Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・最年少暗部シリーズをお読みになりましたか?(大前提ですよ?)
・スレシカスレナルです!
・二次創作であることをお忘れなく
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
タズナの家
「・・・だ、大丈夫ですか・・・?」
「え、ええ。・・・すみませんねぇ・・・この感じだと、一週間は動けないかもしれません・・・。」
鋭裏に背負われて家に担ぎ込まれたカカシは、タズナの娘であるツナミの世話を受けながら、溜め息をついた。
因みに、鋭裏はカカシを運び込んだ後、また、姿を隠してしまった。根掘り葉掘り聞こうとしていたサクラは残念がっていたが。
「写輪眼ってものすごいけど、身体にそんなに負担がかかるんじゃ・・・。」
「いやいや。ちゃんとした血族の人間が使えば、そんなこと無いのよ~。」
カカシは苦笑し、ちらりとサスケに視線を向ける。
「ね?サスケ~?」
「(バカカシ!俺に話を振るな!!!)・・・・・・フン。」
「え?サスケ君、知ってたの?」
「・・・・・・。」
ここでサクラを完全無視しても大丈夫なキャラ設定をしておいて良かった!!と今更ながらに自分の選択を褒めつつ、サスケは先程から黙っているナルトへと視線を向けた。
「ま、まぁ、あんなに強い忍者を倒したんじゃし、暫くは安心じゃろ!」
タズナが晴れやかに笑う。それを見たナルトが更に眉間にしわを寄せた。皆、意識がナルトに向いていないから気づいてはいないが、サスケは思わずカカシに助けを求めるように視線を向けた。
「・・・霧隠れの追い忍・・・ね。」
サスケの視線に気づいたカカシは、ナルトの表情を確認し、違和感があっただろうか、と思い返し、ガバ!と起き上がった。
「せ、先生!?」
サクラがギョッとしてカカシを見つめる。
「違う・・・。」
「・・・どうしたんだってばよ?先生。」
ナルトが首を傾げるが、その目はやっと気づいたのかと呆れた様子で。カカシはまた、どやされるなぁ、と内心ぼやく。
「追い忍、死体処理班ってのは、殺した者の死体は、すぐ、その場で処理するものなんだ。」
サクラが怪訝な顔でカカシを見る。
「わからないか?・・・あのお面の少年は、再不斬の死体をどう処理した?」
「は?知るわけないじゃない。だって、あのお面の子が持って行っちゃったんだから。」
「そうだ。・・・殺した証拠なら、首だけ持ち帰れば事足りるのに、だ。」
カカシは口元に手を当て、迂闊だったと呟く。
「再不斬を殺した武器だって・・・。」
そのカカシの言葉に、サクラがハッとする。
再不斬の首を貫いた武器。あれは千本と呼ばれ、医療用として使われることもある。殺傷力も低く、急所を的確に狙わなければ相手を殺すことはできない。
「・・・まさか!」
サスケは目を丸くした。あの時、すでにナルトは気づいていたようだった。なのに、なぜ、見逃したのか、と詰め寄りそうになって、ぐっと気持ちを抑える。
「お前ら、さっきからなにを話しとるんじゃ?」
タズナが訝しげに訊ねると、カカシは神妙な表情をして答えた。
「おそらく・・・再不斬は生きている。」
全員の表情が凍った。
「・・・だ、だって、カカシ先生だってアイツが死んだのを確認してッ!」
サクラが悲鳴に近い声で叫ぶ。
「ああ・・・あれはおそらく、仮死状態にしただけだろう。・・・あの少年の真の目的は・・・再不斬の救出。」
ごくり、と息を呑み、タズナが言う。
「だが、それは仮定の話じゃろう?・・・超心配のしすぎじゃないのか?」
「いえ・・・それが杞憂に終わろうとも、備えておくに越したことはありませんよ。・・・それに、ガトーの配下にもっと強い忍がいる可能性もあります。・・・というわけで、お前達には修行を課すことにする!」
突然のカカシの宣言に、思わずナルト達は呆然としてしまう。
「・・・ふん、いくら修行したって、ガトー達に刃向かって、勝てるわけないよ。」
いつの間にかやって来ていた子どもがボソリ、とそう言う。その悟りきった目に、ナルトは一瞬、シカマルと出会う前の自分を思い出す。自分の運命はどんなにあがいても変わらないのだと、そう思っていたあの頃の。
