Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・一期25話以降設定、R2無し
・ナリタ事変はなかったことに
・父母・V.V.・C.C.の元祖共犯組とルルナナが仲良し
・↑の共犯で“優しい世界構築プログラム”を遂行
・ということで、スザクとか騎士団とかその他にも厳しい表現アリ
・でも、ギャグっぽい
・捏造満載
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
「・・・っつ・・・。」
むくりとベッドから起き上がり、ルルーシュは頬を押さえた。
「・・・強く叩きつけてくれて・・・まったく。あの体力馬鹿が。」
「しょうがないわ。スザク君は何も知らないんでしょう?」
クスクスと隣から笑う声がして、ルルーシュはギョッとする。
「・・・い、いたんですか、母さん。」
「ふふ。・・・ちょっと前から、ね?」
ニッコリと笑う母の姿は、本当の母の身体ではなかった。
ナイト・オブ・ラウンズの6席、アーニャ・アールストレイム。7年前、アリエスの離宮へ行儀見習いに来ていた少女の身体を借りているのだ。
「・・・はぁ。びっくりしたじゃないですか。」
溜め息をつくルルーシュに、母は嬉しそうに笑う。
「しばらく見ない間に、おっきくなったわね。ホント、『優しい世界構築プロジェクト』の為とはいえ、7年間も離れるなんて、耐えられないって思ってたのに・・・。」
「・・・長かったですね。でも、C.C.が動き出す直前に、クロヴィス兄さんに捕まるなんてことが無ければ、もう少し穏便な方法も取れたのでしょうに。」
「ホント。クロヴィスも余計なことしてくれたわよね?あと、ユーフェミアも、かしら。」
「・・・ユフィは・・・本当は、行政特区をそのまま活かしたかったんですけど・・・まさか、あそこでギアスが暴走するなんて・・・。残念です。」
ルルーシュが声のトーンを落とすと、マリアンヌはその頬をぷに、と突く。
「!?」
「後悔しないって、決めたじゃない。どんな犠牲を払ってでも、この世界を優しい世界にするんだって。」
優しく微笑まれ、ルルーシュはホッと息をついた。
「そう、ですね。・・・しかし、この後はどうするんですか?・・・俺はまた、エリア11へ?」
「その必要はないわよ~。だって、V.V.がぜぇんぶ、準備終わらせちゃったもの。」
「へ?伯父上が?・・・エリア11はどうなったんです?」
「黒の騎士団の幹部のほとんどは捕まったみたいよ?数人逃がしちゃったみたいだけど、C.C.が見張ってるから大丈夫。」
「・・・へぇ、俺が離脱しただけでこれか・・・まぁ、素人集団だし。しょうがないですね。」
「うん、そうね。・・・あ、あと、ジェレミアなんだけど~、あの子は使えそうだから、V.V.が責任を持って調整を終わらせるって言ってたわ。完成したら、私かルルーシュにくれるって。」
「ああ、オレンジ君。・・・母さんの信奉者でしたよね、彼。」
「そうみたいね。アリエス宮に仕えてた中でも優秀だったわよ、彼は。」
ニコニコニコ、と互いに笑みをうかべていたが、突如、ルルーシュがハッとした。
「しまった!オレンジで思い出した!・・・神根島には、もう1人、俺がゼロだと知ってしまった子がいて・・・。」
「大丈夫。C.C.が回収したわ。」
「・・・そ、そうですか。」
「何?その子は駒として使えそう?」
マリアンヌが楽しそうに問うが、ルルーシュはカレンのことを思い出し、首を横に振った。
「いえ・・・ブリタニア嫌いですから、無理だと思います。」
「そう、残念ね。・・・そう言えば、シュナイゼルが面白い子、拾ったみたいよ?貴方の同級生で・・・ユーフェミアにすごく入れ込んでるみたいだけど?」
「ニーナ、ですね。・・・彼女には多分、相当恨まれてる。」
ルルーシュが眉根を寄せると、マリアンヌはけろりと言った。
「あら、良いじゃない。そういうはっきりした子、お母さん好きよ?」
「はは・・・他人事ですね。」
「大丈夫よ。このプロジェクトがうまくいったら、Cの世界にでも連れてってあげれば良いの。」
「・・・まぁ、あそこなら、死者とでも話はできるでしょうけど・・・。」
「そ、少しずつこちらの味方にすれば良いんじゃないかしら。あの子、優秀そうだし。」
マリアンヌに頷くと、ルルーシュは外に視線を向ける。外に見えるのは、ラウンズの宿舎棟。
「・・・そういえば、スザクはラウンズに入れるんですね?」
「シャルルはそう言ってたわよ?私・・・あ、アーニャの方ね?世話を頼まれたから。」
「成程。・・・で、ラウンズで事情を知ってるのは?」
「ビスマルクとアーニャだけ。アーニャは私が表に出ちゃうと記憶が途切れちゃうみたいだから、一応メモを残して、その時のこととかを教えておくようにしてるんだけど、ルルーシュが帰って来てくれたなら、ルルーシュに説明をお願いしようかしら。アーニャとは仲良かったでしょ?」
「ええ、まあ。そんなに話はしませんでしたけど。」
「面白い子よ~?見てて飽きないわv」
「・・・母さんのお気に入りなわけですね・・・。」
はぁ、と溜め息をついたルルーシュに、マリアンヌは胸を張って大仰に頷いたのだった。
そして、皇族の正装に着替えたルルーシュは、マリアンヌを従え、謁見の間に向かった。
扉が開き、玉座の前まで進む。
「・・・父上、改めまして、ただ今戻りました。」
ニッコリと笑った息子に、父は溜め息をついた。
「はぁ、本当に、お前の演技力には、頭が下がる。まるで別人だ。」
「む。・・・父上だって、あの話し方、異常なくらいハマってますよ?」
顔を合わせた瞬間、ルルーシュとシャルルの厭味合戦が始まる。
「・・・こらこら。愛情表現がひねくれてるわよ、2人とも。」
つっこむマリアンヌに、バツの悪い表情をして、シャルルが玉座から立ち上がる。
「・・・7年間、ご苦労だった。良く、耐えてくれたな。ルルーシュ。」
「そう言って下さっただけで、充分ですよ、父上。・・・ところで、ナナリーは?」
「ん?・・・今は、兄さんと一緒にいるはずだ。」
シャルルは階段を降り、マリアンヌとルルーシュの目の前に立つ。
「それから・・・枢木はラウンズにする。それは奴との約束通りにしよう。・・・外地に飛ばしておけば、勝手に功績をあげるだろうしな。」
「駒としては優秀ですよ?スザクは。・・・なにせ、体力馬鹿ですから。」
