Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・W副長設定です!
・カップリングはありません
・完全捏造です
・二次創作だということをご理解したうえでお読みください!
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
6月。ミツバの死より半年。
喪が明けた後に正式に結成することになっている真選組の屯所への引っ越し作業が始まった。
「近藤さん、コレどこに運んだらいいっスか~?」
「あぁ、その荷物はこっちに運んでくれ」
「へーい!」
バタバタと門下生一同が荷物の運び出しをする中、ほっかむりをした銀時は木陰の下でぐったりとしていた。
「・・・銀兄ィ、大丈夫?」
「ダメ・・・もー、ダメ・・・」
心配した沖田が銀時の顔をのぞき込むと完全に日焼けで鼻の頭が赤くなっていた。
「うわ、けっこうな範囲で焼けてらァ・・・銀兄ィって、色白いし、目立つよなァ」
「う゛~・・・なんで、こんなに暑いんだよォ・・・しかも、梅雨っていつあったの!?雨全然降らなかったじゃん!!」
そう、梅雨もおしめり程度で終わってしまい、しかも今年は例年になく暑い。暑いのが苦手な銀時にとっては地獄のような毎日なのだ。
「まぁ・・・お天道様のご機嫌次第ってトコ?」
「つか、なんで夏に引っ越しなの!!もーちょっと涼しくなってからでいいじゃん!!」
「あー・・・」
それはもう何度も説明したのだが、銀時は納得いかないらしい。
曰く、早めに江戸に腰を据えておけば正式に稼働したときに困らない。とか、屯所が完成したのが春であまり放置しておくと屋敷が傷む。とか・・・。
まぁ諸々あるのだが、結局のところ幕府官僚が江戸入りを急かしている、というのが大きな理由だったりする。
「くそぅ・・・あれから何度かご機嫌取りに行ってるのにィイイイ!!クソジジィ共めェエエエ!!!」
初顔合わせ以来、何度か幕府官僚に呼ばれて銀時は江戸に行っている。
そのときは必ず松平か伊東がくっついて行くのだが、結局は追い出されて銀時一人が相手をさせられているというのが現状だったらしい。
どうやら見目が綺麗な銀時は幕府官僚のお気に入り(暴れなければ怖くないから)になったらしく、酒の席で酌をさせられているらしいと知った時の近藤達のブチキレっぷりはそれはもうすごかった。
―――俺達でも“お銀ちゃん”にお酌してもらったのなんて随分前なのに!!!
と大騒ぎし、幕府官僚相手に“女装”はしてないから!と叫ぶ銀時に半泣き状態で懇願して、(女装はなしで)酌をしてもらったのはついこの間の出来事である。
「・・・えっと・・・まぁ、良いじゃん。お気に入りになったんなら、ホラ、やりやすいっていうか・・・」
恨めしげに空を見上げてうめく銀時の頭を、ほっかむりの上から撫でて沖田は苦笑する。
居候を始めて少し経ち、近藤達に気を許した頃から徐々にだが“本性”というか“素の銀時”というのは見え始めてきてはいたのだが、最近は完全に最初の頃の悲壮感はどこ行った!?的な“子どもっぽさ”と“ぐーたらぶり”が目につくようになった。
実際に、頬を膨らませて膝を抱えている姿は完全に子どもそのものだ。
「えー・・・それはそれで、ちょー面倒・・・」
ぐて、と木にもたれかかり、銀時は溜息を漏らす。
「あ~ぁ、江戸もあちィかなァ・・・」
「大きなビル?とかがあるから、暑いって聞いたけど・・・でも、こうなったらどこでも一緒だろィ?」
「そーなんだけどォ・・・」
グダグダと文句を言っていた銀時と沖田の元に、目を吊り上げた土方が駆け寄って来る。
「オイ、コラ銀時!!テメェ、なにサボってやがる!!」
「うあ・・・鬼が来た」
「だァれが鬼だ!!誰が!!」
がなる土方を愉快気に目を細めて見つめていた沖田が口の端をあげる。
「そりゃ、もちろん・・・“土方副長”でさァ」
組織図を提出後、正式に役職が決定したときに、沖田はころりと土方への態度を変えた。
