Refused Reality(元・現実を拒絶した夢の中)
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注意
・もはやパラレル
・桐原公は良い人!
・ブリタニアと日本は開戦していません
・ナナちゃんは本国にて、治療中
・未来に希望があるという設定なので、父上様は先制攻撃しません
・捏造満載
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
ブリタニアからやって来た皇子を一言で表すならば、無気力だった。
母をテロで亡くし、妹は未だ怪我の治療中で本国に残っており、そんな状況で日本に停戦の為の人質として送られてきた皇子、ルルーシュ。
初対面、ルルーシュはやたらと落ち着いていた。首相である枢木や、己の前であっても、気を張るどころが、どこか投げやりに、問われるままに質問に答えた。
ルルーシュに対する評価は、全く危険なし。監視も緩く、土蔵を住居として与え、行動は自由。名ばかりの護衛が付き、死なない程度に守る。
「・・・枢木よ。」
桐原は当初からの考えを口にする。
「あの皇子の身柄、ワシに任せてくれんか。」
「・・・桐原翁、ルルーシュ皇子は、枢木家が預かるという話で向こうとも・・・。」
「知っておるぞ・・・おぬしの元に、ブリタニアの貴族どもから皇子を殺せという依頼が来ているのだろう?」
「ふ・・・知っておられたか。・・・私が奴らの言いなりになるとでも思っておいでか?」
不敵な笑みをうかべる枢木首相に、桐原は肩を竦めた。
「・・・思ってはおらんよ。ただ、ワシなりに思うことがある、とでも言っておこうか。」
「・・・ふむ。・・・では、ご自由に。」
「すまぬの。」
「ただし・・・定期的に連絡はもらいたい。・・・よろしいか?」
それだ条件だと言われれば、桐原は頷くしかなかった。
そして、ルルーシュを迎えに土蔵へと向かう。そこには、ルルーシュと枢木首相の息子スザクがいた。
「・・・おい、いつまでもそんなんだから、あんな奴らにいじめられるんだろ!?」
ルルーシュが所々汚れているのは、近所の悪ガキにいじめられたかららしい、とスザクの言葉から察する。
「・・・我慢すれば良いだけの話だ。抵抗すればするだけ、余計に生意気だなどと言われて痛い思いをする。」
どこか達観したようなもの言いに、さすがのスザクも何も言えずに固まってしまう。
「・・・それで、何か御用ですか?」
そんなスザクを何の感情も無い目で見やってから、ルルーシュは視線をこちらに向けてそう訊いた。
ギョッとするスザクの脇に立ち、桐原は決定事項を告げた。
「これから、この土蔵を引き払い、ワシの屋敷に来てもらう。・・・良いな?」
「・・・わかりました。」
素直に頷いたルルーシュに、スザクは眉を顰め、それから、桐原を見る。
「あの・・・。」
「お前の父には許可を得た・・・心配無用じゃ。」
「・・・あ・・・はい。」
戸惑ったように返事をするスザクを後目に、ルルーシュはさっさと荷物をまとめていた。もともと持ってきた荷が少なかったのか、ものの数分でまとめ終わってしまう。
「・・・準備できました。」
「うむ。・・・では、行こうか。」
「はい。・・・じゃあ、スザク、さようなら。」
「あ・・・ああ。」
あっさりとした別れの言葉に、ポカンとしたまま見送るスザクを見やって、桐原は溜め息をついた。
「友人ではなかったのか?」
「・・・こんな状況でなければ、そういうこともできたと思いますが。」
向けられる視線はやはり何の感情もこもってはおらず、ルルーシュ自身が感情をコントロールできないがために無理やり押し込めていることが窺えた。
それから、車に乗り小一時間、桐原の屋敷に着いたルルーシュは開口一発、桐原を驚かせてくれた。
