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Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)

このサイトは、コードギアス・NARUTO・銀魂の二次創作サイトです。原作者様とは一切関係ありません。各ページの注意事項をよく読んでから閲覧してください。

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松陽の家は思いの外広かった。が、そのほとんどは書庫と化していた。

「スゲェな・・・どんだけの資料があるんだ?」

土方が素直に感心して呟けば、銀時はスイ、と彼を見上げた。

「先生、気になったものは全部手に入れてるから、本人でもどれだけあるのかわからないって言ってた」

「・・・マジでか」

神楽が訊ねると、銀時はコクリと頷く。

「えっと、銀さ・・・銀時君は皆が帰った後はいつも何をしてるんですか?」

「オマエ達が来る前は、本読んだり先生と話してたり剣術の稽古をつけてもらったり・・・いろいろ」

新八の問いに銀時はサラリと答える。

「剣は、松陽先生に教えてもらってるんですかィ?」

「うん、授業でもやってるけど・・・それじゃ、本気出せないから」

他の子ども達では銀時の相手にならない。良い所まで行くのは高杉や桂ぐらいだと答える銀時に、沖田は目を細めた。

「へぇ、1度見てみたいですねィ」

「イイよ、道場空いてるし、今から行こうよ」

すんなりと了承して提案した銀時に、全員が目を剥いた。

― あのやる気ゼロのマダオが、ちっちゃな頃はこんなにイイ子でやる気のある子だったなんて!!!

