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Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)

このサイトは、コードギアス・NARUTO・銀魂の二次創作サイトです。原作者様とは一切関係ありません。各ページの注意事項をよく読んでから閲覧してください。

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注意
・設定は捏造ありでR2本編仕様
・↑なので、騎士団は敵
・C.C.・ロイド・セシル・ジェレミア・咲世子はルルを幸せにするための共犯者
・×××や○○○と名前を伏せてあるところは、お好きな名前を入れて読んで下さい
・コードの力については捏造
・その他捏造満載

以上、同意できる方のみ↓へ・・・








― 世界は、こんなにもお前に優しくない。


 シャルルやマリアンヌと言い争うルルーシュとスザク。傍観を決め込んでいたC.C.は、その様子に、悲しげに眉を顰めた。

 最初は、己の望みを叶える為、シャルルとマリアンヌの愛息であるルルーシュに近づいた。だが、ルルーシュの生来の誠実さに、すっかりC.C.は絆されていた。

 ギアスを得たことにより、ルルーシュは大切な物を次々と失っていった。それなのに、明確にC.C.を責めたことは無かった。お前の所為だ、と言うことだって出来たというのに。

「俺は!・・・明日が欲しい!」

 決意、そして、強い意志、それによりギアスを完全に我が物としたルルーシュが、神にかけたギアスの影響で、シャルルとマリアンヌが世界に飲み込まれていく。

 だが、己の身体が飲み込まれることは無い。そうなってしまえば良いのに。と思いながらも、ルルーシュを放ってはおけないと思ってしまった。それに・・・。

「すまない・・・気付いてしまったんだ。お前達は、結局自分のことが好きなだけなのだと・・・。」

 そんな相手が、本当に自分の望みを叶えてくれるはずもない。きっと、裏切る。利用するだけ利用し、捨てるのだ。あの、自分にギアスを与え、コードを押し付けた、シスターのように。

「消え失せろ!!!」

 ルルーシュの一喝で、消えゆくシャルルとマリアンヌ。そのシャルルの右手に宿ったコードが、浮き上がるのをC.C.はその眼で確認する。一瞬逡巡し、そのコードを己のコードで引き寄せる。

「(ルルーシュに宿るなッ!あいつにこれ以上背負わせるわけにはいかないんだ!!)」

 そして、シャルルのコードがC.C.に引き継がれる。勘付かれることの無いよう、そっと右手を握り締め、呆然としているルルーシュとスザクに声をかけた。

「お前達はどうするつもりなんだ?・・・シャルルが消えた今、世界は・・・。」

 C.C.の言葉に先に動いたのはスザクだった。持っていた剣を構え、ルルーシュを睨む。

「・・・ルルーシュは、ユフィの仇だ。」

「・・・だから?」

 睨みあう2人が痛々しかった。これ以上ルルーシュに傷ついて欲しくなかった。

 シャルルに突き出されても、ナナリーをだしに正体を探られても、結局友として認めていたスザク。彼が味方になるなら、きっとルルーシュも、ほんの少しは救われるだろうに。

 そう思いながらも、話し合う2人に口を出すことはしない。答えは、彼等が出すべきことで、自分がどうこう言うものではないとわかっていたから。

 結局、ルルーシュとスザクは手を組むことになった。やはり、ルルーシュの頭脳で考え出した作戦を完璧にこなせるのはスザクしかいなかったということなのだろうと理解する。

 ギアスにも負けない意志の強さ。黒の騎士団には、それが足りなかった。








「・・・もう一つ足りないものがあったな・・・“覚悟”・・・戦いの最中に身を置き、死と隣り合わせであるということを忘れ、ルルーシュを責めた。・・・もっと早くにルルーシュを騎士団から連れ出していれば良かった。」

 そうすれば、ルルーシュがあんなにも傷つくことは無かったのに。まさか、カレンまであちらにつくとは予想していなかっただけに、C.C.は黒の騎士団への淡い期待を一切捨てた。

 ブリタニアに捕まっていた連中を、単身、命懸けでルルーシュが救ったというのに、何という裏切りだろう。ルルーシュ自身も囚われの身だったということも知らないで。

「・・・まったく、腹が立つ。」

「そうだねぇ・・・直接見たわけじゃないし、その時の状況を知ってるわけでも無いけれど、陛下がどんな思いをされたのか・・・あ~・・・いっそのこと、スザク君を使って、騎士団だけでも殲滅しちゃえば良いのにぃ~。」

