Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・『貴方と出会った日から』設定・番外編
・藤堂さんの発言に注意
・ルルは天然+主夫+お料理上手です
・朝比奈さん押せ押せ!
・卜部さんと千葉さんはツッコミ担当!
・捏造満載
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
「諸君っ!それでは只今より、第1回“ルルちゃんを逃がそうの会”定例会議を始めまーす!」
高らかに宣言した少女は、一同を見回す。皆、明らかに呆然としつつ、少女を見ている。
「み・・・ミレイさん?」
「はい、何ですか?朝比奈さん♪」
「・・・いや、“ルルちゃんを逃がそうの会”って・・・いつ決まったの?」
それはその場の全員の疑問だった。
確かに打ち合わせは必要だと言った。そのための会を持つことをキョウトにも伝えた。・・・が、これは聞いてない。
「今、私が決めました~w」
ニッコリと笑ったミレイに、数名がまた始まった。という顔をし、その他の面子はあんぐりと口を開けた。
「・・・ル、ルルーシュ君?」
朝比奈が振り返ると、苦笑するルルーシュの顔があった。
「・・・ミレイのあれは今に始まったことじゃありませんよ。」
くつくつと笑い、ルルーシュはなぁ?とリヴァルとカレンを見る。
「・・・だな。」
「・・・もう、いちいち驚かないわよ。」
苦笑いを浮かべた2人を見て、ルルーシュの言ったことが真実と悟ると、朝比奈は肩を落とした。
「“ルルちゃんを逃がそうの会”・・・ねぇ。」
「・・・本人が良いと言うなら、我々がとやかく言うことでも無いだろう。」
意外にも一番に開き直ったのは藤堂だった。名称にこだわる必要が無いと言われれば、それもそうだと皆が納得する。
「じゃあ、会議、始めて良いですか?」
ミレイが首を傾げる。
すんなりと自分の意見を通してしまったこの少女が、実は確信犯であるとは、まだ、朝比奈達は知らないでいた。
「えーと、じゃあ、正規のメンバーはぁ、騎士団からは藤堂さんと四聖剣の皆さんとカレン。キョウトからは神楽耶様と桐原さん。アッシュフォードからは私とリヴァルということでOKね。・・・じゃ、ここにサインして下さい♪」
そう言ってミレイが出してきたのは、達筆な字で書かれた血判状。
「ミ・・・ミレイさん;これは・・・・・・。」
「咲世子さんに聞いたんです。誠意と誓いを表すためにはこれが一番だって♪・・・敢えて日本風にして貰ったんですけど・・・間違ってるんですか?」
ミレイが首を傾げるのに、日本人達は間違っていると言えずに黙り込む。間違っていないが、この場合、用途としては合ってるんだろうか?と。
「・・・俺は?」
ルルーシュが首を傾げると、ミレイは笑う。
「ルルちゃんは逃がすメンバーじゃないわよぅ。ルルちゃんとナナちゃんは逃がされる方。」
だから血判状に書く必要が無いのだとミレイはのたまう。
すっかりミレイのペースに巻き込まれてしまった面子は、言われるがままに名前を書き、用意されていた朱肉で拇印を押す。(さすがのミレイも血判はマズいとやめたらしい。)
「ふふ・・・うふふ。」
血判状を見つめて笑い出したミレイに、皆が不審げに視線を向ける。
「まぁ、いないとは思うけど・・・この誓いに逆らうようなことがあったら、夜道の背後は気をつけて下さいねvV」
爽やかな笑顔に、皆はぞおっと背筋を凍らせる。
「なぁミレイ・・・夜道の背後とこの血判状にどんな関係性があるんだ?」
唯一わかっていなかったらしいルルーシュがミレイを見つめると、彼女は優しく笑いかけた。
「ルルちゃんは覚えなくても良い単なる約束の言葉よ♪・・・これもね、咲世子さんに教えて貰ったのよ~vこう言って約束した日本人は必ず守ってくれるはずなんですって。」
「そうなのか・・・。俺もスザクとそう言って約束していたら・・・・・・。いや、もしもの話など意味はないな。」
嘆息したルルーシュを見て、未だにスザクに未練があるのか、と朝比奈が眉根を寄せる。
その脇で口を開いたのはカレン。
「そうよ、もう、どうでもいいじゃない、スザクなんて。・・・ルルーシュには朝比奈さんがいるんだし。もちろん、私達だってルルーシュの味方なんだから!」
「そうですわ!ルルーシュの味方はこんなにもいるんですのよ!ですから・・・あの馬鹿のことはもうお忘れになって下さいませ!」
カレンに次いで、神楽耶までそう言うので、ルルーシュは思わず苦笑する。
「ふふ・・・そんなにスザクに未練があるわけじゃないんだ。・・・ただ、味方だったならどれだけ楽だったか、と思ってな。・・・心配させてすまない。カレン、それと、神楽耶様も。」
「あら、私のことは昔のように神楽耶とお呼び下さいませ。・・・ゼロ様の時とは区別した方が宜しいのでしょう?」
神楽耶に言われ、ルルーシュは肩を竦める。
「・・・まぁ、そうだな。」
「ところで・・・あのC.C.という者はどうしたのだ?」
桐原がふと訊ねると、ルルーシュを含めた騎士団関係者全員が口元をひきつらせる。
