Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・完全捏造設定です!
・原作かなり無視しています!
・オリジナルキャラクターがわんさか出ます
・二次創作だということをご理解したうえでお読みください!
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
ほろ酔い気分で部屋を見まわした天導衆の“頭”は、はて、と首を傾げた。
―――少ない。
「・・・どうなんしんした?」
やわらかな声で隣に座る遊女が声をかけてくる。
結いあげられた濡羽色の髪が、むき出しの肩に少しだけかかっているのが妙に色っぽい。
「・・・いや、皆、夜風にでもあたりに行ったのか?」
酒には強い体質だが、酌をする遊女に目を奪われて周りが見えなくなっていたことに気付く。
「さぁ?・・・そういえば、うちの娘達の姿も見えんせんぇ。・・・きっと、一緒にいるんでありんしょう」
遊女の言葉によからぬ想像をしてしまった天導衆の“頭”は、ふるりと首を振った。
「そうか・・・まぁ、邪魔はすまい」
「そうでありんす・・・ここでわっちと楽しく飲みんしょう?」
“保科”が用意した遊女達は極上の女ばかりだった。安全が確保されるまでのひと時を退屈させないようにとの配慮に“子飼いの狗”の優秀さに満足する。
注がれる酒をあおり、美しい遊女の腰を抱く。
「もっと、注げ」
「はい・・・どうぞ。ゆっくり飲んでおくんなんし」
紅をさした唇が廓言葉をつむぐ度に、頭の中がじょじょに浸食されていく―――。
***
天導衆の“頭”本人は気付いていないようだが、徐々に虚ろになってきている目を見て、氷柱は朱唇をほころばせた。
「(お前達は酒に酔ってるんじゃない、匂いに酔ってるのよ)」
部屋に焚きしめられた香に混ぜた毒。遊女達には既に解毒薬を飲ませてあり、氷柱は忍として訓練されていた頃に耐性をつけられている。
「(楽に死ねると思わないことね。この世の地獄を見せてやるわ・・・)」
笑顔で酒を注ぎながらそっと部屋の中を確認する。残っているのは目の前の男と天導衆の中でも文官タイプの者ばかり。
武官タイプの者達は遊女達に言ってこの部屋の外に早々に出してしまった。彼等には香に混ぜた毒に気付かれてしまう可能性があったからだ。
今頃はそれぞれ遊女達に誘導されて罠にかかっている頃だろう。
“頭”と文官タイプの者達はここで始末する。
あともう少し。美酒に酔いしれる夢を見ているがいい―――。
***
「もう、声も出ないだろう?・・・神経系の毒だよ」
身体が弛緩して動かず、その場に横たわることしかできない。
クスクスと楽しそうに笑いながら告げる青年の手に握られた針のような武器。それを視界に収めた天導衆の1人は力なく首を振った。
「ああ・・・大丈夫だよ。すぐには殺さないから・・・もっともっと、苦しんでもらわなきゃ」
クスクス、と笑う青年の目が細められる。
「・・・わー・・・鬼ですねー、水澄さん」
それを見ていた平子が平坦な声で呟けば、青年・水澄は不思議そうに首を傾げた。
「この手の作戦は攘夷戦争時もやってたし・・・普通じゃない?」
「・・・オヤジ・・・」
戦争に参加していた自分の父親もそんなことをしていたのかと振り返れば、ブンブンと首を振られる。
「冗談じゃねェや。オイラ達ァ、戦うのが精一杯で謀略なんざァ考えも及ばなかったぜィ」
「全くよ・・・ホント、戦争末期ってろくでもない戦い方してたのね」
西郷もまた次郎長に同意して頷く。
攘夷戦争初期と同じく不利な戦いで、しかも幕府の加護という精神的支柱がほぼ崩れ去ってしまった末期の戦いは攘夷志士達をかなり追いつめたのだろう。
「私達は子どもでしたからね。純粋な力では勝てませんよ」
「ッ・・・春霞の兄ちゃん・・・か」
気配もなく背後に立たれて一瞬息を詰めたが、それが春霞だと知ると次郎長は息を吐いた。
