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Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)

このサイトは、コードギアス・NARUTO・銀魂の二次創作サイトです。原作者様とは一切関係ありません。各ページの注意事項をよく読んでから閲覧してください。

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注意
・星ルル
・スザクやC.C.は星刻とルルを暖かく見守ってますw
・ゼロレクイエム回避!
・シリアス&ギャグ
・黒ナナが現れますw
・捏造満載w

以上、同意できる方のみ↓へ・・・







「・・・ゼロレクイエムの為にも・・・心を鬼にして貰いたい。」

 とある村の虐殺に向かう兵士達。“奴隷となれ”とギアスで命じてはあるが、つい、罪悪感から、そんな言葉が出てしまう。

 どうせ、この場にいる者達から情報が漏れることはないのだから、少しくらい良いだろう、と気を緩めてしまったのは、どう考えても、らしくない“うっかり”だった。

『イエス、ユア・マジェスティ!』

 揃って敬礼する兵士達の中で、たった1人、カラン、と仮面をとり落とした兵士がいた。

 ハッとしてルルーシュ達が視線を向ければ、厳しい表情をうかべた黒の騎士団の現総司令が兵士の格好をして、その場に立っていた。

「し・・・星刻・・・!?」

 驚愕で目を見開き、ルルーシュが玉座から立ち上がる。その隣の椅子に座っていたC.C.も呆然とその姿を見つめている。

 そんなルルーシュを守るようにしてスザクが立ち、ロイドは面白そうに、そして、セシルは心配そうに、その様子を見つめる。

「っ、警備の者達は何をしていたんだッ・・・。」

 苛立ったようにそう言って、ルルーシュはじろりと警備の兵を見るが、萎縮してしまった警備の兵は小さく申し訳ございませんと呟くばかり。

「ゼロ“レクイエム”・・・一体誰の為の“レクイエム”なんだ?・・・説明して貰おうか?」

「・・・っ。スザク!!」

「イエス、ユア・マジェスティ!!!」

 バッと駆け出し、スザクが斬りかかると、それを受け流し、逆に星刻が上から刀を押し付けるような形になる。

 力が拮抗している者同士、戦術が同等ならば、戦略が上回った方が勝つ。

「ナイト・オブ・ゼロ・・・“ゼロの騎士”か。その名も“ゼロレクイエム”に関係しているのか?」

 ニッと笑った星刻の言葉に、ギクッとスザクの肩が跳ねる。

「スザク!」

 ルルーシュが名を呼ぶ。それだけで、スザクが動揺を鎮めたのを見て、星刻は更に揺さぶりをかけた。

「枢木スザク、お前は・・・“ゼロレクイエム”という計画に、納得しているのか?」

 その言葉に、スザクが酷く動揺した。一瞬、心が読まれたのか、と思ってしまったのだ。

 彼が死んで完了する“ゼロレクイエム”に納得なんてしているわけがない。だが、それしか方法が無いのなら。彼の優秀な頭で考えて、これが一番良い方法だと言うならば。それを実行しよう。それが、彼の剣になることを選んだ自分の役目だと、そう覚悟を決めたのだ。

「ふ、納得していないようだな!!」

 星刻がスザクの剣を弾き飛ばし、喉元に刀を突き付ける。

「・・・っ。」

 悔しそうに歪むスザクの表情。それを確認し、星刻はルルーシュの方へ視線を向ける。

「・・・スザク・・・。」

 己の騎士の敗北にショックを受けているのか、それとも、スザクが実は計画に納得していなかったというのがショックだったのか。呆然とスザクを見つめる彼の瞳が自分を映していないことに、星刻は苛立ちを覚える。

「ルルーシュ。・・・いや、ゼロ、答えろ。“ゼロレクイエム”とは何だ。」

 声を発し、彼の注意を自分に向けようとする。

「・・・答える必要性を感じないな。・・・それに、黎星刻、不法入国及び皇宮への不法侵入・・・立派な犯罪だぞ。」

 ルルーシュの視線はこちらに向いたが、やはりというか、星刻の求める答えは戻ってこない。だが、その程度で諦める星刻では無い。

「騎士団の幹部達の話だけでは納得し難い。奇跡の藤堂までいて、あそこまであっさりとシュナイゼルの言葉に惑わされるとは思ってもいなかった。・・・随分、一方的だった様だが?」