それは、ミツバが死んで少しした頃から土方が沖田を子ども扱いするのを止め、徹底的に“一人前”として扱うようになっていたせいもあるのだろう。
昔のように感情を露わにして土方にくってかかることがなくなったぶん、こうして茶化す行動が目立つようになって可愛げがないと胸の内でぼやく。
「・・・“総悟”、テメェも自分のぶんの荷物は運び終わったんだろうなァ?」
「終わりやしたよ?・・・引っ越しの陣頭指揮してんだったら、それぞれの行動くらい把握しておいて貰いてェですねィ?」
「あ゛ぁ゛?」
いつになく目つきの悪い土方がガンを飛ばすと、沖田はそれを鼻で笑う。
「フン、暑くて機嫌が悪ィからって他人にあたるのはやめてくだせェ。あぁ、ヤダヤダ。だから鬼なんて言われるんでさァ」
土方は細々とした所に目が行くぶん、口うるさくなってしまうのは仕方のないことなのだが、門下生からは(もちろん愛情を込めて)鬼と呼ばれるようになってしまった。
「・・・だらしなくしてっと、幕府のお偉方に文句言われんのはとっつぁんや銀時なんだぞ?・・・副長の俺にガミガミ言われるくらい我慢しやがれってんだ」
とは言うものの、兄弟のように暮らしてきた仲間から“副長”なんて呼ばれると、壁が作られてしまったようで淋しいと思う。
が、
近藤が“局長”なんて呼ばれるのは慣れないとボヤいて、伊東に自覚が足らないと怒られていたのであくまでも思うだけに留めている。
「オラ、銀時!!テメェもそこでくたばってねェで、ちゃっちゃと動け!」
「十四郎~・・・ホント、ちょっと休ましてぇ~・・・俺、もう荷物まとめただけで、溶けちゃうぅ~」
もたれていた木にしがみついて銀時が訴えるのを見て、土方は溜息をもらす。
「・・・はァ、お前なぁ・・・どんだけ暑さに弱いんだよ・・・」
「銀兄ィって・・・雪女?」
「それ言うなら、雪男だろ!?女じゃねェから!!・・・つかなんで!?なんで皆して俺を女扱いしようとする!?」
「「え?・・・可愛いから?」」
思わずといった様子で答えた土方と沖田の声が揃い、銀時は口元を引きつらせた。
「・・・こんなことで声合わすなァアアアアアアア!!!」
***
そして、江戸に大荷物を載せた自動車でやってきた皆は、呆然とその場に立ち竦んだ。
「・・・はー・・・ここが、屯所・・・」
しょっちゅう江戸にあがっていた銀時や伊東以外の面々は、初めてこの屯所を目にすることになる。
周りの天人製のビルとは違って、純和風の造りになっている屯所はどこか武州の道場にも似た雰囲気があって、近藤は内心ホッとしながらもその広さに呆気にとられた。
大きな看板が門に打ちつけられていて、ちゃんと武装警察真選組の文字が書かれている。
「まぁ、幕府の組織になるわけだし・・・貧相なのはよろしくないだろうというのと、坂田くんが頑張ってくれたからね」
くい、と眼鏡を持ちあげた伊東に、門下生のギラッとした視線が向けられる。
「伊東さん・・・どういうことっスか?」
「俺達のお銀ちゃんが・・・どう頑張ったって言うんです?」
「・・・・・・殺気立たないでくれるかな?・・・まったく、坂田くんのことになると、本当に目の色を変えるね君達は。言っておくけど、ただの交渉だよ。・・・あんな風だけれど、坂田くんは交渉術にも長けていたようだ」
あんな風、と伊東に言われた銀時の方へと皆の視線が向くと、暑さでぐでんぐでんになって外壁とお友達になっていた。
「ああっ、あの壁が羨ましいッ!!」
「あッ!!頬ずりしてるッッ!!ちょ、誰か、後であの壁剥がしてこい!!」
暑さで(?)ちょっと錯乱し始めた隊士達に、伊東は溜息をもらした。
「・・・・・・落ち着きたまえ・・・みっともない・・・」
「そうだぞテメェ等・・・いちいち反応してんじゃねェよ」
そこに屯所の周辺を確認していた土方が戻って来て、呆れた声を出す。
「だって、副長~・・・お銀ちゃん、ちょう可愛いんっスよ~!!」
「見てくださいよ!アレ!・・・もう、すっげー幸せそうな顔して壁に頬ずりをッ!!」
「・・・漆喰塗りだから冷てェしな・・・」
