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Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)

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「松陽先生、心配しないでください。桂さんのことも高杉さんのことも、絶対に銀さんが何とかしますから!」

「そうネ!銀ちゃんにかかれば、絶対に何とかなるアル!」

新八と神楽が絶対的な信頼を銀時に向けていることがわかる言葉。

ああ、銀時もまた、人々に頼りにされているのだと実感する。

「そうですぜィ、銀時・・・旦那は頼りになるお人でさァ。俺達、真選組も何度助けられたかしれやせん」

沖田までもがそんなことを言いだし、山崎もその言葉に力いっぱい頷く。

「・・・なぁ、吉田さん。未来のことは心配すんな。俺達が何とかする・・・こう見えても幕臣だからな、ヤツ等が悪いことする前に止めてやる。・・・だから、アンタはヤツ等に今できる限りの愛情を傾けてやってくれ・・・ただ、それだけでいい」

最後に土方が言えば、松陽は泣き笑いのような表情をうかべた。

「・・・ありがとうございます・・・本当に、あの子は幸せ者ですね。このような友人達に巡り会えるとは・・・叶うならば、私もこの眼でその姿を見たかった・・・」

そこに至るまで、ただ平坦な道を歩いてきたわけではないだろうとはわかっているが、こんな未来があるのならば、それも無駄ではないと思えるのだ。

己の教えが、万が一にでも彼等の未来に悪い影響を与えていたのならば、それこそ死んでも死にきれないというものだ。

「銀ちゃんは、今、とっても幸せヨ。・・・私がいて、新八がいて、アネゴがいて・・・ババァと泥棒ネコがいて、タマがいて・・・税金泥棒だって、ちょっとは役に立つし、ヅラだってたまに遊びに来る・・・」

「マジでか!・・・・・・あ」

土方がハッとして声をあげた後、沖田と山崎に白い目を向けられる。

「・・・副長、空気読みましょうよ」

「・・・・・・すまん」

山崎に注意され、申し訳なさそうに頭を下げた土方に失笑が漏れる。

「・・・とにかく、銀ちゃんは幸せネ!!写真とか、持ってたら見せてあげられたのに・・・でもでも、銀ちゃんは幸せそうに笑ってるヨ、私のこととか新八のこととか、先生が銀ちゃん達を見るような目で見てくれる!!」

神楽の言葉に松陽はハッとした。あれ程に荒んだ生活をしていた銀時が、己の元にやって来て、少しでもその空っぽな心に愛情を注げることができたならと思い、いつも愛情たっぷりに視線を、手を、心を向けてきた。

だから、銀時が他人に向けて愛情を向けられる。向けられている。その証明となる言葉に心底ホッとした。

「神楽ちゃん・・・ありがとう。それを聞いて、ホッとしたよ」

目元を緩めた松陽に、懸命に頬を紅潮させながら話していた神楽はフッと力が抜けたようにその場にへたり込んだ。

「か、神楽ちゃん大丈夫?!」

新八が心配そうにその隣にしゃがみこむ。

こくりと頷く神楽にホッと息をつき、新八は松陽に笑顔を向けた。

「僕達が銀さんを守ります。もちろん、銀さんの方が強いですし、僕達を守ろうとしてくれますから、なかなかうまくいきませんけど・・・でも、絶対に傍から離れたりしません」

神楽の言葉と新八の決意。それが松陽にどれだけの希望を与えたのか、彼等にその自覚は無いだろう。

「・・・・・・本当に・・・あの子は幸せ者です・・・」

ほぅ、と、つかえたものが全て無くなったかのように息をついて、松陽は小さく呟いた。




話し合いが終わり、自分達に宛がわれた部屋に戻った土方は、隣でボーっとしている沖田に問う。

「なぁ、本当に・・・話しちまってよかったのかな」

「さァ?・・・でも、松陽先生は喜んでやしたぜィ」

「でも・・・これで、未来が変わっちまったら・・・」

「らしくねェですねィ・・・その時はその時でさァ。松陽先生もこの事は旦那達には話さねェって言ってましたし、人の生き死にに関わるような内容でもないですしねィ」

いつもは意地の悪いもの言いをしてくる沖田も、今日はそんな気分ではないらしくまともな返事が返って来る。

「・・・・・・そう、だよな?」

だから、土方も素直にその言葉を受けとめ、頷いた。

「旦那も桂も高杉も・・・また、この時代の時のように仲良くできたら、イイですね」

山崎がポツリと言う。

新八が大喧嘩と称したアレは、桂一派と鬼兵隊の間に決定的な亀裂を作ったという。

それ以来、鬼兵隊側には危険な噂ばかりが流れ、元々、遠慮も無しに将軍やら真選組やらを狙ってきた高杉が、更に行動をエスカレートさせていっている。

もし、銀時達と和解ができたなら、超過激派と言われる彼が穏健派に変わることも夢ではないのかもしれない。

この時代の高杉はよく笑う。

手配書に描かれているような不敵な笑みではなく、本当に、心底楽しいと思っているような笑み。

クールな一面もあるが、それは銀時や桂の前では霧散する。

それを目にしてしまえば、そんな希望も湧くというものだ。

「・・・戻ったら、本格的にヤツ等の事を調べてみるか・・・」

捕まえるためだけではなく、その思いを知るために。

「そうですねィ・・・しばらくはサボリも無しにしときまさァ」

「・・・・・・それはいつも無しにしとけ」

いつもと違って弱々しく注意し、土方は布団にそのまま倒れ込む。

「・・・この時代の高杉や桂と・・・ちょっと話してみまさァ・・・」

何か、わかることもあるかもしれない、そう呟いて沖田が目を閉じる。

「・・・そうだな、俺も・・・銀時に・・・」

布団に倒れ込んだ途端に襲ってくる眠気に逆らわず、土方もそう呟いて静かに目を閉じた。


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