「・・・。」

 ルルーシュは目を細める。が、何かを答える様子は見せない。

「お前はとても優秀だ。・・・あの場で、反論したところで、労力の無駄、と判断したのではないか?・・・それに、その時、実妹であるナナリー総督が亡くなっているな?随分と必死に探すように命じていたが。」

「・・・ふ、ナナリーがルルーシュの実妹というのは調べればわかることだな。・・・先程から質問の的が絞られていないようだが、星刻、お前は何が訊きたいんだ?」

 黙り込んだルルーシュの代わりに、C.C.が冷笑をうかべ、そう訊き返してくる。そう言えば、彼女も政治の話が出来るのだと星刻は思い出した。

「私は・・・ただ、真実が知りたい。・・・ゼロとしての君の姿を短い間だったが見てきた。が、幹部達の言うように、駒として扱っていたのなら、矛盾があるように思える。・・・最たる例が、処刑直前に救い出した幹部達の件、そして、紅月君の件だ。」

 思わず熱が入り、スザクへ向けていた注意が逸れる。それを見逃す彼ではなく、星刻を拘束しようと動く。

「スザクッ・・・もう、いい。」

 ルルーシュからのストップに、スザクは星刻へ繰り出そうとした蹴りをすんでで止めた。それに驚いたのは、星刻だった。大人しく従ったスザクにもだが、ルルーシュがスザクの行動を止めるとは思ってもいなかった為だ。

「ルルーシュ、なぜ・・・。」

「なぜ、とはこっちのセリフだ。・・・1人で乗り込んで来たのか?騎士団はどうした。」

 呆れた様子のルルーシュに、星刻は苦笑をうかべた。

「1人で来た。・・・騎士団は・・・あのままあそこにいたら、気分が悪くなりそうだったんでな。」

「放り出して来たのか?・・・天子もいるのに。」

「天子様には神楽耶様も洪も香凛もいる。・・・それよりも、私の問いに答えてくれる気になったのか?」

 挑む様に視線を送れば、ルルーシュは肩を竦めた。

「・・・ここまで入り込んだことに敬意を表しよう。・・・質問は的を絞れ。」

「・・・騎士団を作り、反逆を起こしたのは、ゲームか?」

 まずは、幹部達が言っていたことの確認。あの私刑の時は肯定したというが。

「・・・お前は、ゲームに命をかけるのか?」

 ルルーシュは明確には答えなかったが、星刻にはそれで充分に伝わった。思わず目を細め、自分の考えが間違っていなかった、と呟く。

「・・・では、なぜ、敵であった枢木スザクと手を組んでまで皇帝となった?独裁を狙っているわけでもあるまい。」

「世界の未来の為だ。」

 一言で済ませてしまったその答えの中に、どれだけの想いが詰まっているのか、星刻に推し量ることはできなかった。が、“未来”という言葉を口にした時、一瞬、ルルーシュが何かに耐える様な表情をうかべたのが気になった。だから、カマをかける。

「・・・“ゼロレクイエム”・・・ゼロ、つまり、お前の為の鎮魂歌か?」

 その言葉に、表情を変えたのは、ルルーシュではなく、スザクとC.C.、そして、ルルーシュの傍に控えていた2人だ。

 ルルーシュにはカマかけだと気付かれたらしいが、周りの反応だけで、それが真実であることがわかる。

「・・・死ぬつもりか。・・・世界の未来の為に。」

 ひたと見据えれば、ルルーシュが諦めたように溜息をついた。

「・・・お前達。」

「ごめん、ルルーシュ。」

「すまん、つい。」

「す~み~ま~せぇん。」

「申し訳ありません、陛下。」

 それぞれが謝罪を口にするが、どうやら全員が確信犯らしい。反省の色が全く見えない。

「・・・はぁ。・・・ここまで知られてしまっては、お前を騎士団に帰すわけにはいかないな。計画もお前がいないことを想定して練りなおさなければ。・・・悪いが、軟禁させて貰う。」

 ルルーシュも全員が確信犯であることに気づいたらしく、呆れたように彼等を見つめてから、星刻に視線を向けた。

「・・・その必要はない。黒の騎士団に帰るつもりはないからな。・・・ついでに、計画の全容も話して貰おうか。・・・私は認めないぞ、お前が死を迎えなければならないような計画など。そんな計画で平和になった世界に、存在する価値など無い。」