全員がそんな感想を抱いて感激しているとは知らず、銀時は不思議そうに彼等を見つめる。

「・・・ねぇ、行くの?行かないの?」

「い、行きます!」

「うん、行くアル!!」

調子が崩れてしまう程のギャップに戸惑ってばかりだが、この状況を楽しむことにしたらしい子ども達はさっさと銀時の手をとり、道場へと連れ立って行く。

が、手を掴まれた際に銀時がわずかに怯える様子を見せた。子ども達は気付かなかったようだが、土方と沖田は気付いていた。

「・・・まだ、警戒は解けてねェか」

「警戒っていうよりも、本能に近いんじゃねェですかィ?・・・俺達だけじゃなく、多分、塾の子ども達にも・・・壁を作ってるように見えまさァ」

「壁、ねェ・・・野郎、なんであんなに怯えてんだ?」

「・・・本人に聞いても意味無い、でしょうねィ。無自覚みてーだし」

「だろーな」

子どもの頃の銀時の周りを囲むものは優しいものばかりだと思ったが、実際はそうでもないのかもしれない。

土方は肩を竦め、沖田と共に道場へと急いだ。



道場では既に銀時と新八が竹刀を持って対峙していた。

「チャイナ、テメェはやらねェのかィ?」

「私は刀は使わないアル。だから、駄目ネ」

神楽の答えに沖田はへェ、と呟く。

「何ネ。何か文句あるか、サドヤロー」

ギロリと睨んでくる神楽に、沖田は肩を竦めた。

「いや、テメェの事だから、傘でも体術でも何でも使って旦那に相手をしてもらうんじゃねェかと思ったんだがねィ」

「・・・今の銀ちゃんはちっちゃいアル」

大人の銀時であればいざ知らず、子どもの銀時に夜兎の己がかかっていけば、酷い怪我をさせるかもしれない。そんな不安から神楽は銀時に絡むのを諦めたのだ。

竹刀で打ち合う銀時と新八を羨ましそうに見つめながら、神楽は言いきった。

「チャイナの心配は杞憂かもしれねぇぞ」

神楽と沖田の会話をそれとなく耳にしていた土方が、アレを見ろと銀時達を顎でしゃくった。

「・・・え?」

「へェ・・・言うだけはありますねィ」

そこには決まった型は無いものの、一通り道場剣術をこなしているハズの新八をガンガンに攻めている銀時の姿があった。

「ナルホド・・・強ェな。他のガキ共じゃ相手にならねェワケだ。・・・だが、吉田さんに剣術を習ってるって言ってたわりには型がねェし、ハチャメチャだな」

思わず納得した土方だったが、その型の無い剣術に首を傾げた。

「それは、銀時が我流で刀を振り回している時期が長かったからですよ」

不意に、落ち着いた声が耳元で聞こえ、土方はギョッとして後ろを振り向いた。

「うぉっ!?・・・よ、吉田さん!?」

「あ、松陽先生、いたんですかィ」

「先生、よくここがわかったアルな」

沖田や神楽も内心驚きながらも松陽に歩み寄る。

「ええ、音が聞こえてましたからね。・・・夕飯の準備ができたので呼びに来たんですよ」

ニコリと笑う松陽に、土方と沖田は舌を巻いた。

「(・・・気配に全く気付かなかった)」

「(・・・俺や土方のヤローも気付かねェくらい自然に溶け込むなんて、さすが旦那の師匠でさァ)」

「先生、なんで銀ちゃんは我流で刀を振り回してたネ?」

神楽は先程の松陽の言葉に引っかかりを覚えて、疑問を口にした。

「あの子は・・・私に拾われるまで、たった1人で戦場で屍の持つ食料を漁って命を繋いでいたんです。己の身を守るために屍から奪った刀を振り回していたんですよ。あのように幼い子どもが鬼と呼ばれる程にね」

松陽が告げた銀時の過去に、神楽だけでなく土方や沖田も目を丸くした。

「鬼、ですかィ?」

「ええ、“屍を喰らう鬼がいる”という噂を聞いて興味本位で戦場に行ってみたんですがね・・・いたのはあの子1人でした。屍の山に腰掛けてそれらが持っていただろう食料を口にして。・・・最初は警戒心ゆえか、ろくに近づけもしませんでしたが、存外(ぞんがい)聡(さと)い子でしたから説得は容易(たやす)かったですよ」

つい先ほど会ったばかりの自分達に、なぜこうも正直に松陽は話してくれるのか。

その質問を土方がぶつければ、松陽はクスリと笑った。

「貴方達は、初見で銀時を拒絶しませんでした。異世界ではあのような髪色は珍しくないのでしょうが、あの子にとっては奇跡に近い行動なんですよ。だから、貴方達には知っていてもらいたいと思ったんです」

「それって・・・」

「まぁ、この辺りの者達でそんなことを言う大人はおりませんが、中には天人の間者だという者や、鬼だ妖怪だという迷信深い者もおりますからね。・・・だから、銀時は私に客人が来る時はどこかへと身を隠してしまいます。1度“そういうこと”があったので、ね」

そう言って悲しそうに笑う松陽に、何も言うことが出来ずに3人は黙り込んでしまった。

「・・・松陽先生?」

いつの間にか新八に膝をつかせていた銀時が松陽に走り寄る。

「銀時、夕飯の準備が終わりましたよ。さぁ、行きましょう」

悲しそうな笑みを優しげな笑みに変えて手を差し伸べる松陽。銀時はコクンと頷いて自然にその手に自分の手を乗せる。

さすがの銀時も松陽にだけは警戒心を抱いていないらしい。羨ましいと思う反面、やはりと思う。

「ここで・・・旦那の人生は松陽先生によって、180度変わったんですねィ」

「の、ようだな」

尚更、大人の銀時の様子は解せない。

「今の旦那に至るまでに、もう一度、人生180度変わるような出来事があったってことですかねィ」

「かも、しれねェな」

だとしたら、嫌な予感がいや増す。そうそう滅多なコトで人生が2度も180度変わるなんて事はないだろう。

「・・・土方さん、さっきから俺の言葉に頷いてるだけですぜィ?マヨ切れですかィ?」

「・・・考え事だ、ほっとけ」

フィ、と土方は沖田から顔を背け、ゆっくりと松陽達の後を追うように歩き出す。

「まァた、旦那の過去ってヤツを知っちまってやり辛くなるとか、難しく考えてやがるねィ、ありゃァ」

「マヨのコトなんてこの際どうでもいいネ、ただ、元の時代に帰った時に銀ちゃんに過去について何か言うつもりなら、容赦はしないアル」

鋭い殺気を向けてくる神楽に、沖田は口の端をあげた。

「わかってらァ、俺だって旦那に嫌われんのはごめんでィ」

そう言って沖田は神楽に背を向ける。

「そっちのメガネ起こして、さっさと来なァ。飯、食いっぱぐれるぜィ」

「言われなくてもそうするアル!!」

神楽は叫び、荒く息をつく新八の傍に走り寄った。

「新八ィ、大丈夫アルか?」

「・・・う、うん。大丈夫・・・あ~ぁ。銀さん、僕よりひと回り以上も小さいのに、押し負けちゃったよ」

項垂れた新八に、神楽は自分のことのように誇らしげに胸を張った。

「当たり前ネ、銀ちゃんは最強アル。駄メガネが勝てるわけないネ。身の程知れヨ」

「・・・事実だけど、その言い方すっごい傷つくんですけどォォオオ!!!」

道場に新八の叫びがこだました。


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