「・・・多少、荒い使い方をしても平気ということか?」
「ええ。じゃんじゃん、こき使ってやって下さい。」
「・・・よっぽど顔を床に叩きつけられたのが、痛かったんだな?」
ルルーシュのご機嫌を損ねたらしいスザクに、シャルルとマリアンヌは心の中で合掌した。
― 哀れ、枢木スザク・・・成仏しろよ。(合掌
「・・・それにしても、やっぱり見慣れないな。」
「あら、何が?」
ルルーシュがじろじろと見るので、マリアンヌは首を傾げる。
「・・・母さんの姿ですよ。アーニャの姿で母さんの言葉使いは奇妙です。」
「しょうがないわよ~・・・私は、一旦、表舞台から姿を消さなきゃなんなかったんだし。それに、ギアスの発動条件が“瀕死になること”だったのよ?・・・植物状態の身体に戻ったって、動かせないもの。もう少ししたら、身体も全回復するだろうってV.V.が言ってたし、我慢しなくちゃ。それに、アーニャも良いって言ったのよ?」
「はいはい。それは何度も聞きました。・・・さて、ナナリーに会いに行こうかな。」
肩を竦めて、そう言うルルーシュに、マリアンヌは足をふみならした。
「んもう!可愛くない!・・・9歳は早すぎたのよ!もうちょっと大きくなって、私好みに育ててからにして欲しかったわ!!」
「・・・何なんですか、それ・・・。」
ガクっと肩を落としたルルーシュに、シャルルが苦笑する。
「マリアンヌの破天荒ぶりはお前も良く知っておるだろうに。・・・まあ、いい。ナナリーも心配しているだろうからな。早く行ってやれ。」
「はい、父上。」
頷いて出ていく息子を見送り、シャルルとマリアンヌは互いに視線を交わらせる。
「ようやく最愛の息子が戻って来たというのに・・・時間は止まらぬからな。」
「ほんの僅かな空白に、こうして話すことしか今は出来ないけれど・・・。でも、私は幸せよ?これからは、同じ皇宮の中で暮らせるんですもの。」
「ラウンズと、皇族、だがな?」
「む。意地悪な言い方ね、シャルル?」
ニヤリと笑ったシャルルを軽く睨み、マリアンヌは頬を膨らませる。
「クク、もう少しの辛抱だ。このプロジェクトさえうまくいけば、後はどうとでもなる。」
「わかってるわよ。・・・でも、7年間も我慢したのよ?C.C.を通していろいろ聞いてはいたけど、やっぱり、直に見て、直に触りたいじゃない!?」
「マリアンヌ・・・過剰なスキンシップは、嫌われるぞ?」
「(まるっと無視)・・・うふふ、あんなに綺麗に育ってくれたんだし、ちょっとくらい遊んだって、罰は当たらないわよね?」
「・・・マリアンヌ・・・あのな・・・。」
どこまでも自分を振りまわすマリアンヌに、少々呆れながらも、惚れた弱みで強く言えないシャルルだった。
長閑な庭園。その真ん中に車椅子に乗る少女と、長い金髪の少年がいる。それを目にとめたルルーシュが近づくと、先に少年の方が気がつく。
「やぁ、ルルーシュ。お帰り。」
「ただ今戻りました、伯父上。・・・ナナリーを先に連れ帰って下さってありがとうございます。」
「ううん。ほら、あそこにいたら、危険だろ?黒の騎士団なんて、信用できないしさ。」
「一応・・・俺が作った組織なんですけど・・・。」
「うん。でも、様子を見たら、なんか、使えなさそうだったから。ルルーシュの頭脳が無かったら、成り立ってないよ、あの組織。・・・だから、心配でさ、つい。」
「C.C.が教えてくれて、本当にびっくりしましたよ?・・・計画を前倒しかなって思って、神根島に行ったら、スザクに捕まるし。」
「あ~・・・ごめんね、ちょっと、僕が動くのが早すぎたみたい。」
V.V.が困ったように首を傾げると、ルルーシュは苦笑した。
「いえ。済んだことですし。でも、次はちゃんと言って下さいね?」
「うん。わかったよ。」
ひとしきり兄と伯父の話が終わったと悟ると、ナナリーがルルーシュの手を握る。
「・・・お兄様ですね。・・・やっとお兄様に触れられた。」
「ナナリー、遅くなってごめんな。」
「いいえ。スザクさんは・・・?」
「ラウンズになるってさ。・・・ゼロを献上した功績で。」
「・・・ふふ。ようやく、スザクさんらしくなりましたね。昔はあんなに激情型だったのに、再会したら、雰囲気が柔和になってて、戸惑いましたもの。」
「そうだね。ところでナナリー?」
「はい?」
ことん、と首を傾げたナナリーに、ルルーシュは苦笑した。ギアスのせいで、異常と認識していないようだ。
「目と足は?」
「あっ・・・そうでした。まだ、お父様のギアスを解いてもらってないんです。伯父様、お願いできますか?」
「あ、ごめん、僕も忘れてたよ・・・。」
V.V.が指をパチン、とはじく。そして、ナナリーはゆっくりと目を開け、ふ、と息をついた。
「ギアスってすごいですよね。ちゃんと、これはギアスのせいだってわかってても、すぐに忘れちゃうんです。」
「父上のは特にそうだな。・・・記憶の改竄。一部の記憶を書き換えるだけで、身体にまでその影響が出る。」
「お母様の事件も捏造なら、私の目と足の障害も捏造・・・私はこんなにピンピンしてるのに。」
ひょこっと立ち上がり、ナナリーはピョン、と跳ねる。
「・・・む。体が鈍ってますね。・・・後で、アーニャさんにつきあってもらわないと。」
「はは。いきなりはりきると怪我をするから、気をつけるんだよ?」
「はい、お兄様。」
ニッコリと笑い、ナナリーは素直に頷く。
「・・・おやおや、ルルーシュの育て方が良かったんだねぇ。本当にナナリーは素直に育ったよ。」
V.V.がクスクスと笑う。
「まぁ、伯父様、お褒め頂きまして、光栄ですわ。」
「・・・強かさはマリアンヌ似ってとこかな?・・・ルルーシュは外見だけマリアンヌに似て、中身はシャルル似。ナナリーは外見はシャルル似だけど、中身はマリアンヌ似ってとこかな?」
V.V.の分析は当たっている。ルルーシュは苦笑をうかべた。
「ナナリー、もう、モラトリアムは終了だ。」
「お兄様、それ、ミレイさんのセリフみたいですね。」
「・・・ふふ、そうかな?」
「ええ・・・楽しかったですね、7年間。」
「・・・そうだな。でも、もう・・・時間を進めないとな。“優しい世界”の為に。」
「ええ“優しい世界”の為に。」
頷きあう兄妹を見やって、V.V.は微笑んだ。
「うん。やっぱり、兄弟って、良いね。」