「・・・・・・CCは、ゼロの影武者として騎士団に残っております。」
仙波が当たり障りのない答えを返す。まったく、ものは言い様だと皆は感心する。
実際、CCは騎士団にはいるが、恐らくは仲間外れにされた鬱憤を晴らすために、ピザを山のように食い散らかしているに違いない。
「くそ・・・あいつのおかげで家計が火の車だ。」
「「「「「・・・はっ!?」」」」」
ぼそ、と呟いたルルーシュに、皆がギョッとする。一応、ルルーシュは皇子様だ。誰が何と言おうと皇子様だ。ついでに、言えば、黒の騎士団の総司令官ゼロでもある。そのルルーシュの口から“家計が火の車”という言葉が出て、驚かない方がおかしいというものだ。
「あれ?・・・なんだよ~。家計簿つけてんじゃないのかぁ?」
「「「「「か、家計簿ぉぉぉッ!?」」」」」
唯一、悪友を除いては、だったらしい。リヴァルのセリフに、またも皆、驚く。
「・・・なんで、知ってるんだ。・・・というか、雑費としてのC.C.のピザ代がエンゲル係数をだな・・・!!」
「わあぁぁぁッ!!ルルーシュ君!!待った待った!!!」
熱く語り始めるルルーシュを朝比奈が懸命に止める。これ以上ルルーシュの主夫的な発言を聞いていては、皆がどこかの世界に旅立ってしまいそうだ。
「・・・省吾さん??」
首を傾げるルルーシュを、朝比奈は可愛いなぁ、と思いながら頭を撫で撫でする。
「・・・あのね、うん。家計のことはわかった。・・・C.C.のピザ代はさ、えーと・・・キョウトに出してもらおう?ね?」
「・・・でも、そんなお金をキョウトに出して貰うわけには・・・。」
「出す。」
朝比奈の提案に渋るルルーシュに、桐原が焦って言葉を発した。
「ピザ代くらいキョウトが負担する。その程度の事が出来ないで、何がキョウト六家だ!そうでしょう!?神楽耶様。」
「そ・・・そうですね、桐原の言うとおりです。それしきの出費でキョウトが渋るとお思いですか!?」
必死に言う2人をルルーシュは不思議そうに眺め、ことりと首を傾げた。
「・・・そう、ですか?本当に、良いんですか?」
勢い良く頷く桐原と神楽耶。
「ありがとう、ございます。・・・でも、すごいですよ?あいつのピザ代・・・。俺の預金を切り崩して・・・。」
「わ、わかっておる!!大丈夫だッ!(頼むからそれ以上は言わんでほしい!!)」
慌ててルルーシュの言葉を遮り、桐原が胸を叩く。
「キョウトの顔を潰さんでくれ。・・・その件、任せておけ。」
「??・・・わかりました。」
こうして、第1回の“ルルちゃんを逃がそうの会”定例会議が幕を下ろした。
数日後、騎士団アジト内・藤堂と四聖剣の部屋
「ルルーシュ君、学園の様子はどう?」
「・・・ああ。スザクは騎士の仕事もあって、なかなか学園に来れないらしくて。それほど変わったことも無いですよ。」
にっこりと笑うルルーシュに、朝比奈はホッと微笑む。
「そっか。良かった~。・・・準備の方はどう?」
「ええ。書類の方はミレイとルーベン・・・あ、学園の理事長でミレイの祖父に当たる人なんですが・・・その2人に本国への留学という架空の手続きを取ってもらっています。・・・荷物はもう少し後になってから運び出しを始めたいと思ってます。」
「なぁ、手伝えることがあれば言えよ?・・・何も、お前だけが背負ってることじゃないからな。」
卜部が口を出すと、ルルーシュは嬉しそうに頷く。
「・・・ありがとうございます。」
「む。抜け駆けはダメですよ、卜部さん。」
面白くないのは朝比奈だ。ルルーシュの笑顔が自分以外に向けられたことにムッとする。
「抜け駆けというなら、お前が一番抜け駆けしてるだろうが。」
パコン、と軽く雑誌で叩き、千葉が呆れたように告げる。
「えぇ~・・・俺は良いんですよ。お・れ・は。」
どんな理屈だ、と思うが、卜部と千葉はルルーシュの手前、我慢することにする。
「ところで、ルルーシュ君。」
真剣な表情で藤堂が名を呼ぶので、ルルーシュも表情を引き締める。
「はい。」
「次の“ルルちゃんを逃がそうの会”はいつやる予定なんだ?」
しーん・・・。
一瞬、言われたことがわからなくて、ルルーシュは首を傾げた。他の四聖剣も同様だ。
「・・・あの、え?」
「ミレイ君から言われていないか?・・・“ルルちゃんを逃がそうの会”の次の予定だ。」
ようやく脳に届いたその情報は、ルルーシュ達を呆然とさせるには充分なものだった。
「・・・っく・・・ぶはっ!あはははははははは!!!!」
次の瞬間、朝比奈が爆笑する。床にしゃがみ込み、バンバンと床を叩く。
「・・・いきなりどうしたんだ、朝比奈は?」
藤堂がわけがわからないといった顔で仙波を見ると、仙波はハッとしてひきつる口元を隠すように手をやる。
「・・・さ、さあ?・・・ど、どうしたのでありましょうか。」
わずかに逸らされた視線に、藤堂は首を傾げる。
「・・・仙波?」
「・・・あ、朝比奈!いつまで笑っておるッ!」
藤堂の視線から逃げるように仙波は朝比奈の元に歩み寄り、千葉から雑誌をかっぱらい、その頭を叩いた。
パコーンッ!!