「何の思惑があってのことかはわかりませんが、お世話になる以上はそれなりに働かせて頂きます。・・・ところで、お台所はどこですか?」
「・・・台所?」
「はい。料理をしようと思いまして。」
「・・・りょ、料理をするじゃと!?」
驚く桐原に、首を傾げてみせ、ルルーシュは肯定する。
「はい。枢木家の土蔵で暮らしていた時も、自分で食事を作っていましたよ。毒殺なんてしょっちゅうある環境で育っているもので、知らない人間が作った食事はなかなか喉に通らないんです。」
「・・・そ、そうか。・・・だ、台所は、その、奥にある。」
「わかりました。・・・ああ、食材は自由に使っても?」
「か、かまわんよ。」
「ありがとうございます。」
礼もそこそこに、さっさと台所で行ってしまったルルーシュの背を呆然と見送った後、ようやく我に返った桐原が台所に駆け込む。
「る、ルルーシュ皇子!」
まさか、あんな大国の皇子に食事を作らせるわけにはいかないと慌てて止めようとするが、台所に入ってその料理をする様子を目に入れた瞬間、桐原は固まってしまった。
なぜ、これだけの使用人がいながら、皇子の行動を止めないのだと憤りたいが、その慣れた手つきに、思わず感心してしまっているというか、むしろ、このまま見ていたいと思ってしまう程、ルルーシュは楽しそうに料理を作っているのだ。
「・・・何を作っておるのだ?」
止めることは諦め、その手元を覗き込むと、ルルーシュはあっさりと答えた。
「お口に合うかはわかりませんが、ブリタニアでよく食されるものです。あと、念のため、和食も。僕が作れるものなど、たかが知れていますけれど。」
そう言いながらも、とても良い手つきで作っているので、桐原は同じく呆然と見ていた食事係の方を向く。
「・・・手を・・・貸す必要がありそうか?」
「・・・い、いえ。その・・・慣れておられるようなので・・・私どもが手を出すと、逆にお邪魔になるのではないかと・・・。」
ふるふると首を横に振る食事係に、そうか、と呟き、桐原はルルーシュの手元を見つめながら、言った。
「・・・必要な物があれば、この者達に言いつけると良い。・・・ワシは・・・書斎におる。」
「わかりました。」
こくんと頷く様子は年相応で大変可愛らしいので、思わず口元が緩みそうになる。が、そこは使用人達の手前、何とかこらえて、台所を出た。
「・・・皇子手ずからの料理か・・・悪くないのぅ。」
そして、食事ができたと使用人が顔を引き攣らせつつ呼びに来たことに一抹の不安を抱え、桐原は食堂へ向かう。
「・・・どのようなものでも、食べきるのが礼儀じゃろうな。」
ぼそり、と呟き、桐原は食堂の扉を開けた。
― ハッキリと言おう。驚いたとも!
桐原は心の中で叫ぶ。それ程に、見た目も匂いも完璧に美味しそうな料理が山のように並んでいたのだ。
本当にこの料理をこの皇子が作ったのだろうかと思う。
「色々と作ってみたんです。お口に合えば良いんですが。」
「(・・・どこの新妻じゃ?)・・・そうか。」
淡々と言いながらもほんのりと頬を赤く染めるルルーシュに、クラリとくるが、桐原は頷いて席に着いた。
「・・・いただきます。」
「どうぞ、召しあがれ。」
まずは、ブリタニアでよく食べられているという料理に箸をつけ、口に運ぶ。その瞬間、かちん、と固まった。
「・・・あの、お口に合いませんか・・・?」
心配そうなルルーシュの表情に、桐原はハッと我に返り、フルフルと首を振った。
「いや、このようにうまい料理は、今まで食べたことがない。・・・皇子は料理を習っておったのか?」
「いえ、最初は見よう見まねで・・・後は、本を見たりして・・・。」
「そうか。・・・いや、本当にうまい。これなら、毎日でも食べたいくらいだ。」
「じゃあ、毎日作ります。」
今、この皇子はなんと言った?