ブラックリベリオンが終わってから一ヶ月、緊急の中継が入った。ブリタニア本国と各エリアの全ての臣民が見守る中、皇帝の演説が始まる。
『皆に集まってもらったのは、重大な発表があり・・・。』
混乱を極めた、エリア11でもこの中継は流されていた。一時は黒の騎士団に占拠されていたアッシュフォード学園もそれは同様で。体育館に集められた職員、生徒達もいつものように巨大スクリーンを眺めていた。
『この度、エリア11へ遊学に出していた皇子と皇女が帰国した・・・。』
エリア11と名指しされ、学園の体育館にいた者達はざわめく。その中でも、ミレイはもしかしてという思いに駆られる。
「(・・・まさか、ルルちゃんとナナちゃんのこと・・・?)」
だが、彼等2人は死んだことになっていたはず。更に、兄であるルルーシュは皇位継承権を放棄したのだ。こうして、公式な場で発表される立場ではないのではないだろうかと思う。
「・・・会長?」
隣にいたリヴァルが不思議そうに声をかける。
「・・・顔色、悪いですよ?」
シャーリーも心配そうに言う。だから、ミレイは無理に笑顔を作ってみせた。
「大丈夫よ・・・何でもないから・・・。」
そう言いながらも、この嫌な予感が当たるかもしれない、理事長である祖父は何か知っているのだろうかと、離れた場所にある職員席にいる祖父を見る。その瞬間、体育館全体がどよめいた。
ハッとしたミレイは、巨大スクリーンに視線を戻し、そして、息を呑んだ。
「・・・っ!?」
『・・・神聖ブリタニア帝国第11皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです。』
『第6皇女、ナナリー・ヴィ・ブリタニアです。』
画面いっぱいに映るその兄妹の姿は、学園の者ならば誰でも知っているもの。
「嘘だろ・・・?」
「る、ルル?・・・ナナ、ちゃん?」
リヴァルとシャーリーも信じられないと言った風に呟く。
『7年間、一般人にまぎれ、エリア11に滞在していましたが、先のブラックリベリオンのこともあり、本国へと帰還しました。・・・急なことでしたので、エリア11にてお世話になった方々に挨拶もできず、この中継をご覧になって、さぞ、驚かれていることと思います。』
「・・・ルルちゃん・・・。」
ルルーシュの皇族然としたその堂々とした態度に、ミレイは、もう、あのランペルージ兄妹はいなくなってしまったのだと感じる。
『特に・・・私達の母の代から仕えてくれた、アッシュフォード家の方々には、本当に感謝しております。』
ナナリーの言葉に、リヴァルとシャーリーの視線がミレイに向けられる。
「会長、知ってたんスか・・・。」
「会長。」
「ごめんね・・・2人の素性は伏せられなくてはいけなかったから・・・。」
それだけではない。もし見つかれば、あの2人は殺される可能性だってあったのだ。だから、懸命に隠してきた。なのに、こんなにもあっさりと皇室に戻ったというのはどういうことなのだろうかと訝しんだ。
『・・・皆にここで重大な発表をする。』
再び、皇帝が画面に映る。
『第11皇子ルルーシュは、後見を失い、皇位継承権も放棄しておった。が、この度、我が密命をこなし、帰還した褒美として・・・皇位継承権の復権を認める。』
ざわり、と画面の向こうがざわめいた。それも当然だろう。皇帝の密命というのがどういったものなのか、誰も知らなかったからだ。帝国宰相であるシュナイゼルの表情も、画面を見る限りでは初耳のようだった。
『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア・・・そなたの働きは我がブリタニアに多大な貢献をした、よって、第一皇位継承権を与える。』
ざわめきが更に大きくなる。つまり、公の場で、次期皇帝と認める発言だったからだ。
ラウンズとしてその場に同席していたスザクが驚愕の眼を皇帝に向けていた。まさか、反逆していた息子を第一皇位継承者とするなど、思ってもいなかった。それに、密命という言葉に、嫌な予感を覚えた。
「・・・謹んで、お受けいたします。」
涼しげな表情でそう言って、ルルーシュは皇帝の前に跪いた。
すでに、決まっていたことのように思えるその態度に、スザクは直感した。皇帝はルルーシュに“ゼロ”として、ブリタニアへ反逆させていたのだ、と。
「ルルーシュ・・・。ブリタニアへの憎しみは・・・嘘か。」
ぼそりと呟いたスザクの隣で、アーニャが目を細める。
「・・・スザク、不謹慎な発言は止した方が良い。」
アーニャの忠告に、スザクは慌てて口を紡ぐ。
「ッ・・・ごめん。」
「別に。・・・ラウンズが動揺してたらマズイから言っただけ。何を考えても良いけど、顔だけは無表情を装ってて。」
「あ・・・ああ。」
突き放すようなアーニャの物言いに怯みながらも、スザクは無表情を作る。
そんなことをしている間に中継も終了し、スザクはすぐさま皇帝に謁見を求めた。
「して、何用だ、枢木・・・。」
「陛下は、自分が何を言いたいのか、すでにわかっておいでなのではありませんか?」
「言葉遊びをするつもりはない。」
「・・・なら、単刀直入にお伺いします。陛下は、ルルーシュが“ゼロ”だと最初からご存知でしたね?」
「然り。更に言うならば、ルルーシュは日本へ送られる以前から、ワシの密命を受けておった。」
「・・・やはり、そうでしたか。」
「さすがに気付いたか。」
第三者の声に、スザクはさして驚きもせずにそちらを向く。
「・・・ルルーシュ。」
「ルルーシュ殿下、だ。スザク。・・・お前はラウンズ。俺は第一皇位継承者だ。」
冷たい笑みをうかべるルルーシュに、スザクは愕然とする。
「ッ・・・どこまでが演技だった?」
「全て、ですよ。スザクさん。」
コツン、という軽い足音と共に、聞き慣れた声がして、今度こそ、スザクは仰天した。
「な、ナナリー!?」
そこにいたナナリーは、先程の中継で見せた車椅子に乗った姿ではなかった。
「びっくりしました?スザクさん。・・・私、本当は目も見えるし、足も不自由じゃないんですよ?」
くるりとその場で回転してみせ、ちょこんとドレスの端を掴んで、小首を傾げる。
「え、演技!?・・・だ、だって・・・。」
「ギアスです、お父様の。」
「っ!?」
ニッコリと笑うナナリーに、スザクは驚愕して、目を丸くする。
