Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・あくまでも二次創作であることを前提にお読みください
・一国傾城編の過去話は完全に無視の状態です
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
皆が寝静まった頃、松陽は机の上に向けていた視線を部屋の外―――影だけが障子に映っている―――へ向けた。
「・・・どなたですか?」
その影は2メートルはあると思われる大きなもの。そして編みがさのようなモノを被っている。
松陽は目を細めた。
「私を殺しに来たんでしょう?・・・いつ来るのかと・・・ずっと思っていましたよ」
立ち上がって傍に置いていた刀を手に取り、鞘から引き抜く。
白刃が行灯の光に照らされて鈍く光る。
「わかっているならば話は早い・・・大人しく殺されろ、吉田松陽」
ス、と開けられた障子のむこうに立っていたのは、やはり天人だった。
「・・・先にしびれを切らしたのは幕府ではなく・・・天人の側だったようですね」
「幕府にも愚かではない者がいる、ということだ」
「なるほど・・・私の嘆願に耳を貸そうとした高官がいたということですか・・・それで、いよいよもって私が邪魔になったというわけですね」
冷静に受け答えをする松陽に、天人はクツリと笑った。
「殺すには惜しい男だ。お前のような奴が高官にいたならば・・・もう少し手間がかかっただろう」
「既に幕府の中には天人に通じている者がいる・・・そういうことですか」
「ククク・・・賢すぎるのも考えものよな?それが原因で命を奪われる羽目になる」
天人が肩を揺らす。
先程から天人から一切の殺気を感じない。殺されろ、そう口にしてはいるが、その意志が感じられないのだ。
殺すには惜しい―――そう言った通りに思ってはいるようだが、おそらくそれ以上に“殺し慣れている”のだろう。
「・・・こういうことを主に引き受けている・・・?」
「わかるか・・・まぁ、無駄な殺生は好まぬが・・・命じられれば殺す。ただそれだけだ」
殺すことに快楽を覚えている、というよりは淡々と事務仕事をこなすように対象者を殺している、という方が正解のようだ。
ならば、客人や銀時が殺されることは―――まずない。
松陽はそこまで考えると、刀を中段に構えた。
「・・・ナルホド、大人しく殺される気はないということか」
「この身をどうされようと、己の魂だけは穢させはしません・・・」
それは己の武士道。
子ども達にも口を酸っぱくして言い続けてきた。
「(銀時、ごめんなさい―――もう少しあなたの傍にいてあげたかった)」
忠告をされた時点で口を噤むこともできた。この地から離れることだってできた。
それでも己の考えを曲げなかったことを誇りに思っている。そして、子ども達にも誇ってもらいたい。
「(・・・勝手、ですね)」
心の中で呟き、フッと笑った。
それは自己満足に過ぎない。きっと己が死ねば子ども達は悲しむ。
高杉などは酷く落ち込むだろう。未来の話、それもただの予測を聞いただけでもあれ程に取り乱したのだから。
「このような事態に際しても微笑うか」
松陽の表情を見て天人は不思議そうにしながらも、機嫌よく呟いた。
泣いて命乞いをされたりなどしたら興ざめだ。そういう輩を何人も見てきたが、どうやらこの男は違うらしい。
「・・・簡単には殺されてやりませんよ」
「ククク・・・面白い奴だ」
実に―――惜しい。
天人はその手に持った大振りの刀を松陽に向けて振り下ろした。
ギィン!