「私達はともかく、銀時様達は純粋に力で挑んでましたよ」
ニコニコと顔は笑っているが目が笑っていない。どうやら銀時が悪く言われたと思ったようだ。
「・・・ンなこたァわかってんだ・・・ただ、初期の頃とは全く違う情勢だったんだってのを改めて思い知らされたんでィ」
次郎長が言えば、春霞は頷く。
「そうですね・・・あんなのでも幕府の加護はそれなりに必要だったんですよ。支援が打ち切られる中で士気を保たせるっていうのは、結構骨が折れるんです」
その中で懸命に踏ん張っていたのは銀時であり、高杉であり、桂であり、坂本だった。
しかし、坂本が抜けるのと同時に部隊の状況は坂を転がり落ちるかのように悪くなっていった。
高杉や桂のカリスマだけでは抑えられなくなり、脱走者も数多く出した。“白夜叉”の名が無ければ、もっと多くの脱走者が出ていただろう。
「・・・だろうな」
頷く次郎長。
白夜叉の名は有名だ。二つ名だけが先行して広まり本名が広まらなかったのは意図的なモノだと知っていた。
「最終的には銀時様の心が壊れる前に俺達が陣から無理矢理連れだしたんだけどな」
「その後は知っての通り、天人共に頭を下げた幕府が残党狩りを始めて・・・」
ギリ、と唇を噛みしめる春霞と水澄。
「悔しい思いをしたわねェ・・・幕府があんなにもアッサリ膝を折るなんて・・・」
「幕府には元々期待していませんでしたよ・・・私達が許せないのは、ただ自由に暮らしている銀時様の邪魔をしようとしたコイツ等だけです」
「未だに根に持ちやがって・・・テメェ等が勝ったんだから、何もしてない銀時様のことなんて放っておいてくれりゃ良かったんだ」
戦後10年も経って未だに銀時を探させていると知った時は、腸が煮え繰り返るような思いを抱いた。
「大人しく支配者という立場に酔い痴れていればよかったモノを・・・せいぜい苦しんで死になさい」
ぐったりとしている天人を見下ろす春霞の目は氷のように冷たかった。いつもは笑顔をうかべているから余計に怖ろしく感じる。
銀時のためならばここまで手を汚せる。その覚悟を持つ六花の面々に頭が下がる思いだ。
「・・・次郎長さん、西郷さん、平子さん・・・申し訳ありませんが、裏庭の方へ行って頂けますか?百華の皆さんが少し手こずってます」
「・・・あ、ああ」
「わかったわ・・・」
「春霞さんも水澄さんも気をつけて」
3人が裏庭に向かっていくのを確認した春霞は、足元に転がる天導衆に向けて銃を向けた。
「お前達の様なヤツに“侍”として挑んでやるつもりはない」
「ま、そういうこと」
頷く水澄の手には未だに千本が握られている。
この先を次郎長達に見せるつもりはなかった。決して見ていて気持ちの良いものではないから。
銃口から火が噴く。
「・・・ッ!!」
脇腹を撃たれ、悲鳴を上げることすら出来ずに天導衆の身体がビクリと跳ねる。
「・・・ああ、すみません。急所を外してしまいましたね」
クク、と春霞が喉を鳴らして笑う。
「・・・あーあ、春霞の“残酷スイッチ”入っちゃったよ・・・春霞、ソレはもう1人で片付けられるな?」
「ええ・・・行ってください。まだ残りが結構いるでしょう?」
「・・・やりすぎんなよ?後片付けが大変なんだからな」
じと目で言う水澄に春霞は微かに苦笑して頷く。
「さてと、俺はあっちの方を片付けてこようかな」
クルリ、と千本を回して唇を舐める。
久々に暴れられるとあって、気分が高揚しているのは春霞だけではない。
夏霧は全体を見て指示を出しているから冷静さを保っているだろうが、他の3人は完全に天導衆をいかにしていたぶるかを頭の中に思い浮かべている。
天導衆の恐怖体験は始まったばかり―――。
―江戸郊外
その場にいた全員が、一歩も動けなかった。
ビリビリと肌で感じる強い殺気―――その発生源は白い夜叉。
黒夜叉が愛しむように“銀時”と呼んだその瞬間に漏れだした殺気。
一番側にいた高杉がハッとして振り返った時にはその場に銀時の姿は無かった。慌てて黒夜叉の方を向く。