桐原はまじまじとルルーシュを見やる。
「・・・ああ、いや・・・皇子に作らせるわけには・・・。」
「いえ。作らさせて下さい。・・・先程も言いましたが、毒殺のまかり通る場所で暮らしていたせいか、知らない人間が作った料理は喉に通らないんです。」
それが、真実だと知っている桐原は、説得を早々に諦めた。
「・・・わかった。では、食事は皇子にお任せすることにしよう。・・・その代わりと言ってはなんだが・・・ワシの将棋の相手をしておくれ。」
「・・・ショウギ・・・ですか?」
「ああ。・・・一種の戦略ゲームのようなものでな、チェスと似たようなものじゃ。」
「チェスなら得意なので・・・やり方さえ教えていただければ、何とかお相手できると思います。」
生真面目に答えるルルーシュが可愛らしく、桐原は思わずその頭を撫でた。
「そうかそうか、楽しみじゃのう。」
「・・・っ///」
目を丸くしたルルーシュに、桐原はクツクツと笑う。
「くっくっ・・・これは、ワシに気を許して貰っていると判断しても良いということかな?」
「・・・っ、それは・・・。」
「ふむ。誰かから情報を仕入れておいでか?・・・例えば、アッシュフォードとか。」
桐原の言葉に、ルルーシュは、今度こそ絶句する。まさにその通りだったからだ。日本に送られる際、アッシュフォードが色々と現地調査をし、ルルーシュにその調査結果を報告していたのだ。
「・・・図星じゃの。こそこそと嗅ぎまわっておる者がいたからどうしたものかと思っておったが、ブリタニア皇帝から皇子を送ると言われた時に合点がいったのじゃよ。」
「・・・アッシュフォードの動きはバレていたということですね。・・・ルーベンが落ち込みそうです。」
「いやいや、ワシのSPの中に特に優秀な者がおってな・・・その者が報告してきたのじゃよ。他の者は全く気付いておらんかった。」
「そうなのですか・・・。ぜひ、紹介していただきたいですね。」
「今は別の任務にあたらせておる。・・・後ほど紹介することにしよう。」
ニコニコと言う桐原に、ルルーシュもようやくはにかんだ笑みを見せる。
「ほれ、皇子も食事はまだじゃろう?一緒に食べんかの?」
「・・・そうですね。」
頷くルルーシュを見て、ニコニコと頷く桐原を見た腹心の部下の一人が後に、まるで孫を見る祖父のようだったと零したとか・・・。
7年後、ルルーシュは未だに桐原の家にいた。本国から何度も帰れとの連絡があったものの、頑として戻らなかったのだ。
「・・・俺が帰れば、ブリタニアはすぐに日本と開戦するでしょうしね。・・・母さんを守ってくれなかった父上へのささやかな意趣返しですよ。」
はん、と鼻で笑う様子を見て、桐原はクツクツと笑う。
「随分と嫌っておるな・・・うっ、そ、そこは、ま、待った。」
いきなり慌て始めた桐原を見やり、ルルーシュはしれっと答える。
「・・・待ったナシですよ。」
「そ、そこをなんとか!!」
自身を拝み始めた桐原に、ルルーシュは溜め息をつく。
「しょうがないですね。じゃあ、どうぞ?」
そう、ルルーシュと桐原は、縁側で将棋を指しながら話していた。だが、ルルーシュの打った一手が、あまりにも良い手だったので、話の途中で桐原は待ったをかけて拝み始めてしまったというわけだ。
「桐原さん、待ったナシで打つってさっき言ってたのに。」
クスクスと笑うルルーシュに、桐原は呻く。
「うう・・・コツを掴んだら、途端に強くなりおって!」
「最初に言ったじゃないですか、チェスは得意ですって。似たようなゲームなら、コツさえ掴んでしまえば、俺の方が上手になるのは決まりきっていましたよ。」
「・・・強かになりおって・・・全く、誰に似たのじゃ。」
溜息をついた桐原の前に、お茶が差し出される。
「・・・失礼かと存じますが、桐原公に倣われたのではないかと。」
「さ、咲世子!!・・・な、何を言いおるか!!」
「ふふ、大正解ですよ、咲世子さん。」
有能なSPであると同時に、使用人としても桐原に仕えていた咲世子。その彼女をルルーシュの側に置き、身の回りの世話を任せるようになって7年。すっかり姉弟のように仲良くなった2人を敵に回すと、桐原が負けるのは目に見えている。