 星刻がそう言えば、ルルーシュは絶句して目を見開き、スザクとC.C.が何やら目くばせをした。

「“ゼロレクイエム”の全容の説明は場所を変えよう。ここじゃ、セキュリティが甘すぎる。」

 スザクがそう言って、謁見の間の右前方にある扉を指す。

「スザク!何を勝手に!!」

 慌てるルルーシュに、スザクが肩を竦めた。

「俺が納得してないのはわかっただろ?・・・大人しく、星刻に話してしまいなよ。彼がいれば、できなかったこともできるんじゃないのか?・・・ニーナの説得は俺とロイドさんに任せて。」

「そうだぞ、星刻はお前のお気に入りだろ?せっかく協力してくれると言ってるんだ。精々こき使ってやれば良い。」

 C.C.までもがニヤニヤと笑いながら言うので、ルルーシュはとうとう諦めた。

「・・・・・・せっかく、ここまで悪逆非道を尽くしてきたというのに・・・。」

「あ、兵士達は止めとこうね。・・・貴族の討伐は良いけど、村の虐殺はマズイから。」

 晴々とした笑みをうかべたスザクに、ルルーシュは肩を落とす。

「・・・スザク・・・;」

「ユフィやナナリーの望んだ優しい世界を作る。・・・それが俺とルルーシュとの約束だろ?だから、君が死なずに済むなら、それが一番良い。・・・だって、ユフィもナナリーも、君が憎まれることなんて、望んでなかっただろうから。」

 すっかり計画を変更する気満々のスザクに、ルルーシュは深く深く溜め息をついたのだった。





 2週間後・某所


 ある日を境に、ルルーシュの急いでいる、と評された改革がぱったりと止んだ。毎日のように、どこどこの反抗した貴族が討伐された、だの、どこぞの村が一つ潰れただの、というニュースが舞い込んできたのに、今は、全くといって良いほど、メディアの前に姿を現していない。

「まるで、嵐の前の静けさ、だねぇ。」

 ぼそりと呟いたシュナイゼルに、コーネリアは首を傾げた。

「義兄上?」

「・・・いや・・・向こうに予期せぬことが起こった、のかな?明らかに矛盾がありすぎる。」

 シュナイゼルは不思議そうにしているコーネリアに気付かず、ブツブツと現状を確認していた。こんな義兄の様子は見たこともなかったために、コーネリアは戸惑い、同じように戸惑った様子のカノンに視線を向ける。

「・・・殿下、少し、休憩をなさっては?」

「・・・ん?・・・ああ、そうだね。」

 そっと、カノンが肩を揺すれば、ようやく意識を現実に向けたようで、シュナイゼルは苦笑をうかべた。

「・・・ルルーシュらしくないと思わないかい?」

「らしくない、とは?」

「ああ、ルルーシュの行動だよ。・・・悪逆非道を行っている、とあれだけアピールしていたのに、急にぱったりと止めてしまって・・・どう考えても、途中で諦めたとしか思えないんだよ。何があったのかはわからないけれど、このままでは、ルルーシュに対して宣戦布告は難しい・・・と悩んでいる私も、らしくないが。」

「・・・シュナイゼル兄様・・・。」

 車椅子に乗ったナナリーが近づいてくると、シュナイゼルはフッと笑みをうかべた。

 ルルーシュは恐らく、ナナリーがトウキョウ租界でフレイヤによって亡くなっていると思っていることだろう。ならば、彼女の存在で、ボロを出す可能性もあるのでは、と考える。

「・・・ナナリー、少し、手伝ってくれないかな?」

「・・・・・・私を・・・お兄様への脅しの道具にするおつもりですか?」

 ことり、と首を傾げたナナリーの言葉に、シュナイゼルは一瞬、ギョッとする。が、表情にはその動揺をおくびにも出さず、苦笑をうかべた。

「脅しだなんて、人聞きの悪い。」

「・・・そ、そうだぞ、ナナリー。いきなり何を言い出すんだ。」

 呆然としていたコーネリアも慌ててナナリーの手を取って、言い聞かせるように言う。

「義兄上が、お前を道具にするわけがないだろう?」

「コゥ姉様こそ、何を仰っているんですか。・・・シュナイゼル兄様は、政治面ではとても厳しい方です。仮令、兄弟であろうとも、必要ならば、容赦なく使い、切り捨てる。・・・ユフィ姉様のことだって、そうやって、事実上、責任を押し付けて切り捨てたじゃありませんか。・・・操られたとか、陰謀だとか、そうやって庇うことだってできたはずなのに。・・・違いますか?・・・ユフィ姉様に全てを押し付けた方が、簡単に事態を収拾できると判断したのではありませんか?」

