時が言えば、春霞と夏霧はホッとしたように表情を緩め頷いた。
「「はい!」」
「・・・でさぁ、なんか食いモンない?真選組が急がせたせいで朝飯食べられなくて、ウチのガキ共が腹減らしてんだわ」
銀時の言葉に一瞬目を丸くし、夏霧は破顔した。
「すぐに用意します」
たんまりとお菓子を食べ、更にはお土産まで貰って城を後にした銀時達は真選組の屯所に来ていた。
「・・・良かったのか?」
「何がぁ?」
土方が問えば、銀時はそちらを見るでもなく応じる。
「保科様は・・・何か隠してるみてェだった」
「そりゃぁな・・・アイツの立場を考えればなァ」
「・・・違ェだろ!テメェだって気づいたはずだ!!」
「・・・あー、落ち着けって多串君」
「土方だ!!」
叫ぶ土方に、銀時は苦笑した。
「しょうがねェだろ。アイツらの考えは何となくわかってるが、止めろと言って止める連中じゃねェし。・・・それに、俺もこう見えて結構いっぱいいっぱいなんだよねェ~」
師の仇の情報を手に入れて、ふと気が緩んだ瞬間に心の奥深くに封じた凶暴な獣が暴れ出しそうになる。
「“ヤツ”ってのは一体何者なんだ?」
「ん~、まぁ、オメーらも巻き込むんだし知ってた方が良いか・・・“ヤツ”ってのはな、俺達にとっちゃ、師の仇だ」
銀時はサラリと言ったが、“ヤツ”の話を聞いた時の銀時の殺気は尋常ではなかった。
「・・・仇、か」
「そ。桂が爆発魔になったのも、高杉が超過激派になったのも、ぜーんぶ師(せんせい)が“ヤツ”に殺されたから・・・ってコト」
お前はどうなんだ、と土方は問いかけようとしてやめた。いっぱいいっぱいだと本人が言うように、確かに今の銀時には余裕がないように見えたからだ。
「・・・そう、か」
だから、そう返事をするだけで精一杯だった。
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「はい、上様」
「楽しみか?」
「それは、もちろん」
わずかに頬を紅潮させている夏霧に、将軍は微笑む。
「そなたがそうも嬉しそうにしていると、余も嬉しくなってくるぞ」
将軍に見抜かれた夏霧は、困ったように笑う。
「いけませんね、あの方が来ると思うと気が緩んでしまいます」
「良いではないか。そなたがそれだけ信を置く相手なのであろう?余も何度か会ったが、気の良い男だと思ったぞ」
将軍の人を見る目は確かだ。だてに幼い頃からタヌキ共に囲まれて暮らしてきたわけではないということだろう。
夏霧は頷き、それから視線を落とした。
「それもあの方の素の表情なのでしょう。でも、あの方は・・・心の奥底に様々な想いを封じ込めている。それが漏れ出してしまったら、きっとこの世界は壊れてしまいます。それで悲しむのは他でもないあの方です。だから我等【六花】はあの方の“心”をお守りすると誓ったのです」
「なるほどな・・・あやつの抱えているものはそれ程深く暗いということか」
「・・・そう、聞いています」
「聞いている?」
首を傾げる将軍に、夏霧は悲しそうに笑った。
「はい、我等は直接あの方から聞いてはいないのです。教えてくださったのはあの方の幼馴染の方々です」
「・・・幼馴染?」
「ええ、かつ―――」
「ナルホドなァ・・・どーりでよく知ってると思ったら。やっぱりアイツらが教えやがったのか」
銀時の幼馴染の名を告げようとした夏霧の言葉をさえぎり、部屋の戸が勢いよく開けられて呆れたような声が頭上から降って来た。
「よ、よよよ・・・万事屋ぁ!!」
「な、なんつー無礼な真似を・・・!」
ワタワタとしている真選組の面子をまるっと無視して、銀時は目を真ん丸く見開いてこちらを見ている夏霧に笑いかけた。
「よォ、元気そうじゃねェか」
「ぎ、んとき、様・・・!」
ぶわっと涙をあふれさせ、夏霧は銀時に駆け寄って抱きつくとその胸に顔をうずめた。
「銀、時様・・・銀時様ッ・・・」
「やれやれ・・・泣き虫夏霧は治ってねェなァ・・・」
緩く夏霧の背中を叩きながら銀時は苦笑する。
「ッ・・・だっ、て・・・俺ッ・・・悔しくてッ・・・!」
くぐもった涙声。夏霧が何に悔しがっているのかわかっている銀時は深い溜息をついた。
「はァ~・・・ったく、オメェ1人でどうにかなるもんなら、俺達が命を賭けて戦う必要なんてなかっただろーが」