そして、ルルーシュが咲世子の言葉を肯定したものだから、負けを認めるしかない桐原はがっくりと肩を落とした。
「・・・小さな頃はあんなに可愛らしかったのに・・・。」
「はいはい・・・王手!」
「あぁ!!ま、待った!!」
「またですか?・・・大人しく負けを認めたらどうです?ここでしのいでも、先が無いと思いますけど。」
「ううう・・・負けじゃ負けじゃ!!もう良いわい!」
降参するポーズをとり、桐原はがぶりとお茶を飲む。
「じゃあ、今日は買い物につきあって頂きますからね?」
「それでは、お二人の護衛は私が務めさせていただきます。」
湯呑に口をつけていじけていた己を後目に、さっさと立ち上がったルルーシュと、それに従う咲世子に、桐原は溜め息をついた。
「・・・年長者は敬うものじゃぞ・・・。」
「賭け将棋を持ち出したのは、桐原さんだったと記憶してますが?」
ニヤリと笑うルルーシュに、深々と溜息をつき、桐原は立ち上がる。
「やれやれ、悪いことを教えるものではないな・・・。」
「ご自覚がおありでしたか、桐原公。」
「これ!咲世子!!」
「・・・ほら、行きますよ、桐原さん。咲世子さんの厭味の一つくらい受け流すくらいの度量はあるでしょう?」
絶対に、ルルーシュは咲世子に似たのだ、と桐原は思うが、それを口に出せば、2倍3倍になって帰ってくるのは必至なので、口は噤んだままだ。
「・・・むぅ・・・。」
「その代り、今日は、腕によりをかけて、桐原さんの好物を作りますからね。」
「本当か?それは楽しみじゃ。」
途端に機嫌を良くした桐原を見て、互いに視線を合わせたルルーシュと咲世子は、クスクスと笑い合う。
この緊張関係がずっと続くのか、それとも、ブリタニア側がこのまま諦めるのか、それは、神のみぞ知ることなのかもしれない。
だが、ここにあるのは、確かに、日本とブリタニアが手をとった優しい世界の縮図だった。
― 願わくば・・・
桐原は思わずにはいられなかった。
― この時が永遠に続きますように、と。
おしまい
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・もはやパラレル
・桐原公は良い人!
・ブリタニアと日本は開戦していません
・ナナちゃんは本国にて、治療中
・未来に希望があるという設定なので、父上様は先制攻撃しません
・捏造満載
以上、同意できる方のみ↓へ・・・
ブリタニアからやって来た皇子を一言で表すならば、無気力だった。
母をテロで亡くし、妹は未だ怪我の治療中で本国に残っており、そんな状況で日本に停戦の為の人質として送られてきた皇子、ルルーシュ。
初対面、ルルーシュはやたらと落ち着いていた。首相である枢木や、己の前であっても、気を張るどころが、どこか投げやりに、問われるままに質問に答えた。
ルルーシュに対する評価は、全く危険なし。監視も緩く、土蔵を住居として与え、行動は自由。名ばかりの護衛が付き、死なない程度に守る。
「・・・枢木よ。」
桐原は当初からの考えを口にする。
「あの皇子の身柄、ワシに任せてくれんか。」
「・・・桐原翁、ルルーシュ皇子は、枢木家が預かるという話で向こうとも・・・。」
「知っておるぞ・・・おぬしの元に、ブリタニアの貴族どもから皇子を殺せという依頼が来ているのだろう?」
「ふ・・・知っておられたか。・・・私が奴らの言いなりになるとでも思っておいでか?」
不敵な笑みをうかべる枢木首相に、桐原は肩を竦めた。
「・・・思ってはおらんよ。ただ、ワシなりに思うことがある、とでも言っておこうか。」
「・・・ふむ。・・・では、ご自由に。」
「すまぬの。」
「ただし・・・定期的に連絡はもらいたい。・・・よろしいか?」
それだ条件だと言われれば、桐原は頷くしかなかった。
そして、ルルーシュを迎えに土蔵へと向かう。そこには、ルルーシュと枢木首相の息子スザクがいた。
「・・・おい、いつまでもそんなんだから、あんな奴らにいじめられるんだろ!?」
ルルーシュが所々汚れているのは、近所の悪ガキにいじめられたかららしい、とスザクの言葉から察する。
「・・・我慢すれば良いだけの話だ。抵抗すればするだけ、余計に生意気だなどと言われて痛い思いをする。」