プルプルと震える手を握り締め、土方は眉間にしわを寄せる。
すわ、鬼の降臨かと隊士達が身構えたときだった。
「・・・・・・おい、誰か、あの壁斬りとって来い」
土方が真顔で錯乱した隊士達と似たり寄ったりなことを言い放ち、伊東はガクッと肩を落とした。
「・・・土方くん、君もか。・・・まぁ、確かに坂田くんはけしからんほど可愛らしいが・・・」
―――どうやら伊東までほだされ始めてきたらしい。
と、そこに何かの器を持った沖田が、銀時に近寄る。
「銀兄ィ、氷がそこで売ってたよ、ホラ、銀兄ィの分」
「!!・・・ありがとう!!そーちゃん!!!」
ひしッっと銀時にしがみつかれ、更には銀時に餌付けするように氷をあーんしてやっている沖田に、羨望の視線が向けられる。
ちらり、と沖田の視線が土方達の方へ向けられ・・・ニヤリ、と笑ったその顔はどこぞの悪代官すらも尻尾を巻いて逃げ出すほどにあくどかった。
「「「「「(あ・・・あんの、くそガキャアアアアアアアッ!!!!)」」」」」
幸せそうに氷を口に含んでいる銀時はとても可愛らしいのだが、それをあーんしている沖田は全然可愛くない。
「美味しいですかィ、銀兄ィ」
「うめェ!!マジうめェよ、そーちゃん!!」
「ははは、銀時、良かったなァ・・・」
ナデナデ・・・
「「「「「え?」」」」」
屯所を見て呆けていた近藤がいつの間にか銀時の傍にいて、沖田に餌付けされている彼の頭を撫でていた。
「・・・近藤さん・・・まさかの抜け駆け・・・」
土方が呆然と呟く。
他の隊士、特に土方が自分達に近づこうものなら全力で阻止するだろう沖田が、唯一行動を邪魔できない人間・・・それが近藤だ。
「土方くん・・・天然、だよね?・・・近藤さんは、天然でああやって行動してるんだよね?」
伊東が土方の袖をクイ、と引っ張る。
アレが計算されつくした行動なら、近藤勲という人物像を見直さなければならなくなる。
「・・・・・・だ、だと信じたい・・・」
長年の付き合いである土方ですら、近藤のこの行動にはめんくらっている。
――――――まさかの近藤腹黒説が浮上した瞬間だった。
***
そんなことがありながらも、なんとか荷物を運び込んだ一同は遅い昼食をとっていた。
「おーう、お疲れさーん」
「あ、とっつぁん!」
「いらっしゃい、とっつぁん!!」
そこに松平が大きな荷物を抱えた者達と共にやって来る。
「なんだァ、今、飯食ってんのかァ?・・・なら、これはおやつというより昼飯になりそうだなァ」
松平が紙袋を差し出し、近藤がそれを受け取る。
「・・・ありがとう、とっつぁん!・・・おお、これ豆大福じゃないか」
「まめだいふく!!」
きらりんと目を輝かせた銀時に、近藤は苦笑して真っ先に豆大福を渡してやる。
「銀時はあんこも好きだからな~」
「ふん、ふひ(うん、好き)!!!・・・ングッ!」
「一口で食うな!!一口で!!つか、食いながらしゃべんな!!だから喉詰まらせんだ!!」
夢中でほおばっていた銀時が喉を詰まらせるのを見て、慌てて土方がお茶を差し出す。
ごくごくとお茶を飲んで豆大福を流し込むと、銀時は安堵の溜息をもらした。
「はぁ~・・・死ぬかと思った」
「・・・大福を喉に詰まらせて死んだら、真選組副長の名が泣くぞ・・・」
呆れたように言った土方に、銀時は笑みを向ける。
「え、俺・・・それなら本望」
「・・・アホか・・・ったく、近藤さんからもなんとか言ってやってくれよ・・・」
「はは、銀時・・・今度からは良く噛んで食べようなァ?」
「ああ、わかった近藤さん」
「・・・・・・違ぇし!!」
バシっと畳を叩きながら土方がツッコミを入れれば、近藤と銀時のキョトンとした顔が向けられる。
「え?トシ、何か違った?」
「食い方の話じゃねェの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・もう、いい・・・」
自覚云々とここでのたまったところで、豆大福の余韻に浸っている銀時と、天然ゴリr・・・失礼、天然な近藤には通じないとそろそろ学習してきた土方である。