一閃。
バタバタと倒れて行く天人達。その先に黒夜叉に刀を振り下ろす“白夜叉”の姿があった。
「・・・晋!」
「今は・・・無理だ」
我に返った久坂が高杉を呼ぶ。が、高杉は首をゆるりと振った。
喉がカラカラになるほどに緊張している。気を抜けば腰が抜けそうなくらいに強い殺気を銀時から感じる。
攘夷戦争時でも滅多に見ることの無かった、銀時の我を忘れた状態。
高杉達はその状態を“白夜叉”と呼んだ。“白夜叉”状態の銀時はひとしきり暴れさせないと高杉達でも止められなかった。
それが余計に他の者達の恐怖を煽ったのだろう。“白夜叉”を見た仲間達は銀時を避けるようになった。
銀時はそんな仲間達の態度にとても傷ついていたが、六花がそれを上手くフォローしていた。
「久々に見るな・・・あのような銀時は・・・」
緊張からか桂の表情は硬い。ツ、と顎に汗が伝う。
見渡せば、桂一派や鬼兵隊や真選組の下っ端達は完全に腰を抜かしており、幹部達が何とか耐えているといった様子だった。
見慣れているはずの自分達でさえこうなのだから当然だろうと思いつつ、万事屋の子ども達の方へと視線を向ける。
「!・・・新八君、リーダー・・・」
桂が目を瞠ったのも当然といえた。
子ども達は全く怯えた様子もなく、一挙手一投足を見逃すまいと視線を逸らすことなく銀時を見つめていたのだ。
「クッ・・・ククク・・・」
高杉が喉を鳴らして笑う。
「高杉?」
「ヅラァ・・・銀時の奴、良い“家族”を持ったなァ」
「・・・ああ・・・そうだな」
ホッと息をつき、桂は目元を緩めた。
幼馴染達も坂本も同様に笑みをうかべていて、見れば真選組の幹部達も万事屋の子ども達の様子に気付いたのか、ぽかんとした後に苦笑した。
子ども達でさえ覚悟一つでこの場に立っているのだ。強い殺気を感じたくらいでビビってどうする。
銀時に止めてやるとそう言ったではないか。そう己を奮い立たせて銀時と黒夜叉の戦いを見守った。
***
振り下ろされた刀をかろうじて受ける。
「ほう・・・あの頃よりもパワーは上がっているようだな」
「あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!」
まるで獣のように雄叫びをあげて、銀時は黒夜叉に何度も打ちこむ。
その刀は血で曇り鈍く光る。その血はすべて黒夜叉の前に倒れ伏している部下達のものだ。
「(アレだけの人数を一瞬で、か)」
己が“銀時”と呼んだのが余程気にくわなかったらしい。黒夜叉はクツクツと笑った。
「“銀時”・・・お前の力はこの程度か?」
そう言って挑発すれば、思った以上の力で打ちこまれて体制を崩す。
「黒夜叉様!!」
部下の声が聞こえた。
下から降りあげられた刃をすんでのところで避ける―――が、顎に僅かに痛みが走り、編み笠が吹き飛ばされる。
肩で息をする銀時。その目はギラギラとした光を湛え真っ直ぐに黒夜叉を睨み据えている。
「クク・・・あの時に生かしておいたのは間違いではなかったな」
ほんの気まぐれで、銀時を生かした。
つまらない日常に刺激を与えてくれる男に成長すると直感して。
天導衆の私兵団。そろそろあのような連中の子飼いでいるのも飽きてきた頃だ。
地球の豊かな資源を我が物にせんとして攻め込み、権力を手に入れた今でも攘夷志士の生き残りに怯え、神経質なまでに討伐を命じた。
更には“白夜叉”が生きているという噂に震えあがり、噂の真偽を確かめるよりも先に己に命じたのはその首を持ってこいという殺害の命令。
「つまらない連中に仕えるのも飽きてきた。・・・お前は俺を少しは楽しませてくれるのだろう?・・・“銀時”」
―――これで三度目。
フッと辺りに充満していた殺気が一瞬にして消えた。
目の前の夜叉から闘気すらも失われたことに気付いて、黒夜叉は首を傾げた。
「・・・なんだ?」