「あはははッ・・・あイタっ!・・・せ、仙波さんッ・・・だって、だって~~~っ!」
「~っ、気持ちはわかる!!だが、その反応はよさんか!!!」
藤堂に聞かれないようにこそこそと話す2人に、だんだん藤堂も訝しげな表情になっていく。
「ちゅ、中佐!・・・その、か、会議で議題にしたいことでもあるんですかっ!?」
千葉が我に返って、必死に話題を逸らそうと試みる。
「む?・・・ああ。ルルーシュ君をこちらに完全に移動させる時期やナナリー君の処遇についても相談すべきと思ってな。・・・前回は、その、あれ、だったからな。」
藤堂にしてみても、さすがにルルーシュの主夫発言は堪らなかったらしい。カレンでさえもあの後しばらくショックから抜けられなかったのだから。
「というわけだから、ルルーシュ君・・・ルルーシュ君??」
藤堂が肩を揺するが、ルルーシュは呆然としたまま。藤堂以外の全員が、先程の藤堂の“ルルちゃん”発言にショックを受けているのだとわかっているだけに、同情を禁じ得ない。
「・・・あ~・・・藤堂さん・・・えっと、今、ルルーシュ君調子悪いみたいなんで、後で俺が聞いときますから・・・。」
笑い終えた朝比奈がフォローを入れる。すると、藤堂が眉を顰めてルルーシュの肩に両手を置く。
「そうか。・・・ルルーシュ君、辛い時は辛いと言いなさい。君が倒れては、ナナリー君も心配するだろう?」
― 多分、聞こえてないですよ、藤堂中佐(さん)・・・。
四聖剣の心の声が見事に一致した瞬間だった。
2日後
「ではでは~、ただいまより、第2回“ルルちゃんを逃がそうの会”定例会議を始めま~す☆」
2回目にしてすでにミレイの言動を受け入れてしまった面々は、お~、と気の無い返事をし、ぱちぱちとまばらに拍手する。
「今日は~藤堂さんからの議題があるそうでぇ~すvじゃあ、どうぞ~。」
ミレイにふられ、藤堂が立ち上がる。
「・・・前回はこの会議の意義とはかけ離れた部分で話が終了してしまった。だから、今回は最初から議題を提出したいと思う。・・・そもそも、この“ルルちゃんを逃がそうの会”は、ルルーシュ君とナナリー君を、もはや危険と判断せざるを得ない学園から逃がすためのものであり・・・??」
藤堂は、言葉を切って周りを見渡す。
四聖剣が肩を震わせて壁に頭をつけており、カレンと神楽耶が呆然とこちらを見ていて、桐原が顔をひくつかせ、ミレイが机をバンバンと叩いていて、リヴァルがブンブンと頭を横に振っているのを見て、首を傾げてしまう。
「・・・なぁ、ルルーシュ君・・・彼らは何であんな状況なのだろう?」
唯一、しれっとその様子を眺めていたルルーシュに、藤堂は困ったように訊ねる。
先程の藤堂の発言に、ルルーシュ自身は1度聞けば慣れたとばかりに無反応だったのだが、実際は奇跡の藤堂からの奇跡的に似合わない言葉が出ることをある程度予測していたので、ダメージが少なかっただけだったりする。
「・・・何ででしょうね。俺にもわかりません。・・・でも、これじゃ、会議になりませんね。」
「・・・ああ。四聖剣まで揃って・・・そう言えば、この前もこんな状態になったような・・・?」
「・・・気にするだけ無駄ですよ。・・・1つだけ言えるのは、これから先、こんなことはしょっちゅうあると思った方が良いということですよ。」
さすがに、藤堂にルルちゃんと言うな、とは言えないルルーシュは、そう言ってこの状況を誤魔化すことにした。
「・・・さて、皆が復活するまでちょっと時間もかかりそうですし、お茶でも入れてきますね。」
「なら、俺も手伝おう。」
「・・・・・・ありがとうございます。(まぁ、藤堂さんがいない方が復活も早いかもな。)」
ルルーシュはそう言って、藤堂を伴って給湯できる部屋に向かった。
「・・・っはぁ~~~。ちょっと!!誰か、藤堂さんに言った方が良いんじゃないの!!?」
息を詰めていたカレンがジロリと四聖剣を見る。
「・・・だって、言えないよ!!無自覚なトコに、言えない!!」
「私だって無理だ。」
「俺も・・・中佐には言えねぇよ・・・。」
「・・・・・・ワシにも無理だ・・・。」
4人はそう言って桐原を見る。
「・・・む、無理だぞ!?・・・ワシだって言えんッ。・・・か、神楽耶様!!」
「わ、私も嫌ですわ!!・・・藤堂に、ルルちゃんって言うな、なんて言えません!!」
全員が全員押し付け合う形になって、そして、黙り込む。
「・・・あはは。・・・もう、こうなったら、ルルちゃんみたいに慣れるしかないわ!」
ミレイが言えば、リヴァルが青い顔で俯く。
「・・・ああぁ、俺、すっげー藤堂さんのこと尊敬してただけに、けっこーきっついんスけど・・・。」
「リヴァル君・・・わかるよ、その気持ち。はぁ。・・・でも、さっすが俺のルルーシュ君だよね!!完璧に藤堂さんの発言を読んでたって顔だったもんね。」
ポン、とリヴァルの肩を叩き、うんうんと頷いた後、朝比奈はニコニコとのたまう。
「・・・俺のっスか・・・。」
不満げにリヴァルが朝比奈を見上げる。
「・・・朝比奈さ~ん、ちょっと約束してもらえません?」
迫力のある笑顔でミレイが近寄る。
「・・・何?ミレイさん。」
「・・・ルルちゃんとお付き合いしてることは認めます。・・・でも、ルルちゃんが成人するまでは手は出さないでくださいね?」
「・・・ん~・・・キスはダメ?」
「(ダメと言いたい!!!)・・・・・・ルルちゃんの同意があるなら・・・。」
朝比奈の問いに、ぐぐぐ、と詰まったミレイは、血を吐くような思いでそれを告げる。
「うん。おっけ~。・・・約束は守るよ。」
「・・・でも、本当に収まる所に収まったのですね。」
神楽耶が呆れたように言って、溜め息をつく。
「昔から、ルルーシュは朝比奈にべったりでしたものね。」
「あはは。・・・そう言えば、神楽耶様もあの場にいらっしゃいましたねぇ?」
へらへらと笑う朝比奈に、神楽耶はフッと息をついて、ぼそりと呟く。
「・・・相手が朝比奈じゃ、勝ち目がないじゃありませんの。」
「・・・神楽耶様・・・。」
「(そっか、この方も・・・。)」
その呟きが聞こえたのは、傍にいた桐原とミレイのみ。本人にはその声は届いておらず、朝比奈は首を傾げるばかり。
「?・・・何かおっしゃいました?」
「いいえ。・・・ルルーシュをちゃんと幸せになさってくださいませね。」