銀時はともかくとして、近藤は道場で竹刀や木刀を振り回している時とは全く違うのだと、一体いつになったら自覚してくれるのか。
副長である自分がしっかりしなくては、と土方は改めて心に誓ったのだった。
「・・・で、その後ろの大荷物は何なんでィ、とっつぁん」
沖田が指させば、ああそう言えばと隊士達の視線が松平の背後に向けられる。
「おう、これはなァ・・・テメェ等の隊服だよォ。こっちに引っ越してくんのに間に合うようにあつらえさせたんだからなァ~?」
「隊服?そういや銀時と伊東が言ってたな」
土方が運び込まれた行李のうち一つのふたを開ける。
「そっちは幹部用ォ、隊長以上がそれを着なァ。・・・で、一般の隊士用はあっち。一応テメェ等体型は似たり寄ったりだし、洗い替え用に一人二着持ってりゃ、充分だろォ?」
「おお、助かるよ、とっつぁん!!」
近藤が一般の隊士用の隊服が入った行李を開けてそれぞれに配ってやっていると、それをじっと見つめていた土方がポツリと呟く。
「髷も下げ髪(ポニーテールのこと)も、この隊服にゃ似合わねェなぁ・・・」
それには全員がハッとして自分の頭に手をやった。
隊士の中で短髪なのは銀時、伊東、沖田、山崎、そしてハゲ・・・もとい、原田のみ。それ以外は髷を結っているか下げ髪にしている。
「ふっふっふ・・・そう言うだろうと思ってなァ~・・・オジサン、知り合いの床屋連れて来たんだよォ~」
どこまでも用意がいい男・松平の一声で、真選組の新出発を兼ねた断髪式が執り行われた。
「・・・頭がすーすーする・・・」
「あー、髪切ると、こんなに軽くなるんだなァ」
「お前は元から頭軽いだろ」
「違ェねェや!」
「ウルセェ!!」
「あははは!」
断髪を終えた隊士達がスッキリとした表情で軽口を叩きあう。
「おい、髪切った連中から隊服に着替えとけ。型が合わなかったら変えてもらわなきゃならねェんだからな」
こちらもまたバッサリと髪を切って隊服に着替え終えた土方が命じれば、慌てて隊士達は隊服に着替え始める。
「銀兄ィ、コレどうやってやるの?」
そんな中、幹部用隊服のスカーフが巻けずにいた沖田が、既に着替え終わっていた銀時にぴっとりとひっつく。
「ん~・・・こうやってこう・・・で、こうやってこうすんの。まぁ、慣れるまではやってやるから持っといで」
「うん!ありがと!!銀兄ィ!!」
ご機嫌の沖田に、土方は苦笑する。
銀時ほどではないが器用な沖田ができないほど複雑な結び方ではない。実際、土方ですら伊東に一回説明を受けただけで巻けたのだから。
銀時もそれはわかっているはずだが、普段一人前扱いしているからこういう時に甘やかしてやりたいのだろうと察する。
「こうやって隊服を着ると、身が引き締まる思いだなぁ」
そう呟き、違和感を感じているのか後頭部に手をやりつつ近藤が土方に歩み寄る。
「・・・ちったァ、自覚も出てきたか?」
「ん~・・・どうだろうなぁ・・・まだ、気持ちがふわふわしてるよ」
苦笑いをうかべる近藤に、土方はくすりと笑った。
「ま、そのうち嫌でも自覚が出てくんだろ。・・・俺だって、まだどう動いたらいいのかわからねェ・・・真選組の仕事はただのケンカとは違うからな」
「・・・そうだなぁ・・・でも、なんとかなるさ!俺も銀時も伊東くんも、総悟だっている。皆で支え合って頑張っていこう!」
バシッと背中を思いっきり叩かれ、土方はたたらを踏む。
「いだっ!!」
「お、すまんすまん!力が入り過ぎたか!」
カラカラと笑う近藤を怒る気にもなれず、土方は軽く息を吐いた。
真選組の本格的な稼働まであと半年―――いつまでこの空気が保たれるのか。
いつかの銀時に酌をねだった飲み会で彼がこぼした呟きを土方は忘れられずにいた。
―――清濁併せ呑む。アイツ等にそれができなきゃ、俺達が始末することになるぞ・・・覚悟しとけ。
銀時は覚悟は出来ているのだろうか。
あの後、のらりくらりとかわされてまともに話をすることができずに、江戸まで来てしまった。
自分で考えろ、ということなのだろうとはわかっているが、自分はそこまで鬼になりきれるのか。