 ロイドと2人、ブチブチと文句を言いながら、ルルーシュ達がいるだろう庭園に馬を進める。

「そうしないのが、あいつの甘さであり、優しさなんだろう。」

「あっはぁ~。陛下ってば、悪を貫くって言ってるのにぃ~。・・・黒の騎士団の連中に未来を託すなんて、お優しいぃ~。」

 ふざけたように言うロイドだが、眼鏡の奥のアイスブルーが冷え冷えとした色を湛えている。

「ロイド、お前の考えを聞かせろ。・・・ルルーシュをこのまま死なせても良いとお前は思うか?」

 C.C.の問いに、ロイドは一瞬息を呑み、そして、真剣な表情をうかべた。

「陛下は死ぬべきじゃない。そう思うよ。・・・でも、あの計画をやめろと言うことは、僕には出来ない。・・・それだけの覚悟をお持ちだから。」

「成程・・・参考にしよう。」

 ニヤリと笑んだC.C.に、改善する余地があるのかと尋ねようとして、ロイドは口を開くが、すぐに思い直した。

「僕は、陛下の構想を叶える為に動いている。今、君の考えていることを聞いたら、動きが鈍ってしまうかもしれないしねぇ・・・そうだなぁ、世界征服を陛下が果たしたら、教えてくれるかなぁ~?」

「フ、良いだろう。お前はあいつの騎士ではないが、あいつの為に動いていることは間違いないからな。」

「あっはぁ~!楽しみにしてるよぉ~。」

 そんな会話の後に、ルルーシュとスザクの覚悟を確認し、そして、ラウンズの襲撃により、計画は次の段階に進む。





 アッシュフォード学園。8年間ルルーシュが暮らしたこの場所で、ルルーシュは世界を敵にまわした。更には、生きていたことを喜ぶよりも先に、最愛の妹までもが敵に回った。

 震える指を組むことで巧妙に隠し、感情を無理やりにコントロールして、悪を演じたルルーシュを、心底愛しく思う。

「・・・ルルーシュ。良く、ナナリーの前で演じきったな。」

 ルルーシュの部屋のベッドルーム。スザクに一喝されたことでようやく精神の均衡を保ったルルーシュは、C.C.の言葉に、俯きながらも答えた。

「何度、シミュレートしても・・・やはり、この計画が一番だと思ったから。」

「もう、良いんじゃないのか?お前は充分頑張ったよ。」

 そう言ったC.C.に、ルルーシュはゆっくりと首を振った。

「・・・お前は、俺が悪を為さなければならない理由を知っているだろう?」

 C.C.は頷き、ルルーシュの背に自分の背を預ける。

 どんなことがあっても傍にいると約束した。一度はその約束を破ろうとしてしまったが、ルルーシュはそれを責めることはしない。本当に、ルルーシュは優しい・・・。心の中でそう呟き、C.C.はルルーシュの手を握った。





 決戦の日、黒の騎士団の猛攻に、ルルーシュは対シュナイゼル(フレイヤ)の富士の作戦を使ってしまい、窮地に陥った。だが、ニーナやロイドが懸命になってギリギリのところでフレイヤを無効化するシステムを組み上げた。

「・・・私は囮・・・うまく立ち回ってやるさ。ルルーシュ、お前の為に。」

 ぽつりと呟き、ピンクのカラーリングのKMFを見上げる。

「C.C.・・・。」

 そこにルルーシュがやって来る。

「・・・お前は私を恨んでいるのではないのか?」

 今まで怖くて直接は聞けなかったことを聞く。失敗するとは思わないが、決戦前に確認しておきたかった。

「これは俺が決めたことだからな・・・お前を恨んでなどいないさ。」

「・・・ルルーシュ。」

「C.C.・・・。」

 見つめ合ったところで、余計な邪魔が入った。

「っ、カレンか・・・。」

 ルルーシュが呟く。C.C.は急いでKMFに乗り込んで、ルルーシュを狙う紅蓮を抑え込んだ。

「行け!ルルーシュ!!」

「C.C.!!」

 心配そうに見つめてくるルルーシュに、C.C.は微笑む。

「私に、笑顔をくれるのだろ?・・・行け、ルルーシュ。」

「すまない!!」

 謝罪を口にしたルルーシュに、C.C.は苦笑をうかべた。

「この場合“すまない”じゃなくて“ありがとう”だろう・・・まったく。帰ってきたら、言葉の使い方を教えてやらなければな。」

 結局カレンには負けてしまったが、これで良い。ルルーシュとスザクがフレイヤを消滅させ、ダモクレスに乗り込むだけの時間を稼げれば良かったのだから。

「・・・さぁ、世界よ。ルルーシュの優しさに騙されるが良い・・・。」

 シュナイゼルをギアスで支配し、フレイヤを手に入れたルルーシュの宣言に、世界中がひれ伏した。ブリタニアの国是に則ったやり方。己が一番否定していたやり方で、ルルーシュは世界征服を果たした。