「そ、ですけどッ・・・ちょ、とくらいは・・・かえ、られると思った、のにッ」
泣きじゃくりながら訴える夏霧に、保科としての姿しか知らない将軍や土方達は目を丸くしていた。
「あのなぁ、夏霧。俺が来たからって、気ィ緩めすぎだぞォ?」
「こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛ぃ゛ぃ゛~!」
銀時に抱きついて号泣する夏霧を、どうやってなだめたものかと銀時が思案しだした時だった。不意に気配を頭上に感じて視線を上にやると、天井から春霞が降って来た。
「いい加減にしなさいッ!!銀時様が困っているでしょうがッッ!!」
春霞は一体どこに持っていたのか、大きなハリセンで小気味のいい音をたてて夏霧の頭を思いっきりはたいた。
「い゛ッ!?~~~ッッ!」
その衝撃で泣きやんだ夏霧は、そのまま頭を押さえて蹲った。
「あ~・・・いや、春霞?ちょい、やり過ぎじゃねェかと俺は思ったりするんだが」
「これくらいしなければ泣きやみませんよ、コイツは」
銀時が苦笑しながら訊ねれば、フン、と鼻を鳴らしながら春霞が答える。
昔から変わらないこの2人の力関係に、ただただ感心するばかりである。
「おーい、大丈夫かぁ?夏霧」
「う~・・・痛い、です」
泣き腫らした目で銀時を見上げ、夏霧は唸る。
「まったく、いつまで経っても泣き虫で。それでよく幕府の高官など勤まりますね」
「・・・それとこれとは別だろ!?」
「別にできるお前がすごいと思いますよ!」
「まーまー・・・とりあえず落ち着け。そして、ここがどこか思い出せ」
言い合いを始めてしまった2人を押さえて銀時が告げれば、春霞も夏霧もハッとなって周りを見回した。
最初は驚いていた将軍は畳に撃沈して爆笑しているし、真選組の4人は何とも言えない微妙な表情をうかべているし、万事屋のお子様ーズはこんな騒ぎは慣れていると言わんばかりに呆れた様子でこちらを見ていて。
「「(穴があったら入りたい・・・!)」」
銀時がいることで思考が昔に戻っていたらしい。2人共に顔を真っ赤にしてうつむく。
「すいませんねェ、上様。ウチの泣き虫を重用してくださっていて、感謝してますよ」
「くっくっくっ・・・いや、実際に保科はよくやってくれている。天導衆とのやり取りもなかなかのもので、余の願いを叶えんがために上手く取り引きをしてくれているぞ」
「そーですか。上様のお役に立ってるようで何よりです」
「・・・それ以上に、そなたのためにコツコツと周りの者達を説得して回っていたのも保科だ。ようやく形になって来たからそなたを呼ぶことにしたのだ」
「・・・じゃあ早速なんですが、幕府にとっちゃ危険人物以外の何者でもない“白夜叉”を、こうして城に上げる危険を冒してまで呼んだ理由をお教え願えますかねェ?」
そう問いかけた銀時に、将軍は姿勢を正した。
「ああ、心して聞いてくれ・・・保科が養父の後を継いで3年間、必死になって説得して回ったその成果を」
夏霧に視線を向ければ力強く頷いてくる。
「(ああ・・・成長したな)」
「まずは、預かっていたコレをお返しします」
そう言って夏霧が差し出したモノを見て銀時は目を細めた。
「・・・・・・大事に、持っていてくれたみてェだな」
「もちろんです。父の形見と偽って養父に頼みこんで手入れもしていましたから」
「・・・そうか」
「はい・・・銀時様の刀“雪月花”確かにお返しいたします」
促されるままに手に取り、銀時はほぅ、と息をついた。
「・・・俺の手に戻って来る運命だったのかねェ」
手に馴染んだ重みは昔のままで。
「なぁ、抜いても良いか?」
銀時が将軍に訊ねると、にこやかに彼は頷いた。
「構わないぞ。余も見てみたい」
「悪いね、御前で抜刀なんて本来なら切腹モンなんだろうが」
そう言いながら、銀時は将軍に切っ先を向けないように静かに抜刀した。
戦時中に何百、何千と敵を屠った愛刀“雪月花”は、夏霧に渡した時は血で曇り刃こぼれも酷かった。
だが、再びこの手に戻った愛刀はしっかりと手入れされて曇り一つない美しい刀身を己に見せていた。
「・・・“雪月花”は銀時様が持つに相応しい刀です。貴方が持ってこそその美しさが際立つ」
銀時の銀髪を映したその刀身は美しく輝く。
「戦時中、銀時様は白一色の装いだったため、その輝きは敵さえも魅せてしまうような美しさでした」