目の前にいるというのに気配を感じない。そのことに気付いた黒夜叉はゾッと鳥肌がたち、背中に冷や汗が吹き出るのを感じた。
敵意、殺気、闘気・・・隠そうと思っても中々隠せないのがそれらの感情だ。目の前の相手を倒そうと思えばどうしても“斬る”という行動に付随して感情が湧く。
だというのに、刀を持った腕をだらりと垂らしてこちらを見つめる銀時の目には何の感情もうかんではいなかった。
しかし、隙は一切無い。だから、諦めたわけではないとわかる。
不気味なまでの静けさ。
「・・・お前が、俺の名前を呼ぶのか・・・?」
銀時の口から漏れた言葉に高杉達が反応したのを遠目で確認する。
「・・・・・・お前が・・・あの人が最後に口にした俺の名前を呼ぶのか?」
平坦な声が耳に届くが、目の前の男の気配は未だに感じられない。
と、その時。右肩に激痛が走った。
「ぐ・・・ぅ・・・!!」
攻撃が全く見えなかった。見れば、銀時の持つ刀から今付いたばかりだろう血が滴り落ちている。
「あの時、斬り落とし損ねた右腕貰った」
悦びも憎しみもない、単調な声。
「次・・・何処が良い?」
銀時の口が弧を描いた。
***
「・・・黒夜叉の野郎、変なスイッチ押しやがったな。銀時の奴、完全にネジ一本ぶっ飛んでんじゃねェか」
黒夜叉の右腕が落ちる瞬間を見ていた高杉が、ボソリと呟く。
「どうする、高杉。アレじゃしばらくは手を出せんぞ。ヘタに手を出したら俺達まで斬られる」
「・・・知るか!決着つくまで放っておけ。・・・俺達は残りの連中を片付けるぞ」
「仕方ない・・・お前達、いつまで腰を抜かしている!!残りの天人共を刈り取るぞ!!」
桂の一喝にハッとした面々がようやく立ち上がる。
「テメェ等もぼうっとしてんな!!真選組の力を見せつけてやれ!!」
土方も負けじと叫び、隊士達から雄叫びが返って来る。
「あのー、土方さーん・・・あれ、ふっ飛ばしちまってもいいですかねィ?」
間延びした声に振り返れば、バズーカ―を天人達が乗って来た船からかけられているはしごに向けて構えている沖田に目をカッ開く。
「・・・やっちまえ、総悟」
ニヤリと笑って許可を出す土方に、沖田もニヤリと笑い返す。
「アイアイサー」
応じるのと同時にバズーカを発射する。狙いはバッチリだったようで、ロケット弾ははしごに命中して爆発した。
「あっはっはっはっ!やるのぅ!総一郎君!」
能天気な笑いを発して沖田の背後から襲った天人をブラスターで撃ち抜く。
「・・・礼は言いませんぜィ?・・・それと、俺の名前は総悟でさァ。旦那の真似はしねェでくだせェ」
「おぉ、すまんすまん!」
「・・・わかってんですかねィ、このお人は」
「すまん・・・ウチの頭は空気が読めんのじゃ」
呆れたような視線を向ける沖田に、陸奥が頭を下げる。
「・・・まぁ、良いですけどねィ」
だるそうに答える沖田。陸奥がこの男大丈夫かと一瞬心配した時だった。
「トシ、総悟!あっちの味方が圧されてる。援護に行くぞ!!」
近藤の声が聞こえた瞬間、気だるい雰囲気が一気に吹き飛んで沖田が愛刀を抜き放つ。
「近藤さん、どいつを斬りゃいいんですかィ?・・・俺が一面血の海に変えてやりまさァ(土方ごとな)」
「テメッ、総悟!!副音声聞こえたぞゴル゛ァ゛!!」
「お前達、そこで喧嘩するな!!」
あまりの変わり身の早さに陸奥が目を丸くしていると、隣に来ていた神楽が鼻を鳴らした。
「フン、相変わらずサドヤローはゴリラにご執心ネ」
「まぁまぁ、神楽ちゃん。真選組はやっぱりああじゃなくちゃ」
銀時の殺気に気圧されていた時の土方達は顔色が真っ青で、銀時を拒絶するのではと不安になったのだがいらぬ心配だったらしい。
「・・・そうアルな。新八ィ、私達も他の連中をやっつけちゃうアル!!」
「うん!」
神楽の後を追い、新八も走りだした。
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・二次創作だということをご理解したうえでお読みください!