 シュナイゼルは舌を巻いた。さすが、“閃光”の娘であり、“ゼロ”であったルルーシュの実妹なだけはある。ただのお飾りにはなりえない、その洞察力は賛嘆すべきものだ。

 お姫様然としていたユーフェミアとは違う。カノンが以前、そう言っていたことを思い出し、シュナイゼルはカノンを見る。

 そして、ナナリーを見つめ、ほんの少し、怯えた様子を見せるカノンに、シュナイゼルは訝しんだ。

「・・・カノン?・・・どうしたんだい?」

「・・・いえ・・・。」

 首を振るカノンの顔色が悪い。が、痛いほどの視線を感じて、シュナイゼルは前を向き、絶句した。

「・・・シュナイゼル兄様、私に隠しごとがありますね?・・・随分と多くを知ってらっしゃるようですけれど、私やコゥ姉様に教えて下さらないのは、何故ですか?・・・お兄様と対するのは私やコゥ姉様も一緒なのに。」

 ひた、とその薄い紫の瞳を向けられて、シュナイゼルは硬直してしまった。

 威圧感がありすぎる。まるで、かつての父を目の前にしたような。そんな雰囲気。

「・・・な、ナナリー・・・目が・・・。」

 コーネリアが驚愕に震えながら、指摘する。そう。先程から、ナナリーの目が開いているのだ。そこにツッコミを入れられずにいた、シュナイゼルやカノンはコーネリアの勇気を称賛したくなった。

「ええ、暫く前に見えるようになりました。・・・どうしても自分の目で、確認したかったんです。」

 いつまでも、甘えているわけにはいきませんから。そう言ったナナリーは、にっこりと笑い、こう、のたまった。

「というわけで、シュナイゼル兄様?ぐだぐだ悩んでないで、さっさと、お兄様と連絡をとれ。」

 可愛らしい外見と声なのに、絶対的に従わなければ、死よりも恐ろしいことになると思わされた。と、某参謀は、後に語ったという。





 皇宮


「陛下、皇族専用チャンネルに通信が・・・!」

 部屋に飛び込んできたオペレーターに注意することもなく、ルルーシュは首を傾げた。

「・・・皇族専用チャンネルを知っているということは・・・義兄上か?」

「今、この時にか?・・・政治に優れているシュナイゼルらしからぬ行動だな。」

 ルルーシュの隣に座っていた星刻が呟く。

「・・・もしかして、方向転換したことに気づいて、探りを入れに来たとか?」

 スザクがパシン、と持っていた書類を指ではじく。

 たった今、方向転換についての話し合いが終了したばかりだ。元々、2ヶ月かけて細かいところまで決めていた計画なのだから、この時点での変更はかなりきつかった。

 が、星刻が味方になって、ルルーシュを死なせないと言い張り、それに、他の者達まで便乗してしまったものだから、多数決で負けてしまったルルーシュは渋々、計画の変更を余儀なくされたのだ。

「・・・まさか。だとしたら、探りを入れられるだけのカードが向こうに揃っているということだぞ?」

 ルルーシュがスザクにそう言えば、スザクもあっさりと頷いた。

「うん、そうだよね。・・・黒の騎士団に君を裏切らせた時も、かなりのカードが手元にあったからこそ、動いたんだろうし。」

「タイミングも良かったな。フレイヤの一件でのショックで、俺も、黒の騎士団の幹部達も、まともな判断力を失っていたし。」

「・・・私も、騎士団にはいなかったしな。」

 あの時、星刻があの場にいれば、もう少し、結果は違っていただろうと誰もが思った。が、過ぎたことを言っても仕方がない。

「それはそれ、今は、シュナイゼル殿下が何を考えてこちらに接触しようとしているかだよ。」

「・・・話してみればわかるだろう・・・心を揺らすなよ、ルルーシュ。」

 スザクが言えば、星刻も頷き、ルルーシュの肩に手を置く。

「・・・わかっている。大丈夫だ、星刻。」

 目元を和ませて笑むルルーシュに、スザク達はホッとする。覚悟を決めたルルーシュを誰も止められなかった。そんな、悲壮な決意を胸にしたルルーシュの笑みは、悲しそうなものばかり。