そう思ったら、自然とドベナルトの言葉を借りて、ナルトは叫んでいた。
「んなことが、どうしてわかるんだってばよ!!やってみなきゃ、わかんないだろ!?・・・いいか、俺は、将来、火影っていうすっげー忍になるスーパーヒーローだ!ガトーだか何だか知らねーが、そんなの全然、目じゃないっつーの!!」
「バッカみたい。ヒーローなんて、いるわけないのに。」
「イナリ!!」
ツナミが鋭く名を呼ぶと、子どもはビクッと身体を震わせ、嫌悪に表情を歪めた。
「死にたくなかったら、早く帰った方が良いよ。」
「何をーーー!!」
「ナルト!相手は子どもよ、やめなさい!」
くってかかろうとするナルトをサクラが一喝する。その間に、イナリは部屋から出ていってしまった。それを確認したナルトはふてくされたようにその場に座り込む。
が、イナリの態度が気になったナルトは、サクラの目を盗んでイナリを捜し、かすかな声がもれてくる部屋に近づき、耳をそばだてた。
「うっ・・・う・・・父ちゃん・・・。」
ナルトはなるほど、と思う。イナリがあれ程に悟りきってしまっていたのは、おそらくは、父親が原因なのだろう。
「・・・ガトーに逆らったか何かして、殺された・・・か。」
呟いて、眉根を寄せた。と、その時。
「・・・ナル。」
「!」
外から鋭裏の声が聞こえ、ナルトはハッとして窓の外に顔を出す。
「上だ。」
声の通りに見上げると、屋根の上で、鋭裏がひらひらと手を振っていた。
「シカ待って。今、上に行く。」
ナルトはそう言うなり、窓の枠に足をかけて屋根の上にジャンプし、着地と同時に鋭裏に抱き締められる。
「はぁ~・・・やっと、お前に触れた。」
「・・・ん。」
ナルトは目を細め、鋭裏の肩に顔を埋める。
「・・・ナル・・・再不斬のこと、どうするつもりなんだ?・・・あの時、お前ならこっそり影分身でも放って、2人ごと始末できただろう?」
「・・・うん。ちょっと・・・前に話を聞いたことがあってね。」
「話?・・・再不斬とあのお面ヤローの?」
「・・・うん。又聞きなんだけどね。」
「へぇ。・・・で、気になってるわけ、だ。」
鋭裏は二ヤリ、と笑って、ナルトの頭をガシガシと撫でる。
「・・・っ///・・・た、ただ、すぐ殺すのは、ちょっとって思っただけ!」
「まあ、そういうことにしてやっても良いけどな?」
「シカの意地悪・・・。」
ナルトはぷく、と頬をふくらませ、鋭裏を恨めしそうに見上げる。
「(かっわい・・・v)・・・わりぃわりぃ。ちょっと、嫉妬したんだよ。」
「・・・へ?」
「サスケとすっげー息が合ってたから。」
「・・・あ~・・・それは・・・。」
何とも言えない表情をするナルトに、鋭裏はクツリと笑った。
「いいよ、わかってっから。・・・俺よりも早く、あいつの方が事情を知ってるんだ。その分、息が合ってて、当然だよな?」
「あ~・・・元々、術の相性も良いんだよ。・・・俺は風、あいつは火だからな。」
「なるほどな。」
鋭裏は納得してみせ、それから、ナルトを腕の中に抱き込む。
「・・・はぁ~・・・落ち着く。」
「・・・シカ、大丈夫?」
「ん~・・・とりあえず、一日一回こうやって充電できれば、耐えられる。」
「・・・バカ///」
甘い空気がその場を支配した時だった。
「もしもし、お二人さん。大変ラブラブで良いトコ申し訳ないんだが・・・。」
「のわ!」
「せ、千坐君?!・・・な、何でいんの!?」
慌てて離れた2人を見て、千坐は苦笑する。
「いや、俺にも出番を・・・、じゃなくてだな“奴”から連絡が入ったんだ。」
「「奴??」」
2人揃って首を傾げる。
「ああ。・・・ほら、ナルト宛てだ。」
差し出された書簡を開き、ナルトは固まった。
「・・・ナル・・・誰から・・っ!?」
覗きこんだ鋭裏も固まる。
「・・・あ~・・・うん。わかるぞ、その気持ち。」
千坐がうんうん、と頷きながらその書簡をナルトの手から取り上げる。
「・・・じゃあ、そういうことだから・・・。」
そそくさと帰ろうとする千坐の服の裾をガシッとナルトが掴む。
「な、ナルト・・・?」
「・・・ちょっと、待って。」
「これ、どういうことっスか?」
ナルトと鋭裏に詰め寄られ、千坐は顔を青くし、結局ことの全てを白状させられたのだった。
午後