どこか達観したようなもの言いに、さすがのスザクも何も言えずに固まってしまう。
「・・・それで、何か御用ですか?」
そんなスザクを何の感情も無い目で見やってから、ルルーシュは視線をこちらに向けてそう訊いた。
ギョッとするスザクの脇に立ち、桐原は決定事項を告げた。
「これから、この土蔵を引き払い、ワシの屋敷に来てもらう。・・・良いな?」
「・・・わかりました。」
素直に頷いたルルーシュに、スザクは眉を顰め、それから、桐原を見る。
「あの・・・。」
「お前の父には許可を得た・・・心配無用じゃ。」
「・・・あ・・・はい。」
戸惑ったように返事をするスザクを後目に、ルルーシュはさっさと荷物をまとめていた。もともと持ってきた荷が少なかったのか、ものの数分でまとめ終わってしまう。
「・・・準備できました。」
「うむ。・・・では、行こうか。」
「はい。・・・じゃあ、スザク、さようなら。」
「あ・・・ああ。」
あっさりとした別れの言葉に、ポカンとしたまま見送るスザクを見やって、桐原は溜め息をついた。
「友人ではなかったのか?」
「・・・こんな状況でなければ、そういうこともできたと思いますが。」
向けられる視線はやはり何の感情もこもってはおらず、ルルーシュ自身が感情をコントロールできないがために無理やり押し込めていることが窺えた。
それから、車に乗り小一時間、桐原の屋敷に着いたルルーシュは開口一発、桐原を驚かせてくれた。
「何の思惑があってのことかはわかりませんが、お世話になる以上はそれなりに働かせて頂きます。・・・ところで、お台所はどこですか?」
「・・・台所?」
「はい。料理をしようと思いまして。」
「・・・りょ、料理をするじゃと!?」
驚く桐原に、首を傾げてみせ、ルルーシュは肯定する。
「はい。枢木家の土蔵で暮らしていた時も、自分で食事を作っていましたよ。毒殺なんてしょっちゅうある環境で育っているもので、知らない人間が作った食事はなかなか喉に通らないんです。」
「・・・そ、そうか。・・・だ、台所は、その、奥にある。」
「わかりました。・・・ああ、食材は自由に使っても?」
「か、かまわんよ。」
「ありがとうございます。」
礼もそこそこに、さっさと台所で行ってしまったルルーシュの背を呆然と見送った後、ようやく我に返った桐原が台所に駆け込む。
「る、ルルーシュ皇子!」
まさか、あんな大国の皇子に食事を作らせるわけにはいかないと慌てて止めようとするが、台所に入ってその料理をする様子を目に入れた瞬間、桐原は固まってしまった。
なぜ、これだけの使用人がいながら、皇子の行動を止めないのだと憤りたいが、その慣れた手つきに、思わず感心してしまっているというか、むしろ、このまま見ていたいと思ってしまう程、ルルーシュは楽しそうに料理を作っているのだ。
「・・・何を作っておるのだ?」
止めることは諦め、その手元を覗き込むと、ルルーシュはあっさりと答えた。
「お口に合うかはわかりませんが、ブリタニアでよく食されるものです。あと、念のため、和食も。僕が作れるものなど、たかが知れていますけれど。」
そう言いながらも、とても良い手つきで作っているので、桐原は同じく呆然と見ていた食事係の方を向く。
「・・・手を・・・貸す必要がありそうか?」
「・・・い、いえ。その・・・慣れておられるようなので・・・私どもが手を出すと、逆にお邪魔になるのではないかと・・・。」
ふるふると首を横に振る食事係に、そうか、と呟き、桐原はルルーシュの手元を見つめながら、言った。
「・・・必要な物があれば、この者達に言いつけると良い。・・・ワシは・・・書斎におる。」
「わかりました。」
こくんと頷く様子は年相応で大変可愛らしいので、思わず口元が緩みそうになる。が、そこは使用人達の手前、何とかこらえて、台所を出た。
「・・・皇子手ずからの料理か・・・悪くないのぅ。」
そして、食事ができたと使用人が顔を引き攣らせつつ呼びに来たことに一抹の不安を抱え、桐原は食堂へ向かう。
「・・・どのようなものでも、食べきるのが礼儀じゃろうな。」
ぼそり、と呟き、桐原は食堂の扉を開けた。
― ハッキリと言おう。驚いたとも!