「もちろんですよ~。」
「・・・何がもちろんなんです?」
朝比奈が親指をぐっとあげた時、扉が開いて、ルルーシュと藤堂が入ってくる。その手に持たれているものを見て、ミレイとリヴァル、そして、カレンが目を輝かせる。
「ルルちゃん!!もしかして、それって・・・。」
弾んだ声を出したミレイに、ルルーシュは苦笑する。
「今日のおやつです。・・・前回は出せずじまいだったので、今日は、プリンを蒸してきましたから。」
「プリン!!ルルちゃんの大好物であり、ルルちゃんが作るおやつの中でも最もグレードの高いプリン!!!!」
ミレイがやたらと説明口調なのは、その希少性を訴えるためだったりする。ルルーシュは滅多に他人にプリンを作らない。ミレイ自身も、会長に就任した当初や、誕生日の時など、記念日と言われる時にしか作ってもらった記憶が無いくらいだ。
「他のも充分美味しいのに、最もグレードが高いってどれだけ!?」
カレンが驚く。
「俺・・・ルルーシュのプリン、1年半ぶりだ・・・。」
リヴァルの目には涙さえ溜まっている。そんなに美味しいのか、と初体験の面子はごくりとのどを鳴らす。
「・・・皆の分、ちゃんとあるから。・・・お茶はダージリンを淹れてみたんだ。藤堂さんが手伝ってくれて、ちょっと余裕ができたものだから。」
プリンが甘いから、ダージリンが一番合うんだ、とニコニコしながらルルーシュは皆に手作りのプリンを配っていく。
「・・・わ~。ルルーシュ君の料理自体が久しぶりだ~~~。」
さすがに黒の騎士団内で、ゼロが朝比奈に差し入れという行動をするわけにはいかず、もちろん、朝比奈がゼロの部屋に行くこともできない。そして、キッチンが食堂とルルーシュの部屋にしかないという状況ではその場で作って食べさせるわけにもいかない。というわけでお預け状態だった朝比奈だったりする。
「ふふ、どうぞ、召しあがって下さい。・・・食べながら、今後の話をしましょう。・・・俺も、一応身の振り方は考えてきたんです。」
ルルーシュの勧めるままプリンを口に運んだ面々は電撃が走ったように一斉にビシッと止まった。
「・・・?(・・・あれ、失敗したかな?味見した時はバッチリだったんだけど。)」
ルルーシュが首を傾げる。
「な、なにこれ!!そこらのプロより、ずっと美味しいわよ!?・・・なめらかで、つるつるしてて・・・。」
「ん~幸せぇ~~~vVv」
「あぁぁ、マジ良かった、俺、ルルーシュの悪友でマジ良かった!!!」
「・・・これが、プリン・・・私の今まで食べた、どのプリンとも違う・・・異次元の美味しさですわ!!」
年少組の騒ぎ様に、大人組は呆然とする。うまい、という単調な感想など言えないくらいの美味しさだから、どうそれを伝えるべきかと悩んでしまったのだ。
「・・・省吾さん・・・。」
ルルーシュに不安そうな視線を向けられて、朝比奈は最も(自分の中で)感激した時の行動に出た。
「ルルーシュ君!!!」
がっばぁ!!
「ほわぁぁぁっ!?」
「「「「あああああああああああっ!!!!」」」」
突如として突進してきた朝比奈に抱きつかれ、ルルーシュはそのまま後ろにあったソファーに倒れ込む。それを見た年少組から絶叫があがる。
「こんな美味しいプリンは初めてだよ。もうすっごいよ。俺、本当に感激した。これからもずっと俺に美味しい料理を食べさせてくれる?もう、君以外が作った料理なんて食べられないよ、俺。」
聞く人が聞けばプロポーズか、と思えるセリフを照れることも無く言ってのけ、そして、言われた方も、照れることも無く当たり前のように頷く。
「・・・省吾さんが美味しいって言ってくれるうちは、ずっと作りますよ。」
「やった!!ありがとうルルーシュ君!!愛してる!!」
ぎゅう、と抱きしめる朝比奈に、さすがに気恥かしさを覚えたか、ルルーシュの頬がほんのりと赤く染まる。
「・・・省吾さん///」
そこでフルフルと震えるのは、そのラブラブ(死語v)に中てられた面々だ。
「・・・。」
「・・・。」
千葉と卜部が頷きあう。このままでは間違いなく朝比奈が暴走する。それがわかりきっているからだ。互いに朝比奈とルルーシュの死角に回り込んで雑誌を取り出す。
見慣れた者には見慣れた光景。そして、初めて見る者達も、何をするのかと息を呑んで見守る。
「・・・でも、この体勢、良いよねぇ。・・・ワイシャツ第2ボタンまで外すの反則じゃない?すっごい色っぽいし、あ~なんか、ここに所有印つけたいなぁ~。」
「「~~~っ、だから、昼間っからさかるんじゃない!!!」」
スッパァァンッ!!!
見事にハモって、攻撃を加えた2人に、周りは拍手を送る。
「痛った~・・・酷い!千葉さんも卜部さんもっ!!」
「暴走したおめぇが悪い!!」
「大体、さっき、彼女と約束したばかりだろう!!舌の根の乾かぬうちに、何をやっているんだ、お前は!!」
「実際にやったわけじゃないでしょ?口に出しただけで・・・。」
こめかみに交差点を作る2人が怒鳴る。さすがに分が悪いと判断した朝比奈は大人しく聞いていたが、反論するあたり反省はしてないらしい。
「・・・省吾さん、ミレイと何、約束したんですか?」
2人の説教が終わって、ルルーシュが訊くと、朝比奈はさわやかに笑った。
「・・・ん?あぁ、ルルーシュ君が成人するまでは、手を出さないってさ。」
「・・・手を出さない?」
「・・・だぁ、かぁ、らぁ・・・。」
朝比奈は悪戯を思いついたように二ヤリと笑い、ぽしょぽしょ、とルルーシュに耳打ちする。
だんだんとルルーシュの美しい顔が赤く染まっていき、パクパクと口を開く。
「あ・・・。」
「「「「「・・・あ?」」」」」
皆が心配そうにルルーシュを見つめる。
「・・・あたりまえでしょうがぁぁぁぁあっ!!!!」
その日1番の怒声が、部屋に響き渡った。
後日、ルルーシュとナナリーの身の振り方が決まり、アッシュフォードやキョウトの多大な協力で無事にその作戦が実行されたのは言うまでも無い。
その間、数回に渡り藤堂が奇跡的に似合わない言葉を発言し、数え切れないほど朝比奈が暴走して会議がなかなか進まなかった事を付記しておく。
おしまい
長編目次に戻る→
・『貴方と出会った日から』設定・番外編
・藤堂さんの発言に注意
・ルルは天然+主夫+お料理上手です
・朝比奈さん押せ押せ!