土方は一抹の不安を抱えて、今は隊服にはしゃいでいる仲間達を見やったのだった。
第一章・完
☆イメージ画☆
↑そーちゃんを甘やかす銀ちゃんなシーン♪
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「へーい!」
バタバタと門下生一同が荷物の運び出しをする中、ほっかむりをした銀時は木陰の下でぐったりとしていた。
「・・・銀兄ィ、大丈夫?」
「ダメ・・・もー、ダメ・・・」
心配した沖田が銀時の顔をのぞき込むと完全に日焼けで鼻の頭が赤くなっていた。
「うわ、けっこうな範囲で焼けてらァ・・・銀兄ィって、色白いし、目立つよなァ」
「う゛~・・・なんで、こんなに暑いんだよォ・・・しかも、梅雨っていつあったの!?雨全然降らなかったじゃん!!」
そう、梅雨もおしめり程度で終わってしまい、しかも今年は例年になく暑い。暑いのが苦手な銀時にとっては地獄のような毎日なのだ。
「まぁ・・・お天道様のご機嫌次第ってトコ?」
「つか、なんで夏に引っ越しなの!!もーちょっと涼しくなってからでいいじゃん!!」
「あー・・・」
それはもう何度も説明したのだが、銀時は納得いかないらしい。
曰く、早めに江戸に腰を据えておけば正式に稼働したときに困らない。とか、屯所が完成したのが春であまり放置しておくと屋敷が傷む。とか・・・。
まぁ諸々あるのだが、結局のところ幕府官僚が江戸入りを急かしている、というのが大きな理由だったりする。
「くそぅ・・・あれから何度かご機嫌取りに行ってるのにィイイイ!!クソジジィ共めェエエエ!!!」
初顔合わせ以来、何度か幕府官僚に呼ばれて銀時は江戸に行っている。
そのときは必ず松平か伊東がくっついて行くのだが、結局は追い出されて銀時一人が相手をさせられているというのが現状だったらしい。
どうやら見目が綺麗な銀時は幕府官僚のお気に入り(暴れなければ怖くないから)になったらしく、酒の席で酌をさせられているらしいと知った時の近藤達のブチキレっぷりはそれはもうすごかった。
―――俺達でも“お銀ちゃん”にお酌してもらったのなんて随分前なのに!!!
と大騒ぎし、幕府官僚相手に“女装”はしてないから!と叫ぶ銀時に半泣き状態で懇願して、(女装はなしで)酌をしてもらったのはついこの間の出来事である。
「・・・えっと・・・まぁ、良いじゃん。お気に入りになったんなら、ホラ、やりやすいっていうか・・・」
恨めしげに空を見上げてうめく銀時の頭を、ほっかむりの上から撫でて沖田は苦笑する。
居候を始めて少し経ち、近藤達に気を許した頃から徐々にだが“本性”というか“素の銀時”というのは見え始めてきてはいたのだが、最近は完全に最初の頃の悲壮感はどこ行った!?的な“子どもっぽさ”と“ぐーたらぶり”が目につくようになった。
実際に、頬を膨らませて膝を抱えている姿は完全に子どもそのものだ。
「えー・・・それはそれで、ちょー面倒・・・」
ぐて、と木にもたれかかり、銀時は溜息を漏らす。
「あ~ぁ、江戸もあちィかなァ・・・」
「大きなビル?とかがあるから、暑いって聞いたけど・・・でも、こうなったらどこでも一緒だろィ?」
「そーなんだけどォ・・・」
グダグダと文句を言っていた銀時と沖田の元に、目を吊り上げた土方が駆け寄って来る。
「オイ、コラ銀時!!テメェ、なにサボってやがる!!」
「うあ・・・鬼が来た」
「だァれが鬼だ!!誰が!!」
がなる土方を愉快気に目を細めて見つめていた沖田が口の端をあげる。
「そりゃ、もちろん・・・“土方副長”でさァ」
組織図を提出後、正式に役職が決定したときに、沖田はころりと土方への態度を変えた。
それは、ミツバが死んで少しした頃から土方が沖田を子ども扱いするのを止め、徹底的に“一人前”として扱うようになっていたせいもあるのだろう。
昔のように感情を露わにして土方にくってかかることがなくなったぶん、こうして茶化す行動が目立つようになって可愛げがないと胸の内でぼやく。