松葉杖をつきながらだが、何とか動けるようになったカカシに連れられて、ナルト達はタズナの家に程近い、森の奥にやってきていた。
「これからやってもらう修業は、ま、チャクラの訓練ってヤツだ。」
「チャクラの訓練?」
ナルトが首を傾げるのを見て、カカシは苦笑する。
「今のお前達は、とてもじゃないが、チャクラを使いこなせているとは言い難い。たとえ、多くのチャクラを練り上げられたとしても、術によってバランスよくコントロールできなければ、威力が半減したり、失敗したりする。・・・つまり、エネルギーの無駄遣いで、チャクラ切れを起こしてしまったら・・・どうなるかはわかるな?」
ごくり、とサクラが息を呑む。その時の想像をしてしまったからだろう。
「そこで、お前達にやってもらう修業だが・・・この木に登ってもらう。」
「木登り、ですか?」
サクラが不審げに眉を顰める。
「そ。ただし・・・手を使わずにやってもらう。」
「手を使わないって・・・。」
「ま、見てろ。」
カカシは言うなり、手近な木に松葉杖をつきながら近寄り、短く印を結んで意識を集中する。
そして、やおら、木の幹に向かって足を踏み出し、スタスタと、まるで平らな道を歩いているように登ってしまい、枝の方まで歩を進めたカカシは、完全に地面に対して逆さまの状態になってしまっていた。
「チャクラをうまく使えれば、こんなこともできる。・・・チャクラのノウハウを習得するには丁度良い修行になるからね・・・とにかく、理論云々は良いから、体得してもらうよ?」
カカシはそう言って、ナルト達の足元にクナイを放つ。
「・・・そのクナイで、今、自分の登り切れる場所に傷を打て。そして、次はその傷の上に印をつけられるように心がける。最初から歩いて登るのは難しいだろうから、走って勢いに乗せて慣らしていくと良い。」
カカシの説明を受け、ナルトが真っ先に足元のクナイを引き抜いてガッツポーズを決めた。
「よっしゃーーー!!やってやるってばよ!!」
チャクラを練り、ナルトは勢いよく駆け出して、幹に足をかけ・・・ずっこけた。チャクラをコントロールして、始めの一歩で幹に吸いつくチャクラを切り離したのだ。
「(・・・うわ~・・・いつもながら、器用なまねしてるなぁ。)」
カカシが変な感心をしていると、その隣で、サスケもチャクラの練りすぎで幹から弾き飛ばされていた。
「なーんだ。・・・案外、簡単なのね。」
悪戦苦闘の2人を余所に、サクラの明るい声が響いた。いつの間にか、カカシとほぼ同じ位置の枝に腰掛け、ナルトとサスケを見降ろしている。
「チャクラのコントロールが一番上手だったのは、女の子のサクラか・・・。」
悔しそうに見上げるナルト達を見て、カカシは苦笑をうかべた。
「(ま、これで、明日からはサクラをこの修行から外せるだろうし、我慢してもらわないとねぇ。)」
そして、視界の端に小さな影を捉えたカカシは、すっとそちらに視線を向ける。
「(あれは・・・。)」
そこにいたのは、タズナの孫、イナリだった。じっとナルト達を見つめていたかと思うと、くるりと向きを変えて家の方へと走り去ってしまう。
「(う~ん・・・ちょっと、話をしてみようかな。)」
カカシはやれやれと肩を竦め、木から下りる。
未だに悪戦苦闘を続けるナルトが、サクラにコツを聞いている。それを仏頂面で見つめるサスケも、だいぶボロボロだ。
「じゃ、明日は、サクラはタズナさんの護衛。ナルトとサスケは修行を続けること。」
そう言って、カカシは解散を命じたのだった。
その夜
サクラが寝入ってしまうのを確認したナルトは、カカシとサスケを叩き起こす。
「・・・な、なに?・・・お説教なら、元気になってからの方が良いなぁ・・・なんて。」
カカシが二ヘラ、と笑う脇で、サスケがこめかみに指を当てた。
「・・・怒られグセができてるところを見ると、陰で相当絞られてるんだな、カカシ;」
「いや~・・・担当上忍だからって、サボって変な本ばっかり読んでんじゃない!ってさぁ・・・。」
「当たり前、ショボイ任務だって俺達は我慢してやってるんだ。なのに、あのエロ仙人の本をニヤニヤ笑いながら読んでてさぁ・・・サスケだって、腹立つだろ?」
「それは・・・まぁ。・・・そんなことより、再不斬のこと、気付いていたんだろ?何で追わなかった?」