・卜部さんと千葉さんはツッコミ担当!
・捏造満載
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
「諸君っ!それでは只今より、第1回“ルルちゃんを逃がそうの会”定例会議を始めまーす!」
高らかに宣言した少女は、一同を見回す。皆、明らかに呆然としつつ、少女を見ている。
「み・・・ミレイさん?」
「はい、何ですか?朝比奈さん♪」
「・・・いや、“ルルちゃんを逃がそうの会”って・・・いつ決まったの?」
それはその場の全員の疑問だった。
確かに打ち合わせは必要だと言った。そのための会を持つことをキョウトにも伝えた。・・・が、これは聞いてない。
「今、私が決めました~w」
ニッコリと笑ったミレイに、数名がまた始まった。という顔をし、その他の面子はあんぐりと口を開けた。
「・・・ル、ルルーシュ君?」
朝比奈が振り返ると、苦笑するルルーシュの顔があった。
「・・・ミレイのあれは今に始まったことじゃありませんよ。」
くつくつと笑い、ルルーシュはなぁ?とリヴァルとカレンを見る。
「・・・だな。」
「・・・もう、いちいち驚かないわよ。」
苦笑いを浮かべた2人を見て、ルルーシュの言ったことが真実と悟ると、朝比奈は肩を落とした。
「“ルルちゃんを逃がそうの会”・・・ねぇ。」
「・・・本人が良いと言うなら、我々がとやかく言うことでも無いだろう。」
意外にも一番に開き直ったのは藤堂だった。名称にこだわる必要が無いと言われれば、それもそうだと皆が納得する。
「じゃあ、会議、始めて良いですか?」
ミレイが首を傾げる。
すんなりと自分の意見を通してしまったこの少女が、実は確信犯であるとは、まだ、朝比奈達は知らないでいた。
「えーと、じゃあ、正規のメンバーはぁ、騎士団からは藤堂さんと四聖剣の皆さんとカレン。キョウトからは神楽耶様と桐原さん。アッシュフォードからは私とリヴァルということでOKね。・・・じゃ、ここにサインして下さい♪」
そう言ってミレイが出してきたのは、達筆な字で書かれた血判状。
「ミ・・・ミレイさん;これは・・・・・・。」
「咲世子さんに聞いたんです。誠意と誓いを表すためにはこれが一番だって♪・・・敢えて日本風にして貰ったんですけど・・・間違ってるんですか?」
ミレイが首を傾げるのに、日本人達は間違っていると言えずに黙り込む。間違っていないが、この場合、用途としては合ってるんだろうか?と。
「・・・俺は?」
ルルーシュが首を傾げると、ミレイは笑う。
「ルルちゃんは逃がすメンバーじゃないわよぅ。ルルちゃんとナナちゃんは逃がされる方。」
だから血判状に書く必要が無いのだとミレイはのたまう。
すっかりミレイのペースに巻き込まれてしまった面子は、言われるがままに名前を書き、用意されていた朱肉で拇印を押す。(さすがのミレイも血判はマズいとやめたらしい。)
「ふふ・・・うふふ。」
血判状を見つめて笑い出したミレイに、皆が不審げに視線を向ける。
「まぁ、いないとは思うけど・・・この誓いに逆らうようなことがあったら、夜道の背後は気をつけて下さいねvV」
爽やかな笑顔に、皆はぞおっと背筋を凍らせる。
「なぁミレイ・・・夜道の背後とこの血判状にどんな関係性があるんだ?」
唯一わかっていなかったらしいルルーシュがミレイを見つめると、彼女は優しく笑いかけた。
「ルルちゃんは覚えなくても良い単なる約束の言葉よ♪・・・これもね、咲世子さんに教えて貰ったのよ~vこう言って約束した日本人は必ず守ってくれるはずなんですって。」
「そうなのか・・・。俺もスザクとそう言って約束していたら・・・・・・。いや、もしもの話など意味はないな。」
嘆息したルルーシュを見て、未だにスザクに未練があるのか、と朝比奈が眉根を寄せる。
その脇で口を開いたのはカレン。
「そうよ、もう、どうでもいいじゃない、スザクなんて。・・・ルルーシュには朝比奈さんがいるんだし。もちろん、私達だってルルーシュの味方なんだから!」
「そうですわ!ルルーシュの味方はこんなにもいるんですのよ!ですから・・・あの馬鹿のことはもうお忘れになって下さいませ!」
カレンに次いで、神楽耶までそう言うので、ルルーシュは思わず苦笑する。
「ふふ・・・そんなにスザクに未練があるわけじゃないんだ。・・・ただ、味方だったならどれだけ楽だったか、と思ってな。・・・心配させてすまない。カレン、それと、神楽耶様も。」
「あら、私のことは昔のように神楽耶とお呼び下さいませ。・・・ゼロ様の時とは区別した方が宜しいのでしょう?」
神楽耶に言われ、ルルーシュは肩を竦める。
「・・・まぁ、そうだな。」
「ところで・・・あのC.C.という者はどうしたのだ?」
桐原がふと訊ねると、ルルーシュを含めた騎士団関係者全員が口元をひきつらせる。
「・・・・・・CCは、ゼロの影武者として騎士団に残っております。」