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
ほろ酔い気分で部屋を見まわした天導衆の“頭”は、はて、と首を傾げた。
―――少ない。
「・・・どうなんしんした?」
やわらかな声で隣に座る遊女が声をかけてくる。
結いあげられた濡羽色の髪が、むき出しの肩に少しだけかかっているのが妙に色っぽい。
「・・・いや、皆、夜風にでもあたりに行ったのか?」
酒には強い体質だが、酌をする遊女に目を奪われて周りが見えなくなっていたことに気付く。
「さぁ?・・・そういえば、うちの娘達の姿も見えんせんぇ。・・・きっと、一緒にいるんでありんしょう」
遊女の言葉によからぬ想像をしてしまった天導衆の“頭”は、ふるりと首を振った。
「そうか・・・まぁ、邪魔はすまい」
「そうでありんす・・・ここでわっちと楽しく飲みんしょう?」
“保科”が用意した遊女達は極上の女ばかりだった。安全が確保されるまでのひと時を退屈させないようにとの配慮に“子飼いの狗”の優秀さに満足する。
注がれる酒をあおり、美しい遊女の腰を抱く。
「もっと、注げ」
「はい・・・どうぞ。ゆっくり飲んでおくんなんし」
紅をさした唇が廓言葉をつむぐ度に、頭の中がじょじょに浸食されていく―――。
***
天導衆の“頭”本人は気付いていないようだが、徐々に虚ろになってきている目を見て、氷柱は朱唇をほころばせた。
「(お前達は酒に酔ってるんじゃない、匂いに酔ってるのよ)」
部屋に焚きしめられた香に混ぜた毒。遊女達には既に解毒薬を飲ませてあり、氷柱は忍として訓練されていた頃に耐性をつけられている。
「(楽に死ねると思わないことね。この世の地獄を見せてやるわ・・・)」
笑顔で酒を注ぎながらそっと部屋の中を確認する。残っているのは目の前の男と天導衆の中でも文官タイプの者ばかり。
武官タイプの者達は遊女達に言ってこの部屋の外に早々に出してしまった。彼等には香に混ぜた毒に気付かれてしまう可能性があったからだ。
今頃はそれぞれ遊女達に誘導されて罠にかかっている頃だろう。
“頭”と文官タイプの者達はここで始末する。
あともう少し。美酒に酔いしれる夢を見ているがいい―――。
***
「もう、声も出ないだろう?・・・神経系の毒だよ」
身体が弛緩して動かず、その場に横たわることしかできない。
クスクスと楽しそうに笑いながら告げる青年の手に握られた針のような武器。それを視界に収めた天導衆の1人は力なく首を振った。
「ああ・・・大丈夫だよ。すぐには殺さないから・・・もっともっと、苦しんでもらわなきゃ」
クスクス、と笑う青年の目が細められる。
「・・・わー・・・鬼ですねー、水澄さん」
それを見ていた平子が平坦な声で呟けば、青年・水澄は不思議そうに首を傾げた。
「この手の作戦は攘夷戦争時もやってたし・・・普通じゃない?」
「・・・オヤジ・・・」
戦争に参加していた自分の父親もそんなことをしていたのかと振り返れば、ブンブンと首を振られる。
「冗談じゃねェや。オイラ達ァ、戦うのが精一杯で謀略なんざァ考えも及ばなかったぜィ」
「全くよ・・・ホント、戦争末期ってろくでもない戦い方してたのね」
西郷もまた次郎長に同意して頷く。
攘夷戦争初期と同じく不利な戦いで、しかも幕府の加護という精神的支柱がほぼ崩れ去ってしまった末期の戦いは攘夷志士達をかなり追いつめたのだろう。
「私達は子どもでしたからね。純粋な力では勝てませんよ」
「ッ・・・春霞の兄ちゃん・・・か」
気配もなく背後に立たれて一瞬息を詰めたが、それが春霞だと知ると次郎長は息を吐いた。
「私達はともかく、銀時様達は純粋に力で挑んでましたよ」
ニコニコと顔は笑っているが目が笑っていない。どうやら銀時が悪く言われたと思ったようだ。