 だから、絶対に死なせないと、あがいて見せた星刻に感謝すらしているのだ。もちろん、皆のいる所で、甘い空気を出すのは勘弁願いたいのだが。

「・・・じゃあ、こちらの部屋に回線をつないでくれ。」

 スザクがオペレーターに命じると、オペレーターは敬礼し、オペレータールームにいる同僚に連絡を取る。

 暫くして、回線がつながり、モニターにシュナイゼルが映る。ルルーシュはやや緊張した面持ちでその顔を見つめ、おや、と首を傾げた。

「・・・随分・・・お疲れのようですが?」

 そう、しばらく見ない間に、シュナイゼルがやつれたように思うのは、気のせいだろうか?

 3、4ヵ月潜伏していたからって、こんなにやつれるような、やわな人物ではないと知っているだけに、訝しんでしまう。

『・・・回線をつなぐのに、随分とかかったようだねぇ・・・せっかく、わかりやすく皇族専用チャンネルを使ったのに・・・。』

 厭味、だろうか?それにしては、いつものキレが無い?と内心首を傾げつつ、ルルーシュは余裕の笑みをうかべた。

「貴方らしくもなく、こんな時期にこちらに接触を図ろうとしているのですから、何かあると疑って当然でしょう?」

『それもそうだね・・・うん、もちろん、何かあるんだけれどねぇ・・・。』

 シュナイゼルが心底疲れ切ったようにそう肯定するので、ルルーシュ達は思わず顔を見合せた。

「な、何があったんだ、一体。」

 戸惑った様子のルルーシュに、星刻も首を傾げる。

「・・・予想しえない、何かがあったんだろうな。・・・シュナイゼル、我等も暇ではない。用がないのなら、切らせてもらうが。」

『・・・ああ、待って。切らないでおくれ、ルルーシュ。』

 星刻の言葉に、ハッとして、シュナイゼルはすがるような視線をルルーシュに向けた。

「・・・・・・あ、義兄上?」

 思わず、ルルーシュが素の表情で首を傾げれば、シュナイゼルが泣きそうな表情をうかべた。

『ルルーシュ、助けて欲しいんだけれど・・・ひっ!?』

『いつまで私のお兄様と話しているんですか、エセ紳士。・・・さっさと私に代わりやがれ。』

 なんだか、聞き覚えのある声がする、とルルーシュとスザクが同時に思ったが、すぐにその考えを打ち消す。彼女は死んだハズだし、それに、あんな言葉遣いじゃない。

 が。

 そそくさと退いたシュナイゼルの代わりに画面に映ったその少女に、その場の全員が息を呑んだ。

「「「「「なっ・・・。」」」」」

『こんにちは、お兄様v・・・今まで、生きていること、お知らせできなくてすみませんでした。』

 ニコニコと笑い、実兄よりも薄い紫の瞳を細める少女に、イレギュラーに弱いルルーシュは完全に固まってしまった。

「な・・・ナナリー・・・?」

 スザクがおそるおそる訊ねると、少女はこくりと頷いた。

『はい。・・・っていうか、スザクさん?私とお兄様を引き離した張本人が、お兄様と一緒にいるなんて、マジふざけんな、なんですけど?』

「・・・・・・・・・も、申し訳ございません。(思い出したッ!!ナナリーはこういう子だったぁッ!!!)」

 冷や汗を滝のように流しながら謝るスザクに、星刻もC.C.も何となく状況を理解した。

「ナナリー・・・お前・・・。」

『その声は、C.C.さんですね?やっぱりお兄様の傍にいらしたんですか。・・・羨ましいです。将来まで誓い合っているんですものね。』

 悲しそうに言っているが、そのナナリーの目には羨ましいを通り越して、殺気が宿っている気がする。というわけで、慌てたC.C.は首をブンブンと振った。

「ち、違うぞナナリー!それは言葉のあやだ!・・・本当にルルーシュと将来を誓い合ってるのは、こいつだ!!」

 そう言って星刻を指差し、矛先を自分から星刻に移す。

『まぁ・・・一体どちらの馬の骨でしょう?』

「・・・黎星刻という。」