 処刑日の前日。スザクとルルーシュが計画の最後の詰めを話し合う、まさにその隣の部屋で、C.C.はジェレミアを呼び出していた。

「・・・どうしたのだ?一体・・・。」

「・・・いや、お前は、ルルーシュの騎士だからな。話しておこうと思って。・・・実は、ロイドやセシル、咲世子とは相談していたんだが・・・。」

 C.C.の話を最初は訝しげに聞いていたジェレミアの表情に、理解の色が広がるのと同時に、そのオレンジ色の瞳が涙に濡れる。

「・・・そうか・・・ルルーシュ様を救うことが出来るのか。」

「ああ。・・・だが、ルルーシュとスザクに知られると、色々と不都合もあるからな・・・一番傍に控えていたお前には、今の今まで黙っていたんだ。すまないな。」

「いや・・・ぜひ、協力させて貰う。」

「・・・フフ、ルルーシュは良い臣下を持ったな。」

 穏やかに笑み、目を細めたC.C.は、隣の部屋の様子を確認する。すると、ほんの少しだけ、躊躇いを見せたスザクに、ルルーシュは己の覚悟を示してみせる。

「撃(討)って良いのは撃(討)たれる覚悟のある奴だけだ。」

 初めてギアスを使った時も口にした言葉。ルルーシュの覚悟は本物だ。だが、C.Cがやろうとしていることは、それを無にすること。

「・・・きっと怒られるな。・・・いや、憎まれる、の間違いか。」

 それでも、ルルーシュに生きていて欲しい。それが、ルルーシュにする最後の我侭にしようと決めて、己の最期を想いながら眠りについたルルーシュの額に口づける。

「・・・愛しているよ、ルルーシュ。・・・お前のいない世界なんて、考えられない。」

 そっと手を握り、シャルルから得たコードを、悟られないようにルルーシュに移す。

「・・・最後の最後で、ギアスを使うことも無いだろう。」

 だから、処刑前日の夜、ルルーシュが寝てからにしようと相談して決めた。今頃、牢獄の中で、ロイドやセシル、咲世子は祈るような思いでいることだろう。

「・・・安心しろ、無事にコードの継承は済ませた。・・・後は、息を吹き返す前に、スザクに遺体を傷つけられたく無いとかなんとか言って、ルルーシュの遺体を貰い受けなければな。」

 “ゼロ”となったなら、それ位の偽装は出来てもらわなければ困る。シュナイゼルというブレインもいるのだから。

「悪いな、スザク。ルルーシュは返してもらうぞ?」

 意地悪な笑みを見せる。これから世界を背負うスザクに、余計な情報を与えるつもりはない。きっと、覚悟が揺らいでしまうから。

 世界中を騙すつもりでいる2人を騙すのだから、こちらもそれ相応の覚悟を持ってあたらなければならない。

「ルルーシュを死なせはしない。ルルーシュが、心の底から穏やかに笑うことが出来るまで、私がルルーシュを守る。」

 決意を口にし、ルルーシュの艶やかな黒髪を優しく撫でた。



 処刑日当日。


 全世界からの憎しみを一身に受けて、悪逆皇帝ルルーシュは、正義の味方ゼロに胸を刺し貫かれて、その短い一生を終えた。

 そう、皆が思う中、様々な状況を経て、やっと落ち着いた頃。政庁のルルーシュの遺体を安置した部屋で、仮面を外し沈黙したまま、ルルーシュを眺めていたスザクの傍に、C.C.は歩み寄った。