「・・・ンなこたァわかってんだ・・・ただ、初期の頃とは全く違う情勢だったんだってのを改めて思い知らされたんでィ」
次郎長が言えば、春霞は頷く。
「そうですね・・・あんなのでも幕府の加護はそれなりに必要だったんですよ。支援が打ち切られる中で士気を保たせるっていうのは、結構骨が折れるんです」
その中で懸命に踏ん張っていたのは銀時であり、高杉であり、桂であり、坂本だった。
しかし、坂本が抜けるのと同時に部隊の状況は坂を転がり落ちるかのように悪くなっていった。
高杉や桂のカリスマだけでは抑えられなくなり、脱走者も数多く出した。“白夜叉”の名が無ければ、もっと多くの脱走者が出ていただろう。
「・・・だろうな」
頷く次郎長。
白夜叉の名は有名だ。二つ名だけが先行して広まり本名が広まらなかったのは意図的なモノだと知っていた。
「最終的には銀時様の心が壊れる前に俺達が陣から無理矢理連れだしたんだけどな」
「その後は知っての通り、天人共に頭を下げた幕府が残党狩りを始めて・・・」
ギリ、と唇を噛みしめる春霞と水澄。
「悔しい思いをしたわねェ・・・幕府があんなにもアッサリ膝を折るなんて・・・」
「幕府には元々期待していませんでしたよ・・・私達が許せないのは、ただ自由に暮らしている銀時様の邪魔をしようとしたコイツ等だけです」
「未だに根に持ちやがって・・・テメェ等が勝ったんだから、何もしてない銀時様のことなんて放っておいてくれりゃ良かったんだ」
戦後10年も経って未だに銀時を探させていると知った時は、腸が煮え繰り返るような思いを抱いた。
「大人しく支配者という立場に酔い痴れていればよかったモノを・・・せいぜい苦しんで死になさい」
ぐったりとしている天人を見下ろす春霞の目は氷のように冷たかった。いつもは笑顔をうかべているから余計に怖ろしく感じる。
銀時のためならばここまで手を汚せる。その覚悟を持つ六花の面々に頭が下がる思いだ。
「・・・次郎長さん、西郷さん、平子さん・・・申し訳ありませんが、裏庭の方へ行って頂けますか?百華の皆さんが少し手こずってます」
「・・・あ、ああ」
「わかったわ・・・」
「春霞さんも水澄さんも気をつけて」
3人が裏庭に向かっていくのを確認した春霞は、足元に転がる天導衆に向けて銃を向けた。
「お前達の様なヤツに“侍”として挑んでやるつもりはない」
「ま、そういうこと」
頷く水澄の手には未だに千本が握られている。
この先を次郎長達に見せるつもりはなかった。決して見ていて気持ちの良いものではないから。
銃口から火が噴く。
「・・・ッ!!」
脇腹を撃たれ、悲鳴を上げることすら出来ずに天導衆の身体がビクリと跳ねる。
「・・・ああ、すみません。急所を外してしまいましたね」
クク、と春霞が喉を鳴らして笑う。
「・・・あーあ、春霞の“残酷スイッチ”入っちゃったよ・・・春霞、ソレはもう1人で片付けられるな?」
「ええ・・・行ってください。まだ残りが結構いるでしょう?」
「・・・やりすぎんなよ?後片付けが大変なんだからな」
じと目で言う水澄に春霞は微かに苦笑して頷く。
「さてと、俺はあっちの方を片付けてこようかな」
クルリ、と千本を回して唇を舐める。
久々に暴れられるとあって、気分が高揚しているのは春霞だけではない。
夏霧は全体を見て指示を出しているから冷静さを保っているだろうが、他の3人は完全に天導衆をいかにしていたぶるかを頭の中に思い浮かべている。
天導衆の恐怖体験は始まったばかり―――。
―江戸郊外
その場にいた全員が、一歩も動けなかった。
ビリビリと肌で感じる強い殺気―――その発生源は白い夜叉。
黒夜叉が愛しむように“銀時”と呼んだその瞬間に漏れだした殺気。
一番側にいた高杉がハッとして振り返った時にはその場に銀時の姿は無かった。慌てて黒夜叉の方を向く。
一閃。
バタバタと倒れて行く天人達。その先に黒夜叉に刀を振り下ろす“白夜叉”の姿があった。