サスケが詰問すると、ナルトは苦笑した。
「うん。ちょっと、気になることがあって。・・・まぁ、万が一の際は俺が片付けるから。あいつらのことは俺に任せてくれる?」
「・・・まぁ・・・お前がそう言うなら・・・。」
サスケが納得したところで、ナルトは話を切り出した。
「で・・・今日の午前中、カカシ君がぶっ倒れてる間、千坐君が来たんだ。」
「千坐が?なんで??」
「・・・・・・書簡を持って来たんだよ。俺宛の。」
「ナルト、宛?・・・誰から?」
「・・・・・・・・・イタチ君。」
「「イタチ/兄貴!?」」
カカシとサスケの声が重なる。
「し~!!・・・サクラちゃんが起きちゃうだろ!?」
「「!?」」
思わず自分の口を押さえたカカシとサスケを見て、ナルトは溜息をついた。
「・・・今回の任務をどこからか耳にはさんだらしいね。・・・元霧の忍刀七人衆の1人が関わってることが気になるって言って・・・イタチ君の相方も元霧の忍刀七人衆・・・らしいよ?」
「・・・霧の忍刀七人衆・・・か、確か、俺達も戦ったことあったねぇ?」
「うん。・・・俺が暗部なりたての頃、だったかな?」
「そうそう。・・・確か、あっちのターゲットとこっちのターゲットが被っちゃったんだよねぇ・・・。」
カカシが懐かしげに眼を細めると、サスケがああ、と呟いた。
「あれか、兄貴が言ってた・・・確か、ナルトがキレて、相手をフルボッコにしたって・・・。」
「そ~。四代目の術とか俺らが教えた術とか・・・もう、フル活用で相手をねぇ・・・あれは味方のハズのこっちも怖かったなぁ。」
腕を思わず擦ったカカシに、サスケはごくりと唾を飲み込む。
「・・・そのね、フルボッコにした相手がイタチ君の相方なんだって・・・。」
「げ!・・・干柿鬼鮫でしょ!?アイツ“暁”に入ってたの!?・・・うわー、こっちを恨んでたりして・・・。」
「・・・ううん・・・その逆。なんか、気に入られちゃったみたいで・・・俺の話とかで盛り上がって・・・今は味方になっちゃったみたい・・・。」
「・・・あ・・・ああ、そうなの・・・。」
「で・・・今、こっちに向かってるんだって・・・。」
「・・・・・・・・・・・はい?」
ほんの少しの間があって、カカシが聞き返す。ナルトも固まってしまったのだから、その反応は自然だなぁ、と思いつつ、復唱した。
「・・・イタチ君と干柿鬼鮫がセットで、こっちに来るんだって。」
「・・・ちょっと、待ってくれ・・・なんで来るってことになってる?!」
「いや、俺にもわかんないってば。・・・再不斬のことが気になるから来るのか、俺達が表の姿で外に出てるのが珍しいから来るのか・・・どっちにしても、俺やシカには相手してる余裕ないから。・・・まぁ、堂々とは来ないと思うけど、相手はカカシ君に任せるから。」
ナルトがにっこりと笑う。
「ま、待て待て・・・な、ナルト?なんで、俺?」
「そうだぞ、兄貴はナルトに会いに来るんじゃないのか?」
カカシとサスケの言葉に、ナルトはさらに笑みを深めた。
「俺は忙しいの。再不斬とあのお面君の相手をするからね。だから、カカシ君がとりあえず待機して、イタチ君達の相手をしてて。・・・良い?カカシ君の勘が“鈍ってる”みたいだから、今回のは俺メインで作戦を組むから。」
ナルトの言葉に、カカシはギクリとする。ナルト達の存在にすっかり安心しきって、いろいろなことを見逃してしまっているのは事実だからだ。
「・・・わ、わかった。・・・でも、再不斬とお面君の相手って・・・どうするつもり?サクラが真実を知るにはまだ・・・早すぎる。」
カカシの心配も尤もで、ナルトはコクンと頷く。
「ん。まぁ、バレないようには頑張る。・・・ただ、バレた時、フォローはよろしく。」
「・・・忘却の術・・・か?」
カカシが問う。それに頷き、ナルトは苦笑を浮かべた。
「なるべくなら、使いたくない術だからなぁ・・・受け入れてくれるなら、それが一番良いんだけど。」
その言葉に、思わず寝入るサクラを見つめたカカシとサスケは、日頃のサクラの言動を思い出して、深い溜息をついたのだった。
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・最年少暗部シリーズをお読みになりましたか?(大前提ですよ?)