「・・・ほォ」
己の一撃が受けとめられ、天人は感嘆の声をあげた。
「・・・くっ」
だが、受けとめるのがやっとだったようで、松陽の額には玉のような汗がうかんでいた。
大柄な天人だけに一撃一撃が重たい。ガンガンと打ち込んでくる天人の刀を防ぐので精一杯で、攻撃に転じることができない。
「っ・・・」
腕がしびれてくるのがわかる。
あっさり殺されるのも御免だが、いくら寝汚い銀時であってもこれだけ騒げは起きてしまう。
それに、彼らへも忠告はしたが、そうそう簡単に己を見捨てられるとは思えない。そういう人間だからこそ銀時が心を許しているのだ。
「少しはっ・・・こちらの事情も酌んで欲しいものですね・・・ッ!」
天人の刀をなぎ払い、松陽は距離を取る。
「襲撃者に向かって言う言葉ではないな」
「・・・わかっていますよ」
だが、ぼやかずにはいられない。なぜ、家人のいない時を狙って来てくれなかった。
否応なしに、巻き込んでしまうでないか―――。
「せんせ・・・?」
耳に馴染んだ声が聞こえた。
「いけない!・・・銀時っ、来ちゃダメです!!」
まだ、銀時にはこちらの様子は見えていない。だが、物音で何が起こっているかくらいはわかっただろう。
「・・・これが、事情とやらか」
クツクツと天人が笑う。
「安心しろ・・・無駄な殺生は好まぬと言ったろう?」
だが、自分に刃向うならば別だろう。
間違いなく、銀時は・・・。
「っ!」
ここで初めて松陽が攻撃に打って出た。
「!・・・ほう、先程までは抵抗しかしなかったものを・・・余程大切なモノらしい」
猛攻と言っても良いだろう。その細腕から繰り出される一撃は意外なほど重い。
「ククク・・・楽しいなァ・・・お前ほど気骨のあるターゲットは今までいなかった」
「たぁげ・・・と?標的・・・という意味ですか」
「そう。そして俺は・・・ターゲットを殺し損ねたことはない」
一閃。
袖が斬り裂かれ、脇腹に痛みが走る。
徐々に熱を帯びてくるそこにそろりと手をやれば、ぬるりと生暖かいものがついた。
「・・・く」
まだ動ける。だが、目の前にいる天人の男との実力差は目に見えている。
何とかして銀時を遠ざけなければ。
土方達も気付いているだろうが、松陽の忠告を聞いて自室にこもっているのだろう―――が、それもいつまで我慢が効くか。
「せんせぇっ!!」
「!!」
来るなと言ったのに・・・いや、松陽はわかっていた。銀時が己を見捨てるはずがないと。
天人の視線が銀時に向けられる。同時に銀時も天人を視界に入れた。
「あまん、と?」
銀時の視線が松陽に移り、その左手が脇腹を押さえているのを見た。
「ぎんっ・・・」
「先生を、斬ったの・・・お前か?」
ざわり。
「ほう・・・」
感嘆の声が天人から漏れる。
松陽も今まで感じたことがないほどの場を満たす殺気。その発生源は―――銀時。
「お前がっ・・・」
「そうだと、言ったら?」
尋常ではないその殺気で天人の興味を引いてしまった銀時に松陽は慌てた。
「銀時っ・・・いけません!!逃げて!!」
脇腹の創(きず)が思ったよりも深い。一歩踏み出そうとして、かくりと足から力が抜けた。
そこからはまるで時間がゆっくりと進んでいるような感覚だった。
戻る →
・あくまでも二次創作であることを前提にお読みください
・一国傾城編の過去話は完全に無視の状態です
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
皆が寝静まった頃、松陽は机の上に向けていた視線を部屋の外―――影だけが障子に映っている―――へ向けた。
「・・・どなたですか?」
その影は2メートルはあると思われる大きなもの。そして編みがさのようなモノを被っている。
松陽は目を細めた。
「私を殺しに来たんでしょう?・・・いつ来るのかと・・・ずっと思っていましたよ」
立ち上がって傍に置いていた刀を手に取り、鞘から引き抜く。
白刃が行灯の光に照らされて鈍く光る。
「わかっているならば話は早い・・・大人しく殺されろ、吉田松陽」
ス、と開けられた障子のむこうに立っていたのは、やはり天人だった。
「・・・先にしびれを切らしたのは幕府ではなく・・・天人の側だったようですね」
「幕府にも愚かではない者がいる、ということだ」
「なるほど・・・私の嘆願に耳を貸そうとした高官がいたということですか・・・それで、いよいよもって私が邪魔になったというわけですね」
冷静に受け答えをする松陽に、天人はクツリと笑った。
「殺すには惜しい男だ。お前のような奴が高官にいたならば・・・もう少し手間がかかっただろう」
「既に幕府の中には天人に通じている者がいる・・・そういうことですか」
「ククク・・・賢すぎるのも考えものよな?それが原因で命を奪われる羽目になる」