「・・・“総悟”、テメェも自分のぶんの荷物は運び終わったんだろうなァ?」
「終わりやしたよ?・・・引っ越しの陣頭指揮してんだったら、それぞれの行動くらい把握しておいて貰いてェですねィ?」
「あ゛ぁ゛?」
いつになく目つきの悪い土方がガンを飛ばすと、沖田はそれを鼻で笑う。
「フン、暑くて機嫌が悪ィからって他人にあたるのはやめてくだせェ。あぁ、ヤダヤダ。だから鬼なんて言われるんでさァ」
土方は細々とした所に目が行くぶん、口うるさくなってしまうのは仕方のないことなのだが、門下生からは(もちろん愛情を込めて)鬼と呼ばれるようになってしまった。
「・・・だらしなくしてっと、幕府のお偉方に文句言われんのはとっつぁんや銀時なんだぞ?・・・副長の俺にガミガミ言われるくらい我慢しやがれってんだ」
とは言うものの、兄弟のように暮らしてきた仲間から“副長”なんて呼ばれると、壁が作られてしまったようで淋しいと思う。
が、
近藤が“局長”なんて呼ばれるのは慣れないとボヤいて、伊東に自覚が足らないと怒られていたのであくまでも思うだけに留めている。
「オラ、銀時!!テメェもそこでくたばってねェで、ちゃっちゃと動け!」
「十四郎~・・・ホント、ちょっと休ましてぇ~・・・俺、もう荷物まとめただけで、溶けちゃうぅ~」
もたれていた木にしがみついて銀時が訴えるのを見て、土方は溜息をもらす。
「・・・はァ、お前なぁ・・・どんだけ暑さに弱いんだよ・・・」
「銀兄ィって・・・雪女?」
「それ言うなら、雪男だろ!?女じゃねェから!!・・・つかなんで!?なんで皆して俺を女扱いしようとする!?」
「「え?・・・可愛いから?」」
思わずといった様子で答えた土方と沖田の声が揃い、銀時は口元を引きつらせた。
「・・・こんなことで声合わすなァアアアアアアア!!!」
***
そして、江戸に大荷物を載せた自動車でやってきた皆は、呆然とその場に立ち竦んだ。
「・・・はー・・・ここが、屯所・・・」
しょっちゅう江戸にあがっていた銀時や伊東以外の面々は、初めてこの屯所を目にすることになる。
周りの天人製のビルとは違って、純和風の造りになっている屯所はどこか武州の道場にも似た雰囲気があって、近藤は内心ホッとしながらもその広さに呆気にとられた。
大きな看板が門に打ちつけられていて、ちゃんと武装警察真選組の文字が書かれている。
「まぁ、幕府の組織になるわけだし・・・貧相なのはよろしくないだろうというのと、坂田くんが頑張ってくれたからね」
くい、と眼鏡を持ちあげた伊東に、門下生のギラッとした視線が向けられる。
「伊東さん・・・どういうことっスか?」
「俺達のお銀ちゃんが・・・どう頑張ったって言うんです?」
「・・・・・・殺気立たないでくれるかな?・・・まったく、坂田くんのことになると、本当に目の色を変えるね君達は。言っておくけど、ただの交渉だよ。・・・あんな風だけれど、坂田くんは交渉術にも長けていたようだ」
あんな風、と伊東に言われた銀時の方へと皆の視線が向くと、暑さでぐでんぐでんになって外壁とお友達になっていた。
「ああっ、あの壁が羨ましいッ!!」
「あッ!!頬ずりしてるッッ!!ちょ、誰か、後であの壁剥がしてこい!!」
暑さで(?)ちょっと錯乱し始めた隊士達に、伊東は溜息をもらした。
「・・・・・・落ち着きたまえ・・・みっともない・・・」
「そうだぞテメェ等・・・いちいち反応してんじゃねェよ」
そこに屯所の周辺を確認していた土方が戻って来て、呆れた声を出す。
「だって、副長~・・・お銀ちゃん、ちょう可愛いんっスよ~!!」
「見てくださいよ!アレ!・・・もう、すっげー幸せそうな顔して壁に頬ずりをッ!!」
「・・・漆喰塗りだから冷てェしな・・・」
プルプルと震える手を握り締め、土方は眉間にしわを寄せる。
すわ、鬼の降臨かと隊士達が身構えたときだった。
「・・・・・・おい、誰か、あの壁斬りとって来い」
土方が真顔で錯乱した隊士達と似たり寄ったりなことを言い放ち、伊東はガクッと肩を落とした。
「・・・土方くん、君もか。・・・まぁ、確かに坂田くんはけしからんほど可愛らしいが・・・」