「ねぇ、スザクさん?・・・私も、お兄様も、お父様も、伯父様も、お母様も、C.C.さんも。・・・みーんな、共犯なんですよ?」
「・・・共犯?」
「お父様のギアスは、記憶を書き換えることができるんです。私はお母様の事件に巻き込まれ、目が見えなくなり、足が不自由になった、と記憶を書き換えられました。」
笑顔のナナリーだが、目は笑っていない。
「枢木よ、お主の知りたかったことは、知れたか?」
皇帝の言葉に、スザクは首を振る。
「・・・クロヴィス殿下やユフィの殺害も・・・命じたのですか?」
「クロヴィスは、ワシ等の計画を邪魔しおったからな。・・・ユーフェミアの件は、事故だ。ルルーシュのギアスが暴走した。」
事故、という言葉に、スザクは力が抜け、その場に膝をついてしまった。間違っていると散々言ってきた“ゼロ”は皇帝の命令でやっていたことで、スザクが覚悟を決めたきっかけであるユーフェミアの殺害が事故。スザクの行動の根幹が崩されてしまったためだ。
「満足か、スザク。お前の知りたいことが知れて。」
ルルーシュの笑みは依然冷たい。それをのろのろと見上げて、スザクはゾクリと肌を粟立てた。
「ナイト・オブ・セブン、枢木スザク・・・お主に、EU攻めの前線への派遣を命ずる。功績をあげれば、本国への帰還も叶うやもしれんぞ?」
クツクツと笑う皇帝の命に、スザクは半ば反射的に敬礼し、声を絞り出した。
「イエス・ユア・マジェスティ・・・。」
ルルーシュが第一皇位継承者として発表されてから1週間がたった。
ブラックリベリオンの失敗により捉えられた黒の騎士団幹部達やキョウトの重鎮達が、本国へと移送された。更に、逃げ延びていた卜部やカレンも、C.C.の罠に嵌り、響団の工作員に捕えられたという報告があげられた。
その報告書を読み、ルルーシュは座っていたソファーから立ち上がる。
「会いに行くのか?」
隣にいたC.C.が訊ねると、ルルーシュは微笑みながら頷いた。
「駒にならないとはいえ、真実を知る権利が彼等にはあるからな。」
「・・・ふ。なるほど。」
そして、ブリタニア皇宮の外宮にある牢獄に来たルルーシュは、そのまま進もうとして衛兵達に引き留められる。
「る、ルルーシュ殿下、ここは黒の騎士団の・・・。」
「ああ。わかってるよ。・・・ちょっと用があるんだ。少しの間、人払いを頼めるか?」
そう言ったルルーシュに、衛兵達は素直に従って敬礼をした。
「イエス・ユア・ハイネス!」
そして、完全に人払いのされた牢獄に足を踏み入れる。ルルーシュの顔を知らない幹部達は突如入って来た人物に首を傾げるが、カレンの入れられている牢屋の前に立つと、案の定、カレンは柵に飛びついて来た。
「ルルーシュッ!!?」
「やぁ、カレン。久しぶり。」
「久しぶりって・・・あんたねぇ!どの面下げてッ、しかも、C.C.までっ!っていうか、なんで、あんた達、平気でこんなトコうろついてんのよ!!?」
「カレン、混乱してるのはわかるが、もうちょっと整理してから話せ。」
C.C.が呆れたようにカレンを見る。
「う、うるさい!」
「・・・そうか。」
カレンの叫びと、桐原の呟きが重なる。
「桐原?」
怪訝な表情で名を呼ぶ神楽耶に、桐原は苦笑をうかべた。
「申し訳ございませぬ、神楽耶様。・・・知っていながら黙っておりましたが、こちらの青年は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア・・・このブリタニアの第11皇子にして、黒の騎士団総司令、ゼロです。」
その瞬間、牢獄に大絶叫が響いた。
「ッ、てめぇ!騙したのかよ!!」
いつもの如く噛みついてきた玉城を見て、ルルーシュは苦笑をうかべる。
「騙した、といえば騙したことになるか。・・・だが、約束は守る。」
「・・・約束?」
藤堂が訝しんだ様子で首を傾げる。
「日本を取り戻す。それが、お前達の目的だろう?・・・だから、日本を返してやると言っている。」
「皇帝、お主の父は納得するのか?」
桐原が問うと、C.C.が鼻で笑った。
「シャルルは元々、そのつもりだ。準備の過程で痛い腹を探られたくないからな、てっとり早く制圧しただけのこと。計画さえ実行してしまえば、エリア支配など面倒なだけだ。」
「C.C.もう少し言葉を選べ・・・。つまり、計画の準備の為に、少し日本の領土になっている場所を調べたかったんだが、許可を得るのが面倒だったから、制圧をしたというところだ。」
お前も言葉を選べ、とツッコミたいが、至って真面目にしているルルーシュに、つっこめないでいる日本人達である。
「ブリタニアへの憎しみは・・・演技か?」
「いや。今のブリタニアは腐っている。だからこその計画だ。」
目を細めて笑うルルーシュに、桐原は首を傾げた。
「計画とは、一体・・・?」
「それを説明するためにここに来たんだ。」
ルルーシュから語られた計画の内容に、日本人達は呆然となる。
「や、優しい世界って。そこまでやるか、普通。」
「無意識の世界に、そのイメージを焼き付けるって・・・どうやるのさ。」
玉城や朝比奈の呟きに、ルルーシュはくつくつと笑う。
「そこまでは教えられないな。・・・まぁ、これが終われば、父上は俺に帝位を譲位される。そうしたら、恩赦でお前達をこの牢獄から出すこともできるし、エリア支配も廃止できる。」
その言葉に、カレンは複雑な表情をうかべた。
「本当に、あんたが皇帝になるの・・・?」
「そうだよ、カレン。」
「まさか、説明するためだけに、私と卜部さんを捕まえたわけじゃないでしょうね?」
「そのまさかだが。」
「・・・ありえない・・・。」
がくりと肩を落としたカレンを見て、ルルーシュは苦笑いをうかべた。
「まぁ、カレン達だけを放っておいたら、無茶をしそうだったからな。・・・俺が皇帝になるまでそう時間はかからないから、ここで大人しくしていてくれるとありがたいのだけれど?」
ルルーシュの視線は桐原に向けられている。キョウトが是としたら、黒の騎士団全員が従うだろうと判断したからだ。
「承知した。」
頷いた桐原に対しての異論の言葉は無かった。それを見たルルーシュは満足げに笑みをうかべた。
「協力、感謝する。日本が返還されたあかつきには、復興支援金を1兆円用意するつもりだからそのつもりで。」
その額に仰天し、本日2度目の大絶叫が牢獄に響いたのだった。
おしまい