仙波が当たり障りのない答えを返す。まったく、ものは言い様だと皆は感心する。
実際、CCは騎士団にはいるが、恐らくは仲間外れにされた鬱憤を晴らすために、ピザを山のように食い散らかしているに違いない。
「くそ・・・あいつのおかげで家計が火の車だ。」
「「「「「・・・はっ!?」」」」」
ぼそ、と呟いたルルーシュに、皆がギョッとする。一応、ルルーシュは皇子様だ。誰が何と言おうと皇子様だ。ついでに、言えば、黒の騎士団の総司令官ゼロでもある。そのルルーシュの口から“家計が火の車”という言葉が出て、驚かない方がおかしいというものだ。
「あれ?・・・なんだよ~。家計簿つけてんじゃないのかぁ?」
「「「「「か、家計簿ぉぉぉッ!?」」」」」
唯一、悪友を除いては、だったらしい。リヴァルのセリフに、またも皆、驚く。
「・・・なんで、知ってるんだ。・・・というか、雑費としてのC.C.のピザ代がエンゲル係数をだな・・・!!」
「わあぁぁぁッ!!ルルーシュ君!!待った待った!!!」
熱く語り始めるルルーシュを朝比奈が懸命に止める。これ以上ルルーシュの主夫的な発言を聞いていては、皆がどこかの世界に旅立ってしまいそうだ。
「・・・省吾さん??」
首を傾げるルルーシュを、朝比奈は可愛いなぁ、と思いながら頭を撫で撫でする。
「・・・あのね、うん。家計のことはわかった。・・・C.C.のピザ代はさ、えーと・・・キョウトに出してもらおう?ね?」
「・・・でも、そんなお金をキョウトに出して貰うわけには・・・。」
「出す。」
朝比奈の提案に渋るルルーシュに、桐原が焦って言葉を発した。
「ピザ代くらいキョウトが負担する。その程度の事が出来ないで、何がキョウト六家だ!そうでしょう!?神楽耶様。」
「そ・・・そうですね、桐原の言うとおりです。それしきの出費でキョウトが渋るとお思いですか!?」
必死に言う2人をルルーシュは不思議そうに眺め、ことりと首を傾げた。
「・・・そう、ですか?本当に、良いんですか?」
勢い良く頷く桐原と神楽耶。
「ありがとう、ございます。・・・でも、すごいですよ?あいつのピザ代・・・。俺の預金を切り崩して・・・。」
「わ、わかっておる!!大丈夫だッ!(頼むからそれ以上は言わんでほしい!!)」
慌ててルルーシュの言葉を遮り、桐原が胸を叩く。
「キョウトの顔を潰さんでくれ。・・・その件、任せておけ。」
「??・・・わかりました。」
こうして、第1回の“ルルちゃんを逃がそうの会”定例会議が幕を下ろした。
数日後、騎士団アジト内・藤堂と四聖剣の部屋
「ルルーシュ君、学園の様子はどう?」
「・・・ああ。スザクは騎士の仕事もあって、なかなか学園に来れないらしくて。それほど変わったことも無いですよ。」
にっこりと笑うルルーシュに、朝比奈はホッと微笑む。
「そっか。良かった~。・・・準備の方はどう?」
「ええ。書類の方はミレイとルーベン・・・あ、学園の理事長でミレイの祖父に当たる人なんですが・・・その2人に本国への留学という架空の手続きを取ってもらっています。・・・荷物はもう少し後になってから運び出しを始めたいと思ってます。」
「なぁ、手伝えることがあれば言えよ?・・・何も、お前だけが背負ってることじゃないからな。」
卜部が口を出すと、ルルーシュは嬉しそうに頷く。
「・・・ありがとうございます。」
「む。抜け駆けはダメですよ、卜部さん。」
面白くないのは朝比奈だ。ルルーシュの笑顔が自分以外に向けられたことにムッとする。
「抜け駆けというなら、お前が一番抜け駆けしてるだろうが。」
パコン、と軽く雑誌で叩き、千葉が呆れたように告げる。
「えぇ~・・・俺は良いんですよ。お・れ・は。」
どんな理屈だ、と思うが、卜部と千葉はルルーシュの手前、我慢することにする。
「ところで、ルルーシュ君。」
真剣な表情で藤堂が名を呼ぶので、ルルーシュも表情を引き締める。
「はい。」
「次の“ルルちゃんを逃がそうの会”はいつやる予定なんだ?」
しーん・・・。
一瞬、言われたことがわからなくて、ルルーシュは首を傾げた。他の四聖剣も同様だ。
「・・・あの、え?」
「ミレイ君から言われていないか?・・・“ルルちゃんを逃がそうの会”の次の予定だ。」
ようやく脳に届いたその情報は、ルルーシュ達を呆然とさせるには充分なものだった。
「・・・っく・・・ぶはっ!あはははははははは!!!!」
次の瞬間、朝比奈が爆笑する。床にしゃがみ込み、バンバンと床を叩く。
「・・・いきなりどうしたんだ、朝比奈は?」
藤堂がわけがわからないといった顔で仙波を見ると、仙波はハッとしてひきつる口元を隠すように手をやる。
「・・・さ、さあ?・・・ど、どうしたのでありましょうか。」
わずかに逸らされた視線に、藤堂は首を傾げる。
「・・・仙波?」
「・・・あ、朝比奈!いつまで笑っておるッ!」
藤堂の視線から逃げるように仙波は朝比奈の元に歩み寄り、千葉から雑誌をかっぱらい、その頭を叩いた。
パコーンッ!!