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タズナの家
「・・・だ、大丈夫ですか・・・?」
「え、ええ。・・・すみませんねぇ・・・この感じだと、一週間は動けないかもしれません・・・。」
鋭裏に背負われて家に担ぎ込まれたカカシは、タズナの娘であるツナミの世話を受けながら、溜め息をついた。
因みに、鋭裏はカカシを運び込んだ後、また、姿を隠してしまった。根掘り葉掘り聞こうとしていたサクラは残念がっていたが。
「写輪眼ってものすごいけど、身体にそんなに負担がかかるんじゃ・・・。」
「いやいや。ちゃんとした血族の人間が使えば、そんなこと無いのよ~。」
カカシは苦笑し、ちらりとサスケに視線を向ける。
「ね?サスケ~?」
「(バカカシ!俺に話を振るな!!!)・・・・・・フン。」
「え?サスケ君、知ってたの?」
「・・・・・・。」
ここでサクラを完全無視しても大丈夫なキャラ設定をしておいて良かった!!と今更ながらに自分の選択を褒めつつ、サスケは先程から黙っているナルトへと視線を向けた。
「ま、まぁ、あんなに強い忍者を倒したんじゃし、暫くは安心じゃろ!」
タズナが晴れやかに笑う。それを見たナルトが更に眉間にしわを寄せた。皆、意識がナルトに向いていないから気づいてはいないが、サスケは思わずカカシに助けを求めるように視線を向けた。
「・・・霧隠れの追い忍・・・ね。」
サスケの視線に気づいたカカシは、ナルトの表情を確認し、違和感があっただろうか、と思い返し、ガバ!と起き上がった。
「せ、先生!?」
サクラがギョッとしてカカシを見つめる。
「違う・・・。」
「・・・どうしたんだってばよ?先生。」
ナルトが首を傾げるが、その目はやっと気づいたのかと呆れた様子で。カカシはまた、どやされるなぁ、と内心ぼやく。
「追い忍、死体処理班ってのは、殺した者の死体は、すぐ、その場で処理するものなんだ。」
サクラが怪訝な顔でカカシを見る。
「わからないか?・・・あのお面の少年は、再不斬の死体をどう処理した?」
「は?知るわけないじゃない。だって、あのお面の子が持って行っちゃったんだから。」
「そうだ。・・・殺した証拠なら、首だけ持ち帰れば事足りるのに、だ。」
カカシは口元に手を当て、迂闊だったと呟く。
「再不斬を殺した武器だって・・・。」
そのカカシの言葉に、サクラがハッとする。
再不斬の首を貫いた武器。あれは千本と呼ばれ、医療用として使われることもある。殺傷力も低く、急所を的確に狙わなければ相手を殺すことはできない。
「・・・まさか!」
サスケは目を丸くした。あの時、すでにナルトは気づいていたようだった。なのに、なぜ、見逃したのか、と詰め寄りそうになって、ぐっと気持ちを抑える。
「お前ら、さっきからなにを話しとるんじゃ?」
タズナが訝しげに訊ねると、カカシは神妙な表情をして答えた。
「おそらく・・・再不斬は生きている。」
全員の表情が凍った。
「・・・だ、だって、カカシ先生だってアイツが死んだのを確認してッ!」
サクラが悲鳴に近い声で叫ぶ。
「ああ・・・あれはおそらく、仮死状態にしただけだろう。・・・あの少年の真の目的は・・・再不斬の救出。」
ごくり、と息を呑み、タズナが言う。
「だが、それは仮定の話じゃろう?・・・超心配のしすぎじゃないのか?」
「いえ・・・それが杞憂に終わろうとも、備えておくに越したことはありませんよ。・・・それに、ガトーの配下にもっと強い忍がいる可能性もあります。・・・というわけで、お前達には修行を課すことにする!」
突然のカカシの宣言に、思わずナルト達は呆然としてしまう。
「・・・ふん、いくら修行したって、ガトー達に刃向かって、勝てるわけないよ。」
いつの間にかやって来ていた子どもがボソリ、とそう言う。その悟りきった目に、ナルトは一瞬、シカマルと出会う前の自分を思い出す。自分の運命はどんなにあがいても変わらないのだと、そう思っていたあの頃の。
そう思ったら、自然とドベナルトの言葉を借りて、ナルトは叫んでいた。