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・一期25話以降設定、R2無し
・ナリタ事変はなかったことに
・父母・V.V.・C.C.の元祖共犯組とルルナナが仲良し
・↑の共犯で“優しい世界構築プログラム”を遂行
・ということで、スザクとか騎士団とかその他にも厳しい表現アリ
・でも、ギャグっぽい
・捏造満載
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
「・・・っつ・・・。」
むくりとベッドから起き上がり、ルルーシュは頬を押さえた。
「・・・強く叩きつけてくれて・・・まったく。あの体力馬鹿が。」
「しょうがないわ。スザク君は何も知らないんでしょう?」
クスクスと隣から笑う声がして、ルルーシュはギョッとする。
「・・・い、いたんですか、母さん。」
「ふふ。・・・ちょっと前から、ね?」
ニッコリと笑う母の姿は、本当の母の身体ではなかった。
ナイト・オブ・ラウンズの6席、アーニャ・アールストレイム。7年前、アリエスの離宮へ行儀見習いに来ていた少女の身体を借りているのだ。
「・・・はぁ。びっくりしたじゃないですか。」
溜め息をつくルルーシュに、母は嬉しそうに笑う。
「しばらく見ない間に、おっきくなったわね。ホント、『優しい世界構築プロジェクト』の為とはいえ、7年間も離れるなんて、耐えられないって思ってたのに・・・。」
「・・・長かったですね。でも、C.C.が動き出す直前に、クロヴィス兄さんに捕まるなんてことが無ければ、もう少し穏便な方法も取れたのでしょうに。」
「ホント。クロヴィスも余計なことしてくれたわよね?あと、ユーフェミアも、かしら。」
「・・・ユフィは・・・本当は、行政特区をそのまま活かしたかったんですけど・・・まさか、あそこでギアスが暴走するなんて・・・。残念です。」
ルルーシュが声のトーンを落とすと、マリアンヌはその頬をぷに、と突く。
「!?」
「後悔しないって、決めたじゃない。どんな犠牲を払ってでも、この世界を優しい世界にするんだって。」
優しく微笑まれ、ルルーシュはホッと息をついた。
「そう、ですね。・・・しかし、この後はどうするんですか?・・・俺はまた、エリア11へ?」
「その必要はないわよ~。だって、V.V.がぜぇんぶ、準備終わらせちゃったもの。」
「へ?伯父上が?・・・エリア11はどうなったんです?」
「黒の騎士団の幹部のほとんどは捕まったみたいよ?数人逃がしちゃったみたいだけど、C.C.が見張ってるから大丈夫。」
「・・・へぇ、俺が離脱しただけでこれか・・・まぁ、素人集団だし。しょうがないですね。」
「うん、そうね。・・・あ、あと、ジェレミアなんだけど~、あの子は使えそうだから、V.V.が責任を持って調整を終わらせるって言ってたわ。完成したら、私かルルーシュにくれるって。」
「ああ、オレンジ君。・・・母さんの信奉者でしたよね、彼。」
「そうみたいね。アリエス宮に仕えてた中でも優秀だったわよ、彼は。」
ニコニコニコ、と互いに笑みをうかべていたが、突如、ルルーシュがハッとした。
「しまった!オレンジで思い出した!・・・神根島には、もう1人、俺がゼロだと知ってしまった子がいて・・・。」
「大丈夫。C.C.が回収したわ。」
「・・・そ、そうですか。」
「何?その子は駒として使えそう?」
マリアンヌが楽しそうに問うが、ルルーシュはカレンのことを思い出し、首を横に振った。
「いえ・・・ブリタニア嫌いですから、無理だと思います。」
「そう、残念ね。・・・そう言えば、シュナイゼルが面白い子、拾ったみたいよ?貴方の同級生で・・・ユーフェミアにすごく入れ込んでるみたいだけど?」
「ニーナ、ですね。・・・彼女には多分、相当恨まれてる。」
ルルーシュが眉根を寄せると、マリアンヌはけろりと言った。
「あら、良いじゃない。そういうはっきりした子、お母さん好きよ?」
「はは・・・他人事ですね。」
「大丈夫よ。このプロジェクトがうまくいったら、Cの世界にでも連れてってあげれば良いの。」
「・・・まぁ、あそこなら、死者とでも話はできるでしょうけど・・・。」
「そ、少しずつこちらの味方にすれば良いんじゃないかしら。あの子、優秀そうだし。」
マリアンヌに頷くと、ルルーシュは外に視線を向ける。外に見えるのは、ラウンズの宿舎棟。
「・・・そういえば、スザクはラウンズに入れるんですね?」
「シャルルはそう言ってたわよ?私・・・あ、アーニャの方ね?世話を頼まれたから。」
「成程。・・・で、ラウンズで事情を知ってるのは?」
「ビスマルクとアーニャだけ。アーニャは私が表に出ちゃうと記憶が途切れちゃうみたいだから、一応メモを残して、その時のこととかを教えておくようにしてるんだけど、ルルーシュが帰って来てくれたなら、ルルーシュに説明をお願いしようかしら。アーニャとは仲良かったでしょ?」
「ええ、まあ。そんなに話はしませんでしたけど。」
「面白い子よ~?見てて飽きないわv」
「・・・母さんのお気に入りなわけですね・・・。」
はぁ、と溜め息をついたルルーシュに、マリアンヌは胸を張って大仰に頷いたのだった。
そして、皇族の正装に着替えたルルーシュは、マリアンヌを従え、謁見の間に向かった。
扉が開き、玉座の前まで進む。
「・・・父上、改めまして、ただ今戻りました。」
ニッコリと笑った息子に、父は溜め息をついた。
「はぁ、本当に、お前の演技力には、頭が下がる。まるで別人だ。」
「む。・・・父上だって、あの話し方、異常なくらいハマってますよ?」
顔を合わせた瞬間、ルルーシュとシャルルの厭味合戦が始まる。
「・・・こらこら。愛情表現がひねくれてるわよ、2人とも。」
つっこむマリアンヌに、バツの悪い表情をして、シャルルが玉座から立ち上がる。
「・・・7年間、ご苦労だった。良く、耐えてくれたな。ルルーシュ。」
「そう言って下さっただけで、充分ですよ、父上。・・・ところで、ナナリーは?」
「ん?・・・今は、兄さんと一緒にいるはずだ。」
シャルルは階段を降り、マリアンヌとルルーシュの目の前に立つ。
「それから・・・枢木はラウンズにする。それは奴との約束通りにしよう。・・・外地に飛ばしておけば、勝手に功績をあげるだろうしな。」
「駒としては優秀ですよ?スザクは。・・・なにせ、体力馬鹿ですから。」