「・・・晋!」
「今は・・・無理だ」
我に返った久坂が高杉を呼ぶ。が、高杉は首をゆるりと振った。
喉がカラカラになるほどに緊張している。気を抜けば腰が抜けそうなくらいに強い殺気を銀時から感じる。
攘夷戦争時でも滅多に見ることの無かった、銀時の我を忘れた状態。
高杉達はその状態を“白夜叉”と呼んだ。“白夜叉”状態の銀時はひとしきり暴れさせないと高杉達でも止められなかった。
それが余計に他の者達の恐怖を煽ったのだろう。“白夜叉”を見た仲間達は銀時を避けるようになった。
銀時はそんな仲間達の態度にとても傷ついていたが、六花がそれを上手くフォローしていた。
「久々に見るな・・・あのような銀時は・・・」
緊張からか桂の表情は硬い。ツ、と顎に汗が伝う。
見渡せば、桂一派や鬼兵隊や真選組の下っ端達は完全に腰を抜かしており、幹部達が何とか耐えているといった様子だった。
見慣れているはずの自分達でさえこうなのだから当然だろうと思いつつ、万事屋の子ども達の方へと視線を向ける。
「!・・・新八君、リーダー・・・」
桂が目を瞠ったのも当然といえた。
子ども達は全く怯えた様子もなく、一挙手一投足を見逃すまいと視線を逸らすことなく銀時を見つめていたのだ。
「クッ・・・ククク・・・」
高杉が喉を鳴らして笑う。
「高杉?」
「ヅラァ・・・銀時の奴、良い“家族”を持ったなァ」
「・・・ああ・・・そうだな」
ホッと息をつき、桂は目元を緩めた。
幼馴染達も坂本も同様に笑みをうかべていて、見れば真選組の幹部達も万事屋の子ども達の様子に気付いたのか、ぽかんとした後に苦笑した。
子ども達でさえ覚悟一つでこの場に立っているのだ。強い殺気を感じたくらいでビビってどうする。
銀時に止めてやるとそう言ったではないか。そう己を奮い立たせて銀時と黒夜叉の戦いを見守った。
***
振り下ろされた刀をかろうじて受ける。
「ほう・・・あの頃よりもパワーは上がっているようだな」
「あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!」
まるで獣のように雄叫びをあげて、銀時は黒夜叉に何度も打ちこむ。
その刀は血で曇り鈍く光る。その血はすべて黒夜叉の前に倒れ伏している部下達のものだ。
「(アレだけの人数を一瞬で、か)」
己が“銀時”と呼んだのが余程気にくわなかったらしい。黒夜叉はクツクツと笑った。
「“銀時”・・・お前の力はこの程度か?」
そう言って挑発すれば、思った以上の力で打ちこまれて体制を崩す。
「黒夜叉様!!」
部下の声が聞こえた。
下から降りあげられた刃をすんでのところで避ける―――が、顎に僅かに痛みが走り、編み笠が吹き飛ばされる。
肩で息をする銀時。その目はギラギラとした光を湛え真っ直ぐに黒夜叉を睨み据えている。
「クク・・・あの時に生かしておいたのは間違いではなかったな」
ほんの気まぐれで、銀時を生かした。
つまらない日常に刺激を与えてくれる男に成長すると直感して。
天導衆の私兵団。そろそろあのような連中の子飼いでいるのも飽きてきた頃だ。
地球の豊かな資源を我が物にせんとして攻め込み、権力を手に入れた今でも攘夷志士の生き残りに怯え、神経質なまでに討伐を命じた。
更には“白夜叉”が生きているという噂に震えあがり、噂の真偽を確かめるよりも先に己に命じたのはその首を持ってこいという殺害の命令。
「つまらない連中に仕えるのも飽きてきた。・・・お前は俺を少しは楽しませてくれるのだろう?・・・“銀時”」
―――これで三度目。
フッと辺りに充満していた殺気が一瞬にして消えた。
目の前の夜叉から闘気すらも失われたことに気付いて、黒夜叉は首を傾げた。
「・・・なんだ?」
目の前にいるというのに気配を感じない。そのことに気付いた黒夜叉はゾッと鳥肌がたち、背中に冷や汗が吹き出るのを感じた。