「あはははッ・・・あイタっ!・・・せ、仙波さんッ・・・だって、だって~~~っ!」
「~っ、気持ちはわかる!!だが、その反応はよさんか!!!」
藤堂に聞かれないようにこそこそと話す2人に、だんだん藤堂も訝しげな表情になっていく。
「ちゅ、中佐!・・・その、か、会議で議題にしたいことでもあるんですかっ!?」
千葉が我に返って、必死に話題を逸らそうと試みる。
「む?・・・ああ。ルルーシュ君をこちらに完全に移動させる時期やナナリー君の処遇についても相談すべきと思ってな。・・・前回は、その、あれ、だったからな。」
藤堂にしてみても、さすがにルルーシュの主夫発言は堪らなかったらしい。カレンでさえもあの後しばらくショックから抜けられなかったのだから。
「というわけだから、ルルーシュ君・・・ルルーシュ君??」
藤堂が肩を揺するが、ルルーシュは呆然としたまま。藤堂以外の全員が、先程の藤堂の“ルルちゃん”発言にショックを受けているのだとわかっているだけに、同情を禁じ得ない。
「・・・あ~・・・藤堂さん・・・えっと、今、ルルーシュ君調子悪いみたいなんで、後で俺が聞いときますから・・・。」
笑い終えた朝比奈がフォローを入れる。すると、藤堂が眉を顰めてルルーシュの肩に両手を置く。
「そうか。・・・ルルーシュ君、辛い時は辛いと言いなさい。君が倒れては、ナナリー君も心配するだろう?」
― 多分、聞こえてないですよ、藤堂中佐(さん)・・・。
四聖剣の心の声が見事に一致した瞬間だった。
2日後
「ではでは~、ただいまより、第2回“ルルちゃんを逃がそうの会”定例会議を始めま~す☆」
2回目にしてすでにミレイの言動を受け入れてしまった面々は、お~、と気の無い返事をし、ぱちぱちとまばらに拍手する。
「今日は~藤堂さんからの議題があるそうでぇ~すvじゃあ、どうぞ~。」
ミレイにふられ、藤堂が立ち上がる。
「・・・前回はこの会議の意義とはかけ離れた部分で話が終了してしまった。だから、今回は最初から議題を提出したいと思う。・・・そもそも、この“ルルちゃんを逃がそうの会”は、ルルーシュ君とナナリー君を、もはや危険と判断せざるを得ない学園から逃がすためのものであり・・・??」
藤堂は、言葉を切って周りを見渡す。
四聖剣が肩を震わせて壁に頭をつけており、カレンと神楽耶が呆然とこちらを見ていて、桐原が顔をひくつかせ、ミレイが机をバンバンと叩いていて、リヴァルがブンブンと頭を横に振っているのを見て、首を傾げてしまう。
「・・・なぁ、ルルーシュ君・・・彼らは何であんな状況なのだろう?」
唯一、しれっとその様子を眺めていたルルーシュに、藤堂は困ったように訊ねる。
先程の藤堂の発言に、ルルーシュ自身は1度聞けば慣れたとばかりに無反応だったのだが、実際は奇跡の藤堂からの奇跡的に似合わない言葉が出ることをある程度予測していたので、ダメージが少なかっただけだったりする。
「・・・何ででしょうね。俺にもわかりません。・・・でも、これじゃ、会議になりませんね。」
「・・・ああ。四聖剣まで揃って・・・そう言えば、この前もこんな状態になったような・・・?」
「・・・気にするだけ無駄ですよ。・・・1つだけ言えるのは、これから先、こんなことはしょっちゅうあると思った方が良いということですよ。」
さすがに、藤堂にルルちゃんと言うな、とは言えないルルーシュは、そう言ってこの状況を誤魔化すことにした。
「・・・さて、皆が復活するまでちょっと時間もかかりそうですし、お茶でも入れてきますね。」
「なら、俺も手伝おう。」
「・・・・・・ありがとうございます。(まぁ、藤堂さんがいない方が復活も早いかもな。)」
ルルーシュはそう言って、藤堂を伴って給湯できる部屋に向かった。
「・・・っはぁ~~~。ちょっと!!誰か、藤堂さんに言った方が良いんじゃないの!!?」
息を詰めていたカレンがジロリと四聖剣を見る。
「・・・だって、言えないよ!!無自覚なトコに、言えない!!」
「私だって無理だ。」
「俺も・・・中佐には言えねぇよ・・・。」
「・・・・・・ワシにも無理だ・・・。」
4人はそう言って桐原を見る。
「・・・む、無理だぞ!?・・・ワシだって言えんッ。・・・か、神楽耶様!!」
「わ、私も嫌ですわ!!・・・藤堂に、ルルちゃんって言うな、なんて言えません!!」
全員が全員押し付け合う形になって、そして、黙り込む。
「・・・あはは。・・・もう、こうなったら、ルルちゃんみたいに慣れるしかないわ!」
ミレイが言えば、リヴァルが青い顔で俯く。
「・・・ああぁ、俺、すっげー藤堂さんのこと尊敬してただけに、けっこーきっついんスけど・・・。」
「リヴァル君・・・わかるよ、その気持ち。はぁ。・・・でも、さっすが俺のルルーシュ君だよね!!完璧に藤堂さんの発言を読んでたって顔だったもんね。」
ポン、とリヴァルの肩を叩き、うんうんと頷いた後、朝比奈はニコニコとのたまう。
「・・・俺のっスか・・・。」
不満げにリヴァルが朝比奈を見上げる。
「・・・朝比奈さ~ん、ちょっと約束してもらえません?」
迫力のある笑顔でミレイが近寄る。
「・・・何?ミレイさん。」
「・・・ルルちゃんとお付き合いしてることは認めます。・・・でも、ルルちゃんが成人するまでは手は出さないでくださいね?」
「・・・ん~・・・キスはダメ?」
「(ダメと言いたい!!!)・・・・・・ルルちゃんの同意があるなら・・・。」
朝比奈の問いに、ぐぐぐ、と詰まったミレイは、血を吐くような思いでそれを告げる。
「うん。おっけ~。・・・約束は守るよ。」
「・・・でも、本当に収まる所に収まったのですね。」
神楽耶が呆れたように言って、溜め息をつく。
「昔から、ルルーシュは朝比奈にべったりでしたものね。」
「あはは。・・・そう言えば、神楽耶様もあの場にいらっしゃいましたねぇ?」
へらへらと笑う朝比奈に、神楽耶はフッと息をついて、ぼそりと呟く。
「・・・相手が朝比奈じゃ、勝ち目がないじゃありませんの。」
「・・・神楽耶様・・・。」
「(そっか、この方も・・・。)」
その呟きが聞こえたのは、傍にいた桐原とミレイのみ。本人にはその声は届いておらず、朝比奈は首を傾げるばかり。
「?・・・何かおっしゃいました?」
「いいえ。・・・ルルーシュをちゃんと幸せになさってくださいませね。」