 スケープゴートにされた星刻は、恨めしげにC.C.を見ながらも“将来を誓い合った”というフレーズには文句はないので、大人しく名乗った。

『星刻さん?・・・黒の騎士団の総司令の?』

 どうやら、そういった情報はきちんと貰っているらしい。

「ああ、もう、騎士団からは抜けたが。・・・で、先程から気になっていたのだが、貴女は目が見えないのではなかったのか?」

『ええ。でも精神的なものでしたので。・・・いつまでもお兄様に甘えるわけにはいきませんから、根性で目を見えるようにしました。』


― 根性って・・・、この外見に似合わねー・・・っていうか、皇帝のギアスって根性で解けるものなんだ。


 そう、皆が思っているのを知ってか知らずか、ナナリーは儚げな笑みをうかべた。

『どうしても、自分の目で確認して、お兄様の真実を知りたかったのです。』

「な、ナナリー・・・。」

 ようやく現実に戻って来たルルーシュが、ナナリーに縋るような視線を向ける。

『こうなった事情を教えて頂けますね、お兄様。・・・きちんと、その時々でお兄様が考えていたことも、全部。』

「だが・・・。」

『ナナリーは、仲間外れですか・・・?』

 渋るルルーシュに、ナナリーは視線を伏せて、口元を押さえる。

「っ!・・・そんなことはない!!・・・でも・・・。」

 ルルーシュは慌てて否定し、それでも渋る様子を見せると、今度はナナリーはキッとルルーシュを睨みつけた。

『ちゃんと教えて下さらないと、お兄様の恥ずかしい写真をネット公開しちゃいます!!』

「な、ナナリーッ!?」

 ルルーシュがギョッとすると、ナナリーは続ける。

『・・・良いんですか、お兄様。アッシュフォード学園での男女逆転祭りパートⅡの写真ですよ。スザクさんとのツーショットを咲世子さんにお願いして隠し撮りして頂いたものです。』

「だ・・・男女、逆転祭り・・・。」

 愕然とするルルーシュ。

「あ~・・・撮られてたんだ。アレ・・・。」

 から笑いをするスザクに、星刻から説明を求める視線が向けられるが、ルルーシュの精神的安寧の為にも、それを漏らすわけにはいかない。

「降参だ、ナナリー。・・・ちゃんと説明するから、そっちで怯えてる人達も連れて、一度、皇宮に来て貰えるかな?」

 スザクが交渉を始めると、ナナリーはあっさりと頷いた。

『はい。もちろんです。・・・ああ、そちらの周りをうろついているお父様の騎士だった人達も、とりあえず回収してから行きますね。』

「・・・ゼヒ、オネガイシマス。」

 元同僚達を哀れに思いながらスザクは回線を閉じた。

「あー・・・黒いナナリー、久しぶりに見たから、びっくりしちゃったよ。」

「あれが素か?」

 星刻の問いに、スザクは神妙な顔で頷いた。

「素、というか、完全に怒ってるんだと思う。ナナリーを怒らせたら・・・死ぬより辛い目にあうこと間違いなしだ。」

「・・・ルルーシュは、ショックを受けているようなんだが・・・。」

 星刻が心配そうにルルーシュを見つめると、スザクはああ、と苦笑を洩らした。

「だって、ルルーシュは免疫ないと思う。・・・ルルーシュの前で黒くなったこと、今までなかったから。」

 ああ、なるほど、と皆が納得したところで、星刻がルルーシュを揺する。

「おい、君の妹がもうすぐこちらに来るんだ。しっかりしろ。」

「な・・・ナナリーが・・・。」

 星刻を視界に入れたルルーシュは、星刻にすがるようにして呻く。

 ああ、相当ショックだったんだな、と星刻が思っていると、ルルーシュは酷く残念そうにボヤいた。

「俺がいない間にしっかりしてしまって・・・もう、二度と、甘やかしてやれないじゃないか!!!」





 そっちかよ!とその場の全員からつっこみが入るまで、ものの数秒もかからなかったという。



おしまい


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