「んなことが、どうしてわかるんだってばよ!!やってみなきゃ、わかんないだろ!?・・・いいか、俺は、将来、火影っていうすっげー忍になるスーパーヒーローだ!ガトーだか何だか知らねーが、そんなの全然、目じゃないっつーの!!」
「バッカみたい。ヒーローなんて、いるわけないのに。」
「イナリ!!」
ツナミが鋭く名を呼ぶと、子どもはビクッと身体を震わせ、嫌悪に表情を歪めた。
「死にたくなかったら、早く帰った方が良いよ。」
「何をーーー!!」
「ナルト!相手は子どもよ、やめなさい!」
くってかかろうとするナルトをサクラが一喝する。その間に、イナリは部屋から出ていってしまった。それを確認したナルトはふてくされたようにその場に座り込む。
が、イナリの態度が気になったナルトは、サクラの目を盗んでイナリを捜し、かすかな声がもれてくる部屋に近づき、耳をそばだてた。
「うっ・・・う・・・父ちゃん・・・。」
ナルトはなるほど、と思う。イナリがあれ程に悟りきってしまっていたのは、おそらくは、父親が原因なのだろう。
「・・・ガトーに逆らったか何かして、殺された・・・か。」
呟いて、眉根を寄せた。と、その時。
「・・・ナル。」
「!」
外から鋭裏の声が聞こえ、ナルトはハッとして窓の外に顔を出す。
「上だ。」
声の通りに見上げると、屋根の上で、鋭裏がひらひらと手を振っていた。
「シカ待って。今、上に行く。」
ナルトはそう言うなり、窓の枠に足をかけて屋根の上にジャンプし、着地と同時に鋭裏に抱き締められる。
「はぁ~・・・やっと、お前に触れた。」
「・・・ん。」
ナルトは目を細め、鋭裏の肩に顔を埋める。
「・・・ナル・・・再不斬のこと、どうするつもりなんだ?・・・あの時、お前ならこっそり影分身でも放って、2人ごと始末できただろう?」
「・・・うん。ちょっと・・・前に話を聞いたことがあってね。」
「話?・・・再不斬とあのお面ヤローの?」
「・・・うん。又聞きなんだけどね。」
「へぇ。・・・で、気になってるわけ、だ。」
鋭裏は二ヤリ、と笑って、ナルトの頭をガシガシと撫でる。
「・・・っ///・・・た、ただ、すぐ殺すのは、ちょっとって思っただけ!」
「まあ、そういうことにしてやっても良いけどな?」
「シカの意地悪・・・。」
ナルトはぷく、と頬をふくらませ、鋭裏を恨めしそうに見上げる。
「(かっわい・・・v)・・・わりぃわりぃ。ちょっと、嫉妬したんだよ。」
「・・・へ?」
「サスケとすっげー息が合ってたから。」
「・・・あ~・・・それは・・・。」
何とも言えない表情をするナルトに、鋭裏はクツリと笑った。
「いいよ、わかってっから。・・・俺よりも早く、あいつの方が事情を知ってるんだ。その分、息が合ってて、当然だよな?」
「あ~・・・元々、術の相性も良いんだよ。・・・俺は風、あいつは火だからな。」
「なるほどな。」
鋭裏は納得してみせ、それから、ナルトを腕の中に抱き込む。
「・・・はぁ~・・・落ち着く。」
「・・・シカ、大丈夫?」
「ん~・・・とりあえず、一日一回こうやって充電できれば、耐えられる。」
「・・・バカ///」
甘い空気がその場を支配した時だった。
「もしもし、お二人さん。大変ラブラブで良いトコ申し訳ないんだが・・・。」
「のわ!」
「せ、千坐君?!・・・な、何でいんの!?」
慌てて離れた2人を見て、千坐は苦笑する。
「いや、俺にも出番を・・・、じゃなくてだな“奴”から連絡が入ったんだ。」
「「奴??」」
2人揃って首を傾げる。
「ああ。・・・ほら、ナルト宛てだ。」
差し出された書簡を開き、ナルトは固まった。
「・・・ナル・・・誰から・・っ!?」
覗きこんだ鋭裏も固まる。
「・・・あ~・・・うん。わかるぞ、その気持ち。」
千坐がうんうん、と頷きながらその書簡をナルトの手から取り上げる。
「・・・じゃあ、そういうことだから・・・。」
そそくさと帰ろうとする千坐の服の裾をガシッとナルトが掴む。
「な、ナルト・・・?」
「・・・ちょっと、待って。」
「これ、どういうことっスか?」
ナルトと鋭裏に詰め寄られ、千坐は顔を青くし、結局ことの全てを白状させられたのだった。
午後
松葉杖をつきながらだが、何とか動けるようになったカカシに連れられて、ナルト達はタズナの家に程近い、森の奥にやってきていた。