「もちろんですよ~。」
「・・・何がもちろんなんです?」
朝比奈が親指をぐっとあげた時、扉が開いて、ルルーシュと藤堂が入ってくる。その手に持たれているものを見て、ミレイとリヴァル、そして、カレンが目を輝かせる。
「ルルちゃん!!もしかして、それって・・・。」
弾んだ声を出したミレイに、ルルーシュは苦笑する。
「今日のおやつです。・・・前回は出せずじまいだったので、今日は、プリンを蒸してきましたから。」
「プリン!!ルルちゃんの大好物であり、ルルちゃんが作るおやつの中でも最もグレードの高いプリン!!!!」
ミレイがやたらと説明口調なのは、その希少性を訴えるためだったりする。ルルーシュは滅多に他人にプリンを作らない。ミレイ自身も、会長に就任した当初や、誕生日の時など、記念日と言われる時にしか作ってもらった記憶が無いくらいだ。
「他のも充分美味しいのに、最もグレードが高いってどれだけ!?」
カレンが驚く。
「俺・・・ルルーシュのプリン、1年半ぶりだ・・・。」
リヴァルの目には涙さえ溜まっている。そんなに美味しいのか、と初体験の面子はごくりとのどを鳴らす。
「・・・皆の分、ちゃんとあるから。・・・お茶はダージリンを淹れてみたんだ。藤堂さんが手伝ってくれて、ちょっと余裕ができたものだから。」
プリンが甘いから、ダージリンが一番合うんだ、とニコニコしながらルルーシュは皆に手作りのプリンを配っていく。
「・・・わ~。ルルーシュ君の料理自体が久しぶりだ~~~。」
さすがに黒の騎士団内で、ゼロが朝比奈に差し入れという行動をするわけにはいかず、もちろん、朝比奈がゼロの部屋に行くこともできない。そして、キッチンが食堂とルルーシュの部屋にしかないという状況ではその場で作って食べさせるわけにもいかない。というわけでお預け状態だった朝比奈だったりする。
「ふふ、どうぞ、召しあがって下さい。・・・食べながら、今後の話をしましょう。・・・俺も、一応身の振り方は考えてきたんです。」
ルルーシュの勧めるままプリンを口に運んだ面々は電撃が走ったように一斉にビシッと止まった。
「・・・?(・・・あれ、失敗したかな?味見した時はバッチリだったんだけど。)」
ルルーシュが首を傾げる。
「な、なにこれ!!そこらのプロより、ずっと美味しいわよ!?・・・なめらかで、つるつるしてて・・・。」
「ん~幸せぇ~~~vVv」
「あぁぁ、マジ良かった、俺、ルルーシュの悪友でマジ良かった!!!」
「・・・これが、プリン・・・私の今まで食べた、どのプリンとも違う・・・異次元の美味しさですわ!!」
年少組の騒ぎ様に、大人組は呆然とする。うまい、という単調な感想など言えないくらいの美味しさだから、どうそれを伝えるべきかと悩んでしまったのだ。
「・・・省吾さん・・・。」
ルルーシュに不安そうな視線を向けられて、朝比奈は最も(自分の中で)感激した時の行動に出た。
「ルルーシュ君!!!」
がっばぁ!!
「ほわぁぁぁっ!?」
「「「「あああああああああああっ!!!!」」」」
突如として突進してきた朝比奈に抱きつかれ、ルルーシュはそのまま後ろにあったソファーに倒れ込む。それを見た年少組から絶叫があがる。
「こんな美味しいプリンは初めてだよ。もうすっごいよ。俺、本当に感激した。これからもずっと俺に美味しい料理を食べさせてくれる?もう、君以外が作った料理なんて食べられないよ、俺。」
聞く人が聞けばプロポーズか、と思えるセリフを照れることも無く言ってのけ、そして、言われた方も、照れることも無く当たり前のように頷く。
「・・・省吾さんが美味しいって言ってくれるうちは、ずっと作りますよ。」
「やった!!ありがとうルルーシュ君!!愛してる!!」
ぎゅう、と抱きしめる朝比奈に、さすがに気恥かしさを覚えたか、ルルーシュの頬がほんのりと赤く染まる。
「・・・省吾さん///」
そこでフルフルと震えるのは、そのラブラブ(死語v)に中てられた面々だ。
「・・・。」
「・・・。」
千葉と卜部が頷きあう。このままでは間違いなく朝比奈が暴走する。それがわかりきっているからだ。互いに朝比奈とルルーシュの死角に回り込んで雑誌を取り出す。
見慣れた者には見慣れた光景。そして、初めて見る者達も、何をするのかと息を呑んで見守る。
「・・・でも、この体勢、良いよねぇ。・・・ワイシャツ第2ボタンまで外すの反則じゃない?すっごい色っぽいし、あ~なんか、ここに所有印つけたいなぁ~。」
「「~~~っ、だから、昼間っからさかるんじゃない!!!」」
スッパァァンッ!!!
見事にハモって、攻撃を加えた2人に、周りは拍手を送る。
「痛った~・・・酷い!千葉さんも卜部さんもっ!!」
「暴走したおめぇが悪い!!」
「大体、さっき、彼女と約束したばかりだろう!!舌の根の乾かぬうちに、何をやっているんだ、お前は!!」
「実際にやったわけじゃないでしょ?口に出しただけで・・・。」
こめかみに交差点を作る2人が怒鳴る。さすがに分が悪いと判断した朝比奈は大人しく聞いていたが、反論するあたり反省はしてないらしい。
「・・・省吾さん、ミレイと何、約束したんですか?」
2人の説教が終わって、ルルーシュが訊くと、朝比奈はさわやかに笑った。
「・・・ん?あぁ、ルルーシュ君が成人するまでは、手を出さないってさ。」
「・・・手を出さない?」
「・・・だぁ、かぁ、らぁ・・・。」
朝比奈は悪戯を思いついたように二ヤリと笑い、ぽしょぽしょ、とルルーシュに耳打ちする。
だんだんとルルーシュの美しい顔が赤く染まっていき、パクパクと口を開く。
「あ・・・。」
「「「「「・・・あ?」」」」」
皆が心配そうにルルーシュを見つめる。
「・・・あたりまえでしょうがぁぁぁぁあっ!!!!」
その日1番の怒声が、部屋に響き渡った。
後日、ルルーシュとナナリーの身の振り方が決まり、アッシュフォードやキョウトの多大な協力で無事にその作戦が実行されたのは言うまでも無い。
その間、数回に渡り藤堂が奇跡的に似合わない言葉を発言し、数え切れないほど朝比奈が暴走して会議がなかなか進まなかった事を付記しておく。
おしまい
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