「・・・多少、荒い使い方をしても平気ということか?」
「ええ。じゃんじゃん、こき使ってやって下さい。」
「・・・よっぽど顔を床に叩きつけられたのが、痛かったんだな?」
ルルーシュのご機嫌を損ねたらしいスザクに、シャルルとマリアンヌは心の中で合掌した。
― 哀れ、枢木スザク・・・成仏しろよ。(合掌
「・・・それにしても、やっぱり見慣れないな。」
「あら、何が?」
ルルーシュがじろじろと見るので、マリアンヌは首を傾げる。
「・・・母さんの姿ですよ。アーニャの姿で母さんの言葉使いは奇妙です。」
「しょうがないわよ~・・・私は、一旦、表舞台から姿を消さなきゃなんなかったんだし。それに、ギアスの発動条件が“瀕死になること”だったのよ?・・・植物状態の身体に戻ったって、動かせないもの。もう少ししたら、身体も全回復するだろうってV.V.が言ってたし、我慢しなくちゃ。それに、アーニャも良いって言ったのよ?」
「はいはい。それは何度も聞きました。・・・さて、ナナリーに会いに行こうかな。」
肩を竦めて、そう言うルルーシュに、マリアンヌは足をふみならした。
「んもう!可愛くない!・・・9歳は早すぎたのよ!もうちょっと大きくなって、私好みに育ててからにして欲しかったわ!!」
「・・・何なんですか、それ・・・。」
ガクっと肩を落としたルルーシュに、シャルルが苦笑する。
「マリアンヌの破天荒ぶりはお前も良く知っておるだろうに。・・・まあ、いい。ナナリーも心配しているだろうからな。早く行ってやれ。」
「はい、父上。」
頷いて出ていく息子を見送り、シャルルとマリアンヌは互いに視線を交わらせる。
「ようやく最愛の息子が戻って来たというのに・・・時間は止まらぬからな。」
「ほんの僅かな空白に、こうして話すことしか今は出来ないけれど・・・。でも、私は幸せよ?これからは、同じ皇宮の中で暮らせるんですもの。」
「ラウンズと、皇族、だがな?」
「む。意地悪な言い方ね、シャルル?」
ニヤリと笑ったシャルルを軽く睨み、マリアンヌは頬を膨らませる。
「クク、もう少しの辛抱だ。このプロジェクトさえうまくいけば、後はどうとでもなる。」
「わかってるわよ。・・・でも、7年間も我慢したのよ?C.C.を通していろいろ聞いてはいたけど、やっぱり、直に見て、直に触りたいじゃない!?」
「マリアンヌ・・・過剰なスキンシップは、嫌われるぞ?」
「(まるっと無視)・・・うふふ、あんなに綺麗に育ってくれたんだし、ちょっとくらい遊んだって、罰は当たらないわよね?」
「・・・マリアンヌ・・・あのな・・・。」
どこまでも自分を振りまわすマリアンヌに、少々呆れながらも、惚れた弱みで強く言えないシャルルだった。
長閑な庭園。その真ん中に車椅子に乗る少女と、長い金髪の少年がいる。それを目にとめたルルーシュが近づくと、先に少年の方が気がつく。
「やぁ、ルルーシュ。お帰り。」
「ただ今戻りました、伯父上。・・・ナナリーを先に連れ帰って下さってありがとうございます。」
「ううん。ほら、あそこにいたら、危険だろ?黒の騎士団なんて、信用できないしさ。」
「一応・・・俺が作った組織なんですけど・・・。」
「うん。でも、様子を見たら、なんか、使えなさそうだったから。ルルーシュの頭脳が無かったら、成り立ってないよ、あの組織。・・・だから、心配でさ、つい。」
「C.C.が教えてくれて、本当にびっくりしましたよ?・・・計画を前倒しかなって思って、神根島に行ったら、スザクに捕まるし。」
「あ~・・・ごめんね、ちょっと、僕が動くのが早すぎたみたい。」
V.V.が困ったように首を傾げると、ルルーシュは苦笑した。
「いえ。済んだことですし。でも、次はちゃんと言って下さいね?」
「うん。わかったよ。」
ひとしきり兄と伯父の話が終わったと悟ると、ナナリーがルルーシュの手を握る。
「・・・お兄様ですね。・・・やっとお兄様に触れられた。」
「ナナリー、遅くなってごめんな。」
「いいえ。スザクさんは・・・?」
「ラウンズになるってさ。・・・ゼロを献上した功績で。」
「・・・ふふ。ようやく、スザクさんらしくなりましたね。昔はあんなに激情型だったのに、再会したら、雰囲気が柔和になってて、戸惑いましたもの。」
「そうだね。ところでナナリー?」
「はい?」
ことん、と首を傾げたナナリーに、ルルーシュは苦笑した。ギアスのせいで、異常と認識していないようだ。
「目と足は?」
「あっ・・・そうでした。まだ、お父様のギアスを解いてもらってないんです。伯父様、お願いできますか?」
「あ、ごめん、僕も忘れてたよ・・・。」
V.V.が指をパチン、とはじく。そして、ナナリーはゆっくりと目を開け、ふ、と息をついた。
「ギアスってすごいですよね。ちゃんと、これはギアスのせいだってわかってても、すぐに忘れちゃうんです。」
「父上のは特にそうだな。・・・記憶の改竄。一部の記憶を書き換えるだけで、身体にまでその影響が出る。」
「お母様の事件も捏造なら、私の目と足の障害も捏造・・・私はこんなにピンピンしてるのに。」
ひょこっと立ち上がり、ナナリーはピョン、と跳ねる。
「・・・む。体が鈍ってますね。・・・後で、アーニャさんにつきあってもらわないと。」
「はは。いきなりはりきると怪我をするから、気をつけるんだよ?」
「はい、お兄様。」
ニッコリと笑い、ナナリーは素直に頷く。
「・・・おやおや、ルルーシュの育て方が良かったんだねぇ。本当にナナリーは素直に育ったよ。」
V.V.がクスクスと笑う。
「まぁ、伯父様、お褒め頂きまして、光栄ですわ。」
「・・・強かさはマリアンヌ似ってとこかな?・・・ルルーシュは外見だけマリアンヌに似て、中身はシャルル似。ナナリーは外見はシャルル似だけど、中身はマリアンヌ似ってとこかな?」
V.V.の分析は当たっている。ルルーシュは苦笑をうかべた。
「ナナリー、もう、モラトリアムは終了だ。」
「お兄様、それ、ミレイさんのセリフみたいですね。」
「・・・ふふ、そうかな?」
「ええ・・・楽しかったですね、7年間。」
「・・・そうだな。でも、もう・・・時間を進めないとな。“優しい世界”の為に。」
「ええ“優しい世界”の為に。」
頷きあう兄妹を見やって、V.V.は微笑んだ。
「うん。やっぱり、兄弟って、良いね。」
ブラックリベリオンが終わってから一ヶ月、緊急の中継が入った。ブリタニア本国と各エリアの全ての臣民が見守る中、皇帝の演説が始まる。