「これからやってもらう修業は、ま、チャクラの訓練ってヤツだ。」
「チャクラの訓練?」
ナルトが首を傾げるのを見て、カカシは苦笑する。
「今のお前達は、とてもじゃないが、チャクラを使いこなせているとは言い難い。たとえ、多くのチャクラを練り上げられたとしても、術によってバランスよくコントロールできなければ、威力が半減したり、失敗したりする。・・・つまり、エネルギーの無駄遣いで、チャクラ切れを起こしてしまったら・・・どうなるかはわかるな?」
ごくり、とサクラが息を呑む。その時の想像をしてしまったからだろう。
「そこで、お前達にやってもらう修業だが・・・この木に登ってもらう。」
「木登り、ですか?」
サクラが不審げに眉を顰める。
「そ。ただし・・・手を使わずにやってもらう。」
「手を使わないって・・・。」
「ま、見てろ。」
カカシは言うなり、手近な木に松葉杖をつきながら近寄り、短く印を結んで意識を集中する。
そして、やおら、木の幹に向かって足を踏み出し、スタスタと、まるで平らな道を歩いているように登ってしまい、枝の方まで歩を進めたカカシは、完全に地面に対して逆さまの状態になってしまっていた。
「チャクラをうまく使えれば、こんなこともできる。・・・チャクラのノウハウを習得するには丁度良い修行になるからね・・・とにかく、理論云々は良いから、体得してもらうよ?」
カカシはそう言って、ナルト達の足元にクナイを放つ。
「・・・そのクナイで、今、自分の登り切れる場所に傷を打て。そして、次はその傷の上に印をつけられるように心がける。最初から歩いて登るのは難しいだろうから、走って勢いに乗せて慣らしていくと良い。」
カカシの説明を受け、ナルトが真っ先に足元のクナイを引き抜いてガッツポーズを決めた。
「よっしゃーーー!!やってやるってばよ!!」
チャクラを練り、ナルトは勢いよく駆け出して、幹に足をかけ・・・ずっこけた。チャクラをコントロールして、始めの一歩で幹に吸いつくチャクラを切り離したのだ。
「(・・・うわ~・・・いつもながら、器用なまねしてるなぁ。)」
カカシが変な感心をしていると、その隣で、サスケもチャクラの練りすぎで幹から弾き飛ばされていた。
「なーんだ。・・・案外、簡単なのね。」
悪戦苦闘の2人を余所に、サクラの明るい声が響いた。いつの間にか、カカシとほぼ同じ位置の枝に腰掛け、ナルトとサスケを見降ろしている。
「チャクラのコントロールが一番上手だったのは、女の子のサクラか・・・。」
悔しそうに見上げるナルト達を見て、カカシは苦笑をうかべた。
「(ま、これで、明日からはサクラをこの修行から外せるだろうし、我慢してもらわないとねぇ。)」
そして、視界の端に小さな影を捉えたカカシは、すっとそちらに視線を向ける。
「(あれは・・・。)」
そこにいたのは、タズナの孫、イナリだった。じっとナルト達を見つめていたかと思うと、くるりと向きを変えて家の方へと走り去ってしまう。
「(う~ん・・・ちょっと、話をしてみようかな。)」
カカシはやれやれと肩を竦め、木から下りる。
未だに悪戦苦闘を続けるナルトが、サクラにコツを聞いている。それを仏頂面で見つめるサスケも、だいぶボロボロだ。
「じゃ、明日は、サクラはタズナさんの護衛。ナルトとサスケは修行を続けること。」
そう言って、カカシは解散を命じたのだった。
その夜
サクラが寝入ってしまうのを確認したナルトは、カカシとサスケを叩き起こす。
「・・・な、なに?・・・お説教なら、元気になってからの方が良いなぁ・・・なんて。」
カカシが二ヘラ、と笑う脇で、サスケがこめかみに指を当てた。
「・・・怒られグセができてるところを見ると、陰で相当絞られてるんだな、カカシ;」
「いや~・・・担当上忍だからって、サボって変な本ばっかり読んでんじゃない!ってさぁ・・・。」
「当たり前、ショボイ任務だって俺達は我慢してやってるんだ。なのに、あのエロ仙人の本をニヤニヤ笑いながら読んでてさぁ・・・サスケだって、腹立つだろ?」
「それは・・・まぁ。・・・そんなことより、再不斬のこと、気付いていたんだろ?何で追わなかった?」
