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Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)

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日が暮れ出すと、子ども達は1人また1人と家に帰って行く。

「じゃぁな~」

「また明日~」

別れの言葉を口にして、名残惜しそうに松陽宅を去る。

彼等を見送る銀時の背中がとても寂しそうで、土方達は何とも言えない思いになる。

「若様ぁ~」

高杉家に仕えているらしい女中が高杉を迎えに来る。

「お咲(さき)か・・・迎えは要らないって、いつも言ってるだろ?」

お咲と呼ばれた女中は、困ったように笑う。

「申し訳ございません。ですが、旦那様が急遽お戻りになられるそうで」

「・・・父上が?」

訝しげに訊ねる高杉に、土方は首を傾げた。

この年代の子どもならば、父親が帰って来ると言われれば普通喜ぶのではないのだろうか。

「はい」

頷くお咲を見て、高杉は不安そうに松陽を見上げた。

「・・・先生」

「京から戻られるのですか」

わずかに、松陽の瞳が揺れる。

京で長州藩と朝廷・幕府との交渉にあたっている高杉の父が戻って来るということは、良くも悪くも何らかの動きがあったということだ。

「先生にも明朝お伺いすると伝えて欲しいとのことでございました」

「わかりました・・・お待ちしているとお伝えください」

「かしこまりました」

深々と頭を下げたお咲に連れられ、高杉は複雑な表情をうかべたまま帰路についた。

「先生、高杉の父上が京から戻られるというのは、良い知らせなのでしょうか?悪い知らせなのでしょうか?」

桂が松陽に訊ねる。

「それは、お話を伺ってみないとわかりませんね。ですが・・・楽観視するわけにはいかなそうです」

松陽の中では既に高杉の父がもたらす情報がどのようなものか見当がついているらしい。

桂はそんな松陽の表情を読まんとしてじっと見つめている。

「・・・小太郎、もうすぐ日が沈むよ?」

不意に、銀時が桂に声をかけた。

「え、あ、本当だ・・・じゃあ、先生また明日!」

「ええ、また明日」

ハッとして手を振って踵を返した桂を、松陽はにこやかに見送った。

「・・・松陽先生、明日は千客万来の日?」

松陽の着物の袖をクン、と銀時が引く。

「そう、ですね・・・お客様がたくさん来るかもしれませんね」

「じゃあ・・・」

「・・・お客様とは別棟で会います。ですから、銀時は母屋で皆さんと一緒にいなさい」

松陽に客が来ると決まってふらりとどこかへ行ってしまう銀時だが、同居人がこれだけいれば安心だろう。

そう思って松陽が言えば、銀時は目を丸くして土方達を振り返った。

「そっか、今回は退達がいるんだ・・・」

どうやら客が来たら姿を見せないようにしなければ、という彼なりのルールが頭にあり土方達の存在が頭から飛んでいたようだった。

「こういうわけなので、明朝は銀時と一緒に母屋にこもっていて頂けますか?」

「・・・ああ、大事な話なんだろ?まったくもって問題ねェよ、大人しくしてる」

松陽が申し訳なさそうに言うと、土方が代表して答えた。

「助かります・・・少々難しい話になると思いますので、他の世界の方といえども耳に入れるわけにはいかないんです」

困ったように笑って松陽は告げる。しかも、山崎の嘘を信じているような発言だった。

これだけの人物が、こんなにも簡単に他の世界から来ただなどという与太話を信じるだろうかと土方は訝しんだ。

もしかしたら、松陽は信じたフリをしてくれているのかもしれない、と思い至る。

「・・・吉田さん、なるべくアンタには迷惑をかけないようにする。あまり、気は使わないでくれ。して欲しいことやしたらいけないことがあったら言ってもらえると、こっちも助かる」

郷に入れば郷に従え、つまりはそういうことだ。ここでの決まりごとさえ守っていれば、おおよその面倒事は避けられる。

「わかりました。その話は夕飯の時に。・・・じゃあ準備をしますので、母屋にあがっていてください」

そう言い置いて松陽は母屋に入っていった。

「あ、手伝いますよ~」

その松陽の後を山崎が追う。

「・・・あ、えーと」

新八が気まずそうに銀時を見降ろした。松陽や山崎という緩衝材(かんしょうざい)がいなくなってしまい、また、銀時に警戒されるのではないかと危惧したのだ。

「良かったら、夕飯出来るまで母屋案内するけど・・・」

そんな銀時の言葉に、新八が危惧したことも杞憂だったと知る。

「じゃあ、お願いしまさァ」

ニコニコと笑って沖田が銀時の視線に合わせるようにしゃがみ込めば、銀時はコクリと頷いた。


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