「・・・ルルーシュの遺体を貰い受ける。・・・死んでまで辱めを受けさせるつもりはない。良いな、スザク。」

「・・・ああ。せめて、安らかに眠らせてやって欲しい・・・。」

 そう言うスザクの目元が赤くなっている。泣いたのだろうと察すると、ほんの少し、C.C.は微笑む。

「・・・世界はお前に任せたぞ?」

「ああ。それがルルーシュのギアス(願い)だ。」

 頷いたスザクに、C.C.は満足げに頷き、ルルーシュの身体を軽々と持ち上げた。

「軽いな・・・ナナリーを敵に回してから、元々細い食がもっと細くなったからな・・・。」

 あまりにも軽いルルーシュに、眉を顰める。

 皆に見つからないようにと、珍しく気を利かせたスザクの案内で政庁の裏口から抜け出たC.C.は、打ち合わせ通り、待ち合わせた場所に迎えに来ていたジェレミアを発見して、ホッと一息をついた。

「さすがに、ルルーシュを担いでうろうろするのは目立つからな・・・。」

「ルルーシュ様を後部座席に。毛布が置いてある、それをかけて・・・。」

「今、世界中がお祭り騒ぎだ。怪しい車が通ろうと誰も何も言わないさ。」

 ルルーシュの優しさに騙された、世界中のおめでたい連中のことなど眼中にないと言わんばかりのC.C.の言葉に、ジェレミアは苦笑をうかべた。

「・・・一理あるな。」

― 自身の優しさに騙された世界の中で王は死に、そして、新たな生を受ける。








 目覚めたルルーシュの第一声は、やはりそうか、だった。

「俺に隠れてこそこそと何をやっているかと思えば。」

 そう言って嘆息したルルーシュの言葉に、責める色は無い。すっかり恐縮してしまっているジェレミアに代わり、C.C.は説明をする。

 その説明とは、これからコード解除の儀を行うということだった。

「・・・私1人では無理なんだ。コードが2つ揃った状況でないと。」

「シャルル・ジ・ブリタニアとV.V.はそれに協力すると言っていたんだな?」

「・・・ああ。コードとは、アーカーシャの剣を世界に繋ぎ止める為の楔。そして、神、Cの世界とこの世界を繋ぐ役割を持つ。・・・だから、シャルル達がそれに協力してくれるなら、私もシャルル達のやろうとしていることに協力すると言ったんだ。・・・けれど・・・。」

 守るつもりもない約束だったのではないか。そう、C.C.は呟く。

 シャルル達の言葉には誠実さが感じられなかった。とにかく、自分達の計画を実行することこそが最優先。ルルーシュの言葉ではないが、彼等はC.C.を使い捨てるつもりだったのではないかと思ったのだ。

「そうか。・・・だが、この忌まわしい力が無くなるのであれば、願ってもいないことだな。これで、二度とギアスを持つ者が現れないということなのだろう?」

「ああ。そうだ。」

 頷くC.C.に、ルルーシュはふわりと笑みを見せた。

「お前のことが、最後まで気がかりだった。お前の願いを叶えてやりたかったが、欲張れば、全てが台無しになると思ったから・・・でも、これで、約束を果たせる。」

「・・・ルルーシュ・・・ありがとう。」

 C.C.も柔らかな笑みをうかべ、涙を零した。

「・・・お前を死なせたくなかった・・・お前が死んだら、私は・・・。」

 声を震わせるC.C.を、ルルーシュは抱き寄せる。

「すまない・・・。」

「・・・言葉を間違えてるぞ、ルルーシュ。・・・こういう時は、ありがとう、と言うんだ。」

 ルルーシュの胸に頬を押しつけながら、C.C.は言う。それを聞いたルルーシュはハッとした様子で息を呑み、そして、一拍置いて、極々小さな声で呟いた。

「・・・ありがとう、C.C.・・・。」








 6年後、オレンジの木が一面に見渡せる丘の上で、腰のあたりまである艶やかな黒い髪をなびかせ、茶色の大きな犬と戯れる幼い少女がいた。

「待って、スザク!」

 犬の名を呼びながら、少女は丘を駆け降りる。

「お待ち下さい、×××様!そのように走ったら、転んでしまいますよ!」

 その少女を追いかけるのは、メイド姿の咲世子。その表情はとても明るい。

「咲世子さん!・・・だって、スザクが!」

「スザクはちゃんと待ってくれますよ、ほら、ね?」

 丘の下で待つ犬を指差し、咲世子は微笑む。

「お利口ね、スザクは。」

「・・・ええ。そうですね。」

 ニコニコと笑う少女に、咲世子は微妙な表情で頷く。いつも主人達があの犬の名を呼ぶ度に、違う人物を思い出してしまって、思わず吹き出してしまいそうになるのを堪えるのが大変なのだ。