サスケが詰問すると、ナルトは苦笑した。
「うん。ちょっと、気になることがあって。・・・まぁ、万が一の際は俺が片付けるから。あいつらのことは俺に任せてくれる?」
「・・・まぁ・・・お前がそう言うなら・・・。」
サスケが納得したところで、ナルトは話を切り出した。
「で・・・今日の午前中、カカシ君がぶっ倒れてる間、千坐君が来たんだ。」
「千坐が?なんで??」
「・・・・・・書簡を持って来たんだよ。俺宛の。」
「ナルト、宛?・・・誰から?」
「・・・・・・・・・イタチ君。」
「「イタチ/兄貴!?」」
カカシとサスケの声が重なる。
「し~!!・・・サクラちゃんが起きちゃうだろ!?」
「「!?」」
思わず自分の口を押さえたカカシとサスケを見て、ナルトは溜息をついた。
「・・・今回の任務をどこからか耳にはさんだらしいね。・・・元霧の忍刀七人衆の1人が関わってることが気になるって言って・・・イタチ君の相方も元霧の忍刀七人衆・・・らしいよ?」
「・・・霧の忍刀七人衆・・・か、確か、俺達も戦ったことあったねぇ?」
「うん。・・・俺が暗部なりたての頃、だったかな?」
「そうそう。・・・確か、あっちのターゲットとこっちのターゲットが被っちゃったんだよねぇ・・・。」
カカシが懐かしげに眼を細めると、サスケがああ、と呟いた。
「あれか、兄貴が言ってた・・・確か、ナルトがキレて、相手をフルボッコにしたって・・・。」
「そ~。四代目の術とか俺らが教えた術とか・・・もう、フル活用で相手をねぇ・・・あれは味方のハズのこっちも怖かったなぁ。」
腕を思わず擦ったカカシに、サスケはごくりと唾を飲み込む。
「・・・そのね、フルボッコにした相手がイタチ君の相方なんだって・・・。」
「げ!・・・干柿鬼鮫でしょ!?アイツ“暁”に入ってたの!?・・・うわー、こっちを恨んでたりして・・・。」
「・・・ううん・・・その逆。なんか、気に入られちゃったみたいで・・・俺の話とかで盛り上がって・・・今は味方になっちゃったみたい・・・。」
「・・・あ・・・ああ、そうなの・・・。」
「で・・・今、こっちに向かってるんだって・・・。」
「・・・・・・・・・・・はい?」
ほんの少しの間があって、カカシが聞き返す。ナルトも固まってしまったのだから、その反応は自然だなぁ、と思いつつ、復唱した。
「・・・イタチ君と干柿鬼鮫がセットで、こっちに来るんだって。」
「・・・ちょっと、待ってくれ・・・なんで来るってことになってる?!」
「いや、俺にもわかんないってば。・・・再不斬のことが気になるから来るのか、俺達が表の姿で外に出てるのが珍しいから来るのか・・・どっちにしても、俺やシカには相手してる余裕ないから。・・・まぁ、堂々とは来ないと思うけど、相手はカカシ君に任せるから。」
ナルトがにっこりと笑う。
「ま、待て待て・・・な、ナルト?なんで、俺?」
「そうだぞ、兄貴はナルトに会いに来るんじゃないのか?」
カカシとサスケの言葉に、ナルトはさらに笑みを深めた。
「俺は忙しいの。再不斬とあのお面君の相手をするからね。だから、カカシ君がとりあえず待機して、イタチ君達の相手をしてて。・・・良い?カカシ君の勘が“鈍ってる”みたいだから、今回のは俺メインで作戦を組むから。」
ナルトの言葉に、カカシはギクリとする。ナルト達の存在にすっかり安心しきって、いろいろなことを見逃してしまっているのは事実だからだ。
「・・・わ、わかった。・・・でも、再不斬とお面君の相手って・・・どうするつもり?サクラが真実を知るにはまだ・・・早すぎる。」
カカシの心配も尤もで、ナルトはコクンと頷く。
「ん。まぁ、バレないようには頑張る。・・・ただ、バレた時、フォローはよろしく。」
「・・・忘却の術・・・か?」
カカシが問う。それに頷き、ナルトは苦笑を浮かべた。
「なるべくなら、使いたくない術だからなぁ・・・受け入れてくれるなら、それが一番良いんだけど。」
その言葉に、思わず寝入るサクラを見つめたカカシとサスケは、日頃のサクラの言動を思い出して、深い溜息をついたのだった。
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