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Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)

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「あー、めんどくせェ・・・なんで俺が土方のヤローを探さなけりゃならないんでィ」

ブツブツと呟きながら林の中の草むらを探す沖田。

「おーい、土方さーん。・・・いたら返事しろってンだよ、クソヤロー」

どれだけ悪たれをついても返答はない。

だが、土方のいつもの見回りのルートをしらみつぶしに探して、最後に残ったのがこの林の中なのだ。

「どこに行っちまったんでィ、土方のヤローは」

近藤に頼まれてしまえば嫌とは言えない。渋々探しに出たがこうも見つからないと段々心配になってくるものだ。

溜息をついてフッと太陽を見上げた時だった。突然目の前が暗くなって沖田の意識はプツリと途絶えた。


***


ツンツン・・・

何かの先でつつかれる感触。

「・・・やめ」

ツンツンツン・・・

徐々にしつこくなってくるその感触に、沖田の意識がだんだんハッキリしてくる。

「やめ・・・ろ」

ツンツンツンツンツンツンツン・・・

「だぁあああ!!やめろって言ってるんでィ!!」

ガバッと起きあがった沖田の目の前には、見慣れたチャイナ服とメガネがいた。

「・・・チャイナに、メガネじゃねーですかィ。旦那が心配して探してましたぜィ」

「あ、あの、沖田さん・・・メガネじゃなくて新八です。そして、周りを見てください・・・」

新八の言葉に首を傾げ、沖田はぐるりと周りを見回して・・・口元を引き攣らせた。

「・・・どういうコトでィ・・・これは」

妙に明るいとは思っていたが、先程までいた林の中ではなくどこかの道端で、しかも見慣れない景色が広がっていた。

「この方達のお知り合いのようですが・・・お困りのようでしたら、一緒に私達の家にいらっしゃいませんか?・・・ああ、申し遅れました、私は吉田松陽と申します」

柔らかな声に視線を上げると、灰茶色の長髪の男性がにこやかにこちらを見ていた。

「俺は沖田総悟でさァ・・・あのー1つ、聞いて良いですかねィ」

「ええ、私に答えられることでしたら」

「ここは、どこですかィ?どうも俺達の知る場所じゃねェんですが」

「ここは萩ですよ」

「・・・萩?こりゃまた、随分と遠くまで来ちまったもんですねィ」

あっさりと自分の置かれた状況を受け入れた沖田に神楽と新八は顔を見合わせる。

それから2人でガッチリと沖田の両腕を抱え、引き摺るようにして松陽達から離れた。

「・・・なんでィ?イキナリ」

引き摺られて不機嫌そうな沖田の問いに神楽が言葉を発する。

「場所だけじゃないアルよ」

「はァ?」

「移動したのは場所だけじゃないんです!時間もなんです!!」

2人が懸命に説明するのを聞いて、沖田はやっと今の状況を把握した。

「つまりは、タイムトラベルってヤツで旦那の過去に来ちまったってことで良いんですかねィ?」

「・・・たぶん、そうだと思います」

「あの人の後ろを見るヨロシ、ちっちゃい銀ちゃんが隠れてるネ」

頷く新八と神楽の示す方を見れば、確かに銀時のちっこい版が松陽の後ろに隠れて警戒心バリバリの様子でこちらを見ていた。

「おぉ~・・・確かに旦那のちっちゃい版でさァ・・・」

思わず感嘆し、沖田は銀時に近づいた。

「俺は沖田総悟といいまさァ、アンタは?」

「・・・坂田銀時」

銀時はそう答えると、サッと松陽の後ろに隠れてしまう。

「・・・すみません、この子は極度の人間不信に陥っていたことがありましてね、未だに知らない相手にはこのような有様で・・・」

「あー、いや、気にしてねーですぜィ。それよりも吉田さんといいましたねィ、向こうのガキ共々お世話になりやす」

沖田は答えて、彼にしては珍しく素直に頭をさげた。

「いえいえ、ウチは私塾をしていましてね。子どもが出入りしますから、その話相手になって頂ければ嬉しいです」

「へェ、塾ですかィ・・・」

松陽と沖田が話しながら歩き始めたので、銀時も松陽に寄り添うようにして歩き出す。

その背中を見つめながら、新八と神楽もゆっくりと歩き始めた。

「・・・ねぇ、神楽ちゃん・・・本当に、僕達ついて行って良いのかな・・・?」

「わからないネ・・・銀ちゃんの昔のコトは知りたいアル。でも、勝手に見ちゃったら銀ちゃん、怒るかもしれないアル」

「・・・そう、だよね」

本当は元の時代に戻れるまでどこかでじっとしていようと思っていた。だが、松陽の笑みに誘われるように世話になることを決めてしまった。

沖田は精力的に松陽から今の状況を聞き出そうとしているが、その沖田に対する銀時の警戒心は並ではない。

「本能でわかってるのかな、沖田さんが幕府側の人間だって」

「・・・サドヤローのことを警戒するなんてさすが銀ちゃんアル。そのまま持ってる刀で斬っちゃえばいいネ!」

「ちょ、それはマズイから!!今は1人でも多く同じ立場の人間で固まってる方が安全だから!!」

「チッ」

「舌打ちしたよぉおお!この人ぉおお!!」

ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた新八と神楽を振り返り、沖田は呆れたように溜息をついた。

「やれやれ・・・こんな状況でもはしゃげるなんざ、旦那はいったいどんな教育してるんですかねィ」

「フフフ、楽しそうですね。子どもは元気が一番ですよ」

ぼやく己の脇で松陽がニコニコとしながら言うので、沖田は苦笑をうかべた。

「吉田さんと話してると、緊張してんのがアホらしくなってきまさァ」

「緊張がずっと続くと疲れますからね、そういう時は一度頭の中を空っぽにしちゃうと良いですよ」

「空っぽねェ・・・」

沖田はニヤリと口元を歪めた。

この際だからこの状況を楽しめばいい。何よりも、知りたいと思っていた掴みどころのないあの“坂田銀時”の過去を覗けるのだから決して悪い状況ではない。



「・・・・・・そうですねィ、悪くないでさァ」

そう頷いた沖田を、チビ銀時はわずかに警戒心を解いて不思議そうに見つめていた。


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