天人が肩を揺らす。
先程から天人から一切の殺気を感じない。殺されろ、そう口にしてはいるが、その意志が感じられないのだ。
殺すには惜しい―――そう言った通りに思ってはいるようだが、おそらくそれ以上に“殺し慣れている”のだろう。
「・・・こういうことを主に引き受けている・・・?」
「わかるか・・・まぁ、無駄な殺生は好まぬが・・・命じられれば殺す。ただそれだけだ」
殺すことに快楽を覚えている、というよりは淡々と事務仕事をこなすように対象者を殺している、という方が正解のようだ。
ならば、客人や銀時が殺されることは―――まずない。
松陽はそこまで考えると、刀を中段に構えた。
「・・・ナルホド、大人しく殺される気はないということか」
「この身をどうされようと、己の魂だけは穢させはしません・・・」
それは己の武士道。
子ども達にも口を酸っぱくして言い続けてきた。
「(銀時、ごめんなさい―――もう少しあなたの傍にいてあげたかった)」
忠告をされた時点で口を噤むこともできた。この地から離れることだってできた。
それでも己の考えを曲げなかったことを誇りに思っている。そして、子ども達にも誇ってもらいたい。
「(・・・勝手、ですね)」
心の中で呟き、フッと笑った。
それは自己満足に過ぎない。きっと己が死ねば子ども達は悲しむ。
高杉などは酷く落ち込むだろう。未来の話、それもただの予測を聞いただけでもあれ程に取り乱したのだから。
「このような事態に際しても微笑うか」
松陽の表情を見て天人は不思議そうにしながらも、機嫌よく呟いた。
泣いて命乞いをされたりなどしたら興ざめだ。そういう輩を何人も見てきたが、どうやらこの男は違うらしい。
「・・・簡単には殺されてやりませんよ」
「ククク・・・面白い奴だ」
実に―――惜しい。
天人はその手に持った大振りの刀を松陽に向けて振り下ろした。
ギィン!
「・・・ほォ」
己の一撃が受けとめられ、天人は感嘆の声をあげた。
「・・・くっ」
だが、受けとめるのがやっとだったようで、松陽の額には玉のような汗がうかんでいた。
大柄な天人だけに一撃一撃が重たい。ガンガンと打ち込んでくる天人の刀を防ぐので精一杯で、攻撃に転じることができない。
「っ・・・」
腕がしびれてくるのがわかる。
あっさり殺されるのも御免だが、いくら寝汚い銀時であってもこれだけ騒げは起きてしまう。
それに、彼らへも忠告はしたが、そうそう簡単に己を見捨てられるとは思えない。そういう人間だからこそ銀時が心を許しているのだ。
「少しはっ・・・こちらの事情も酌んで欲しいものですね・・・ッ!」
天人の刀をなぎ払い、松陽は距離を取る。
「襲撃者に向かって言う言葉ではないな」
「・・・わかっていますよ」
だが、ぼやかずにはいられない。なぜ、家人のいない時を狙って来てくれなかった。
否応なしに、巻き込んでしまうでないか―――。
「せんせ・・・?」
耳に馴染んだ声が聞こえた。
「いけない!・・・銀時っ、来ちゃダメです!!」
まだ、銀時にはこちらの様子は見えていない。だが、物音で何が起こっているかくらいはわかっただろう。
「・・・これが、事情とやらか」
クツクツと天人が笑う。
「安心しろ・・・無駄な殺生は好まぬと言ったろう?」
だが、自分に刃向うならば別だろう。
間違いなく、銀時は・・・。
「っ!」
ここで初めて松陽が攻撃に打って出た。
「!・・・ほう、先程までは抵抗しかしなかったものを・・・余程大切なモノらしい」
猛攻と言っても良いだろう。その細腕から繰り出される一撃は意外なほど重い。
「ククク・・・楽しいなァ・・・お前ほど気骨のあるターゲットは今までいなかった」
「たぁげ・・・と?標的・・・という意味ですか」
「そう。そして俺は・・・ターゲットを殺し損ねたことはない」
一閃。
袖が斬り裂かれ、脇腹に痛みが走る。
徐々に熱を帯びてくるそこにそろりと手をやれば、ぬるりと生暖かいものがついた。
「・・・く」
まだ動ける。だが、目の前にいる天人の男との実力差は目に見えている。
何とかして銀時を遠ざけなければ。
土方達も気付いているだろうが、松陽の忠告を聞いて自室にこもっているのだろう―――が、それもいつまで我慢が効くか。
「せんせぇっ!!」
「!!」
来るなと言ったのに・・・いや、松陽はわかっていた。銀時が己を見捨てるはずがないと。
天人の視線が銀時に向けられる。同時に銀時も天人を視界に入れた。
「あまん、と?」
銀時の視線が松陽に移り、その左手が脇腹を押さえているのを見た。
「ぎんっ・・・」
「先生を、斬ったの・・・お前か?」
ざわり。
「ほう・・・」
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