『皆に集まってもらったのは、重大な発表があり・・・。』
混乱を極めた、エリア11でもこの中継は流されていた。一時は黒の騎士団に占拠されていたアッシュフォード学園もそれは同様で。体育館に集められた職員、生徒達もいつものように巨大スクリーンを眺めていた。
『この度、エリア11へ遊学に出していた皇子と皇女が帰国した・・・。』
エリア11と名指しされ、学園の体育館にいた者達はざわめく。その中でも、ミレイはもしかしてという思いに駆られる。
「(・・・まさか、ルルちゃんとナナちゃんのこと・・・?)」
だが、彼等2人は死んだことになっていたはず。更に、兄であるルルーシュは皇位継承権を放棄したのだ。こうして、公式な場で発表される立場ではないのではないだろうかと思う。
「・・・会長?」
隣にいたリヴァルが不思議そうに声をかける。
「・・・顔色、悪いですよ?」
シャーリーも心配そうに言う。だから、ミレイは無理に笑顔を作ってみせた。
「大丈夫よ・・・何でもないから・・・。」
そう言いながらも、この嫌な予感が当たるかもしれない、理事長である祖父は何か知っているのだろうかと、離れた場所にある職員席にいる祖父を見る。その瞬間、体育館全体がどよめいた。
ハッとしたミレイは、巨大スクリーンに視線を戻し、そして、息を呑んだ。
「・・・っ!?」
『・・・神聖ブリタニア帝国第11皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです。』
『第6皇女、ナナリー・ヴィ・ブリタニアです。』
画面いっぱいに映るその兄妹の姿は、学園の者ならば誰でも知っているもの。
「嘘だろ・・・?」
「る、ルル?・・・ナナ、ちゃん?」
リヴァルとシャーリーも信じられないと言った風に呟く。
『7年間、一般人にまぎれ、エリア11に滞在していましたが、先のブラックリベリオンのこともあり、本国へと帰還しました。・・・急なことでしたので、エリア11にてお世話になった方々に挨拶もできず、この中継をご覧になって、さぞ、驚かれていることと思います。』
「・・・ルルちゃん・・・。」
ルルーシュの皇族然としたその堂々とした態度に、ミレイは、もう、あのランペルージ兄妹はいなくなってしまったのだと感じる。
『特に・・・私達の母の代から仕えてくれた、アッシュフォード家の方々には、本当に感謝しております。』
ナナリーの言葉に、リヴァルとシャーリーの視線がミレイに向けられる。
「会長、知ってたんスか・・・。」
「会長。」
「ごめんね・・・2人の素性は伏せられなくてはいけなかったから・・・。」
それだけではない。もし見つかれば、あの2人は殺される可能性だってあったのだ。だから、懸命に隠してきた。なのに、こんなにもあっさりと皇室に戻ったというのはどういうことなのだろうかと訝しんだ。
『・・・皆にここで重大な発表をする。』
再び、皇帝が画面に映る。
『第11皇子ルルーシュは、後見を失い、皇位継承権も放棄しておった。が、この度、我が密命をこなし、帰還した褒美として・・・皇位継承権の復権を認める。』
ざわり、と画面の向こうがざわめいた。それも当然だろう。皇帝の密命というのがどういったものなのか、誰も知らなかったからだ。帝国宰相であるシュナイゼルの表情も、画面を見る限りでは初耳のようだった。
『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア・・・そなたの働きは我がブリタニアに多大な貢献をした、よって、第一皇位継承権を与える。』
ざわめきが更に大きくなる。つまり、公の場で、次期皇帝と認める発言だったからだ。
ラウンズとしてその場に同席していたスザクが驚愕の眼を皇帝に向けていた。まさか、反逆していた息子を第一皇位継承者とするなど、思ってもいなかった。それに、密命という言葉に、嫌な予感を覚えた。
「・・・謹んで、お受けいたします。」
涼しげな表情でそう言って、ルルーシュは皇帝の前に跪いた。
すでに、決まっていたことのように思えるその態度に、スザクは直感した。皇帝はルルーシュに“ゼロ”として、ブリタニアへ反逆させていたのだ、と。
「ルルーシュ・・・。ブリタニアへの憎しみは・・・嘘か。」
ぼそりと呟いたスザクの隣で、アーニャが目を細める。
「・・・スザク、不謹慎な発言は止した方が良い。」
アーニャの忠告に、スザクは慌てて口を紡ぐ。
「ッ・・・ごめん。」
「別に。・・・ラウンズが動揺してたらマズイから言っただけ。何を考えても良いけど、顔だけは無表情を装ってて。」
「あ・・・ああ。」
突き放すようなアーニャの物言いに怯みながらも、スザクは無表情を作る。
そんなことをしている間に中継も終了し、スザクはすぐさま皇帝に謁見を求めた。
「して、何用だ、枢木・・・。」
「陛下は、自分が何を言いたいのか、すでにわかっておいでなのではありませんか?」
「言葉遊びをするつもりはない。」
「・・・なら、単刀直入にお伺いします。陛下は、ルルーシュが“ゼロ”だと最初からご存知でしたね?」
「然り。更に言うならば、ルルーシュは日本へ送られる以前から、ワシの密命を受けておった。」
「・・・やはり、そうでしたか。」
「さすがに気付いたか。」
第三者の声に、スザクはさして驚きもせずにそちらを向く。
「・・・ルルーシュ。」
「ルルーシュ殿下、だ。スザク。・・・お前はラウンズ。俺は第一皇位継承者だ。」
冷たい笑みをうかべるルルーシュに、スザクは愕然とする。
「ッ・・・どこまでが演技だった?」
「全て、ですよ。スザクさん。」
コツン、という軽い足音と共に、聞き慣れた声がして、今度こそ、スザクは仰天した。
「な、ナナリー!?」
そこにいたナナリーは、先程の中継で見せた車椅子に乗った姿ではなかった。
「びっくりしました?スザクさん。・・・私、本当は目も見えるし、足も不自由じゃないんですよ?」
くるりとその場で回転してみせ、ちょこんとドレスの端を掴んで、小首を傾げる。
「え、演技!?・・・だ、だって・・・。」
「ギアスです、お父様の。」
「っ!?」
ニッコリと笑うナナリーに、スザクは驚愕して、目を丸くする。
「ねぇ、スザクさん?・・・私も、お兄様も、お父様も、伯父様も、お母様も、C.C.さんも。・・・みーんな、共犯なんですよ?」
