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Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)

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一方、土方はうんうんと唸りながら、2人のテロリスト(将来の進路予定)の背中を追っていた。

「・・・なんかおかしな奴だな、本当に先生のところに連れていくのかよ?」

そんな土方をチラリと振り返り高杉が眉間にしわを寄せる。

「あやしい奴だからこそ先生にどうするかを訊ねるべきだろう」

そんな高杉を桂が大真面目に諭す。

「・・・そんなもんかァ?」

「そんなもんだ」

バリバリに警戒心を見せる高杉と妙に人の良さと真面目さがにじみ出ている桂。敵だ、テロリストだ、駆逐するべき相手だ、と思いながらもこのように無邪気な様子を見せられるとその気持ちが折れてしまいそうになる。

「(くそッ・・・借りなんぞ作ったら後でやりづらくなんじゃねェか!!)」

そうは思うが自分のまったく知らない場所で、しかも過去に遡っているとしたら、情報は必要だろう。

ようやくいつもの冷静さを取り戻した土方は盛大な溜息をついた。

「おい」

ちび高杉が土方を睨むように見上げる。

「・・・なんだ?」

「妙なことしたら、たたっ斬るからな」

この程度の威嚇にビビるようでは真選組副長なんぞは務まらない。しかも相手は子どもだ。だが、ここで反発して相手を余計に警戒させて情報を得られなくなることは避けなければならなかった。

「・・・ああ、わかった」

だから素直に頷き、土方は案内されるままに歩を進めた。

そして、案内されたのは小高い丘に建てられた民家だった。奥には別棟があり、何やら子ども達がわらわらと集まっていた。

「あ、しんすけ、こたろー」

「おかえりー」

その中の数人が高杉と桂に走り寄って来た。

「・・・先生は?」

「「「「まだ~」」」」

高杉の問いに子ども達は一斉に首を横に振る。

「ソイツ誰?」

「土方十四郎っていうんだとよ」

「また拾ってきたのかよー」

「またって、前に拾ってきたのは俺たちじゃなくて先生だろ」

どうやらこの2人は子どもの時分よりリーダーの素質があったらしい。明らかに他の子ども達から一目置かれている様子が見て取れる。

というか、また拾ってきたというのが気になる。

「先生の帰りが遅い日って、いつも“ナニか”拾ってくるんだよなー」

1人の子どもがぼやけば、高杉と桂はウッと呻いた。

「先生、お人好しだからなァ・・・」

「いつか騙されるんじゃないかと心配になるくらいにな」

「あー、だからお前ヅラなんだ」

「ヅラじゃない桂だ!!そしてこれは地毛だ!!」

このかけ合い何度目だろうかと土方が何とも言えない表情で見つめていれば、周りを取り囲んでいた子ども達が呆れながらも笑う。

「また、しんすけとこたろーのケンカが始まったよ」

「なー、ぎんはどこ?あの2人を止められんの松陽先生かぎんだけだぜ?」

「ぎんは先生と一緒にお使いに行ったんじゃなかったか?」

「げ、最悪じゃん」

なんとはなしに話を聞いていた土方は、“松陽先生”と“ぎん”という人物がこのまとまりの中で特別な位置にいることを理解する。

「(ぎん?・・・ぎんって・・・どっかで聞いたことのあるような・・・)」

止まらない高杉と桂のケンカと、それを遠巻きに見て途方に暮れている子ども達。それらを眺めながら土方は思考に耽っていた。

と、その時、複数の気配が近づいてくるのに気付き、土方は己が入って来た門の方へと視線を向けた。

「ただいま戻りましたよ」

柔らかな物腰のまだ青年のようにも見える男性がにこやかに子ども達に告げる。

「あ、先生!お帰りなさい!」

「うん、ただいま」

「松陽先生!お土産は?」

「ありますよ、草餅、後で皆で食べましょうね」

「ねー、しんとこたろーがケンカしてるー」

「おやおや、困った子達ですねェ」

男性の周囲を取り囲み一斉に話しかける子ども達。相当煩いに違いないのに男性は笑みを崩さないままに1人1人の話に耳を傾けてやっていた。

「(・・・なるほどな、アレが“松陽先生”か)」

土方が注意深く見守る中、ほけほけと笑いながら子ども達の訴えを聞いていた松陽は後ろを振り返る。

「銀時、晋助と小太郎を頼みましたよ」

「・・・うん」

トテトテと松陽の後ろから出て来た子どもを見て、土方はギョッと目を瞠った。

「(よ、万事屋!?)」

「晋助~小太郎~やめろってェ」

「ウルセェぞ銀!」

「そうだ!銀時、お前は黙っていろ!!」

間に割って入って止めようとした銀時はすごい剣幕で2人に怒鳴られ、スッと無表情になって告げた。

「・・・・・・泣くぞ。泣くからな?覚悟は良いか?」

うりゅ、と銀時の目が潤む。

「「ああああああっ!!!待て待て待て!泣くな!ケンカはやめる!やめるから泣くなァアアアアッ!!!」」

慌てて銀時を宥め始めた2人を呆然と見やっていた土方の背を誰かがポンポンと叩く。

くるりと振り返った土方はビシリと固まった。

「あー、やっぱり土方さんもこっちに飛ばされてたんですねィ・・・俺達もいつの間にかこっちに飛ばされてやして・・・」

「サドヤロー、駄目ネ。マヨは話を聞いてないアル」

「ひ、土方さん!しっかりしてください!!」

沖田が説明しているのを止めて神楽が呆れたように土方を見やり、慌てて新八が土方を揺する。

「・・・ったく、使えねェヤローでさァ」

「まったくアル」

「アンタらねェッ!!皆が皆アッサリ現状を受け入れられるわきゃないんですよッ!!!」

やれやれと肩を竦めている沖田と神楽(妙に息があっているのは何故だろうか)に、新八は思わずツッコミを入れたのだった。


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