「ルルーシュ様もわざわざあの名前にしなくてもよろしいのに。・・・まあ、似てますけれど。」

 はぁ、と溜め息をつきながら小さくこぼすと、犬とじゃれあっていた少女がこちらを向いて首を傾げた。

「何か、言った?」

「いいえ。何も。」

 きっちりと笑顔を作り、咲世子は答える。

「今日はロイドさんとセシルさんも来るのでしょ?」

「ええ。また、新しいおもちゃを貰えるかもしれませんね?」

「やったぁ!・・・私、ロイドさんの作るおもちゃは好きよ!」

「そうですね。兵器を作るよりも、そちらの方が性に合っているんでしょうね。」

 ここに来る度に新しいおもちゃを少女に与えているロイドの、弛んだ表情を思い浮かべる。少女は、自分達のアイドルだ。平和な世界の象徴とも言える彼女の存在は、なにものにも代えがたいもの。

「×××!」

 以前よりほんの少し低くなった、テノールの声が少女の名を呼ぶ。

「あ、お父様!!」

 少女はアメジストの瞳を輝かせ、その人物に走り寄って抱きついた。

「今日はロイド達が来るんだ、ちゃんと家にいなさいと言ったろう?」

 そう、厳しい調子で言いながらも、少女の髪を撫でる手つきは優しい。

「ルルーシュ様、あまり×××様を怒らないで下さいませ。その・・・犬のスザクがあまりにも散歩をねだったものですから。」

「・・・あの目でうるうると見上げられると、どうにも拒否しづらいからな・・・こういうところまであいつに似なくてもいいのに。まったく。」

「そうですね。」

 嘆息するルルーシュに、クスクスと咲世子は声をたてて笑う。

「・・・そろそろ、ロイド達が来る時間だ。急いで戻ろう。×××、行くぞ。」

「はーい!・・・ねぇ、お父様!お母様は?」

「○○○なら、ジェレミアとアーニャを畑まで呼びに行ったぞ。昼食が出来たからな、ロイド達が来たら一緒に食べようと思って。」

「わぁ!今日のお昼ご飯はなぁに?」

「お前の好きな、オレンジソースをかけたハンバーグと、たっぷりのチーズとベーコンを使ったピザと、オーロラソースをかけたトマトのサラダだ。」

「きゃあ!!嬉しいっ!!・・・お父様、大好き!!」

「・・・フフ、俺も愛してるよ、×××。」

 和やかなムードの父娘を見て、咲世子は幸せな気分に浸る。年を重ねたルルーシュは、美しさに加え、精悍さが増した。そして、その愛妻である彼女も、好んで着ていた囚人服を着るのをやめ、淡いグリーンの髪が映えるドレスを着るようになり、女性らしさが出てきた。

 こんな穏やかな時が得られると、あの悲壮な決意を口にしたルルーシュを見た、誰もが思わなかっただろう。自分達の行動は、間違っていなかったと今更ながらに幸せをかみしめ、咲世子はもうすぐやって来るだろう共犯者達を出迎えるために、母を迎えに行った父娘よりも一足早く屋敷の中に戻ってお茶の準備を始める。





「○○○!」

「お母様!!」

 己の名を呼ぶ、愛しい夫と娘の声に、オレンジ畑に佇んでいた○○○、いや、C.C.は振り返った。

「ルルーシュ、×××。」

 金色の瞳を細めて、幸せそうに笑むその表情は、すっかり妻であり、母である顔となっている。

「ジェレミア達は、まだ戻らないのか?」

「ああ、収穫したオレンジを倉庫まで運んだら戻ると言っていたよ。」

「そうか。・・・なら、お前はどうしてここにいるんだ?」

「うん・・・なぁ、ルルーシュ。お前は今、幸せか?」

 C.C.は言葉を濁し、替わりに質問を返す。

「ああ。」

 即答したルルーシュに、C.C.は満足げに頷く。

「○○○、お前は?」

 穏やかに笑むルルーシュを、そして、キラキラとした視線を送ってくる娘を見つめ、C.C.は幸せそうに笑んだ。
「私も、幸せだよ。・・・オレンジ畑の中心で叫びたい程、な。」

― 世界よ、どうか、このまま、優しくあれ・・・。


おしまい


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