「・・・共犯?」
「お父様のギアスは、記憶を書き換えることができるんです。私はお母様の事件に巻き込まれ、目が見えなくなり、足が不自由になった、と記憶を書き換えられました。」
笑顔のナナリーだが、目は笑っていない。
「枢木よ、お主の知りたかったことは、知れたか?」
皇帝の言葉に、スザクは首を振る。
「・・・クロヴィス殿下やユフィの殺害も・・・命じたのですか?」
「クロヴィスは、ワシ等の計画を邪魔しおったからな。・・・ユーフェミアの件は、事故だ。ルルーシュのギアスが暴走した。」
事故、という言葉に、スザクは力が抜け、その場に膝をついてしまった。間違っていると散々言ってきた“ゼロ”は皇帝の命令でやっていたことで、スザクが覚悟を決めたきっかけであるユーフェミアの殺害が事故。スザクの行動の根幹が崩されてしまったためだ。
「満足か、スザク。お前の知りたいことが知れて。」
ルルーシュの笑みは依然冷たい。それをのろのろと見上げて、スザクはゾクリと肌を粟立てた。
「ナイト・オブ・セブン、枢木スザク・・・お主に、EU攻めの前線への派遣を命ずる。功績をあげれば、本国への帰還も叶うやもしれんぞ?」
クツクツと笑う皇帝の命に、スザクは半ば反射的に敬礼し、声を絞り出した。
「イエス・ユア・マジェスティ・・・。」
ルルーシュが第一皇位継承者として発表されてから1週間がたった。
ブラックリベリオンの失敗により捉えられた黒の騎士団幹部達やキョウトの重鎮達が、本国へと移送された。更に、逃げ延びていた卜部やカレンも、C.C.の罠に嵌り、響団の工作員に捕えられたという報告があげられた。
その報告書を読み、ルルーシュは座っていたソファーから立ち上がる。
「会いに行くのか?」
隣にいたC.C.が訊ねると、ルルーシュは微笑みながら頷いた。
「駒にならないとはいえ、真実を知る権利が彼等にはあるからな。」
「・・・ふ。なるほど。」
そして、ブリタニア皇宮の外宮にある牢獄に来たルルーシュは、そのまま進もうとして衛兵達に引き留められる。
「る、ルルーシュ殿下、ここは黒の騎士団の・・・。」
「ああ。わかってるよ。・・・ちょっと用があるんだ。少しの間、人払いを頼めるか?」
そう言ったルルーシュに、衛兵達は素直に従って敬礼をした。
「イエス・ユア・ハイネス!」
そして、完全に人払いのされた牢獄に足を踏み入れる。ルルーシュの顔を知らない幹部達は突如入って来た人物に首を傾げるが、カレンの入れられている牢屋の前に立つと、案の定、カレンは柵に飛びついて来た。
「ルルーシュッ!!?」
「やぁ、カレン。久しぶり。」
「久しぶりって・・・あんたねぇ!どの面下げてッ、しかも、C.C.までっ!っていうか、なんで、あんた達、平気でこんなトコうろついてんのよ!!?」
「カレン、混乱してるのはわかるが、もうちょっと整理してから話せ。」
C.C.が呆れたようにカレンを見る。
「う、うるさい!」
「・・・そうか。」
カレンの叫びと、桐原の呟きが重なる。
「桐原?」
怪訝な表情で名を呼ぶ神楽耶に、桐原は苦笑をうかべた。
「申し訳ございませぬ、神楽耶様。・・・知っていながら黙っておりましたが、こちらの青年は、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア・・・このブリタニアの第11皇子にして、黒の騎士団総司令、ゼロです。」
その瞬間、牢獄に大絶叫が響いた。
「ッ、てめぇ!騙したのかよ!!」
いつもの如く噛みついてきた玉城を見て、ルルーシュは苦笑をうかべる。
「騙した、といえば騙したことになるか。・・・だが、約束は守る。」
「・・・約束?」
藤堂が訝しんだ様子で首を傾げる。
「日本を取り戻す。それが、お前達の目的だろう?・・・だから、日本を返してやると言っている。」
「皇帝、お主の父は納得するのか?」
桐原が問うと、C.C.が鼻で笑った。
「シャルルは元々、そのつもりだ。準備の過程で痛い腹を探られたくないからな、てっとり早く制圧しただけのこと。計画さえ実行してしまえば、エリア支配など面倒なだけだ。」
「C.C.もう少し言葉を選べ・・・。つまり、計画の準備の為に、少し日本の領土になっている場所を調べたかったんだが、許可を得るのが面倒だったから、制圧をしたというところだ。」
お前も言葉を選べ、とツッコミたいが、至って真面目にしているルルーシュに、つっこめないでいる日本人達である。
「ブリタニアへの憎しみは・・・演技か?」
「いや。今のブリタニアは腐っている。だからこその計画だ。」
目を細めて笑うルルーシュに、桐原は首を傾げた。
「計画とは、一体・・・?」
「それを説明するためにここに来たんだ。」
ルルーシュから語られた計画の内容に、日本人達は呆然となる。
「や、優しい世界って。そこまでやるか、普通。」
「無意識の世界に、そのイメージを焼き付けるって・・・どうやるのさ。」
玉城や朝比奈の呟きに、ルルーシュはくつくつと笑う。
「そこまでは教えられないな。・・・まぁ、これが終われば、父上は俺に帝位を譲位される。そうしたら、恩赦でお前達をこの牢獄から出すこともできるし、エリア支配も廃止できる。」
その言葉に、カレンは複雑な表情をうかべた。
「本当に、あんたが皇帝になるの・・・?」
「そうだよ、カレン。」
「まさか、説明するためだけに、私と卜部さんを捕まえたわけじゃないでしょうね?」
「そのまさかだが。」
「・・・ありえない・・・。」
がくりと肩を落としたカレンを見て、ルルーシュは苦笑いをうかべた。
「まぁ、カレン達だけを放っておいたら、無茶をしそうだったからな。・・・俺が皇帝になるまでそう時間はかからないから、ここで大人しくしていてくれるとありがたいのだけれど?」
ルルーシュの視線は桐原に向けられている。キョウトが是としたら、黒の騎士団全員が従うだろうと判断したからだ。
「承知した。」
頷いた桐原に対しての異論の言葉は無かった。それを見たルルーシュは満足げに笑みをうかべた。
「協力、感謝する。日本が返還されたあかつきには、復興支援金を1兆円用意するつもりだからそのつもりで。」
その額に仰天し、本日2度目の大絶叫が牢獄に響いたのだった。
おしまい
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