桐原は心の中で叫ぶ。それ程に、見た目も匂いも完璧に美味しそうな料理が山のように並んでいたのだ。
本当にこの料理をこの皇子が作ったのだろうかと思う。
「色々と作ってみたんです。お口に合えば良いんですが。」
「(・・・どこの新妻じゃ?)・・・そうか。」
淡々と言いながらもほんのりと頬を赤く染めるルルーシュに、クラリとくるが、桐原は頷いて席に着いた。
「・・・いただきます。」
「どうぞ、召しあがれ。」
まずは、ブリタニアでよく食べられているという料理に箸をつけ、口に運ぶ。その瞬間、かちん、と固まった。
「・・・あの、お口に合いませんか・・・?」
心配そうなルルーシュの表情に、桐原はハッと我に返り、フルフルと首を振った。
「いや、このようにうまい料理は、今まで食べたことがない。・・・皇子は料理を習っておったのか?」
「いえ、最初は見よう見まねで・・・後は、本を見たりして・・・。」
「そうか。・・・いや、本当にうまい。これなら、毎日でも食べたいくらいだ。」
「じゃあ、毎日作ります。」
今、この皇子はなんと言った?
桐原はまじまじとルルーシュを見やる。
「・・・ああ、いや・・・皇子に作らせるわけには・・・。」
「いえ。作らさせて下さい。・・・先程も言いましたが、毒殺のまかり通る場所で暮らしていたせいか、知らない人間が作った料理は喉に通らないんです。」
それが、真実だと知っている桐原は、説得を早々に諦めた。
「・・・わかった。では、食事は皇子にお任せすることにしよう。・・・その代わりと言ってはなんだが・・・ワシの将棋の相手をしておくれ。」
「・・・ショウギ・・・ですか?」
「ああ。・・・一種の戦略ゲームのようなものでな、チェスと似たようなものじゃ。」
「チェスなら得意なので・・・やり方さえ教えていただければ、何とかお相手できると思います。」
生真面目に答えるルルーシュが可愛らしく、桐原は思わずその頭を撫でた。
「そうかそうか、楽しみじゃのう。」
「・・・っ///」
目を丸くしたルルーシュに、桐原はクツクツと笑う。
「くっくっ・・・これは、ワシに気を許して貰っていると判断しても良いということかな?」
「・・・っ、それは・・・。」
「ふむ。誰かから情報を仕入れておいでか?・・・例えば、アッシュフォードとか。」
桐原の言葉に、ルルーシュは、今度こそ絶句する。まさにその通りだったからだ。日本に送られる際、アッシュフォードが色々と現地調査をし、ルルーシュにその調査結果を報告していたのだ。
「・・・図星じゃの。こそこそと嗅ぎまわっておる者がいたからどうしたものかと思っておったが、ブリタニア皇帝から皇子を送ると言われた時に合点がいったのじゃよ。」
「・・・アッシュフォードの動きはバレていたということですね。・・・ルーベンが落ち込みそうです。」
「いやいや、ワシのSPの中に特に優秀な者がおってな・・・その者が報告してきたのじゃよ。他の者は全く気付いておらんかった。」
「そうなのですか・・・。ぜひ、紹介していただきたいですね。」
「今は別の任務にあたらせておる。・・・後ほど紹介することにしよう。」
ニコニコと言う桐原に、ルルーシュもようやくはにかんだ笑みを見せる。
「ほれ、皇子も食事はまだじゃろう?一緒に食べんかの?」
「・・・そうですね。」
頷くルルーシュを見て、ニコニコと頷く桐原を見た腹心の部下の一人が後に、まるで孫を見る祖父のようだったと零したとか・・・。
7年後、ルルーシュは未だに桐原の家にいた。本国から何度も帰れとの連絡があったものの、頑として戻らなかったのだ。