―――どうやら伊東までほだされ始めてきたらしい。
と、そこに何かの器を持った沖田が、銀時に近寄る。
「銀兄ィ、氷がそこで売ってたよ、ホラ、銀兄ィの分」
「!!・・・ありがとう!!そーちゃん!!!」
ひしッっと銀時にしがみつかれ、更には銀時に餌付けするように氷をあーんしてやっている沖田に、羨望の視線が向けられる。
ちらり、と沖田の視線が土方達の方へ向けられ・・・ニヤリ、と笑ったその顔はどこぞの悪代官すらも尻尾を巻いて逃げ出すほどにあくどかった。
「「「「「(あ・・・あんの、くそガキャアアアアアアアッ!!!!)」」」」」
幸せそうに氷を口に含んでいる銀時はとても可愛らしいのだが、それをあーんしている沖田は全然可愛くない。
「美味しいですかィ、銀兄ィ」
「うめェ!!マジうめェよ、そーちゃん!!」
「ははは、銀時、良かったなァ・・・」
ナデナデ・・・
「「「「「え?」」」」」
屯所を見て呆けていた近藤がいつの間にか銀時の傍にいて、沖田に餌付けされている彼の頭を撫でていた。
「・・・近藤さん・・・まさかの抜け駆け・・・」
土方が呆然と呟く。
他の隊士、特に土方が自分達に近づこうものなら全力で阻止するだろう沖田が、唯一行動を邪魔できない人間・・・それが近藤だ。
「土方くん・・・天然、だよね?・・・近藤さんは、天然でああやって行動してるんだよね?」
伊東が土方の袖をクイ、と引っ張る。
アレが計算されつくした行動なら、近藤勲という人物像を見直さなければならなくなる。
「・・・・・・だ、だと信じたい・・・」
長年の付き合いである土方ですら、近藤のこの行動にはめんくらっている。
――――――まさかの近藤腹黒説が浮上した瞬間だった。
***
そんなことがありながらも、なんとか荷物を運び込んだ一同は遅い昼食をとっていた。
「おーう、お疲れさーん」
「あ、とっつぁん!」
「いらっしゃい、とっつぁん!!」
そこに松平が大きな荷物を抱えた者達と共にやって来る。
「なんだァ、今、飯食ってんのかァ?・・・なら、これはおやつというより昼飯になりそうだなァ」
松平が紙袋を差し出し、近藤がそれを受け取る。
「・・・ありがとう、とっつぁん!・・・おお、これ豆大福じゃないか」
「まめだいふく!!」
きらりんと目を輝かせた銀時に、近藤は苦笑して真っ先に豆大福を渡してやる。
「銀時はあんこも好きだからな~」
「ふん、ふひ(うん、好き)!!!・・・ングッ!」
「一口で食うな!!一口で!!つか、食いながらしゃべんな!!だから喉詰まらせんだ!!」
夢中でほおばっていた銀時が喉を詰まらせるのを見て、慌てて土方がお茶を差し出す。
ごくごくとお茶を飲んで豆大福を流し込むと、銀時は安堵の溜息をもらした。
「はぁ~・・・死ぬかと思った」
「・・・大福を喉に詰まらせて死んだら、真選組副長の名が泣くぞ・・・」
呆れたように言った土方に、銀時は笑みを向ける。
「え、俺・・・それなら本望」
「・・・アホか・・・ったく、近藤さんからもなんとか言ってやってくれよ・・・」
「はは、銀時・・・今度からは良く噛んで食べようなァ?」
「ああ、わかった近藤さん」
「・・・・・・違ぇし!!」
バシっと畳を叩きながら土方がツッコミを入れれば、近藤と銀時のキョトンとした顔が向けられる。
「え?トシ、何か違った?」
「食い方の話じゃねェの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・もう、いい・・・」
自覚云々とここでのたまったところで、豆大福の余韻に浸っている銀時と、天然ゴリr・・・失礼、天然な近藤には通じないとそろそろ学習してきた土方である。
銀時はともかくとして、近藤は道場で竹刀や木刀を振り回している時とは全く違うのだと、一体いつになったら自覚してくれるのか。
副長である自分がしっかりしなくては、と土方は改めて心に誓ったのだった。
「・・・で、その後ろの大荷物は何なんでィ、とっつぁん」