夏霧の言葉を補足するかのようにそう春霞が呟けば、将軍がなるほどと頷いた。
「確かに・・・そなたが手に取るのを待ち望んでいたかのようだな」
「そうですかねェ・・・これは、多くの天人を斬ってきた刀だ・・・俺が持てば、また血で曇るかもしれねーってのに」
銀時はそう言いながらもじっとその愛刀を見つめる。
そんな銀時を見やりながら、夏霧はわずかに緊張した面持ちで口を開いた。
「それから・・・これは話すかどうかずっと悩んでおりました。春霞や氷柱、水澄とも話し合って、やはりお伝えした方が良いと判断しました」
「・・・随分ともったいぶるじゃねェか。どうしたよ?」
銀時は先を促すようにそう訊ねた。
「私は、一度だけ“ヤツ”の顔を見たことがあります。銀時様に無理を言ってついて行った戦場で・・・あの顔だけは忘れられません、それに、あの時の銀時様や高杉さんはとても恐ろしかった」
夏霧の言葉に銀時は目を細めた。一体何の情報を伝えようとしているのか、なんとなくわかってしまったからだ。
「・・・なるほどな、オメーらが言い渋るのはそういうワケかよ。確かに俺やヅラ、晋助にゃ喉の奥に刺さった魚の骨みてーなモンだ・・・だが、ヤツの居場所の調べがついたんなら包み隠さず話せ。大人しく聞いてやるから」
美しい刀身を鞘に収めドカッとその場に座り、銀時は夏霧を見つめる。
息を呑んでその様子を見ていた真選組の4人は、わずかに銀時から漏れる鋭い殺気に背中に冷たい汗が流れるのを感じていた。
「(・・・チンピラ攘夷浪士共の殺気なんざ比べもんにならねェ・・・)」
ゴクリ、と喉を鳴らして土方は隣にいる沖田にチラリと視線を送る。彼は反射的に柄に手をかけて緊張した表情をうかべていた。
近藤も本能で恐怖を感じているのか表情を強張らせており、山崎に至っては全力で逃げようとする己の身体を何とかその場に縫い付けているような有様だった。
それなりの修羅場をくぐり抜けて来ている自分達でさえこうなのだ。余程の鈍感でなければこの殺気には気づいている―――。
そう思って万事屋の子ども達の様子を窺えば、わずかに表情は曇っているもののさほど怯えていないのがわかった。もしかしたら初めてではないのかもしれないと思い至る。
「・・・天導衆の私兵団、そのまとめ役がヤツです。この3年間奴らに近付いて引き出した情報によると数年前からこの私兵団は・・・萩に出向しているようです」
「「「「萩?」」」」
思わず洩れた疑問の声に、夏霧と春霞は困ったように顔を見合わせた。
「・・・俺の、俺達の故郷だよ」
答えたのは銀時だった。やたらと感情を抑えたその声にゾッと背すじに悪寒を感じながら土方は眉間にしわを寄せた。
「なんでまたテメェらの故郷に・・・」
「探してるんです・・・」
今度は夏霧が答える。
「探す、ですか?」
近藤が首を捻ると夏霧は頷く。
「そう、探している・・・“白夜叉”を」
ハッとしてその場の全員が銀時を見つめる。
「ま、そうだろーな。あの時ヤツに唯一、一太刀浴びせた俺を探してるんだろうよ・・・逆に戦場じゃ晋助の顔に一太刀くれやがったが」
「・・・じゃあ、あの高杉さんの左目の包帯って」
「あー、そうそう。ヤツが斬りつけたんだよ。バカ強ェヤツでなァ・・・俺と晋助2人がかりでも倒せなかった」
その言葉に驚いたのは真選組だった。今でも強い銀時の全盛期の頃に高杉と2人がかりで倒せなかった相手ともなれば驚かない方がおかしい。
「・・・銀時様」
不安そうな表情をうかべた春霞が、手ぬぐいを懐から取り出して銀時に差し出す。
そこでようやく他の者も気付いた。
銀時の右手が白くなるほどに握り締められて、爪が食い込んだ所から血がにじんでいたのだ。
「・・・ワリィな・・・春霞」
銀時は手ぬぐいを受け取るとそれを右手に巻いて握り締める。
「いえ・・・嫌なことを思い出させてしまい申し訳ございません」
「そうじゃねェんだよ。ただ・・・ヤツだけは、この手で・・・そう思ってるだけだ」
ギリ、と歯を食いしばる銀時の赤い瞳がギラリと剣呑な光をおびる。
「・・・ヤツは萩の探索を終えて、明後日、江戸入りをするそうです」
夏霧の言葉に、ピクリと銀時は肩を揺らす。
「・・・・・・・・・他の連中には知らせたのか?」
そう問いかける銀時に、夏霧は首を振った。