敵意、殺気、闘気・・・隠そうと思っても中々隠せないのがそれらの感情だ。目の前の相手を倒そうと思えばどうしても“斬る”という行動に付随して感情が湧く。
だというのに、刀を持った腕をだらりと垂らしてこちらを見つめる銀時の目には何の感情もうかんではいなかった。
しかし、隙は一切無い。だから、諦めたわけではないとわかる。
不気味なまでの静けさ。
「・・・お前が、俺の名前を呼ぶのか・・・?」
銀時の口から漏れた言葉に高杉達が反応したのを遠目で確認する。
「・・・・・・お前が・・・あの人が最後に口にした俺の名前を呼ぶのか?」
平坦な声が耳に届くが、目の前の男の気配は未だに感じられない。
と、その時。右肩に激痛が走った。
「ぐ・・・ぅ・・・!!」
攻撃が全く見えなかった。見れば、銀時の持つ刀から今付いたばかりだろう血が滴り落ちている。
「あの時、斬り落とし損ねた右腕貰った」
悦びも憎しみもない、単調な声。
「次・・・何処が良い?」
銀時の口が弧を描いた。
***
「・・・黒夜叉の野郎、変なスイッチ押しやがったな。銀時の奴、完全にネジ一本ぶっ飛んでんじゃねェか」
黒夜叉の右腕が落ちる瞬間を見ていた高杉が、ボソリと呟く。
「どうする、高杉。アレじゃしばらくは手を出せんぞ。ヘタに手を出したら俺達まで斬られる」
「・・・知るか!決着つくまで放っておけ。・・・俺達は残りの連中を片付けるぞ」
「仕方ない・・・お前達、いつまで腰を抜かしている!!残りの天人共を刈り取るぞ!!」
桂の一喝にハッとした面々がようやく立ち上がる。
「テメェ等もぼうっとしてんな!!真選組の力を見せつけてやれ!!」
土方も負けじと叫び、隊士達から雄叫びが返って来る。
「あのー、土方さーん・・・あれ、ふっ飛ばしちまってもいいですかねィ?」
間延びした声に振り返れば、バズーカ―を天人達が乗って来た船からかけられているはしごに向けて構えている沖田に目をカッ開く。
「・・・やっちまえ、総悟」
ニヤリと笑って許可を出す土方に、沖田もニヤリと笑い返す。
「アイアイサー」
応じるのと同時にバズーカを発射する。狙いはバッチリだったようで、ロケット弾ははしごに命中して爆発した。
「あっはっはっはっ!やるのぅ!総一郎君!」
能天気な笑いを発して沖田の背後から襲った天人をブラスターで撃ち抜く。
「・・・礼は言いませんぜィ?・・・それと、俺の名前は総悟でさァ。旦那の真似はしねェでくだせェ」
「おぉ、すまんすまん!」
「・・・わかってんですかねィ、このお人は」
「すまん・・・ウチの頭は空気が読めんのじゃ」
呆れたような視線を向ける沖田に、陸奥が頭を下げる。
「・・・まぁ、良いですけどねィ」
だるそうに答える沖田。陸奥がこの男大丈夫かと一瞬心配した時だった。
「トシ、総悟!あっちの味方が圧されてる。援護に行くぞ!!」
近藤の声が聞こえた瞬間、気だるい雰囲気が一気に吹き飛んで沖田が愛刀を抜き放つ。
「近藤さん、どいつを斬りゃいいんですかィ?・・・俺が一面血の海に変えてやりまさァ(土方ごとな)」
「テメッ、総悟!!副音声聞こえたぞゴル゛ァ゛!!」
「お前達、そこで喧嘩するな!!」
あまりの変わり身の早さに陸奥が目を丸くしていると、隣に来ていた神楽が鼻を鳴らした。
「フン、相変わらずサドヤローはゴリラにご執心ネ」
「まぁまぁ、神楽ちゃん。真選組はやっぱりああじゃなくちゃ」
銀時の殺気に気圧されていた時の土方達は顔色が真っ青で、銀時を拒絶するのではと不安になったのだがいらぬ心配だったらしい。
「・・・そうアルな。新八ィ、私達も他の連中をやっつけちゃうアル!!」
「うん!」
神楽の後を追い、新八も走りだした。
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