「・・・俺が帰れば、ブリタニアはすぐに日本と開戦するでしょうしね。・・・母さんを守ってくれなかった父上へのささやかな意趣返しですよ。」
はん、と鼻で笑う様子を見て、桐原はクツクツと笑う。
「随分と嫌っておるな・・・うっ、そ、そこは、ま、待った。」
いきなり慌て始めた桐原を見やり、ルルーシュはしれっと答える。
「・・・待ったナシですよ。」
「そ、そこをなんとか!!」
自身を拝み始めた桐原に、ルルーシュは溜め息をつく。
「しょうがないですね。じゃあ、どうぞ?」
そう、ルルーシュと桐原は、縁側で将棋を指しながら話していた。だが、ルルーシュの打った一手が、あまりにも良い手だったので、話の途中で桐原は待ったをかけて拝み始めてしまったというわけだ。
「桐原さん、待ったナシで打つってさっき言ってたのに。」
クスクスと笑うルルーシュに、桐原は呻く。
「うう・・・コツを掴んだら、途端に強くなりおって!」
「最初に言ったじゃないですか、チェスは得意ですって。似たようなゲームなら、コツさえ掴んでしまえば、俺の方が上手になるのは決まりきっていましたよ。」
「・・・強かになりおって・・・全く、誰に似たのじゃ。」
溜息をついた桐原の前に、お茶が差し出される。
「・・・失礼かと存じますが、桐原公に倣われたのではないかと。」
「さ、咲世子!!・・・な、何を言いおるか!!」
「ふふ、大正解ですよ、咲世子さん。」
有能なSPであると同時に、使用人としても桐原に仕えていた咲世子。その彼女をルルーシュの側に置き、身の回りの世話を任せるようになって7年。すっかり姉弟のように仲良くなった2人を敵に回すと、桐原が負けるのは目に見えている。
そして、ルルーシュが咲世子の言葉を肯定したものだから、負けを認めるしかない桐原はがっくりと肩を落とした。
「・・・小さな頃はあんなに可愛らしかったのに・・・。」
「はいはい・・・王手!」
「あぁ!!ま、待った!!」
「またですか?・・・大人しく負けを認めたらどうです?ここでしのいでも、先が無いと思いますけど。」
「ううう・・・負けじゃ負けじゃ!!もう良いわい!」
降参するポーズをとり、桐原はがぶりとお茶を飲む。
「じゃあ、今日は買い物につきあって頂きますからね?」
「それでは、お二人の護衛は私が務めさせていただきます。」
湯呑に口をつけていじけていた己を後目に、さっさと立ち上がったルルーシュと、それに従う咲世子に、桐原は溜め息をついた。
「・・・年長者は敬うものじゃぞ・・・。」
「賭け将棋を持ち出したのは、桐原さんだったと記憶してますが?」
ニヤリと笑うルルーシュに、深々と溜息をつき、桐原は立ち上がる。
「やれやれ、悪いことを教えるものではないな・・・。」
「ご自覚がおありでしたか、桐原公。」
「これ!咲世子!!」
「・・・ほら、行きますよ、桐原さん。咲世子さんの厭味の一つくらい受け流すくらいの度量はあるでしょう?」
絶対に、ルルーシュは咲世子に似たのだ、と桐原は思うが、それを口に出せば、2倍3倍になって帰ってくるのは必至なので、口は噤んだままだ。
「・・・むぅ・・・。」
「その代り、今日は、腕によりをかけて、桐原さんの好物を作りますからね。」
「本当か?それは楽しみじゃ。」
途端に機嫌を良くした桐原を見て、互いに視線を合わせたルルーシュと咲世子は、クスクスと笑い合う。
この緊張関係がずっと続くのか、それとも、ブリタニア側がこのまま諦めるのか、それは、神のみぞ知ることなのかもしれない。
だが、ここにあるのは、確かに、日本とブリタニアが手をとった優しい世界の縮図だった。
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