沖田が指させば、ああそう言えばと隊士達の視線が松平の背後に向けられる。
「おう、これはなァ・・・テメェ等の隊服だよォ。こっちに引っ越してくんのに間に合うようにあつらえさせたんだからなァ~?」
「隊服?そういや銀時と伊東が言ってたな」
土方が運び込まれた行李のうち一つのふたを開ける。
「そっちは幹部用ォ、隊長以上がそれを着なァ。・・・で、一般の隊士用はあっち。一応テメェ等体型は似たり寄ったりだし、洗い替え用に一人二着持ってりゃ、充分だろォ?」
「おお、助かるよ、とっつぁん!!」
近藤が一般の隊士用の隊服が入った行李を開けてそれぞれに配ってやっていると、それをじっと見つめていた土方がポツリと呟く。
「髷も下げ髪(ポニーテールのこと)も、この隊服にゃ似合わねェなぁ・・・」
それには全員がハッとして自分の頭に手をやった。
隊士の中で短髪なのは銀時、伊東、沖田、山崎、そしてハゲ・・・もとい、原田のみ。それ以外は髷を結っているか下げ髪にしている。
「ふっふっふ・・・そう言うだろうと思ってなァ~・・・オジサン、知り合いの床屋連れて来たんだよォ~」
どこまでも用意がいい男・松平の一声で、真選組の新出発を兼ねた断髪式が執り行われた。
「・・・頭がすーすーする・・・」
「あー、髪切ると、こんなに軽くなるんだなァ」
「お前は元から頭軽いだろ」
「違ェねェや!」
「ウルセェ!!」
「あははは!」
断髪を終えた隊士達がスッキリとした表情で軽口を叩きあう。
「おい、髪切った連中から隊服に着替えとけ。型が合わなかったら変えてもらわなきゃならねェんだからな」
こちらもまたバッサリと髪を切って隊服に着替え終えた土方が命じれば、慌てて隊士達は隊服に着替え始める。
「銀兄ィ、コレどうやってやるの?」
そんな中、幹部用隊服のスカーフが巻けずにいた沖田が、既に着替え終わっていた銀時にぴっとりとひっつく。
「ん~・・・こうやってこう・・・で、こうやってこうすんの。まぁ、慣れるまではやってやるから持っといで」
「うん!ありがと!!銀兄ィ!!」
ご機嫌の沖田に、土方は苦笑する。
銀時ほどではないが器用な沖田ができないほど複雑な結び方ではない。実際、土方ですら伊東に一回説明を受けただけで巻けたのだから。
銀時もそれはわかっているはずだが、普段一人前扱いしているからこういう時に甘やかしてやりたいのだろうと察する。
「こうやって隊服を着ると、身が引き締まる思いだなぁ」
そう呟き、違和感を感じているのか後頭部に手をやりつつ近藤が土方に歩み寄る。
「・・・ちったァ、自覚も出てきたか?」
「ん~・・・どうだろうなぁ・・・まだ、気持ちがふわふわしてるよ」
苦笑いをうかべる近藤に、土方はくすりと笑った。
「ま、そのうち嫌でも自覚が出てくんだろ。・・・俺だって、まだどう動いたらいいのかわからねェ・・・真選組の仕事はただのケンカとは違うからな」
「・・・そうだなぁ・・・でも、なんとかなるさ!俺も銀時も伊東くんも、総悟だっている。皆で支え合って頑張っていこう!」
バシッと背中を思いっきり叩かれ、土方はたたらを踏む。
「いだっ!!」
「お、すまんすまん!力が入り過ぎたか!」
カラカラと笑う近藤を怒る気にもなれず、土方は軽く息を吐いた。
真選組の本格的な稼働まであと半年―――いつまでこの空気が保たれるのか。
いつかの銀時に酌をねだった飲み会で彼がこぼした呟きを土方は忘れられずにいた。
―――清濁併せ呑む。アイツ等にそれができなきゃ、俺達が始末することになるぞ・・・覚悟しとけ。
銀時は覚悟は出来ているのだろうか。
あの後、のらりくらりとかわされてまともに話をすることができずに、江戸まで来てしまった。
自分で考えろ、ということなのだろうとはわかっているが、自分はそこまで鬼になりきれるのか。
土方は一抹の不安を抱えて、今は隊服にはしゃいでいる仲間達を見やったのだった。
第一章・完
☆イメージ画☆
↑そーちゃんを甘やかす銀ちゃんなシーン♪
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