「いえ、まずは銀時様にお知らせして指示を仰ぐつもりでした」
「そうか・・・懸命だな。晋助に知られた日にゃ萩まで突っ込んで行きかねねェ」
「だと思ったので氷柱にも話していません・・・知らないものは話せないので」
春霞の言葉に今度こそ銀時は苦笑した。
「ったく・・・晋ちゃんったら、わっかりやすい性格してっからなァ。オメェらにまで気ィ使わせて、仕方ねェ奴」
当人の目の前で晋ちゃんなんて呼んだら斬られるだろうな、なんてことを思いながら春霞は目の前で苦笑をうかべている銀時を見てホッと息を吐いた。
「良かった・・・このまま銀時様の怒りが治まらなかったらどうしようかと思いました」
「・・・だーから、大丈夫だッつってんだろ?・・・まだ、な」
これで当人と会ったりしたら落ち着いていられる自信はないが、そう簡単に決壊してしまうようなやわな精神はしていない。
銀時の言葉に頷いて夏霧は将軍に視線を向ける。将軍はその視線を受けて銀時をじっと見つめて口を開いた。
「・・・坂田に帯刀を許可する。それから“ヤツ”とやらの件についても一任しよう」
「!?」
ギョッとする真選組に視線を向け、将軍は尚も続けた。
「今後真選組は坂田に協力を求められた場合は惜しむことなく力を貸すのだ。桂、高杉に関しても坂田の指示に従い、罪人として捕らえる等の手出しはまかりならぬ」
「・・・上様、アンタ・・・」
目を瞠る銀時に笑みを見せ、将軍は力強く頷いた。
「思う存分にやるが良いぞ」
―――そのための体制は全て整っている。
「・・・夏霧、どういうことだ?」
銀時は妙な予感を感じた。
「銀時様が心配されることではありませんから」
ニコリと笑って夏霧は誤魔化す。
「春霞」
「何も問題はありませんよ?」
春霞も話すつもりはないらしい。銀時は眉間にしわを寄せる。
「・・・情報戦に特化したオメェらが全力で隠そうとする情報を得るには、それ相当の情報網が必要ってことか」
「銀時様は、雑事に惑わされず“ヤツ”に集中してください」
春霞は雑事と言い捨てたが、それがこの国の根幹を揺るがしかねない事態だということに銀時は気づいていた。
「・・・まさかとは思うが」
「銀時様!・・・“ヤツ”の件、他の方々にもお知らせした方が良いと思います!」
夏霧が無理矢理話題を変える。
「・・・ったく。わーったよ、アイツらに連絡してくれ。ただし“ヤツ”のことは言うな、俺から話す」
ガシガシと頭を掻きながら銀時が言えば、春霞と夏霧はホッとしたように表情を緩め頷いた。
「「はい!」」
「・・・でさぁ、なんか食いモンない?真選組が急がせたせいで朝飯食べられなくて、ウチのガキ共が腹減らしてんだわ」
銀時の言葉に一瞬目を丸くし、夏霧は破顔した。
「すぐに用意します」
たんまりとお菓子を食べ、更にはお土産まで貰って城を後にした銀時達は真選組の屯所に来ていた。
「・・・良かったのか?」
「何がぁ?」
土方が問えば、銀時はそちらを見るでもなく応じる。
「保科様は・・・何か隠してるみてェだった」
「そりゃぁな・・・アイツの立場を考えればなァ」
「・・・違ェだろ!テメェだって気づいたはずだ!!」
「・・・あー、落ち着けって多串君」
「土方だ!!」
叫ぶ土方に、銀時は苦笑した。
「しょうがねェだろ。アイツらの考えは何となくわかってるが、止めろと言って止める連中じゃねェし。・・・それに、俺もこう見えて結構いっぱいいっぱいなんだよねェ~」
師の仇の情報を手に入れて、ふと気が緩んだ瞬間に心の奥深くに封じた凶暴な獣が暴れ出しそうになる。
「“ヤツ”ってのは一体何者なんだ?」
「ん~、まぁ、オメーらも巻き込むんだし知ってた方が良いか・・・“ヤツ”ってのはな、俺達にとっちゃ、師の仇だ」
銀時はサラリと言ったが、“ヤツ”の話を聞いた時の銀時の殺気は尋常ではなかった。
「・・・仇、か」
「そ。桂が爆発魔になったのも、高杉が超過激派になったのも、ぜーんぶ師(せんせい)が“ヤツ”に殺されたから・・・ってコト」
お前はどうなんだ、と土方は問いかけようとしてやめた。いっぱいいっぱいだと本人が言うように、確かに今の銀時には余裕がないように見えたからだ。
「・・・そう、か」
だから、そう返事をするだけで精一杯だった。
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